※この作品はR-18です。

【書籍化&コミカライズ】魔法女学園の売店ではたらく俺は、異世界から召喚された『ハーレム奴隷』です。   作:タイフーンの目

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38 聖女の秘密

 

 俺とラビは、リディのあとを追った。

 

 小柄なツインテールの背中。

 プリンの皿を持って、渡り廊下を通過する。

 

 プリンというデリケートなものを皿に載せているのに、リディはまったくブレることなく平然と歩いていく。武芸全般に長けているというだけあって動きに迷いがない。

 

 

 俺たちは廊下の角から尾行。しかし、さすがは学園きっての女傑、何か気配を察するのか、たまにこちらを振り返る。

 

 ――がその寸前に、ラビが反応する。

 

(まずいです、隠れましょう……!)

 

 リディの動きを先読みして、俺たちはさっと身を隠す。

 

 ラビの鋭敏な聴覚は、ほんのわずかな音――立ち止まる瞬間の摩擦音――を捉えることができるのだ。そして、リディが再び歩き出す音も、あやまたずに拾うことができる。

 

(やるな、ラビ! さすが俺の相棒!)

(えへへ……)

 

 ラビは照れながらも、グッと親指を立てて見せる。初のスニーキングミッションに、俺たちのテンションも上がっていった。

 

 

 

 

 そして。

 リディがたどり着いた先は――

 

「保健室……ですね」

「ああ」

 

 おおかたの予想どおりだ。

 

 保健室のあるじは、養護教諭のミリア先生。

 異界料理部が作るプリンに目がなく、俺が召喚された初日にも、それがトラブルを起こす一因にもなった。

 

 その事故――発情暴走中のラビをほったらかしにしていた(とが)で、学園長ちゃんからプリン禁止令を発令されている。そんな彼女が勤務する保健室に、女子生徒がプリンを2皿持ち込んでいる――

 

「これは怪しいにおいがするな」

「ですね」

 

 俺たちはアイコンタクトを交わし、周囲に人影がないのを確認してから、そそそそっと保健室のドアの前へと忍び寄る。

 

 ラビがその長い耳をドアに、ぴとっ、とくっつける。俺も彼女の真似をしようとするのだが、

 

(リュータさん、私の手を握ってください)

(??)

 

 ラビの意図は汲み取れないが、取りあえず彼女の左手を握ってみる。

 と――

 

 

『……がとうございます』

 

 

 ラビのものではない、誰かの声が、直接頭に流れ込んできた。

 

(な……?)

 

 

 すると今度は、ラビの声で、

 

『これは首輪の魔術の応用です。命令式を与えるのと同じ原理で、私の聴いた音をそのままリュータさんに伝えています』

『首輪の?……って、んん?』

 

 実に不思議な感覚なのだが、俺の考えた内容が、そのまま脳内の声として再生される。

 

『ええ。でも内容は命令とは無関係ですから、単に音が聞こえる、という効果だけを発揮できるかなと思って』

『いま思いついたのか?』

『はい』

 

 ほほ笑むラビ。

 身近な存在になったから忘れがちだが、彼女も相当なエリートなのだ。

 

『そんな、エリートだなんて……』

 

 ――そうか。

 思ったことがそのまま伝わってしまうのか。

 

『……さっきのエプロン姿のラビ。やっぱり可愛かったなぁ。ナンバーワンの可愛さだなぁ』

『ちょ、ちょっと!? なにを!?』

 

 これ面白いな。

 変なこと考えてしまったら筒抜けになってしまってマズいけれど、かなり便利だし。

 

『変なことは考えないでくださいね!?』

 

 ラビにたしなめられて、真面目に盗聴に戻る。

 なんだ、真面目な盗聴って。

 

 

『んぅ~~っ、これこれ! この舌触り! 甘み! ほろ苦さ! 天上の甘味物ですよー、これはっ』

 

 

 ミリア先生の声だ。

 やはりリディは、プリン狂いの養護教諭のために異界料理部から調達して、運んでいたようだ。

 

『し、しかしっ、2つもいいんですかね!? あなたたちは、本当に食べなくても?』

『はい。アルマのために良くしてもらっていますから』

『ああ幸せ! 夢なら醒めないで……!』

『ミリア先生。そろそろ――』

『ええ、どうぞどうぞ! 奥のベッドをお好きなだけ使ってください。シーツのことは気にせずに。アルマさんも待ってますよ』

『ありがとうございます』

 

 俺とラビは顔を見合わせる。

 

 ベッド……。

 ということは、2人の関係はそういうことなのか? 

