【書籍化&コミカライズ】魔法女学園の売店ではたらく俺は、異世界から召喚された『ハーレム奴隷』です。 作:タイフーンの目
さて。
ハーレムセックスで色んなものが充満していたうちのキッチン&ダイニングも、魔術のおかげですっかり清浄化されて、異世界料理部の活動は滞りなく行われた。
今日は、異世界(俺のいた世界)から召喚した『親子丼』を並べて、みんなで食事だ。
「うまいっす! このトロトロ感と、ほどよくぷりっとしたお肉!」
「白米のうえに乗せて混ぜるなんて……あまり上品ではないかと思いましたが」
「これアリ! てかこれだから美味しいんだよ、きっと! このスープ? 出汁? つゆ? が染み込むと、ライスの食感も変わって楽しい~」
評判は上々、というかここ最近の中でもトップ評価のようだ。
「米の味もこちらとは別物ですね――、噛みしめるほどに広がる甘み、それでいて主役の食材を邪魔しない絶妙なバランス」
「これ、寮のメニューに追加してほしいなぁ」
故郷の料理が受け入れられるのは嬉しいものだ。
嬉しさついでに、つい口が軽くなって、
「ちなみに母と娘とまとめてセックスするのも『親子丼』なんて呼んでだな――、おっと」
食事時にこんな会話はセクハラもいいところだが、
「ええ!? いいないいな、私もそれされた~い♡」
「お母様、恥ずかしがり屋だから許してくれるでしょうか――ああ、でも素敵♡」
「あれー? ラビ先輩、顔が赤いですよ?」
「もしかして里帰りしたときに――」
「あ、えっ? えーっと……♡」
セクハラがセクハラにならないのは良かったものの、また食事より性行為の流れになってしまいそうなのはマズい。キリがなくなる。……したいけど。
「まあ、そういうのは今度な。ほら、冷める前に食べようぜ」
「「「はーーい♡」」」
うんうん。素直でいい子たちだ。
さっき散々イカせてやったから、性欲も抑制が効いたんだろうな。
そんなこんなで親子丼を平らげ、片づけも終わって――「デザートも食べたい」という話になった。
贅沢なケーキ……なんてリクエストも出されたが、
「私はリュータ先生の世界のお菓子がいいなー」
「だね。先生のとこ、美味しいものばっかだもんね」
と、俺にお鉢が回ってきた。
それこそ高級菓子を召喚しても良かったのだが――ちょっと遊び心も手伝って、
「よし。じゃあこれからみんなに『戦争』してもらおうか」
「「「????」」」」
物騒な俺の発言に、部員たちが首をかしげる。
「ラビ、今から言うものを――」
「……へえ、そういうお菓子があるんですね。では――」
ラビの召喚魔術によって、
――ポンっ
という白煙とともに、テーブルの上に俺が指定したお菓子の箱が現れる。
「この小さい箱に入ってるんですか?」
「2種類あるね」
「きのこ? と、こっちは何だろ?」
「山? 里?」
「ああ。これこそが俺の国に――俺の世界に、終わらない戦争を巻き起こした火種だ。あ、そっちは『たけのこ』な」
「さあ、食べ比べてみてくれ」
「食べたら、戦いが始まっちゃうんです?」
無垢な生徒たちの疑問に、俺は「ふふふ……」とムダに意味深な笑いで返し、パッケージを開けるよう促した。
どちらもひとくちサイズのお菓子。
きのこを模したほうは、造形したチョコレートにサクサクの香ばしいクラッカーが突き刺さっている。たけのこのほうは、これまた野菜を模したクッキーを、チョコレートでコーティングしたものだ。
「わー、なんか可愛い~」
「いただきます」
ひょい、ぱく。
と、彼女たちは次々に口に放り込んでいく。
「ん、おいひ」
「口の中でクッキーとチョコが混ざり合いますね」
「私これ好きー。そっちも食べさせて~」
こちらも大好評だ。全員がひと通り双方を食べたところを見計らって、
「さあ、どっちが美味い?」
「断然『たけのこ』っす! クッキーがほろほろと砕けてとろける感覚が完璧じゃないっすか!」
