※この作品はR-18です。

【カオ転三次】癖に生きる俺らと割を食うシキガミ・現地民   作:アレデルトロン

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この話に含まれる要素:曇らせ







17.現地商人ちゃんと黒札おじさん

「いらっしゃいやせーっ!……って黒札のダンナじゃないですか!」

10代後半くらいの少女がカウンターから出てこちらに寄ってくる。

 

「よう」

それに軽く手を挙げることで答える。

 

「ダンナっ!今日はどんなご用で?とはいえウチにダンナのお眼鏡に適うものはないと思いやすがね」

 

へへへっと卑屈に笑いながら前屈みで揉み手をし始める。

狙っているかは不明だが、軽く空いた胸元から谷間が大きく寄せられているのがチラリと見える。

 

 「顔を見に来た」

→「荷物が溜まったから売りにきた」

 

どちらも事実である。

(けど会いに来たなんてガラでもないこと言えないよな……)

 

男はチキンであった!

 

「ほいくずストーン類*1とゴミ魔石*2」

 

くずストーン。アギストーンに代表される攻撃系消費アイテムを作成する際に、込める魔力量を減らしたもの。魔力の少ない初心者が手を抜いた時にできる失敗作の一例。モノによるが威力は正規品の半分以下しか出ない。

ただ、スキルなしの現地民が魔法を再現するには十分すぎる品物。ガイア製であり発動が約束されていることもありもはや威力不足による値段の安さすら彼らにとっては救いになっている。

ゴミ魔石も同様だ。ショボい異界から取れがちな保有MAG量の少ない魔石。

 

そんなゴミが一杯に詰まったカバンを机の上に下ろす。

 

「はい毎度!『廉価ストーン』が…ひぃふぅみぃ………。『魔石の欠片』が……おっ、大量ですね!」

 

くずストーンを廉価ストーン、ゴミ魔石を魔石の欠片とはものは言いようだ。

この名付けの効果もあってか、近隣異能組織からこの店に訪れる客も少なくない。

 

「清算するので少々お待ちを……」

 

「いつもの頼めるか?」

 

「へい。ただいまっ!」

 

少女が奥へ戻っていくのを見て、男はインテリアとして店に置かれていた机と椅子を整える。

そしてカウンターに並べてあったクッキーの小袋を2つ手に取ると、用意した椅子に座り込む。

 

程なくして少女が、湯気と共に芳醇な香りを漂わせている紅茶を持ってくる。

 

「どうぞ」

 

「ああ。いただきます」

 

少女が鑑定用のルーペを取り出して、持ってきた石を一つ一つ品定めしては並べていく。

窓の外の景色を見るフリをして、キラキラとした瞳でうんうんと唸りながら値踏みをする彼女を眺める。この時間を男は気に入っていた。

 

「合計でこのくらいになりやすね」

 

「おう。これは紅茶とお土産の分だ」

 

男は金銭感覚が黒札のソレになっていることもあり、ティーセットにしてはやや多めの代金を支払うと、クッキーを1袋手に取って店を出ていく。

 

 

 

 

 

少し時は流れて、半終末。

 

 

「いらっしゃいやせーっ!……あっ、黒札のダンナ!ようこそおいでにっ!」

20代に突入したであろう少女がカウンターから出てこちらに寄ってくる。

 

「よう」

軽く手を挙げながら店の中を進んでいく。

 

「寄るなっ!」

バッと横から黒い影が飛び出して間に入ってくる。

 

よくよく見ると影は15〜6くらいの青年だ。

腰にかけた飾り気のない剣に手をかけて臨戦態勢をとっている。

 

(この店にも卸してるガイア製のショートソードか……)

安価な(安くない)最低ランクの(伝説級の)霊刀である。

 

そんなお守りを握りしめ、体勢を低くして目を見開きながら威嚇してきている。

一歩近づけば、より深く前脚に体重を乗せた前傾姿勢をとる。

一歩、また一歩とジリジリと距離を詰めてやると、その分だけ青年の緊張の糸も張り詰めていく。

 

そして――。

 

青年の頭に後ろからゲンコツが振り下ろされた。

 

「コラッ!何やってんの!?この人はウチ一番の上客だよ!」

 

「くっ……。ごめんなさい。けど姉貴!コイツ俺よりずっと強い!だからいざって時に姉貴を守れない」

 

「どアホ!こっちじゃなくてまずお客さんに謝る!!」

 

そう言うと少女は90度よりも深く頭を下げる。

「ホンットすいやせんでしたっ!ホラお前も謝んの!」

 

