※この作品はR-18です。

【書籍化&コミカライズ】魔法女学園の売店ではたらく俺は、異世界から召喚された『ハーレム奴隷』です。   作:タイフーンの目

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197 むなしき戦い

 さて。

 ハーレムセックスで色んなものが充満していたうちのキッチン&ダイニングも、魔術のおかげですっかり清浄化されて、異世界料理部の活動は滞りなく行われた。

 

 今日は、異世界(俺のいた世界)から召喚した『親子丼』を並べて、みんなで食事だ。

 

「うまいっす! このトロトロ感と、ほどよくぷりっとしたお肉!」

「白米のうえに乗せて混ぜるなんて……あまり上品ではないかと思いましたが」

「これアリ! てかこれだから美味しいんだよ、きっと! このスープ? 出汁? つゆ? が染み込むと、ライスの食感も変わって楽しい~」

 

 評判は上々、というかここ最近の中でもトップ評価のようだ。

 

「米の味もこちらとは別物ですね――、噛みしめるほどに広がる甘み、それでいて主役の食材を邪魔しない絶妙なバランス」

「これ、寮のメニューに追加してほしいなぁ」

 

 故郷の料理が受け入れられるのは嬉しいものだ。

 嬉しさついでに、つい口が軽くなって、

 

「ちなみに母と娘とまとめてセックスするのも『親子丼』なんて呼んでだな――、おっと」

 

 食事時にこんな会話はセクハラもいいところだが、

 

「ええ!? いいないいな、私もそれされた~い♡」

「お母様、恥ずかしがり屋だから許してくれるでしょうか――ああ、でも素敵♡」

「あれー? ラビ先輩、顔が赤いですよ?」

「もしかして里帰りしたときに――」

「あ、えっ? えーっと……♡」

 

 セクハラがセクハラにならないのは良かったものの、また食事より性行為の流れになってしまいそうなのはマズい。キリがなくなる。……したいけど。

 

「まあ、そういうのは今度な。ほら、冷める前に食べようぜ」

「「「はーーい♡」」」

 

 うんうん。素直でいい子たちだ。

 さっき散々イカせてやったから、性欲も抑制が効いたんだろうな。

 

 

 そんなこんなで親子丼を平らげ、片づけも終わって――「デザートも食べたい」という話になった。

 贅沢なケーキ……なんてリクエストも出されたが、

 

「私はリュータ先生の世界のお菓子がいいなー」

「だね。先生のとこ、美味しいものばっかだもんね」

 

 と、俺にお鉢が回ってきた。

 それこそ高級菓子を召喚しても良かったのだが――ちょっと遊び心も手伝って、

 

「よし。じゃあこれからみんなに『戦争』してもらおうか」

「「「????」」」」

 

 物騒な俺の発言に、部員たちが首をかしげる。

 

「ラビ、今から言うものを――」

「……へえ、そういうお菓子があるんですね。では――」

 

 ラビの召喚魔術によって、

 

 ――ポンっ

 

 という白煙とともに、テーブルの上に俺が指定したお菓子の箱が現れる。

 

「この小さい箱に入ってるんですか?」

「2種類あるね」

「きのこ? と、こっちは何だろ?」

「山? 里?」

 

「ああ。これこそが俺の国に――俺の世界に、終わらない戦争を巻き起こした火種だ。あ、そっちは『たけのこ』な」

 

 

 

「さあ、食べ比べてみてくれ」

「食べたら、戦いが始まっちゃうんです?」

 

 無垢な生徒たちの疑問に、俺は「ふふふ……」とムダに意味深な笑いで返し、パッケージを開けるよう促した。

 

 どちらもひとくちサイズのお菓子。

 

 きのこを模したほうは、造形したチョコレートにサクサクの香ばしいクラッカーが突き刺さっている。たけのこのほうは、これまた野菜を模したクッキーを、チョコレートでコーティングしたものだ。

 

「わー、なんか可愛い~」

「いただきます」

 

 ひょい、ぱく。

 と、彼女たちは次々に口に放り込んでいく。

 

「ん、おいひ」

「口の中でクッキーとチョコが混ざり合いますね」

「私これ好きー。そっちも食べさせて~」

 

 こちらも大好評だ。全員がひと通り双方を食べたところを見計らって、

 

「さあ、どっちが美味い?」

 

「断然『たけのこ』っす! クッキーがほろほろと砕けてとろける感覚が完璧じゃないっすか!」

 

