【書籍化&コミカライズ】魔法女学園の売店ではたらく俺は、異世界から召喚された『ハーレム奴隷』です。 作:タイフーンの目
「リュータさん、それ取ってもらっていいですか?」
「ああ、これね。こっちもいる?」
「はい、ありがとうございます」
髪を結わえたエプロン姿でまな板に向かうラビに、ピーラーをひょいと手渡す。
今日は、異界料理部に見学に来ていた。
広い調理教室を使っての部活動。
異世界の料理を食したり、分析したり、調理して食べてみる部活。俺の住んでいた世界だけじゃなく、さまざまな異世界からランダムに料理を召喚しては、その対象にしている。
「これ、味見してみませんか?」
ラビがスプーンを差し出す。舐めてみたオレンジ色のソースは、さっぱりした柑橘系の味だった。
「白身魚のソテーに合わせるんですけど」
「いいじゃん」
「良かった。前に食べたときはもっとこう、パンチのある味だったから、まだまだ完全再現とはいかないんですけどね」
「オリジナル要素があってもいいんだろ?」
「ええ、美味しく食べるのが最大の目的ですからね」
「じゃあ十分だよ。味を近づけるのはまた今度でも――……ん?」
俺たちのやり取りを見ていた他の部員たちが、ニヤニヤしているのに気づいた。
「なに?」
「いやー、なんでもないっす」
1年生のルフラちゃん。
狼獣人の女の子で、例のおちんぽテイスティングでも相手をした子だ。
「ただ、お2人はおうちでもそんな感じなんだなーと思って。自分たち、なんだかもうお腹いっぱいになりそうっすー」
「……あのな」
あんな乱れきった(この世界では健全な)性行為実習を受けていても、女の子はこういう話が好きらしい。それで全員ニマニマしてたのか……。
「へ、変なこと言ってないで、早く手を動かそう!?」
「わー、ラビ先輩に怒られたっすー! これは貴重な体験っすー!」
反省の色がまったく見えないルフラちゃんだが、止めていた作業の手を再開させる。ラビが作っているのとはまた別の皿を完成させると、
「すんすん、すんすん……うん。だいぶ近いっす」
嗅覚に特化した獣人だけあって、彼女は味ではなく香りの方面で再現度を測っている。
他にも、鑑定の魔術が使える子もいれば、繊細な包丁さばきが得意な生徒もいる。
……しかし。
改めて見渡してみても。
ラビはもちろんのこと、部員たち全員の裸を知っているというのは妙な気分だ。
部員は全部で10名。
みんな、制服にエプロンを着けた調理実習スタイルで、普通に部活動を楽しんでいる。
でも実習となれば俺とセックスをするわけで、1年生も、2年生も、3年生も……この中の生徒の裸は一通り体験しているし、2、3年生に至っては全員、俺が処女を頂いている。
1年生は実習が始まったばかりなのでまだフェラチオ止まりの子が多いが、これから確実に俺とセックスする子ばかりなのだ。
そして顧問の先生も――
「今日はせっかくリュータ先生も来てくださってるし、料理召喚も行ってみましょうか」
異界料理部の顧問は、ラミア族のナターシャ先生。1年B組の担任でもある。舌技のプロだ。スレンダーな体型で、エプロンを着けると一気に家庭的な雰囲気になる。
ナターシャ先生の提案に、3年の女子生徒がうなずく。
召喚魔術は高度な魔術だが、使えるのはラビだけではない。
この子のように扱える生徒は校内にも何人かいるのだが、一定の危険を伴う魔術なので、教師立ち会いのもとで魔術行使するのが決まりになっているらしい。
「いきます……!」
1つの調理台を部員が囲んで、3年生の子によるランダム召喚が行われた。
紙に書かれた魔方陣がにわかに光を発して、ぼわんという白煙とともに異界の料理が召喚された。
いや、料理というか――
「お、2つ出てきたっすよ? でも料理っすか、これ?」
「何かの箱のようですね……」
ルフラちゃんもナターシャ先生も、みんな小首をかしげて、その謎の物体をのぞき込む。
確かに、料理には見えない。ここから一手間が必要だからだ。円形の箱と角形の箱。
そう――俺には見覚えがある。