青年の頭を掴んで、下げさせながらひたすらに平謝りする。

 

「い、いいよ、気にしなくて。面白がって矛を収めなかったコッチも悪いし」

 

「ホンッッットすいやせんでした!……へへへっダンナはお優しいですね」

一度頭を下げ直した後、いつもの……いや、いつも以上に媚びへつらうような笑みを浮かべて揉み手を始める。

 

「優しい……ねぇ……?……じゃあ優しいついでにアドバイスだ。ボウズ、お前は弱い。それを理解しろ。俺が優しくなかったら、お前のせいで姉貴も店も無くなってたぞ?」

軽く見下すように首を傾けて、出来るだけカッコつけつつMAGを放出する。

 

(甘く見積もってレベルは1/5以下ってとこか、さて?)

 

「ひいっ!」

青年はしりもちをついて倒れる。

 

「そのナリでいざって時に守れそうか?」

そういって男は震える青年の横を通り過ぎる。

 

「今日も納品だ」

ドンっといつもの商品が一杯に詰まったカバンをカウンターの上に下ろす。

 

「ダ、ダンナ。すいやせん。……こ、腰が抜けちまって……」

 

「驚かして悪いな。金は次でいいからさ。また来る」

 

「その時までに金は耳をそろえて用意して置きやす」

 

「あ~あと、そう遠くないうちにクソほど忙しくなるだろうから心構えはしといたほうがいいかもな」

 

「へっ?……いや、ダンナが言うならそうなんすよねっ。気張りやすよ!」

 

「おう。頑張れや」

男は出口のほうに歩きだし、ドアの前で振り返る。

 

「ボウズ。剣を捨てなかったことと、俺のこと見続けてられたとこは評価してやる。」

ニカリと笑って続ける。

 

「俺がボウズの年だったら両手で頭抱え込んで命乞いしてたかもな。ハハッ」

(未覚醒どころかこんな世界だったとは知らんかったから当然だけどなっ)

 

カランコロンとドアベルの音が鳴り男の笑い声をかき消していく。

 

 

 

 

 

さらにもう少しだけ時は流れて。

 

 

 

「いらっしゃいやせー」

「いらっしゃいませー……げっ!?」

 

「おう、納品だ」

 

「へへへっ。いっつもありがとうごぜぇやす!」

 

いつもの席を用意して紅茶を嗜みながら、鑑定が終わるのを待つ。

青年が少女やこちらの姿をチラチラと見てくるので、純粋に味を楽しむだけになってしまった。

 

「こちらがお代になりやす」

 

「おう」

金を懐にしまい、男は帰ろうとする。

 

「ちょいとお待ちを……ダンナに相談したいことがありやす」

 

「お、いいぞ」

先ほどまで居た席に座り直す。

 

「ちょいとダンナのおかわりと、私の分も頼める?」

 

「分かった」

 

弟分がバックヤードに消えていき、少女は男の前に椅子を持ってくる。

 

「それで何だ?相談って」

 

「ダンナもお忙しいでしょうし、単刀直入に話しやすね。DDSってどこまで出来るんですか?」

 

「知らん!」

 

「えっ……そ、そうでやすか」

 

「俺は技術屋じゃないし、お前さんに卸してるのも完全な趣味で商人じゃない。けど、そのうちマッスルドリンコ以外もSHOPに並ぶと思うぞ?」

 

「完全な趣味……」

 

「とはいえデカいものとか、どこまで送れるようになるかはわからんがな。それを見越して追加で卸して欲しい商品があれば言ってくれ。今度カタログ持ってくるわ」

 

「あ、ありがとうございやすっ!ダンナ!」

 

少女が音を立てて立ち上がる。

そして両手がスッと伸びてきて――。

 

「姉貴っ!?」

椅子の音を聞きつけたからか、ドタドタと慌てた様子で青年がお茶を運んでくる。

 

「どーした?」

 

青年に目を向けた隙に、いつもの揉み手をしながら少女は席についていた。

 

「お茶です。……どうぞ」

カチャカチャと不慣れな様子でカップをテーブルに置く。

 

「私から失礼しやす」

そういい、少女は紅茶に口をつける。

 

「うーん。……ダンナにはちょいと我慢してもらう事になるかもしれやせんね」

 

「いいさ。次来る時の楽しみにしとく」

ゴクリと一口。

(フツーの茶だ。我慢するほど酷くは無いんだがな……?)