「ええ~?『きのこ』のほうがチョコ多いじゃん。こっちのほうが贅沢だよ」
「それ別々で食べれば良くない? チョコはチョコでさぁ」
「きのこは、こうやってポキッって折ったら別々に食べられるし! お得!」
「それあまり上品じゃないな~」
「まあ。こちらきのこは、クラッカー部分を持つと手が汚れませんのよ? お上品さでは確実に
ふふふ、いい感じに(平和な)戦争が始まったな。
「あの、リュータさんはどちら派ですか?」
と、きのこを持ったラビが。
「それは気になりますね」
と、たけのこを手にしたナターシャ先生が。
それぞれ支持層の部員を背中に、俺に問い詰めてきた。
「きのこですよね?」
「たけのこで決まりでしょう」
ここまで想定内だ。
みんなの投票もほぼ半分ずつに別れているし、いい感じ。
そこで俺は、ラビに耳打ちしてもう1箱、召喚してもらった。
その箱を手に掲げ、俺は宣言した。
「俺は――この『頭からお尻まで、チョコがぎっしり詰まった細長い筒状のプレッツェル』が好きだ!」
決まったな。
第三勢力の登場による戦争の終結。これぞ世界平和だ。
――と、思いきや。
「…………リュータさん」
「リュータ先生――」
「あ、あれ?」
気づけば、そろってジト目で俺を見ている。
「私たちはどちらかを聞いているんですよ」
「ハッキリするまで、引くことはできません」
「い、いや近い近い……うぐ!」
ラビとナターシャ先生から両側の頬を、きのことたけのこでドス、と突かれて責め立てられる。
「「どちらですか??」」
「そ、それは……」
やはり戦争なんて不毛なものだ。矛を収める勇気こそが大事なんだ――、そんな説得の言葉も浮かんだが、それはそれで逆効果なような気がしてやめた。
俺が進退窮まっていると、玄関のベルが鳴った。
「お、お客さんだ、ほら2人ともちょっと待って、大事な客かもしれないし――ど、どうぞ~~!」
動けないままの俺は、声を張り上げて来客を招く。
「うむ、邪魔するぞ――……って、なんじゃい、この状況は」
入って来たのはテレジア学園長ちゃんだった。
怪訝な顔を浮かべる彼女に、生徒の一人が、
「学園長先生! どっちが美味しいですか、教えてください!」
「む? 食えというか。まあよいが……、うむうむ。どちらも美味ではないか」
「選んで欲しいんです、どっちが上か!」
「…………。よいか――」
悠然とした仕草で手にしていた扇を広げて学園長ちゃんは、
「単に『どちらが上か』を比べることは容易。主観にしろ客観にしろ、答えを出すのはたやすいことじゃ。しかし妾たちは教育者。今の優劣だけで判断はできん。それぞれ足りぬところもあるじゃろう。優れておるところもあるじゃろう。――それを見つけて、長所を伸ばし短所を補う。なにより、本人の向上心を大事にして育ててやることこそが肝要。……安易に、『どちらが良いか』など選ばせるものではないぞ?」
「「「お、おおー…………」」」
いつになく真面目な学園長ちゃんに感嘆の声を漏らす生徒たちと、
「「………………」」
気まずくて目を逸らす、俺とナターシャ先生。(特に俺)
――いや。
冷静に考えればそんな話じゃないんだがな? お菓子の話なんだがな? しょうもない争いだったんだがな?
「そんなことよりじゃ。リュータよ、そちに急ぎの用があって来たんじゃ」
「? 明日の性行為実習のことですか?」
「まったくの別件じゃ」
珍しい。
「セックス以外のことで俺に用事なんて」
「まあ、無関係ではない」
「トラブルでしたら、私も参りましょうか?」
ナターシャ先生が申し出るが、学園長ちゃんは首を横に振る。
「今回はリュータだけのほうがよい。……ちと、困ったことになってな」
「なんです、困ったことって」
学園長ちゃんは眉根を寄せて俺を見る。
「――封印が解けそうなんじゃ。神獣・ユニコーンの封印が、な」