「ええ~?『きのこ』のほうがチョコ多いじゃん。こっちのほうが贅沢だよ」

 

「それ別々で食べれば良くない? チョコはチョコでさぁ」

 

「きのこは、こうやってポキッって折ったら別々に食べられるし! お得!」

 

「それあまり上品じゃないな~」

 

「まあ。こちらきのこは、クラッカー部分を持つと手が汚れませんのよ? お上品さでは確実に(まさ)っています」

 

 ふふふ、いい感じに(平和な)戦争が始まったな。

 

「あの、リュータさんはどちら派ですか?」

 と、きのこを持ったラビが。

 

「それは気になりますね」

 と、たけのこを手にしたナターシャ先生が。

 

 それぞれ支持層の部員を背中に、俺に問い詰めてきた。

 

「きのこですよね?」

「たけのこで決まりでしょう」

 

 ここまで想定内だ。

 みんなの投票もほぼ半分ずつに別れているし、いい感じ。

 

 そこで俺は、ラビに耳打ちしてもう1箱、召喚してもらった。

 その箱を手に掲げ、俺は宣言した。

 

「俺は――この『頭からお尻まで、チョコがぎっしり詰まった細長い筒状のプレッツェル』が好きだ!」

 

 決まったな。

 第三勢力の登場による戦争の終結。これぞ世界平和だ。

 

 ――と、思いきや。

 

「…………リュータさん」

「リュータ先生――」

「あ、あれ?」

 

 気づけば、そろってジト目で俺を見ている。

 

「私たちはどちらかを聞いているんですよ」

「ハッキリするまで、引くことはできません」

 

「い、いや近い近い……うぐ!」

 

 ラビとナターシャ先生から両側の頬を、きのことたけのこでドス、と突かれて責め立てられる。

 

「「どちらですか??」」

 

「そ、それは……」

 

 やはり戦争なんて不毛なものだ。矛を収める勇気こそが大事なんだ――、そんな説得の言葉も浮かんだが、それはそれで逆効果なような気がしてやめた。

 

 俺が進退窮まっていると、玄関のベルが鳴った。

 

「お、お客さんだ、ほら2人ともちょっと待って、大事な客かもしれないし――ど、どうぞ~~!」

 

 動けないままの俺は、声を張り上げて来客を招く。

 

「うむ、邪魔するぞ――……って、なんじゃい、この状況は」

 

 入って来たのはテレジア学園長ちゃんだった。

 怪訝な顔を浮かべる彼女に、生徒の一人が、

 

「学園長先生! どっちが美味しいですか、教えてください!」

「む? 食えというか。まあよいが……、うむうむ。どちらも美味ではないか」

「選んで欲しいんです、どっちが上か!」

「…………。よいか――」

 

 悠然とした仕草で手にしていた扇を広げて学園長ちゃんは、

 

「単に『どちらが上か』を比べることは容易。主観にしろ客観にしろ、答えを出すのはたやすいことじゃ。しかし妾たちは教育者。今の優劣だけで判断はできん。それぞれ足りぬところもあるじゃろう。優れておるところもあるじゃろう。――それを見つけて、長所を伸ばし短所を補う。なにより、本人の向上心を大事にして育ててやることこそが肝要。……安易に、『どちらが良いか』など選ばせるものではないぞ?」

 

「「「お、おおー…………」」」

 

 いつになく真面目な学園長ちゃんに感嘆の声を漏らす生徒たちと、

 

「「………………」」

 

 気まずくて目を逸らす、俺とナターシャ先生。(特に俺)

 

 ――いや。

 冷静に考えればそんな話じゃないんだがな? お菓子の話なんだがな? しょうもない争いだったんだがな?

 

「そんなことよりじゃ。リュータよ、そちに急ぎの用があって来たんじゃ」

「? 明日の性行為実習のことですか?」

「まったくの別件じゃ」

 

 珍しい。

 

「セックス以外のことで俺に用事なんて」

「まあ、無関係ではない」

「トラブルでしたら、私も参りましょうか?」

 

 ナターシャ先生が申し出るが、学園長ちゃんは首を横に振る。

 

「今回はリュータだけのほうがよい。……ちと、困ったことになってな」

「なんです、困ったことって」

 

 学園長ちゃんは眉根を寄せて俺を見る。

 

「――封印が解けそうなんじゃ。神獣・ユニコーンの封印が、な」

 

 

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