 

「あの……厚かましいんですがね。へへっ……ダンナにもう一つ相談といいやすか質問といいやすか……」

 

「ん?……何だ?」

 

「こないだ、異界でもないところで悪魔が湧きやしてね」

 

「ん?ああ……。それでボウズを用心棒にしたんじゃ無いのか?」

 

「流石ダンナ!ご名答です」

 

あと、と男が気を良くしたの見て少女は続ける。

「風の噂なんですがね。都会の方じゃ政治家の先生たちがシェルターを作ってるって聞いたんですが……?」

 

「らしいな。ただの核シェルターじゃ悪魔は防げんだろうけどな」

 

はっはっはっ!と男が笑うのに釣られるように少女もへへへと笑う。

 

「へへ、へへへ。こ、この店も防げないんすよね。へへへへっ」

 

「あ〜。スマン忘れてたわ」

 

「やっぱり……必要なんすね」

呟くと少女はその場に立ち上がる。

そして男と目を合わせたあと、頭を下げる。

 

「ダンナ、タダでとは言いやせん。この店にも悪魔が来ないようにしてくれやせんか?」

自分の命もそうだが、先祖代々引き継いできた、両親の形見でもあるこの店を何としても守りたかった。

 

「タダじゃないか……、いいぞ。てか、店だけじゃなくて周りも囲っといた方が生活安定しないか?」

 

(あと、ガイアからの警告があったら飛んでこないとな。ミサイルとそれに乗ったヤツは撃ち落としてやんないと……。不安だな。言わば神々の真似事だろ?)

 

「いいんですか!?」

少女が頭だけ上げて、両手でギュッと手を握りこんでくる。

 

チラリ。

この数年でより健康的に育ったようで、襟ぐりから険しい山々が顔を覗かせる。

 

(随分と柔ら……踏破が難しそうな立派な山だ)

ごくりと反射的に生唾を飲み込んで、思ったよりも音が響いてしまったため慌てて目を逸らす。

 

「ダンナっ、ありがとうございやす!!」

そんな音など聞こえていない様に、嬉しそうに顔を綻ばせて感謝をしてくる。

その純粋な姿に対して少しばかりの罪悪感を感じる。

 

「それで、ダンナ……へへっ。お、お代なんですがね?」

 

「ん?あ、ああ」

ある程度は貰わないと、この関係性が壊れてしまう。彼女も商人のプライドとしてタダ働きは許さないだろう。

 

「ど、どうっすかダンナ?結界のお代として私の処女ってのは?」

その関係性をぶち壊しにきたのは彼女の方だった。

 

「なぁっ!!??」

男は驚愕で思わず立ち上がり、手を振り解いてしまう。

 

「あ、姉貴!!」

ほんの少し遅れて青年も同様に驚愕する。

 

 

……まさかこんな女になってしまっていたとは――!

 

ここで一度抱いてしまえば、今後そのネタで強請(ゆす)られる可能性が出てくる。

 

いや、それは別にいい。それ以前にだ。

商談のカードとして自らの身体を使うような女になってしまった事がショックだった。もっと他に切れるカードはあったはずだ。

 

(それなのに……どうして……)

 

金さえ積めば抱ける身体だった。

その事実が、何か裏切られたような、彼女のイメージがひどく薄汚れてしまったような感覚に陥ちいらせた。

 

(それとも……そう見えたのか?)

自分が金で女を買うような男だと?

そのために今まで面倒を見てきたと?

そう思われていたのだろうか?

 

(……もしかしてっ!?)

俺が惚れているのがバレてたのか?

いや、確かにその情報を持っていれば、今回のは最強の一手だ。

俺がなんだかんだ甘いのは身をもって知ってるだろうから、関係が深まるのはあの娘にとって利でしかない。

 

ここまで思考時間1秒弱。

「へへへっ…。た、足りないってんだったら手付にして貰って、分割払いでもいいっすか?」

少女はさらに畳みかける。

 

(ああ……。黒札とのコネだもんな……そりゃ太くしたいか……)

 

ただあの言い方だと貰えるのは処女だけだ。

(俺にとっちゃ……それでも十分か?)

……確かにそれはある。いや、もしかして分割払いって体でか?

 

いやだとしても、一番高く買える相手にハジメテさえ売り付けてしまえば、あとはどう使おうと彼女の自由だし、どう使ってもバレない。

(そうすればあの弟分に褒美としてくれてやることも……).

自分のしてきた数々の施しが身体という対価を通じて、値付けられる事になる。その事実は男のプライドを傷つけるだろう。

 

(いやそもそも、たまに来る中年の商談相手と、寝食を共にしてる少し年下の用心棒の青年……向こうのほうがお似合いじゃね?)

