【カオ転三次】癖に生きる俺らと割を食うシキガミ・現地民 作:アレデルトロン
外壁を出た三人が瓦礫の残る原野を行く。進行方向には、縄でシェルターの周りを囲んだような目印と遥か遠くに暗い森がある。
「本当に巡回に来ちまうとは、先生もしかして物好き?」
「自分の出来ることはなるべくやりたいんです。許可してくれてありがとうございます」
「くっくっく。苦しゅうない」
「せいぜい励みなよアティの助」
「は、ははー」
言いたかった事を全て飲み込んで、一旦ノリに付き合う。
「それよりも良かったんですか?着いて来ちゃって。私がいるとは言え、絶対に安全とは限らないんですよ?」
「俺にはモッピーがいるからな。自分の身の心配でもしてた方が建設的だぞ?」
「そ、そんなに強い使い魔だったんですね!でも、自分より強い悪魔は契約できないはずですよね?」
「モッピー知ってるよ。ガイアの超技術だと思って納得するのが一番だって事」
「あ、ははは……」
苦笑いしていたアティだったが目印を見つけてスッと目つきが変わる。
「ここから先は緩衝地帯になります」
「かんしょー地帯?」
「はいっ」
スチャッと、どこからか出した眼鏡をかけて心なしか嬉しそうに答える。
「シェルターの付近は大きく三つのエリアに分けられます。まずは私たちが普段住んでいる外壁に囲まれたエリアとその周囲の生活圏、これから入る緩衝地帯、そして結界が全く届かない魔界です」
「ほーん。安全圏から出るってわけだな?」
「はい。正確には安全圏ではありませんが……」
「……ん?」
「生活圏と、緩衝地帯の一部は悪魔が湧かないだけで、侵入が不可能ってわけじゃないんですよ。だからほらっ」
スッと外壁に向けて指を指す。
「あそこ、破損してますよね?」
「焦げたりへこんだりしてるな。悪魔の仕業か?」
「そ、そうです。だからこうやって巡回して悪魔を倒す必要があるんですよ」
嘘ではないが正確でもない。空飛ぶ悪魔を撃ち落とすために放った魔法によって出来た傷もあり、中にはアティがつけた傷もある。ただチリトリは納得しているようなので言わぬが花だろう。
「それじゃあ、行きましょうか」
そう言って腰に下げていた剣を右手で抜いて臨戦体制を取る。
どうやらガイア連合製の剣ではないようだ。何度も打ち直し補強し、改良されて来たのだろう。剣なんてものを打ったことがないであろう鍛冶屋が、終末に入る前後から試行錯誤して作ったのが見て取れる。
「エネミー・ソナー、オン!」
さらに右腕にセットしてあったスマホをフリーの左手で操作して、アプリを起動させる。
原作ではアームターミナルは左手に付けて右手で操作していたが、剣を常に右手で持つなら左手で操作するスタイルになってもおかしくはない。左右のバランスは悪いだろうが……。
ピコーン
少し進むとエネミー・ソナーが反応して、瓦礫の影から悪魔がその姿を現す。
ゾンビ が 2 たい でた!
「あ〜」
「う〜」
「はぁっ!」
アティが一瞬で間合いを詰めて、反撃を許さない速度でゾンビをMAGに帰す。
近づいてきた獲物に反応したもう一体がのろのろと襲いかかるが、するりとかわして肉を断ち切る。ずるりと崩れるように半身が地面に落ちる。
無くしたパーツを追い求めるようにもう半身も地面に倒れ、死体はあるべき姿に戻った。
「さぁ、行きましょうか?」
目視で周囲を確認し、スマホにも目を向けてから振り返って笑顔で言う。
「おおー」
チリトリは雑な拍手をしながら偉そうに歩み始める。
「モッピー知ってるよ。あれどう見ても武術かじってた動きだって事」
「んぉ?そうか?」
「そうだよ。それを悪魔狩りのために独学で効率化したっぽい」
「へぇー」
「しかも剣に気を遣って戦う余裕まであるね。歪んだり欠けたりしないような切り方だよ」
「そっかー、じゃあ……」
「人殺しも得意そうだな」
「人殺しも得意そうだね」
「だよな!」
「うん。シェルターの未覚醒者だけなら皆殺しに一日いらないんじゃないかな!」
「ひゃーコワーイ。シェルターの奴らがいい子ちゃんなふりをするわけだ」
「そ、そんなことはないですよ!?それにみんな本当にいい人なんです。
