【書籍化&コミカライズ】魔法女学園の売店ではたらく俺は、異世界から召喚された『ハーレム奴隷』です。 作:タイフーンの目
「いやー、美味いっす!」
ラビとのセックスを終えて俺は昼食を、ルリファーナさんの手料理をごちそうしてもらっていた。
「ふふ、お口に合いましたか?」
「はい、それはもう!」
料理も娘さんも――!
とはさすがに言わなかったが、言ってもたぶん喜んでくれるだろうなとは思う。
「でもごめんなさいね、食べづらいでしょう? 床に座って食べるのは」
今俺は、ラビとルリファーナさん、そしてシノンちゃんと4人でちゃぶ台を囲んでいた。
ちなみにラビは制服から着替えて、ロングスカートの村娘風の私服だ。
可愛い。
ラビは何を着てもよく似合うし最高に可愛い。優勝。
「お母さん、リュータさんは前世ではこういうスタイルで食事してたらしいよ?」
「そうなの?」
さすがに和食じゃなく洋食っぽい料理だし、箸ではなくフォーク中心の食事だけれど、こうして床に腰を下ろして食べるのはやはりなじみ深くて落ち着く。
「生活様式が似てるのね――もしかしたら、だからラビちゃんの精霊召喚でリュータくんが呼び寄せられたのかも」
「どういうことですか?」
「精霊召喚で異世界に呼びかけるとき、私たちは意識して相手を探すことはできません」
エプロン姿のお義母さん――ルリファーナさんは、俺の正面に座っている。
「魔術が、術者にとって相性の良い相手を選んで来ます。――その選定基準は定かではありませんが、何か通じるものがある相手を呼び寄せやすいのだろうとは考えられています」
「でも『精霊』って、神様みたいな存在じゃないんですか?」
「いいえ。もとは別の世界の人間、私たちと同じような生物です。けれどその肉体そのものを召喚するのではなく、魂や、それに付随する魔力のみをこちらで顕現させるのです。……ですから、精霊さんと意思疎通はできないのが通常なんです」
「意思疎通ができないって――ああ、そのための首輪でもあるんですね」
言葉を解さない相手であっても、首輪の魔術なら行動を制限できるわけだし。
「精霊は俺みたいに生身じゃないんですよね。お化けみたいなというか、もっとボンヤリとした――」
「そうですねぇ……ええ、その意味ではリュータくんの言う『神様みたいな』、という感想は的を射ているかもしれませんね」
言いながら、俺にお茶を淹れてくれるルリファーナさん。
「意思が通じないとはいえ、無理に子作りはしないんですよ? こちらからの一方的な好意だけでは成立しません。お互いの相性が良くないと性行為には発展しないんです」
「成立しなかったら、召喚は――」
「精霊さんを元の世界にお帰しして、また次の機会に召喚を行いますね。何度もチャレンジして、うまくいかないこともあるんですよ。完璧な魔術ではありませんからね」
言葉は交わせなくても、なるべく相性の良さそうな男性を魔術が選ぶ――さっきの生活様式の話も、その辺から発想すると確かにあり得ないことじゃないな。
「初めての召喚で最高の相手に巡り会える……ラビちゃんは、幸せ者ね」
「ラビとの生活、落ち着くし楽しいもんなぁ」
「ですね、私もです! 一緒にいるだけで……」
俺たちのノロケを、ルリファーナさんは微笑みながら、シノンちゃんはジト目で聞いている。
「ごほん。……召喚してもセックスに発展しなかったらどうなるんですか?」
「お帰りいただくことになりますね。1回の精霊召喚で上手くいかないことも多くて」
バッチリの相手を召喚できるまで何度もチャレンジするダンサーバニー族の子作り。
……しかし、家族の食卓でこんな性行為の話をするって普通なら気まずくなりそうなものだが――ラビはもちろん、シノンちゃんもさっきから平然と食事を続けている。ダンサーバニー族にとって、性行為はまったく忌避すべきものじゃないからなんだろう。
「それから、精霊さんの奪い合いにならないようなセーフティネットが私たちの本能には刻み込まれているんです。――他人が召喚した精霊には、必要以上に近づかないようになっていて」
「ほう……」
「そもそも、ずっと子作り部屋に籠もるのですから、会うことはないんですけどね」
里に着いてから出会ったダンサーバニーたち。
俺を歓迎しつつも微妙に距離を感じていたのは、そういうことなのかもしれない。
「じゃあルリファーナさんや、シノンちゃんも」
「家族の場合は魔力の波長が似ているから……ふふ、私はむしろ親しみを感じていますよ? ね、シノンちゃん?」
「…………はい」
あ、これは全然思ってない『はい』だな?
