【カオ転三次】癖に生きる俺らと割を食うシキガミ・現地民 作:アレデルトロン
人によっては苦行かも……。
数日後――。
ついにこの日がやって来た!ツーとのデートの日だ!
昨日は、ダンジョン上がりの日課だった両瀬との話もそこそこに切り上げて早めに寝た。体調は万全だ。
デートコースは遊園地だ。電車に乗って隣町の遊園地に行く。お昼を食べれるところも中にあるらしいから、今日はめいっぱい遊ぶぞ!よし、準備は万端だ!
集合場所の駅前、ツーの姿はすぐに分かった。キャップをかぶっていてもオーラが全然違う。服装はシンプルなズボンとシャツの組み合わせなのにおしゃれに見える。
「あ、明人…!おはよう」
そんなツーが俺に向かって手を振る。彼女を見ていた男たちの視線がこちらに向く。その疑問と嫉妬が入り混じった顔に一瞬気圧されるが、手を振り返す。
「おはよう。ツー」
「うん。それで今日はどこに行くのかな…?」
「隣町の遊園地に行こうと思ってる。ツーは遊園地好き?」
「うん。ぼく遊園地好き」
「そっか。俺も好きなんだ」
電車に乗り込み席に座る。ツーはしばらく車内の広告や外の景色を興味深そうに眺めていた。
「なぁツー?」
「……ん?…何かな?」
「ツーが好きなものってなに?」
「正義と勇気と…先生」
先生……。二瓶のことだろうか?胸がギュッと締め付けられる。どうしてあんな男のことが好きなんだろうか?
「あと美味しいものと…楽しいことと……学校のみんなも好き。静佳も明人も…離れちゃったけど美智も和香子も輝美も道夫もみんな好き。……前の学校の子たちも」
俺の名前も出た。今日精いっぱい楽しくておいしければ……チャンスはある!
「そっか。ツーは好きなものがいっぱいだな」
「うんっ!」
そのツーの満面の笑みに俺は満たされるような気がした。
「着いたーっ!」
「よーしツー!ジェットコースター行こうぜっ!」
もたもたしていると全然回れなくなるからな。俺は駆け足でツーを先導した。
「あ…うんっ!」
スピードが足りなかったのか、すでにジェットコースターには列ができていた。この様子だと結構待ちそうだな。
……どうする?乗れそうなのから行ったほうがいいか?
「ここは待ちそうだし他のところからいかないか?」
「うーん……。そうだね。そうしよう」
こうして俺たちは園内をぶらつくことになった。
「おっ、ここ列少ないぞ」
「お化け、屋敷……。ぼくはいいけど、明人は怖がり?」
「ば、そんなわけないだろ!行こうぜ」
「ぶばぁあああああ!!」
「うわっ!」
背後からの奇襲に対して、俺は一歩ステップを踏んで距離をとる。そのまま身をひるがえしてファイティングポーズをとった。
「明人、殴っちゃ駄目だよ?」
「つい癖で、ごめん」
ダンジョンと似たような暗さについ体が反応してしまった。
けど、我ながら華麗なステップだったと思う。なんせ俺は実戦で鍛え抜かれているからな。
お化け屋敷の中はずっとそんな感じだった。俺は臨戦態勢で、ツーは怖がる様子もなくたまにこちらをチラ見しながら観光してた。
「いやー全然怖くなかったな!」
「明人結構びっくりしてなかった?」
「ビビッてねえしっ!臨戦態勢だっただけだから!」
「?」
「それより次のアトラクション行こうぜ!」
その次に選んだのは垂直に上昇してから急降下する奴だった。ちょっと待つことになったけど、ほかの列に比べたら少ないほうだ。
「最初は結構ゆっくりなんだな」
「そうだね」
「結構高くまで来たな」
「高いね」
「下見るとちょっと怖いなぁあああああああっ!?」
「ぅわーっ!」
地上に降り立った俺はふらふら。ツーはニコニコだった。楽しんでもらえたみたいだ。
次に選んだのは、最初のとは別のジェットコースターだった。
ラッキー!ここだけやけに人が少ない。ほかの客は昼飯だろうか?
「ツーここどうだ?」
「うんっ。行こう!」
……ラストで水場にダイブ。二人ともびっしょびしょになりました。
てか濡れたツー、えっろっ!透けてないけど、体にぴったりと張り付いてスタイルの良さが、胸の大きさが強調されている!これは犯罪的だぞ!?
「そろそろお昼だねっ」
「ああ。確かレストランがあったはず……あっ!」
俺らびしょ濡れなんだが!?この状態で飲食店って入っていいのか?
道理で人が誰も並んでないはずだよっ!どうする俺!