「どうだか?人間なんて他人を利用することしか考えてないだろ?」
冷静を装っているがその奥には確かな怒気を孕んだ声だった。
「その言い方はよくありませんよ?長所を生かしてお互いに助け合っているんです」
「きれいごとだな。明らかに
「それ、はそうですが……」
「アンタが一番影響力があるんじゃないか?だからいい子にしてアンタを最大限に利用してる。違うか?」
「……そうかもしれません。でも……」
後に続く言葉は語られず、アティは悲痛な面持ちで反論を探す。
言っていることの本質に大きな違いはないはずにも関わらず、ここまで悪意を持った言い回しをする相手と話す経験がアティには少なかった。先輩教師たちならそんな経験もあったかもしれないが、初めて会った『人間の善性を真っ向から否定する思想』に深い悲しみを抱いていた。
対するチリトリも持論で他人を打ち負かしたことに気分を良くしている風ではなかった。
アティは前を向いていて見えなかっただろうが、彼女と同等かそれ以上の苦し気な面持ちで男は呪いを吐いていた。
そんな主人の様子を見かねたシキガミが横から口を挟む。
「モッピー知ってるよ。人間は利用し合う物だって事。そこのセンセイは住民を守って、住民はモラルを守る。これは契約なんだよ」
「……ん?契約にしちゃ釣り合いが取れてないんじゃないか?片方がかけてるのは命だぞ?」
「その分税金からお給金が出てるだろうし、ルール違反者には追放もある。そして何より住民全員がいい子ちゃんの方が統治がしやすいんだよ。多少損してる様に見えても、たとえふりだとしてもね」
「んー?あー……。いう事聞かないやつを減らすって事?」
「そーゆー事!ついでにいい子ちゃんにさせる為の努力は普通なら町全体でするはずだから個人の負荷はそこまででもないと思うよ。
(あっ……)
「あ゛っ!?……あー、そう……だな。一人ってわけじゃないもんな……」
「ご主人の事は独占しようとしてるけどね」
「……あの先生の長所なんだろ?長所を生かした仕事で互いに助け合うらしいからな」
「っ!?ちちち、違います!私はそんなふしだらじゃありません!!どちらかというとその、あんまり経験が……」
ピコーン
「悪魔が出たぞー」
「いやーん。モッピーこわ〜い」
唐突にエネミー・ソナーが反応して、その音を聞いた二人が囃し立てる。
一瞬にして警戒心を高めたアティの前に姿を現したのは。
「はぁい」
ピクシー が 2 たい でた!
蝶のような羽が背に生えた、小人の少女だった。
「あ、ピクシーさん!こんにちわ」
「せんせーと…お友だち?」
「お人形さんじゃなぁい?」
「うーっす。モッピーはモッピーだぜェ!ヨロシクゥ」
「ヨロシクゥ!」
小柄な2人はハイタッチを交わす。
「俺らはただの見学だから気にしなくていいぞ」
後方で腕を組んだチリトリは仏頂面でいう。
「おじさんつまんなーい」
「まぁまぁ、それより森の様子はどうですか?」
「いつもといっしょだよ」
「え~っ?ヘンな鳥の声がおくのほうから聞こえてなかった?」
「そうだっけ?……あっ、思い出した!すっごいおくのほうから聞こえたってうわさでしょ?」
「そう!きっとこわいアクマだよ!私たち食べられちゃうんだよ」
「えーっ!?せんせーたすけて~!」
「えっ!?まだ危険な悪魔かどうかは分からないじゃないですか。もしかしたらお友達になれるかもしれませんよ?」
「友だち…?強いアクマと…っ!」
「でも、なれなかったら…?」
「その時は先生に任せてくださいよ!」
ピクシーたちを安心させるように自信たっぷりに答える。
「やったー!せんせーかっこいい!」
「えっと情報は鳴き声だけですか?」
「うん。それもうわさだけなんだ」
「そうなんですね。ほかに変わったことはなかったですか?」
「ちょっと木がざわざわしてるっぽい?」
「木が、ですか?今度調べてみますね」
本当は今すぐにでも調べに行きたかったが、連れの存在と準備不足が彼女を押しとどめた。
森に入るには数日かけて休息を取り体力気力ともに満タンにし、装備の点検をくまなくし、事務所に連絡を入れておく事にしていた。この世界において、いくら念を入れても入れすぎということはない。
「うーん。森はそんなカンジかな」