そんな会話がありながらも、つつがなく食事は終わった。
さて、昼からはどうしようかな。里の中を見て回りたい気もするけれど、俺がラビの精霊である以上、あんまりフラフラ出回ると里の人たちに気を遣わせてしまうだろうか?
食卓の片付けをしながらそんなことを考えていると、台所のほうからルリファーナさんがひょっこりと顔を出して、
「そうだ、シノンちゃん」
と、声をかけてきた。
「はい? なんでしょう」
「お手伝いをお願いしたいんだけど」
「もちろんです。お掃除ですか? 洗濯でしょうか」
家族に対しても礼儀のいいシノンちゃん。俺に対するときのような険はない。思春期で反抗期かもしれない年頃なのに、本当に良い子といった雰囲気だ。
「裏山に薬草を採りに。いいかしら? さっきハーブティーで使い切っちゃって」
「ええ、行ってきます」
「あ、そうそう――」
ルリファーナさんは視線を俺に移して、
「リュータくんと2人でお願い、ね?」
■ ■ ■
「いやぁ、空気が美味しいねぇ」
「そうですね」
「景色もいいし」
「はい」
「薬草はもっと上のほう?」
「そうですね」
取り付く島もなかった。
薬草採取のため、裏山を登る俺とシノンちゃん。
緩やかな斜面ではあるが、ロングスカートのままひょいひょいと先へ進む彼女は、隣に並ばせてくれない。背中に向かって話題を振ってみても今みたいな感じだ。
ルリファーナさんは俺たちの交流を目的にお手伝いを頼んでくれたんだろうが、なかなか距離が縮まらない。
それにしても健脚だな。
細身なタイプなのに、足腰が強いのはさすがにダンサーバニー族か。
「お義母さ……ルリファーナさんは優しい人だよね。里の人たちも温かくて」
「――私は違うと?」
ピタリ、と足を止めて横目で睨んでくるシノンちゃん。
そういう意味じゃないんだが……いや、俺がお義母さんと呼びそうになったことにカチンと来てるのかもしれない。
俺への態度どうこうとは別に、目元はやっぱりラビとは似ていない。表情のせいもあるんだろうが、それ以前に、父親が違うからだろうか?
精霊召喚は、同じ精霊を二度と召喚することができない。
だから必然的に、姉妹は異父姉妹になる。
ただそのことで家族仲に影響は出ないようで、ラビとシノンちゃんのあいだにも壁はまったく感じない。仲が良いだけに、そこへ割り込んできた俺が気に入らないんだろうな、シノンちゃんは。
「薬草、これです」
しばらく登っていった斜面に生えていたお目当ての薬草を採取し、俺が持っていたカゴに入れる。
「私1人で良かったのに……」
と、シノンちゃんはぶつぶつ言っていたが、ともかく目標は達成して、今度は来た道を戻る。
「シノンちゃんも学園に通う予定?」
「――はい? 貴方のいる学校ですか? それって……」
おっと、また睨まれたぞ。
まあ暗に、というか普通に、『俺と性行為実習するか?』って聞いたようなもんだからな。そういう反応にもなるだろう。
「ラビと一緒に過ごしたいのかなと思ってさ」
「お母さんが……」
「ん?」
「お母さんが家に1人になりますし」
「ああ――」
現状では、学園からは滅多に帰省できない。
外出できてもの里は学園から遠い。
姉妹共に家を出てしまえばルリファーナさんが寂しいだろう、とシノンちゃんは考えているわけか。
しかし、答えぶりからすると、興味はあるわけだ。
「興味なんて、別に――」
「でも覗いてたよね」
「…………えっ」
シノンちゃんが、完全に足を止める。
「な、なにをでしょうか――」
「だから午前中。俺とラビのこと。子作り部屋の中を、廊下から」
ラビとの癒やしセックス中、俺はベールの向こうに人影を目撃していた。薄布越しにこっちからの視線に気づいたのか、すぐに身を翻していたけれども。
「み、みみみ、見てませんっ!」
振り返り、顔を赤くして否定する。
