※この作品はR-18です。

【カオ転三次】癖に生きる俺らと割を食うシキガミ・現地民   作:アレデルトロン

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この話に含まれる要素:キャラ崩壊、掲示板描写なし







25.モッピーと主人⑤~当然のおせっかいで全てがダメになる~

数日後、3人は森の調査に来ていた。

 

「確かに少し森がザワザワしてますね」

森に入って1、2分でアティがそう呟く。その声は外から見た以上に高い木々に吸い込まれていった。

 

「……」

 

「モッピー知ってるよ。今日はエネミーサーチの範囲を最小にして目視確認した方が良いって事」

 

「えっ?どうしてですか?」

 

「センセイの持ってる粗悪品だと悪魔にバレちゃうから。最悪全方位から囲まれて、戦闘音で援軍が来てってなりかねないよ」

 

「……。分かりました。モッピーさんを信じます」

 

「仲魔も全部召喚しとけ」

 

「はい。ザントマン召喚」

 

「ふぉっふぉっふぉっ」

 

 

ザントマンを先頭にして一行は森の中を慎重に進んでいく。

 

「静か、ですね」

 

「そうじゃな。こんなに森がざわついとるのにおかしなくらいに悪魔が出ないもんじゃな」

 

「……何か聞こえませんか?」

耳をすますと奇声のような音が森にこだまして多方向から聞こえる。

その音はみるみる内に大きくなり、発生源が近いてきているようだった。

 

「隠れろ」

チリトリが素早く指示を飛ばし、全員がやぶに隠れる。

 

バサリッ――バサリッ――。

大きな羽音と共に現れたのは、黄色い体毛を生やした女の上半身に、腕は紫色の翼、両脚は鋭い鉤爪と、鳥と人間を融合したような悪魔だった。

 

「ハーピー?…いえ、ハーピーはレベル30前後の悪魔。あんな凶悪な雰囲気はしていなかったはずです」

 

「アナライズするなら、名前とレベルぐらいでやめといた方がいーよ?」

 

「えっ?はい【アナライズ】」

アティがCOMPの機能を使って悪魔の情報を読み取る。

 

少し離れた場所で高い木の枝に止まって周囲を観察していた悪魔は、何かを感じ取ったのかキョロキョロと辺りを見渡してから飛び立つ。ただこちらの正確な位置を掴んだわけではないようで、警戒しながら上空を飛び回る。

 

「妖鳥アエロー。レベル……85っ!?」

この辺りで最強クラスのアティでもレベル57で、今まで見た悪魔の中で最高値はレベル65だった。その相手もアティを含めた複数人で何とか撃退に成功した。それが今回はレベル85相手に、57のアティと38のチリトリ、小柄なモッピーとザントマンだけだ。

 

(勝て、ません……。モッピーさんの戦闘力は未知数ですが、とても勝てるようには……)

 

「撤退しましょう」

勝ち目なしと判断したアティが告げる。ここまで接近を許して逃げられるかは不明だが、玉砕よりはマシだと考えてのことだった。

こんな怪物が近くの森にいるのは恐怖でしかないが、ここはシェルターにある結界の力を信じるしかない。

 

「え?放っておいても良い事ないだろ?俺らでやる。アティ先生は先に帰ってな」

 

「何を言ってるんですか?そんな事させませんよ!」

声を荒げてアティは制する。確かに二人が殿を務めてくれればアティは無事に帰れるかもしれない。だが仲間を身代わりに生き延びることなど彼女は出来なかった。

 

「え?……なんで?」

アティの悲痛な表情とは対照的にチリトリはとぼけた様子でそう返す。

 

「何でって、相手は85レベルの怪物ですよ。太刀打ちなんか出来るわけ無いじゃないですか!」

 

「あ?……あー」

 

「モッピー知ってるよ。モブどもはDレベルとかいう非公式単位を使ってるって事」

 

「へっ?」

 

「Dレベル?なんだそりゃ?」

チリトリも当然知っているが、ここは聞きに徹する。

 

「Dレベル、正式名称デモニカスタンダードレベル。デモニカの上限、30レベルをレベル100として細分化し直した単位の事だよ」

 

「ほーん。雑魚用の物差しってわけね。ちなみに俺はDだと何レベルになる?」

 

「モッピー知ってるよ。ご主人はDレベル換算だと120越えになるって事」

 

「ひゃ、120……!?」

 

「なんか強くなった気分だわーw」

 

「ブラックカード持ちだと200とか250とか結構居るだろうけどね!」

 