 

 しかし、2人は寮でも同室のはず。わざわざ賄賂を渡してまで、昼間から保健室でイチャつく必要があるんだろうか?

 

『で、でも、まだそうと決まったわけでは』

 

 ラビは顔を赤くしながら、念話で語りかけてくる。

 

『お昼寝とか……』

『2人で仲良く?』

 

 ふと、リディとアルマの寝姿を思い浮かべる。

 リディはあの通り、可愛らしくも凜々しい女の子。一方のアルマは、教師陣も顔負けなスタイルで、包容力のある印象。

 

 2人が、ベッドで横になり、寄りそって仲良く――

 

『リュータさん! 変なコト考えてますよね!?』

『いやでも、他に何かあるか? それに、シーツがどうのって』

『うう……』

 

 ラビが赤面する。

 そして、俺の頭の中には……

 

 

 ――そんなこと言われると、思い出しちゃうじゃないですか! 私が発情して、リュータさんをあのベッドで襲っちゃったときのこと……!

 

 

 ラビの思考がダイレクトに流れ込んでくる。

 

 

 ――今のエッチも気持ちいいけど、あのときも凄く気持ち良くって、ドキドキして……って!? き、聞かないでくださいリュータさん!!

 

 

『無茶言うなって、俺たち繋がっちゃってるんだから』

『つ、繋がって……!』

『ラビこそ変なコト想像してるじゃん』

『し、してな――』

 

 俺たちが、ドアの前でしゃがみ込み、脳内押し問答を繰り広げていると、

 

 ――ガラガラガラっ

 

 保健室のドアが内側から開かれた。

 リディだ。俺たちを半眼で見下ろして、

 

「……何をされてるんですか? お2人は」

 

 

 

 ■ ■ ■

 

 

 

「申し訳ない。全部俺が悪いんだ。俺がリディのことを尾行しようって強引に」

「いえ違うんです! 私も気になっちゃって、だからリュータさんをそそのかして

……!」

 

 リディに見つかった俺たちは。

 保健室の床で正座してリディに謝罪の気持ちを伝えた。

 

「別に、そこまでしてくださらなくても」

 

 リディは、バツが悪そうに頬をかく。

 

「性行為実習をボイコットしていたのは私たちですし。性奴隷さんが気になるのも当然ですよね」

 

 いい子だ。お嬢様なのに高飛車なところはなく、まさしく品行方正を絵に描いたような女の子。

 

「しかし、盗み聞きの最中にも手に手を取ってとは……なかなか斬新なカップルですね」

「あれは違うんだ。仲がいいのは間違いないんだけど、あれは違う」

「自然とのろけて来ますね……」

 

 俺たちがそんなやり取りをしていると、

 

「リディ様」

 

 奥のカーテンが開いて、アルマが姿を見せた。顔が上気していて、ブラウスの前がやや乱れているのが妙に艶めかしい。

 

「お2人には――特に、性奴隷の先生には私の事情を伝えておいた方が良いかもしれません」

「でも、アルマ」

「恥ずかしいですけれど、ご心配をかけてしまったようですし。きちんと話そうと思います」

 

 アルマはほんのりと頬を染め、もじもじとしながら、言った。

 

 

「私、興奮するとたくさん出てしまうのです……おっぱいが」

 

 

 

 + + +

 

 

 

 妊娠していなくても母乳が出ることは、まれにある。だがアルマの場合は病気ではなく、体質による現象らしい。

 

「出るようになったのは、この学園に入ってから――というより、つい最近、性行為実習が始まってからです」

 

 クラスメイトたちのセックスを見て性的興奮を覚えたアルマは、それがきっかけで母乳が出るようになったという。

 

「出せば出すほど快感を覚えてしまって。量も日に日に増えていって……それで、リディ様が気に掛けてくださって」

 

 2人は同い年の幼馴染みだが、リディの家は代々領主を務める名家。

 アルマはその領地内の教会で司祭の任を担っていた。この世界における上下関係では、リディのほうが格が上になるらしい。

 

 それで、体面的にはアルマはリディに対して敬語を用いているが、心情的には親友を越えた姉妹のような間柄。

 