「いやでも、人影が」
「ほ、他の人ですよっ!?」
「家にはシノンちゃんとルリファーナさんだけだったし、あの体格はルリファーナさんじゃないし。お客さんでもいた?」
「い……居ませんでした、けどっ……」
「やっぱり見てた?」
「あ、あれはしきたりですっ! そういう決まりなんですっ……!」
早速、前言撤回しちゃってるけど……嘘を突き通せないと思ったのか、それともそもそも嘘が苦手な性格なのか。
「精霊召喚の様子を近くで見て、勉強するっていう……!」
「ふーん? ラビも、ルリファーナさんもそんなこと言ってなかったような」
「ご、極秘ですからっ! ダンサーバニー族の重要な秘密です!」
「族長も口にしてはいけないような秘密をシノンちゃんが、ねぇ……」
「……っ!?」
慌てふためく顔に『しまった!』の文字が浮かんでいる。
クールそうに見えたけど、こういうところは可愛いなぁ。
「た、他言無用ですよ?! 言っちゃダメですからっっ!?」
分かりやすーい。
テンパってるの、可哀想で可愛いな。
「言わない言わない。……で、勉強にはなった?」
「ふぃ……!? な、なりませんっ! あんな、あんな……っ!」
俺とラビのセックスを思い出しているんだろうか、シノンちゃんは顔を真っ赤に燃え上がらせる。
「お、お仕事! 行きますよ、早くっ!」
話題を強引に切り上げ、ぷんすかしたまま、下山を再開。
と、
「あ、シノンちゃん、その先足場が悪そう――」
「分かってます! そんなことは百も承知で――……って、きゃあぁっ!?」
■ ■ ■
シノンちゃんは斜面で足を滑らせて転落してしまった。
「ごめん、俺がからかい過ぎた」
幸い、たいした斜面ではなく、転落といっても目立った外傷はない。
慌てて駆け寄ろうとするが、
「だ、大丈夫です……! このくらい自分で立てます……痛っ!」
「足、挫いてるな」
右足をかばって立てないシノンちゃん。
魔力で肉体を強化しているとはいえ、今のような咄嗟の事故ではその効果も薄い。
「じっとしてて」
俺は彼女の足下でしゃがみ込み、手のひらの上でスライムを生み出す。
「そ、そそそ、それは何ですかっ!?」
「スライムだよ」
「スライムって――、女の子を襲って魔力を吸うっていう……!? なんでそんなものが!?」
「特殊体質だから」
自分の分身としてスライムを生み出せる男……なんて、そりゃあ初めて見るだろうし信じられないだろうなぁ。
「あ、あなたは……私を襲って……食べる気ですかっ!!??」
「違うって。これで患部を冷やすのと、痛み止めに。錬金術部との合作でね。このスライムは色んな薬品や薬草の成分を蓄えてるんだ」
俺の手の上で、プルンっと小さく揺れる半透明のスライム。
「今は鎮痛作用と、わずかだけど治癒作用のある薬草とをミックスした状態だから――」
「し、信用できませんっ! へ、変な薬で私をめちゃくちゃに……!」
「しないって。そりゃあ、その気になればできるけど」
「っっっ!?」
しまった。そうじゃなくて。
怖がらせてどうするんだ。
「安心してくれって。俺が襲うのは、自分の教え子だけだから」
「っっっ!!??」
あれだな、やっぱり我ながら酷い殺し文句だな。
「じゃ、じゃあ姉さんもっっ!!??」
「ラビはむしろ喜んで……いや、生徒全員、先生たちも喜んで犯されてくれるけど」
「学校怖いですっっ――!?」
事実なんだがな。
「これは本当に治療だし、絶対に変なことはしないから。ちょっとだけ、ちょっとだけだから」
「う、うう……!」
「このままじゃ腫れちゃうだろうし、無理して、骨にヒビでも入ってたらマズいだろ?」
「わ……わかりました……」
ようやく屈した――じゃなかった、ようやく了承してくれたシノンちゃんの右足に、スライムを巻き付ける。
「ひっ――!?」