「なんか遠くなったように感じるわーw」

 

「い、今までのは……ひっ、あっ?」

 

「どうやら認識に食い違いがあったみたいだわ。……ちなみに俺の子もそのくらいの才能になるから」

 

「ご主人の言った通り、ザコは全速力で帰るのをオススメするよ」

 

そこまで言ってチリトリの姿がかき消えた。

 

【スクカジャオート】

 

アティが次に彼を目にしたのは、アエローの真上に姿を現した時だった。速度重視で育ってしまった脚力を活かして、木を蹴り上げて上へ上へと移動したのだった。

しかし、8(・)5(・)レ(・)ベ(・)ル(・)の怪物がそれに気づかないはずもなく、身を翻して鋭い鉤爪で迎撃を試みる。奇襲は失敗だか、それでもチリトリの方がわずかに早く、アエローに蹴りを叩きこむ。

 

【ガルーラ】

 

よろめく鳥人に追い打ちをかけるように風の塊を叩きつける。上空からそんなものを食らったアエローは羽を撒き散らかしながら地面に落ちる。

 

「口で焚き付けるのは得意なんだっ【ファイアブレス】」

モッピーが口から燃え盛る炎を吐きながら頭を振る。見ている目が焼きつくような眩い光はその温度が超高温であることを物語っていた。

 

(すごい……。あんな火力、とても私には……)

 

「2回ヒットってとこかな?ミスっちった……」

 

「ギィェェエエエエ!!」

とても人型の頭部から出たとは思えないような、叫び声が森の中に響き渡る。

 

「きゃあっ!」

アティは反射的に、うずくまって耳を塞ぐ。手で塞いでも頭がガンガンするような音は防ぎきれず、思いっきり顔をしかめる。

 

「うっさい!」

 

モッピーが殴り、上から落ちてきたチリトリが踏みつけてようやく悪魔は光の粒になって消えていった。

 

「あちゃー、ダメだったね」

 

「やっぱなまったか?火力足んないな」

 

「い、今のでですか!?」

 

「チッ。まだ居たのか」

 

「ププっ、ブラックカードとシキガミのコンビネーションがこの程度のわけないじゃん」

 

「ぶ、ブラック、カード!?えっ?貧困シェルターを立て直すためにガイア連合から派遣されたゴールドカード社員じゃなかったんですか!?」

 

「プププっ!ご主人、ブラックカードに強い使い魔もらっただけの雑魚に見えたって言われてるよ」

 

「合ってるだろ?」

ブラックカード(ショタおじ)に強い使い魔(シキガミ)もらっただけの雑魚(38レベル)。

 

「今はそうかもね」

 

「あー。ザントマン、アティを守れ!アティ、防げると思うな。生き残ることだけ考えろ」

 

「メインディッシュが来るよ。離れすぎたら死ぬからねー」

 

「えっ?今倒しましたよね」

そんなアティの疑問をかき消すように力強い羽ばたきの音が近づいてくる。

 

 

アエロー が 5 体 あらわれた!

 

「3体かな?」

 

「向こうじゃそうだったが、4体トリガーもあり得るぞ」

 

「銃持ってくりゃ良かったね」

 

「そうだな」

 

「緊縛ナパーム*1は?」

 

「一つ。けど痛えし高いから使いたくないな」

ゴソゴソとバックを漁って再確認する。

 

的確に情報交換をしている二人だが、実はアエローという悪魔はチリトリたちにとって馴染み深い相手だった。【仲間を呼ぶ】スキルと銃属性弱点を持つため、優位地形に誘い込めば動かずに安定して稼ぎができ、山梨の修練用異界でよくお世話になっていたのだった。

 

「おっけー【ラクカジャ】」

まだ接近するまでに距離があるので先に補助魔法で防御力を高めておく。この効果の有無は、時に生存に直結する。

 

「一当てしてくる」

一瞬でマックススピードまで加速したチリトリは単騎で悪魔の元に向かう。

 

【マハガルーラ】

 

先ほども撃った、小さく圧縮した暴風を今度は敵全体に向けて放つ。正面からとはいえ、それは飛んでる相手のバランスを崩して足止めをするには最適だった。

しかしおとなしく体勢を立て直すほどアエローは優しくない。

 

【ザン】【ザン】【ザン】

 

小さな衝撃波を放つ魔法を次々と唱える。その魔法は恐ろしいほどのスピードで飛んで来るが、距離があるためチリトリの速度であれば回避は不可能ではない。

だが、チリトリはただ足が速いだけで、ペルソナ使いのような高速移動ができるわけではない。

 