「ツー。俺はひらめいてしまった…」
「えっ?何かなっ!?」
「…昼飯をずらせば並ばないで遊べるんじゃないか?」
並ばず遊びつつ、服も乾かせる。一石二鳥の完璧な作戦だ。
「そうだね!じゃあ次はどこに行こうか?」
「じゃあ次はアレにしよう」
そうしてやってきましたバイキング。
見た目は船型の巨大なブランコみたいなやつだ。あれだけ左右に大きく振れれば、風で水気が吹き飛ぶはず。
「へー…くっしゅん!」
濡れた体で風に当たればくしゃみくらい出る。うかつだったかもしれない。
「明人、大丈夫?」
「ん?ああ、もちろん!次はどこ行く?」
その後も何種類かアトラクションを楽しみ、少し遅めの昼食をとった。
ツーはオムライスをおいしそうに食べてた。本当に幸せそうに食べるから見ててつい笑顔になってしまった。
あ、一応おごったぞ?ツーがバイトしてるなんて話聞いてないし、たぶん俺のほうが稼いでるからな。この程度どうってことないぜ!
「そろそろお土産、買ってくか?」
そろそろいい時間になってきたので食休みを取るためにもショップを回ることを提案する。
「うん」
入った土産屋には……。
Tシャツやタオルが売っていた…!なんてことだっ!?
「ツー濡れてないか?」
……やばっ!これセクハラか?
一瞬にして背中にいやな汗が伝う。
「ぼくは大丈夫だよ。もう乾いたから」
返ってきたのはそんなことに気が付いていないような言葉で心底安心する。
「そ、そうか。…俺は買おうかなTシャツ」
服は生乾きだし、変な汗もかいてしまった。
「ぼくは何買おうかな…?」
ツーは限定のお菓子を買っていたようだった。
「ツー最後に観覧車でもどう?」
土産屋を出た俺はそう切り出した。
そろそろ空がオレンジ色になり始めて雰囲気はばっちりだ。
「うん。行こうっ」
観覧車の前には同じ思惑のカップルとみられる男女が列をなしていたけど、最後尾におとななしく並ぶことにした。結局メインのジェットコースターには乗れなかったんだ。せめて最後くらいは予定通りにしたい。
「次の方どうぞ~」
「は、はい」
セーフっ!閉園時間ギリギリじゃないか!?俺ってもしかして運がいいんじゃないか?
「わーっ!みんな、楽しそうだね…!」
かなり高いところに来た時ツーは窓に張り付いていた。
同じように窓の外を見ると、親子にカップル、グループに一人で来てる人。その全員が楽しそうに笑顔で過ごしていた。
その姿を見てふいに、涙がこぼれた。
「明人?泣いてるの?」
「ごめん。……ちょっと感動してた」
この人たちの笑顔を守っているのは俺だ。俺がモンスターを逃がしでもしたら、きっとこの町までぐちゃぐちゃにされてしまうだろう。一般人とモンスターの間にはそれだけの戦力差がある。
俺は意を決してツーとの距離を詰めて、両手で手を握った。
「俺、ツーを守るから!本気でツーのことが好きだから、頑張るよ」
ツーもそうだ。俺が守ってやらないとモンスターに……。
「?……うん?…ありがとう」
何のことかはわかっていないようだったが、少なくても嫌がられてはいなさそうだった。
「なぁツーよかったら……また、俺とデート……してくれないか?」
「…うーん……。いいよ」
少し迷ったようだったけどツーはYESしてくれた。やったぞー!!!
そして、ツーの手。めっちゃくちゃ柔らかかった!あと近づくとめっちゃいい匂いだった!
翌日月曜――。
ツーとデートに行っていた。その事実は俺をにやけさせるには十分だった。
違和感なくツーと話せるだろうか?もしかしたらデートしてたのがクラスメイトにバレてしまうかもしれない。いや~困っちゃうなぁ……。
「……おはよう、明人くん」
「うわっ!?お、おはよう両瀬!」
寿命が縮まったかと思った!
…そうだった。このあたりでいつも両瀬と合流するんだった。
「……やけに嬉しそうね?…何かあったの?」
「いや~。その…な……?」
口ごもっていると、前に回り込んできた両瀬にじっと見つめられる。
……俺、なんかこの目に弱いんだよなぁ。
「わかった!言う!言うよ。…………俺、昨日ツーとデートに行ってたんだ…」
「……ぇっ…?……」
「隣町の遊園地にさ……。誰にも言わないでくれよ?両瀬だから話したんだぞ?」
「……へぇ……。そう、だったの…?」
「実はな……へへへっ…」
よほど意外だったんだな。目をまん丸に開いてるぜ。
初デート+ほぼ行ったことがない場所+経験少ない高校生+リサーチ不足にしては、片見君は頑張ってると思うんです。