【カオ転三次】癖に生きる俺らと割を食うシキガミ・現地民 作:アレデルトロン
「アイツがいい」
ここはあるシェルターのデビルバスター事務所の二階にある応接間。
そこで男は商品でも選ぶかのように、一階にいる女性を指さした。
「そんなっ!彼女は困ります。このシェルター唯一のAランク*1デビルバスターなんです」
半終末期から悪魔が湧き始めていたこともあり、このシェルターが終末後の生活に慣れるのにそう時間はかからなかった。そのため今ではデビルバスターにつけられたランクがシェルター内での指標として一般化するまでに至っている。
(だからこそだろうがよ!)
「ちっ。……穴は俺が埋めてやるって言ったら?」
「それ、は……」
壮年の女性職員は、普段からお世話になっている知人を助けようと必死に思考を巡らせる。
「遅えっ!市民を守る組織の運営がそんなんじゃ、死人が出るぞ!」
「分かって…ますっ。……呼んでくるので少々お待ち下さい」
怒鳴られた事で説得は不可能だと判断し、対応を変えて素直に従う。
「失礼します」
職員に連れられて部屋に入ってきたのは女盛りの美女。
背中まで流れる美しい赤毛がまず目につき、次にたわわに実った巨乳に目が釘付けになる。髪と同色の赤い縦線ニットのワンピースがその豊かな胸元を包み隠しているのだが、抜群のプロポーションによって体のラインが浮き出てしまっている。またオーバーニーの白い編み上げブーツとワンピースとの間に生まれる絶対領域からのぞく、きめ細やかな肌は室内にもかかわらず輝いて見えた。
視線を上げるとアイオライトのようなたれ目と視線が交差する。その深く澄んだ青色の瞳は落ち着きと優しげな印象を与える。
ただ、腰に無骨な剣と複数のアイテムポーチを携え、右腕にスマホを固定している姿から、単なる優女ではなく堅実なデビルバスターであることが
対する男は20歳前後といったところか。しかし眉間には深いシワが刻まれており、時折見せる険しい表情も相まって随分と老けて見えた。
服装はラフで動きやすそうな格好をしており、背負ったバックパックの上部からは少女の姿をしたぬいぐるみの頭が飛び出していた。
その、明らかにミスマッチな組み合わせが青年の異常さを引き立てるのに一役買っていた。
「アティ先生、この方はガイア連合から来た……」
「あー。俺は……チリトリでいいか」
「チリ、トリ……さん?私はアティといいます」
聞くだけ聞くと男は奥の席にどかりと座り込んで、リュックを隣に置く。それに続いて、職員とアティも男とローテーブルを挟んで対面側に座る。
「それで一体私に何の用ですか?」
彼女の素朴な疑問に対して、男は顎を使って職員に話すようにとジェスチャーする。
「ええっと……アティ先生、気を悪くしないでくださいね?」
「えっ?分かりました」
「一年間この方の指示に従ってもらえませんか?」
「?……あっ!パーティーメンバーに入れと言うことですね。私に任せてください!」
ただでさえ大きな胸を張って答える。
「えっ?先生……?」
「失礼ですが、レベルを聞いてもいいですか?」
「俺か?38だ。ガッツリ戦闘職ってわけじゃじゃないからギリ一人前ってとこだな」
「えっ、もしかしてレベル30を超えて一人前って事ですか!?…噂には聞いていましたが凄すぎますよガイア連合さん」
一体このシェルターに30の壁を越えれた生徒が何人居ただろうか。アティ自身を入れて数えても、片手の指の数にも満たないだろう。
「そう言うアンタは幾つだ?」
「私はこう見えても57レベルあります。護衛任務もバッチリですよ」
「そりゃあ凄い。あとで見せてもらうとしよう」
「任せてくださいね」
「だが、メインはそこじゃねぇ。ここのトップにも言ったがな、俺がここに一年間も留まってやる最低条件は家、メイド、そして女だ」