【ザン】

 

だからこそ、連続攻撃をされると回避が追いつかなくなる。

 

「クソっ」

ジグザグに避けていた時、チリトリの後ろ足に魔法が命中した。思わずバランスを崩して転がる。

そこに、あえて落下するようにして体勢を立て直しながら低空飛行で急接近してきたアエローの凶爪が迫る。

 

「ぐがぁっ!」

深々と爪が突き刺さったまま上空に持ち上げられる。

グパリ――。

アエローの口が大きく開いて、乱雑に生えた鋭利な犬歯でチリトリの肩に喰らいつく。

 

「痛ぇっ!」

もしペルソナ使いだったら、肩ごと食いちぎられていただろう。もし、デビルシフターだったら頑丈な皮膚でガードが出来たかもしれない。

そのどちらでもなく、ただの魔特化異能者だったチリトリは片腕が使用不可になりながらも何とか耐える。

 

「ギャッギャッギャッ!」

チリトリを掴んだアエローが楽しそうに笑い、後方の仲間にチリトリをパスする。集団で少しずつ痛めつけて、ジワジワと殺す遊びだろうか?それとも一番大きな声を出させたものが勝ちと言ったようなルールがあるのかも知れない。

チリトリはそんな遊びに付き合う気は毛頭なかった。

 

【マハガルーラ】

 

次のアエローがキャッチしようとするその瞬間、魔法を放つと、発生した爆風を使って自ら飛ばされる。肩の痛みから着地に失敗しつつも、何とか後方に下がる事に成功する。

 

【メディラマ】

 

モッピーが駆け寄りながらMP通常使用範囲内に入った瞬間にすかさず回復魔法を唱える。それによりチリトリの傷が瞬く間に修復される。

一定以上対象が離れれば離れているほど、消費MPを多めに消費して効果を補う事になる。連戦が想定される場合はガス欠を避けるために、魔法と効果対象の距離を考慮するのは必須級のテクニックだ。

 

【ザン】【ザン】【ザン】【ザン】【ザン】

 

逆にいえば、威力とMP効率を考えなければ魔法の効果範囲を無理やり広げることもできる。

多少威力の弱まった衝撃波をチリトリは背後を気にしながら受け止める。10以上レベルが離れているとはいえ、先ほどのダメージから分かる通りチリトリの耐久力はたかが知れている。

されど彼は退かず、苦とする様子も見せない。

このチリトリと言う男、他人の盾となりながら戦う事には慣れていた。しかしその経験のせいでこんなへんぴなシェルターに来る事になったのも事実だった。

 

【マハジオンガ】

 

モッピーが放った雷が敵を貫き焼き焦がす。

 

「ちぇっ。感電はなしかぁ」

 

【羽ばたき】【羽ばたき】【羽ばたき】

 

アエローが翼を強く羽ばたかせることで、いくつもの衝撃波をばら撒く。斜め上空よりランダムに放たれたそれを、チリトリとモッピーだけでは捌き切ることも受け切ることもできず、ザントマンもアティの盾としてその役目を果たす事になる。

しかし、その全てをさばき切ることはできずアティの腕を衝撃波が掠める。

 

「きゃっ!???」

 

勢いよく腕が後方に弾け飛んで肩が脱臼する。が、驚きの主因はそこではない。激痛である。

悪魔とは情報生命体であり、当然魔法も情報の塊だ。レベルが上がれば上がるほどその情報量も増加していく。

初めて受ける一回り格上からの魔法攻撃は、痛みという情報が大量に詰まっていた。その明らかにキャパシティを超えるデータは神経を焦がしながら脊髄へと到達し、脳を激しく揺さぶる。体は激しい耳鳴りで聴覚情報を遮断して、視覚情報もピントをずらすことで入ってくる情報量を制御しようとする。

 

「ぐぅっ!……ふぅーっ!」

 

歯を食いしばって深く息を吐く。奇しくも、強い衝撃を受けとめるために最近獲得した技術が役に立った。

 

【マハガルーラ】

 

アティが痛みに衝撃を受けている時、チリトリは再度魔法を放っていた。

しかし3度目も同じ攻撃をしていれば流石に見切られる。攻撃をせずにチリトリの動きを観察していたアエローの1体がふわりと上昇した後に急降下することで疾風の直撃を免れる。