少し考えれば分かることだ。

貢献度だって、向こうのほうが高いかもしれない。

 

(大事なのは俺のプライドより彼女の人生だ)

 

そこまで考え至った男はニコリと微笑むとくるりと踵を返して手を挙げる。

「ツケでいい。自分の身体を大事にな」

 

精一杯カッコつけて、男は店を後にした。

 

(これで良かったんだ。これでっ……)

男の歩みが少し早足になる。

工事の算段を立てることで必死に意識を逸らしていたが、家に着いた途端に涙が止まらなくなった。

 

 

 

 

 

男が出た直後の店内

 

「あはっ……はははっ!……ううっ……。ひぐっ……ふうっ!……ふふ!……あははは……。ふ、振られちゃった……」

 

自分が出せる最も価値あるモノで勝負したつもりだったが、男は相手にすらしてくれなかった。

どうしようもなくなって込み上げてくる笑いと、心が反応して出てくる涙で少女の顔はぐちゃぐちゃになっていた。

 

「えっ!?……ふ、振られたって、姉貴……!」

 

「店番お願い。今日はもう人と会える顔は出来ないや……」

それだけ言い残すと少女は店の奥に消えていく。

 

男は、自分の命を助けてくれた恩人だった。

男は、両親が遺してくれた店を買い戻してくれた後援者になった。

男は、店に商品を卸してくれる仕入れ先になった。

男は、自分をまともな商人として生きられるようにしてくれた救世主だ。

 

父性を感じていなかったといえば嘘になる。

けど、それは恋でない証明にはならない。

 

男の強さに憧れ、男のやさしさに惹かれた。

けどその強さが故に、まるで壊れ物でも扱うように、私に触れるのをためらった。

そしてそのやさしさが故に、まるで娘でも見るように、私を抱くのをためらった。

 

「ほんっとにダンナは…グスッ……馬鹿みたいに……優しいっすねぇ……んぐっ…」

 

今日は自室でとことん泣き尽くす事になるだろう。明日もかも……。

 

 

 

 

 

 

一方、弟分も困惑していた。

最も太い客とはいえ、相手は一回りも二回りも年上の中年だ。何なら親子に見えてもおかしくは無い。

そんな相手に自分が尊敬する姉貴分が惚れ込んでいた。

 

「クソッ!」

 

今のは完全に自分を男として意識していない愚痴のこぼし方だった。

その事に怒りを覚えたのち、そんなお門違いな怒りを向けてしまったことに対して自己嫌悪に陥る。

 

(まずはそんな事より姉貴の心配が先だろ!?)

そう自分に言い聞かせようとする。

 

(そう。落ち込んでる所で優しくすれば俺にも……)

 

「違うっ!」

 

何も出来ない自分が嫌になる。

尊敬する相手を真っ先に心配出来ない自分が嫌になる。

すぐに打算的な考えをしてしまう自分が嫌になる。

男として見てもらえない自分が嫌になる。

 

男は頭を抱えて悩み苦しむ。

恩人のことを考えるなら素直な気持ちを伝えるようにサポートするべきだ。

自分の欲望に従うならこのまま弱ったところにつけ込むべきだ。

 

この男も今晩は失恋の痛みと自己への嫌悪感で枕を濡らす事になるだろう。

 

 

*1:
オリジナル設定

*2:
オリジナル設定




レベルによる思案速度上昇+ネガティブ思考による全方位曇らせ


黒札のダンナ:
女の子の前でカッコつけてるだけのいい人
アウトローでも何でも無いし商人でも何でも無い
もし少女に多少ぼったくられたとしても気が付かないほど商才はない

少女:
不幸な境遇がダンナのいい人加減と噛み合った
いい人に力と金と不幸な女の子を与えたらまあこうなる
特徴的な口調は意図的に行なっている
商人感を出すためと、ダンナ相手に女の子言葉を使うのが恥ずかしいから

青年:
色々あって少女に拾われた
多分物理耐性の悪魔に殺されかけたところを、採算度外視アイテムラッシュで助けられて懐くようになった
いい子
レベルはダンナの1/8〜9くらい


最適解:
「ど、どうっすかダンナ?結界の代金として私の処女ってのは?」

「足りん!お前の人生全部寄越せ」

「じ、人生って……!?だ、ダンナそれ……どういう意味で……!!」

「いや、それでも足りないな……。ボウズ!お前メスになれ!お前の人生もだ!」

「あ、姉貴……。って!?へ……っ?」


黒札のダンナ:両手に花でハッピー
少女:ダンナと結ばれてハッピー
青年:尊敬する姉貴と竿姉妹でハッピー

皆ハッピー。これぞ三方ヨシだな!

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