「これ、俺の世界の料理だわ」
「リュータさんの?」
「これは食べられるものなんですか?」
「ああ――」
俺は、2つの謎の箱を両手でひょいと持って掲げてみせる。
「これは、カップやきそばだ」
■ ■ ■
ていうか、ペ○ングとUF○だった。○は伏せ字。
調理方法が少し特殊なので、俺が実演してみせる。とはいえ、お湯を注いで3分待って、湯切りをしたらソースをかけてできあがり、なのだけれど。
「うおー! カチカチだった麺がもっちもちになってるっすー!」
「干物をお湯で戻した……のでしょうか?」
異界料理部の面々は興味津々だった。
もとより、この部活は未知の食べ物に興味を持った生徒の集まりなので、さもありなん。
ラビもUF○のカップをのぞき込んで、
「これって、前にリュータさんが話してくれた即席ラーメンって料理ですか?」
「まあ、だいたい似たようなもんだけど。ラーメンじゃないかな。焼きそばだし」
「へぇ。これって、お湯さえあればどこでも簡単に料理できるんですよね? これが魔術じゃないなんて……不思議です」
「俺には魔術のほうが不思議なんだけどな」
お湯さえあれば、とは言うが、お湯は必須だ。
だがこの世界の住民で魔術が使える者であれば、水や火の魔術を駆使すれば何もないところでお湯を作り出せる。
両者を持ち寄れば、より便利で愉快なことになる。
――なるほど。
異界料理部の醍醐味はこういうところにもあるのか。確かに楽しい部活だ。
ラビたちが作った再現料理と、召喚されたカップやきそばを囲んで、みんなで試食タイム。
いくら彼女たちが育ち盛りとはいえ、夕飯前の時間帯なので1つの皿をみんなで分け合う方式だが、これはこれでたくさんの種類を味わえて楽しい。
「ソースの香りが芳しいですね! おうちでも作りたいです」
「同じ種類の料理なのに……麺やソース、具材にも特徴があって風味が異なるのか……作られた土地が違うのかな? 特産品とかの違い? 麺がちぢれているのはソースの絡まりを考慮して……」
「自分、こっちの四角いほうが好みっすー!」
「私は丸いほうかな。容れ物も可愛いし」
俺の故郷の料理――というか食品――も好評で、あっというまに平らげられてしまった。自分の地元の料理がウケるのはなんだか嬉しい。
そして、デザートも用意されていた。
プリンだ。
以前にランダム召喚で取り寄せられて、研究された料理。俺の世界由来のものだったのかは分からないが、味はほぼ同じだ。
これはさすがにみんなで
「保健室の先生も、もらいに来るんだよな?」
誰にともなしにたずねてみる。
「そうっすよー、でも最近は見かけないっすねー」
「学園長に禁止されてるらしいよ」
「えーそうなんすか? 残念っす。数少ない理解者だったんすけどねー」
「数少ない?」
俺の疑問に、ナターシャ先生が答える。
「異世界の未知の料理……というハードルが高いらしくてですね。まあ実際、とてつもない失敗を引いてしまうこともありまして。この調理実習室を使用禁止にされかけたことも……」
ランダムで召喚する、という特性上、たとえば特殊な発酵食品を引き当ててしまったりして、悪臭騒ぎを起こすこともあるのだという。
また、美味しかった料理を再現しようとしても、こちらの世界の食材と調味料、技術で挑戦した結果、おぞましい異物が完成してしまうことも。
「この学園では由緒ある部活の1つなのですが、それが原因で拒絶反応を示す人もいまして。せっかくですので、部外の生徒や先生にも試食を……と思うのですが」
「昔、あまりの美味、その中毒性に、学校を崩壊の危機に招いた料理もあったとか」
「そーいう危険な料理にも出会ってみたいっすけどねー。あははー」
「笑い事じゃなくないか、それ?」
まあ解毒の魔術もあるので、どうにか出来てしまえるのだろうけれど。
「定期的に養護教諭の検査を受けること……というふうにもなってるんですけどね」
と、ラビも苦笑する。
「それで先生にプリンを試食してもらったら――」
「どハマリした、と?」