ギロリッと悪魔の視線が、チリトリたちの後方で痛みに耐えているアティに向く。口が裂けて見えるほど口角をあげながら、一直線に獲物に向かって飛びかかる。それは狩人としての本能か、魔法の盾にしようという打算か。速度を見れば前者なのは明確だった。MAGを含んだ肉体は恐怖や苦痛も相まって良いエサになる。

チリトリは魔法発動直後で、モッピーは距離が離れすぎ、ザントマンは満身創痍で消えてないのが不思議なほどだ。もはや壁はなし。風圧に違和感を感じたアティが痛みを堪えて目を開けた先にいたのは、視界いっぱいに迫る凶悪な笑みを浮かべたアエローとその鋭い爪だった。

 

刹那――。

血飛沫が舞い、臓物が飛び散った。

 

「っ!……」

 

目を見開いた血塗れのアティの前には、チリトリが立っていた。

 

魔法を使ったばかりだ。だからどうした。

距離が離れている。それがなんだ。

 

人々の盾となりながら悪魔を屠ること数年。最後の数ヶ月は不眠不休で人々を守り続けた男が、とっさに他人を【かばう】ことの障害にはなり得ない。

 

「ごぼっ……」

 

粘度が高い血液を口から吐き出す。一息つけたのもその一瞬だけで、思ってもみない獲物に歓喜するアエローに連れさらわれて空へと舞う。

チリトリを掴んだアエローはどんどん高度を増して仲間たちの元へと飛ぶ。

 

「死ね」

 

小さく呟いたチリトリは、戦闘が始まった時からずっと持ち続けていたアイテムを決死の力で投げる。

 

【緊縛ナパーム】

 

アティたちのはるか上空で爆発が起こる。爆音のみならず爆風まで地上に届いたと言えば、威力の高さがわかるだろうか。

チリトリが使ったのは、緊縛ナパーム。数少ない神経属性の攻撃ができるアイテムだ。

弱点属性の爆風を喰らって、あるアエローは弾け飛び、またあるアエローはBIND*2状態に陥った。運良くなんの状態異常にもならなかった個体も、【WEAK】を突かれた反動で飛ぶことができなくなり、落下していく。

 

「チリトリさんっ!?」

 

アエローより空気抵抗の小さいチリトリは、真っ先に下へと落ちてきた。爆風によって、穴が空いた腹部より下が千切れ、ナパームを投げた右手も同様にズタズタ。全身が焼けただれて、いつもの様子は見る影も無くなっていた。

 

「ぁ!」

アティはあまりの衝撃に声が喉でつっかえてしまう。だが、なんとか受け止めようと地面を蹴り出す。

 

「座って待ってなよ【メディラマ】」

 

パチリと目を開いたチリトリの肉体がみるみるうちに再生して着地する。だか、回復量が足りなかったのか右手はそのままだった。

 

「えっ!?死んじゃって……えっ!?」

 

【マハガルーラ】

トドメの一撃を残ったアエローたちに叩き込む。

 

「ご主人おっ疲れー!」

 

「おうっ。銃ないとやっぱキツイな」

 

「今回だいぶ無茶したね【メディラマ】」

 

「はははっ、まだ地返しの玉*3あるだろ?」

 

「チリトリさんっ!」

 

その声に反応して談笑していたチリトリが振り返る。

 

「あの、良かった……。ありがとうございます」

安堵からか力無くへたり込み、涙で瞳を潤ませながら、上目遣いで見つめるアティと目が合った。

 

ありがとうございます

 

「うっ」

 

チリトリはその姿を見て、

 

…ダテン様!ありがとうございます。

 

「うわぁあああああ!」

町の方へと逃げ出した。

 

「あっ!センセイも頑張って帰って来てね」

それだけ言い残すとシキガミも主人の後を追った。

 

 

 

*1:
緊縛ナパーム:HPが50%以上残っている場合のみ使用可能。周囲の敵に神経属性の小ダメージ+吹き飛ばし+緊縛の状態変化。使用するとHPの最大値の半分が失われる。(出典:真・女神転生IMAGINE)

*2:
BIND:金縛りの状態で動けなくなる。

*3:
地返しの玉:味方1体の戦闘不能状態をHP50%で回復




キャラ崩壊①アティ(サモンナイト3):
GP上昇と共にレベルを上げていき、結界内の悪魔を安定して倒せるようになったので、打ち止めになってる可能性もあります。
いくらでも強い相手が出る修練用異界を、つよつよアイテムで攻略してきたわけじゃないからね。レベルが上がらないのも仕方ないね。


戦闘に解説入れると文字数稼げるんだけどスピード感落ちちゃうなぁ・・・

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