その感触と冷たさに彼女は、身を縮ませたが、
「……あれ? 痛く、ない……」
「鎮痛作用は即効性のやつだから。治癒効果はさすがに時間が掛かるけど。夕方にはだいぶ良くなるだろ」
「…………。ありがとうございます……」
むくれながらも感謝の言葉を口にするシノンちゃん。律儀だなぁ。
「そんじゃ、はい」
「……はい?」
「おんぶ。背負っていくから」
「はい――っ!?」
「まだ歩ける状態じゃないんだし」
「お、おんぶって……! そんな恥ずかしいこと!」
「誰も見てないし」
「そういう問題じゃ――!」
ブンブンと首を振るウサ耳少女。
うーん、そうか……。
「密着するのが嫌なら、じゃあ肩に担いで下るか」
「か、肩!? 私、荷物じゃ……!」
「ちょっと失礼」
「ん、きゃあっ!?」
ラビとは2歳差らしいく、ようやく成長期に足を踏み入れたくらいでしかないシノンちゃんの身体は軽い。そこへさらに浮遊魔術を仕掛けることによって、片腕で持ち上げられるくらいに。
肩に座らせるようにして彼女を担ぐ。
「た、高いっ!? 高いです、コレっっ!! 目線が!」
怯えて俺の頭にしがみついて来る。
「そう?」
「あ、あなたは背が高いんですからっ! こ、これは怖いですっ! お、おんぶでいいですから! おんぶでお願いしますっ!」
結局、当初の申し出どおりにシノンちゃんを背負って、今度こそ山道を下る。
シノンちゃんはなるべく身体が密着しないように、自分の両腕を俺の背中にくっつけて、どうにかこうにか背中に収まってくれている。
「私、重くないですか……」
耳元で、至極遠慮がちな声でシノンちゃんが尋ねてくる。
「? いやまったく」
抱え上げるときには浮遊魔術を使ったが、今は安定重視のため解除している。それでも、彼女1人を背負うくらいは何てことはない。
「いいえ……重いはずです。進むの、遅くなってますし」
俺の下山ペースが落ちているのを気にしているようだ。
「あんまり揺らさないようにしてるから。揺れると、足首の痛みがぶり返すだろ?」
「そんな……私は……」
俺の返答が予想外だったのか、口ごもって、しばらく無言になってしまう。
「……前にも」
「ん?」
「姉さんと、よく採りに来てたんです、薬草」
「そうなんだ」
「その時も私、はしゃぎ過ぎてケガをしてしまって……おんぶして帰ってもらったんです」
「ラビは面倒見のいいお姉さん?」
「それはもう、すごく」
「だろうなぁ」
年上の俺ですら甘えたくなるタイプだからな、ラビは。
「でも時々、イタズラっぽかったりな」
「そうなんです、子どもっぽいところもあるんです、姉さん」
「たまに頑固だし」
「ですよね!? 私が熱出したときも、風邪がうつるって言っても聞かなくて、ずっと看病してくれて」
「ご飯も美味しそうに食べるし」
「見てるだけで幸せになります」
「甘い物のときには特に」
「顔、とろけちゃってますよね! ふふふっ」
口いっぱいに頬張っているラビの顔を2人して思い浮かべて笑い合う。
「シノンちゃんは、お姉ちゃんのことが大好きなんだな」
「ええ、大好きです。……あなたも、ですよね……?」
「ああ。誰よりもね」
「――――」
少しの沈黙のあと、
「――ごめんなさい」
「?」
「私、嫌な感じですよね……」
「仕方ないって。俺こそ、ラビとシノンちゃんのあいだに割り込むような。それにシノンちゃんにとっては『他の人が召喚した精霊』なんだから、こうやっておんぶされるのも魔力が拒否するんだろ?」
ラビの妹なんだし好かれたい気持ちはあるが、強要しても仕方がない。少しずつ認めてもらえるように接していくしかないだろう。
「下山するまでの辛抱だから、もうちょっと頑張ってくれよな」
「…………。はい、そうですね……」
また少し歯切れの悪い口調で、シノンちゃんは言った。