「はい」
「でも禁止されたんだよな」
「あー、その頃くらいからっすかねー? 2年のリディ先輩がプリンを食べに来るようになったのは。まあ、食べに来るっていうかテイクアウトっすけどねー」
ルフラちゃんが言うと、他の生徒が、
「リディ先輩って、ケガでもしたのかな?」
「んー? どうしてっすか?」
「だって、馬上槍術部の練習も休みがちっていうし」
「自分たちの作るプリンが好きすぎて、部活どころじゃなくなっちゃったんすかね?」
「それはないよー。だってリディ先輩って、真面目だし、部活のエースだし。…………可憐だし」
2年B組のリディ・マートル。
例に漏れず名家のお嬢様で、戦闘術の天才。ツインテールの髪型がトレードマーク。
凜々しい顔つきやキッパリした物言いをする性格だが、華奢で小柄な体格も手伝って、女子らしい可愛らしさも備えている。
今のように、後輩女子たちからの人気も高い有名人だ。
そして、幼馴染みのアルマとともに、性行為実習を避けている。その理由を探るのが、今日の俺のもう1つの目的でもあったのだが――
「失礼します」
ちょうどその折。
計ったかのようなタイミングで、話題の人、リディが姿を見せた。
馬上槍術部の格好ではなく、制服のままだ。部活が行われているはずの時間帯なので、今日も彼女は休んだらしい。
「今日もプリンを頂けるというお話だったので――」
と、彼女は俺の姿を見定めて、やや驚いた様子を見せる。こちらに近づくのを一瞬ためらっていたが、すぐに気を取り直して歩み寄ってくる。
「――その、頂けますか?」
「もちろんっすー! ぜひぜひ、お友達のみなさんにも異界料理部の試食を勧めてもらえると嬉しいっすー!」
「善処します」
キリッとした表情のまま、プリンの皿を2つ受け取るリディ。
彼女は、アルマと一緒に食べるためにテイクアウトを依頼しているのだという。
……2人で遊びに来れば良さそうなものなのに。
彼女の目的が不可解だ。
「すみません、忘れるところでした。よろしければ、お返しにこれを――」
言って、リディはいったんプリンの皿をテーブルに置くと、肩に提げていた袋から何やら取り出す。
代表して受け取ったラビが、
「わあ、可愛いコースター。もしかして、手作りですか?」
テーブルに広げられたのは、布製のコースター。コップを載せるアレだ。色とりどりな、可愛らしいデザインをしている。
「私じゃありませんけど。アルマから……」
部員たちは口々に礼を言って、色とデザインの異なるコースターを手に取って、ためつすがめつ、嬉しそうに眺めた。
顧問のナターシャ先生のぶんまで、人数分が用意されている。もちろん、突発的なゲストである俺のぶんは無いけれど。
「――アルマにも、皆さんが喜んでくださったことを伝えておきます。それでは」
それだけ言い残すと、リディはプリンを持って行ってしまった。
リディの態度はどこまでも素っ気ないが、冷淡というわけでもなく、規律に厳しい騎士といった風情で、部員たちはまったく気にしていない。むしろ、好ましくすら感じている雰囲気もある。
一方で、俺のことは努めて視界に入れないようにしてるようだった。嫌悪しているというよりは、まさしく避けている、という表現がふさわしい。
――男に厳しい風紀委員の女の子、といった印象だろうか?
もしこの学園に男子がいたら対立して喧嘩でも起こしそうだが、女子ばかりの今の環境では割となじんでいるらしい。
(……リュータさん、あとを尾けてみますか?)
ラビが囁いてくる。
(そうだなぁ……)
女子生徒を尾行することには抵抗感があるが、プリンの謎はやっぱり気になる。仲の良い友達と2人で食べるのなら、こんな手間のかかることをする必要はないはずだ。
異界料理部のメンバーにも快く迎えられているし、相方のアルマも嫌われているふうはない。
幸い、ラビも同行してくれると言うし。俺が1人でリディのお尻を追っかけるよりはまだ平穏だろう。
(よし、行くか)
俺はラビを伴って部活を早抜けし、リディのあとを追った。