「ありがとうございます。お礼にいつものをどうぞ」
アイテムポーチから500mlほどの大きさのビンを取り出す。中には小指の爪ほどの大きさをした黄金色の平たい円柱がぎしっりと詰まっていた。
「わぁ!ありがとうせんせーっ!」
「これならみんなで分けれるよっ」
「ふふっ。喜んでもらえてうれしいです」
「はいこれっ、こーかん!」
ピクシーは同サイズのビンを取り出すとアティに手渡す。ちゃぷりと、粘着性のある黄金の液体がビンの中で揺らめく。
「はい。ではまた来週」
「じゃーねー」
「ばいばーい!」
妖精は別れの挨拶をすますと、ふわりと飛んで消えていった。
「ハチミツか?」
後ろでやり取りを見ていたチリトリが、歩き始めたアティにたずねる。
「ええ。情報とハチミツの代わりに、ハチミツ飴を渡してるんです」
「ふーん?」
「液体だと等分するのが難しいらしくて、飴にしたらとっても喜んでくれるんですよ」
「アンタが作ってるのか?」
「いえ。職人さんに素材とお金を渡して作ってもらってます」
「ご主人。このセンセイ多分料理ヘタっぴだよw」
「そ、そそんなことはありませんよ!」
「ぷぷーっ。モッピー知ってるよ。その動揺の仕方は認めたのと同じだって事」
「……自炊くらいはちゃんとしてますよっ」
「メイドを別に雇っといて正解だったね」
「ああ。そもそも期待してないからな」
「チリトリさん?さすがにそれはちょっと失礼じゃありませんか?」
「モッピー知ってるよ。長所を生かして助け合うってセンセイが言った事。ご主人は特別なゲストなんだから一番家事ができる子がお世話するのが当然でしょw」
「えっ!?」
予想外の返事に驚きの声が出る。
「も・し・か・し・て♡お世話もしたかった〜?」
リズムに合わせてアティの周りを飛び跳ねながら言う。
「……」
「モッピー、その質問に勢いで『はい』って言われても俺困るんだが?」
返答に困っていたアティの代わりにチリトリが答える。
「それもそっかー。モッピーソーリー、今の質問ナシで!」
「えっ、はい。ありがとうございます?」
「じゃあ次の質問は〜」
出発してから約2時間後、ようやく森の入り口に到着した。
「木、調べんの?」
「いえ。今日はいつも通り見回りだけにします」
「ほーん」
「今日はいつも通りここから森に沿って1時間歩いて、また2時間かけて帰ります」
「この辺りは上から見るとシェルターをぐるーっと囲むようにこの森になったんですよ」
「モッピー知ってるよ。その考えは逆だって事。この辺りはもともと森で、結界があるからシェルター周りだけはそのままの形を保てたんだよ」
「ふーん?じゃあカンショー地帯ってのは?」
「結界の力が足りなくて壊れてしまった町だと考えられています」
「そそ。でも、一応広い方の結界があるから森に飲まれなかったエリアだね」
「じゃ、あのガレキは街の残骸か!」
「はい。使える物が見つかることもあるのでデビルバスターの仕事場にもなってるんですよ」
「邪魔なゴミ山かと思ったが宝もあると」
「その通りです。でも悪魔から奇襲を受ける原因にもなっているので、シェルター周りから少しずつ撤去しているのですが……」
「ですが?」
「不思議なことに時間が経つと新しい残骸が現れるんですよね」
「魔界だねー」
「魔界だなー」
ピコーン
「悪魔だねー」
「だなー」
「っ!数が多い!来てっザントマン!」
アティは悪魔と遭遇する前に素早くCOMPを操作して、仲魔を召喚する。
現れたのは銀色の三日月のような頭部に、真っ赤な体を持ち大きな袋を背負った人型の悪魔だった。
「ふぉっふぉっふぉっ、戦闘じゃな?……おや?はじめましての人間かの」
「そうだな」
「うーっす。モッピーはモッピーだよ。ヨロシク」
「来るぞ」
森から飛び出してきたのは8体の悪魔だ。たまたま居合わせたから同時に襲っているだけなのか、複数の種類が雑多に混じっている。
先手を仕掛けたのはアティが召喚したザントマンだった。
数歩前に出て先頭に立つと、
「【放電】じゃ」
