【書籍化&コミカライズ】魔法女学園の売店ではたらく俺は、異世界から召喚された『ハーレム奴隷』です。 作:タイフーンの目
悲惨な事故だった。
俺の股間にダイブしてきたウサ耳少女のラビは、結局意識を失ったまま運ばれていった。命に別状はないようだ。ピクリとも動いてなかったけど……。
俺はというと、先生に連れられて学園長室へと連行されていた。別に、処罰を受けるためではないらしい。
「召喚されたばかりで混乱されていると思いますが」
廊下を歩きながら、眼鏡の女性教師は言う。
後ろ髪をアップにした、パンツスタイルの先生。素っ気ないというか、クールな雰囲気があるが、白いブラウスにも大きめのフリルがあしらわれていたりと、飾りっ気がまったくないわけではない。身長は、女性にしては高いほうで、俺と並んで歩いてもさほど差がない。
眼鏡の下はキリッとした切れ長の目。口元にはセクシーなホクロ。年齢は、二十代なかばだろうか。
ちなみに。
どうやら俺の肉体は若返っているようだった。感覚的には、24、5歳といったところだろうか。前世での仕事の疲労感なんて綺麗さっぱり消え去っていて、体の芯から活力があふれ出てくる感じだ。自分で見たところ、手足や腹には結構いい筋肉が付いている。
ちなみに、さすがにずっと全裸というわけにもいかないので、先生がどこかから調達してくれた、カーテン並に長い布を体に巻き付けている。古代ローマ人っぽい服装だった。全裸よりはよっぽどマシだが、ノーパンには変わりないので、下半身がスースーして心もとない。
「まだ名乗っていませんでしたね。私は2年A組の担任、ジュリ・ラクラマーです。ジュリ、でどうぞ」
ジュリ先生、か。
背が高いだけでなく、出るところは出ている女性らしい曲線のスタイルで、肌の露出がごく少ない服装をしているのに、なんだかセクシーに感じてしまう。
そして意外と、俺に対しても友好的に接してくれる。
「俺は、リュータです。こっちの世界風にいえば……リュータ・サクマ、かな?」
「リュータさん。覚えました」
笑顔は一切見せてくれないが、これがこの人の平常運転なのかもしれない。
「聞いてもいいですか?」
「何なりと」
「俺、『召喚』されたって?」
「はい。召喚です。あなたの世界にもありましたか? 召喚魔術」
「いや……魔法自体が無かったです。たぶん。俺の知ってる範囲では」
「なるほど――それはさぞかし不便な世界だったのでしょうね」
そう言われると反応に困る。
どうやらこっちの世界も相当に文明の進んだ世界のようだが、魔法と科学、どちらが便利かという話になると、単純に比較はできない気がする。
「さっき、『性奴隷』がどうとかって……。聞き間違いかもしれないですけど」
「? いいえ、聞き間違いではありません。性奴隷です」
まじか。
「生徒たちに、性行為を教えるための奴隷です」
「性行為って……」
「あなたの世界にも、性行為実習はありましたか?」
「――ないっす。俺の知ってる限り……」
「ふむ、興味深いですね」
至極真面目な顔で、ジュリ先生はうなずく。
「それでは、どうやって性行為を学習するのですか?」
「座学というか、保健体育はあるんですけど……」
「実習は? どうやって性行為の方法を体得するのですか?」
「ひ、人によります」
「あなたの場合は?」
「……ノーコメントで」
なんだ、ぐいぐい来るなこの人。
もっとも、俺自身に興味があるというよりは、異文化に対する興味のために質問しているようだが。
「俺は、性行為実習のために召喚された――『奴隷』?」
「はい。校内に入れる男性は、奴隷だけだと決まっていますから」
「??」
「……学校は、そもそも男子禁制では?」
「いやぁ、女子校ならそうですけど――」
「そちらの世界には、男子が通う学校もあるのですか」
少し驚いたような顔を見せるジュリ先生。
どうやらこちらの世界で学校とは、生徒も、そして教師も女性ばかりというのが一般的らしい。
「淑女を育てるための施設。それが学校です。就学するまでは『性』から遠ざけられ、何も知らぬまま育ちます。そして、学校で性行為を学び……実習で体験するのです」
淡々とした調子で、ジュリ先生は続ける。
「男性教師はいないんですか?」
「いませんね。実質、『性奴隷』が唯一の男性教師と言えるかもしれませんが。しかし、奴隷はやはり奴隷です。ときどき、暴走してしまう性奴隷もいますから。ですので、性奴隷にはそれを――」
彼女の視線は、俺の首元に向けられる。
「首輪を装着させます。絶対服従の魔術が掛けられた首輪です。あなたには、召喚のオプションで装着済みですね」
首元にあった違和感。
あんな騒ぎがあったせいで、その違和感に気づいたのはついさっきのことだが、俺の首には黒い首輪が付けられていた。苦しくはないが、チョーカーなんてはめたことがないので、なんとも落ち着かない。
しかも、オシャレ用のチョーカーというより、金属製のガチ首輪。
「絶対服従の魔術……逆らえないってことか。だから、奴隷?」
「ええ。奴隷です」
スラスラと飛びだしてくる、俺にとっての非常識。この世界での常識――
理解が追いつかないが、事情は、少しずつ飲み込めてきた。
女子ばかりが通う学校。授業の一環で、性行為の実習がある。それを受け持つのは、唯一の男性である『性奴隷』。そして俺は、異世界から呼び寄せられ、その『性奴隷』に据えられてしまった、と。
……女子に囲まれたことを喜ぶべきか、奴隷の身分を悲しむべきか、どう捉えていいのか判断しかねるところだな。
「あとのことは、学園長からもお話があるでしょう。――ここが、学園長室です」