男は指を一本ずつ立てていきながら、やや強引に話を持っていく。
「お、女?……ダメですよ?女性のことをそんな風にモノみたいに考えちゃ」
終末になったことで激変したわけではなく徐々に変化に適応していったことと、このアティという高レベル女性の存在がいたことで、シェルター内の倫理観が比較的高いままで保たれていた。
そのためここに住む人間の模範として、彼女は男を諭そうと試みる。
「あ〜クソッ。別のヤツにするか、他を当たるか……」
「えっ!?」
アティの信条は『話せば分かり合える』だ。その言葉を掲げてシェルター内の揉め事を解決してきたし、サマナーでもある彼女は悪魔とだって会話を試みてきた。
そんな彼女にとって男の態度は衝撃的だった。ここまで会話の意思が見えないのは一部の悪魔たちと狂人だけだったからだ。
(でも、チリトリさんにはしっかりとした知性を感じます。きっと何かワケがあるんでしょう)
「た、ただ今下に居るものを並ばせますので、再度見ていただいてもよろしいですか?」
男の反応を見て慌てた職員が別の生贄を見繕わせるための準備を提案する。
「仕方ねぇな」
「ちょっ、ちょっと待ってください」
「あ?何だ抱いて欲しいのか?」
「い、いえ。そう言うワケじゃないですけど……」
「だろう?……そういや先生って呼ばれてたな、教師か?」
「はい、中学校で教員をしてました。こんなになっちゃってからは、戦闘訓練や子供向けの青空教室なんかもやってます」
「そりゃあいい。オバさんコイツの生徒でいい子いる?元でもいいや」
「戦闘訓練を受けた子も含めるとかなりの数がいます」
「あそう。えら〜い先生様が嫌だって言うなら、身代わりはソイツらの中から選ぶとしよう」
「待ってください。そういうことはお互いを理解しあってからするべきもので、そんなふうに権力に任せて女性を好きなようにするのは良くありませんよ?」
「あ?……あ〜。正直おばさんもそう思ってる?」
「その、大変申し上げにくいのですが……」
「はぁっ。ここの管理者はどうした?」
「つい先日襲撃に遭いました。問題は解決しているのでご安心下さい」
「クソッ。モッピー!説明任せた」
男は話にならないとでも言いたげに大きくため息を吐いて投げ出すように言う。
するとぬいぐるみの目がぱっちりと開き、バックから勢い良く飛び出る。
露わになった人形の全体像は、膝丈程の二頭身にデフォルメされた少女だ。パーツの一つ一つは可愛らしいのだが、口元に浮かべた薄ら笑いがその印象を破壊してしまっていた。
「うーっす。モッピー知ってるよ。ご主人がここに留まることでシェルターが受ける恩恵は3つあるって事」
「しゃ、しゃべった!?」
「1つ目は食い扶持の確保。ご主人は配給食なんて食べる気ないし、メイドが余り物を漁るのも許してくれるよ。少量とはいえ食料に余裕が出来るよ」
「一人分の食料とはいえ、管理側が貯蓄や報酬として自由に使える資材……あれば非常に便利になります」
事務所職員はぶつぶつと呟きながら使い道を思案する。
マッカはデビルバスター以外手に入りにくく貨幣としては使いずらいため、このシェルターではガイアポイントが一般的な貨幣として使われていた。しかし運営やその直下のデビルバスター事務所が自由に使えるガイアポイントは多くなく、常にどうにかやりくりをしているのが現状だ。
そんな中一人分でも自由にできる食料があれば、現物報酬として貨幣代わりに使用したり、比較的裕福な住民に売りつけたり、少量とは言え非常用の備蓄にしたりと利用用途は多岐に渡る。
「2つ目は家の改良。ご主人はショボい家には住みたくないから、資材持ち込みで職人を雇って改造するよ。最低でもお風呂はちょっとした霊泉になると思っていいよ」