ポージングと共に全身から雷が迸った。放たれた電撃は不規則な軌道を描いて悪魔たちに向かっていく。その予測不可能な動きはまんべんなく全ての敵にダメージを与えるわけではなく、運のいいやつには当たらず悪い奴にはフェイントを交えて2度3度と命中した。
「続きます!【アギ】」
アティの放った魔法の火球は、ザントマンの電撃で弱っていた
悪魔の群れ残り7体。
魔法を使えるものは各々得意な魔法で攻撃し、使えないものは全速力で距離を縮めてきた。
氷結は受け流し、火炎は避け、衝撃と電撃には耐えた。アティのレベルと戦闘経験、正面からの直線攻撃が重なったからこそできた妙技だった。ザントマンは軽く被弾したし、チリトリはモッピーでガードした。
【放電】
再びザントマンによる電撃攻撃。先頭を走っていた四つ足の悪魔をマグに返す。だが、2番手で走っていた悪魔は電撃が効きにくいようでそのまま突っ込んで来る。
しかし電撃を囮にして接近していたアティに不意を突かれて斬り伏せられる。
悪魔の群れ残り5体。
仔牛ほどの大きさで燃えるような赤い体躯の犬型の悪魔がアティに飛びかった。
先ほどの攻撃でまだ体勢が整っていなかったアティは退くか攻めるかの選択に迫られる。
あえて低く、転ぶようにバランスを崩しながらも下から魔獣の腹部に切っ先を突き上げる。悪魔自身の体重も加わった一撃だったが、加速が足りなかったため硬い毛皮を貫き通すことはできなかった。しかし剣先はしっかりと魔獣の腹部に食い込んでおり、抜くことも振り払うことも容易ではない。
剣越しに覆いかぶさる魔獣が前足を大きく振りかぶり、その後方にいる悪魔たちも倒れたアティめがけて魔法を放つ。
(剣を捨てて避けるべき。ですがそれだと次が苦しいですね……)
一瞬だけ思案して、アティは剣を離して魔獣にタックルした。体重を剣に預けていた魔獣は後ろによろめき、懐に潜り込んだことで爪の攻撃は空振りする。しかしゼロ距離というのは魔獣の武器が最も生きる範囲でもある。ずらりと鋭い牙が並んだ口を大きく開けてアティに食らいつこうとする。
今まさにアティの頭に牙が突き刺さるその瞬間、魔獣の背中に三種類の魔法が着弾した。思わずのけぞった魔獣の隙をついて剣を引き抜く。振り返った勢いそのままに魔獣の首をはねる。
「あっ!?」
そんな攻防の横をすり抜けて一体の悪魔がチリトリの方に二足歩行で走る。それに合わせてモッピーも駆け寄り、驚異のジャンプ力で身長の4~5倍程ある悪魔の顔と同じ高さまで飛び上がる。
「モッピー百裂拳!*1」
愚者には腕が増えて見えるほどの速度でパンチを繰り出す。もちろん相手は死ぬ。
「モッピーいいぞー!MAGになるとき爆発して見えるのがグッド!」
「プププっ。楽勝だよ~っ!」
チリトリがモッピーとハイタッチして顔を上げると、後ろから魔法を撃っていた悪魔をザントマンがその大きな袋で殴っているのが見えた。アティもすぐに走って追いつき接近戦があまり得意ではなさそうな悪魔たちを蹂躙していた。
「あのアティって女多分天才だね。剣術も魔法も使えてサマナーの技能もある。Rは確定で、レベル上限次第ではSRってとこじゃないかな?」
「そうか。それ俺になんか関係あるか?」
「ないねw。あ、終わりそうだよ」
最後の悪魔を倒しおわったアティがザントマンをCOMPに帰して、近づいてくる。
「すみません。1体、モッピーさんに相手してもらっちゃって……」
「モッピー知ってるよ。『護衛任務もバッチリ』って言ってた事」
「うっ……」
「ププっ。あんな自信満々だったのにね?恥ずかしいね」
「すみません。少し慢心してました」
「はぁっ。やっぱりモブはだめだね。ご主人にはモッピーが付いてないと」
「そうだな。俺にはモッピーがいないとダメだな」
「ププププっ!ほらとっとと案内してよセンセイ?」
「はいぃ」
アティ先生は性経験に乏しい事にしました。
ユニコーンのみんなには処女のほうがいいと思うけど、この時代に美女がいい年こいて処女なのは理由がいる気がするので濁して書きます。(過激派がいたら明確に処女になったりならなかったりします)
隠れビッチアティ先生はお休みです。
高校の時初恋の相手としっかり盛ってたとか、大学でヤリサーに入っちゃったとか、実は先輩に仕込まれてたとか、生徒食ってたとかの設定はなしです。
でもまだ