 そんな2人は、寮では同室。

 さすがにリディは、アルマの異変に気づいたらしい。

 

「私が手伝えれば、と思ったのです」

 

 リディが言う。

 

「ひとりで処理するには……その、色々と恥ずかしいということで」

 

 そんな2人の話を聞きつつ、俺は養護教諭であるミリア先生の見解を求める。

 

「病気じゃないらしいですけど、これって、マズい現象なんですか?」

「ごくまれにあることですし、危険はないんですけどね。ただ――」

「ただ?」

「性感帯としてはヤバイです」

「ヤバイんすか……」

「やばやばです。搾られると、常人の数十倍は気持ち良くなっちゃいます」

 

 なんだかセクハラめいてきたミリア先生の発言だが、アルマたちも承知のことらしく、特に嫌そうなリアクションはない。

 

「種族によっては小さな頃からおっぱいが出ることもあるんですけど、ヒト族であるアルマさんの場合はちょっと違いますね」

 

 種族特性ではなく、彼女自身の特徴なのだとミリア先生は言う。

 

「無理なく、出せるだけ出したほうが健康にはいいんですよ。気持ちいいことを我慢しないほうがいい、という意味で。……まあ、人前で出すのは、恥ずかしいかもしれませんが」

 

 アルマが性行為実習を避けていたのは、その恥ずかしさが理由らしい。そしてリディは、アルマに付き合って実習を拒否していた、と。

 

「担任の先生に相談は?」

 

 俺がそうたずねるとアルマは、

 

「それが……」

 

 と口ごもる。

 代わりに、リディが答えた。

 

「実は、私たちの担任教諭は、アルマの親戚にあたる方なのです。幼い頃からの付き合いで。そんな身内に話すのが恥ずかしいということで――それでミリア先生に相談を持ちかけたのです」

 

 まあ、体のことを養護教諭に相談するのは至極当然のことだろう。

 しかし……。

 

「んで。まさかミリア先生は、相談に乗る代わりに賄賂プリンを要求したと?」

「ち、違いますっ! くれるって言うからもらったんです!」

「その通りです、他の先生に黙ってもらう代わりに、ミリア先生の好物であるプリンを、私から差し出したのです。異界料理部の皆さんのご厚意に甘えて」

「なるほど……」

「そーなんです! 私、プリンに目がくらんで何でもオッケーしちゃうほど軽い女じゃないんですよ!? ま、まあ? 2個もくれると言うので? 相談だけじゃなくホイホイとベッドを貸し出したりはしましたけど?……そ、それだって! アルマさんのことを思ってですねぇ!?」

 

 付け足せば付け足すほど損している気がしないでもないが。ミリア先生、腕は確かなんだけどなぁ……。

 

 それにしても。

 確かに恥ずかしさは人それぞれあるだろうが、この世界、みんなの前であられもない姿になったり、セックスしたりが割と平気なのに、やっぱり母乳が出るのは恥ずかしいんだろうか。

 

 ――と、俺が何の気なしにつぶやくと。

 ラビとリディが口々に言った。

 

「え? リュータさんの世界って皆の前で母乳を出すのが普通なんですか?」

「性奴隷さんは、友人や親族に見られながら平気で母乳を出せるのですか?」

「いいえ出せません出来ませんごめんなさい」

 

 別に2人は俺を責めているではなく、異世界人に向けた単純な疑問を口にしただけだったのだが、つい俺は謝ってしまった。

 いや、うん。無神経でごめんなさい。

 

「――みなさん」

 

 と。

 これまで会話を見守っていたアルマが静かに口を開いた。

 

「私のワガママでご迷惑をお掛けしてしまってすみません。特に性奴隷の先生には、ご心配をおかけして――」

「いやいや、もし俺に原因があるならって思っただけで。性行為実習を無理強いしようって気もないからさ。担任の先生にも知られたくないなら黙っておくし。な、ラビ?」

「はい。もちろんです」

「ありがとうございます……でも……」

「?」

「したくないわけではないのです、実習を……。というよりも……」

 

 今いち歯切れの悪いアルマ。彼女は、リディと目を合わせ、うなずきあう。そして俺に向き直ると、頬を染めながら言った。

 

 

「もし……性奴隷の先生がよろしければ。こんな体質の私が相手でも良ければ教えて頂けないでしょうか? 性行為を――」

 

 

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