「霊泉!聞いたことがあります。入ると傷を癒やしマジックポイントを回復する温泉があるって。それがあればみんなの薬代が減って生存率が上がります」
「3つ目ご主人に種付けしてもらえる。ご主人との子供は確実に霊的才能に優れる。これはガイア連合お墨付きだね。だから、円換算だと数ヶ月の性交権が数百万〜数億くらいするんじゃないかな?」
「「数億っ!?」」
「プークスクス。モブってほんとおバカだね!正直ご主人にとってここに居るのは完全に慈善事業なんだよ。シェルターにとっては得しかないラッキーチャンスなんだね」
事実かどうかもわからない、明らかにモラルと客観性に欠けたシキガミによる説得。
とはいえシェルターとその住民たちにとっては降って湧いたようなチャンス。家の改造も現地の職人を雇うならばこの町に金を落とすことになり、一年を過ぎればシェルターの財産として霊泉は使用可能になるだろう。霊的才能に優れた子もそうだ。次世代の戦力になりうる可能性がある子供というのは何よりの財産だ。
「……分かりました。その話受けさせてください」
しばらく思案したあと、アティは覚悟を決める。
「先生……」
「みんなのためです。このシェルターが良くなるなら私の身体くらい……」
「モッピー知ってるよ。別にこのシェルターじゃなくても良いって事。正直今までの態度は目に余ってるからね。仕方ないね」
「私の無知による無礼の数々、大変申し訳ございませんでした。何卒このシェルターに留まっては頂けないでしょうか?先ほど話した通りこのシェルターは資材不足で管理者が襲撃されてまして、このままだといつ崩壊するか分かりません。どうかお力添えをお願いいたします」
女性職員がここぞとばかりにソファーを降りて素早く土下座する。
「私からもお願いします」
困惑と屈辱はあったがアティも座ったまま深々と頭を下げる。
「ふーん。じゃあ先生、一番優秀だった生徒か一番お気に入りの生徒も一緒に連れてきてよ。もちろん女ね」
「うわー。ご主人ったら鬼っ畜ーw」
「だろーw」
主人と従者は見合ってゲラゲラと下品に笑う。
「で……きません。私一人の身ならどうなっても良いです。でも子供たちを差し出すような真似は教師として出来ません!」
「ププーっ。も、モッピー知ってるよ。シェルターの運営が破綻したら住んでる人間はほとんど死ぬって事。プライドを捨てて生徒に頭下げればみんなハッピーになれるのにね」
「モッピー、いい。こりゃ随分と意思の強そうな目だ」
「ええ、それはもう♪」
今までに何度も自分の意見を通してきたその強い意志を、認められたと思ったアティは明るい返事を返す。
「この先生様は俺をひとりじめしたいらしい。悪魔狩ってるより抱かれてた方がずっと安全だしな。それに英雄の母親にもなれる」
「なんで汚いやり口なんだ!まさか、摂関政治でもやるつもりかー?」
モッピーはクスクスと笑いながら憤るようにドンッと机を叩く。
「生贄にされる可哀想な乙女のフリをしつつ、虎視眈々と権力を狙ってるなんてっ!……ご主人は厄介な女に好かれちゃったねw」
「いやーモテ過ぎちゃって困るなーw」
「違っ「テメェのその安っぽいプライドに大勢の命がかかってる事を忘れるな。俺はもう何度も折れてやってるんだぞ?」…」
アティの反論を遮ってチリトリと名乗った男は威圧する。
間違った事を正すのは教師としての正解だが、強者の望む答えを言うのが弱者としての正解だ。法がなくなった世界においては、その両方の重要性が強まった。当然強者であり教師であったアティは己の正義を他人に強いることができた。
そのヒエラルキーが今、圧倒的な経済力によって覆った。
キャラ崩壊①アティ(サモンナイト3):
原作では軍人→教師だが、本作では教師→戦士のため
天然が増して、人生経験の厚みが少ない
モッピーのかわいさを表現するためにAA入れたけど次から無くていいよね・・・