【カオ転三次】癖に生きる俺らと割を食うシキガミ・現地民 作:アレデルトロン
「また明日ねー」
「うんまた明日!」
友子に別れの挨拶をし振り返ると、少し息が上がるくらい小走りをする。
私が起こしたさわやかな風が柔らかく体を過ぎ去っていく。
気持ちいい。
私はこの季節が好き。
少し動けば汗ばむ程度に暖かくて、でも風は涼しくて。鳥たちのさえずりが心地よくて、木々の香りはクリアに入ってくる。
この始まりの季節が私は大好き。何もかもが新鮮に感じられて、世界が美しく見える。
……クラス替えが新鮮なわけじゃないよ?ホントダヨー。
今年は家のことをいっぱい頑張る!
勉強も頑張る。早く帰って予習復習もちゃんとする。
あと、恋も……。
「ただいま帰りました」
「まなちゃん、お帰りなさい。早く帰ってきてよかったわ。さぁ、お風呂に入ってお着替えましょう?」
「え?お母さま、何かあったの?」
「
「へ?…祈願?」
「厄災神社が鎮められたのよ!」
ビッグニュース!
家の近くにあって、親戚のおじさんたちが何かと気にしているいわくつきの神社。
小学生の時コッソリ見に行こうとして、冷汗と震えが止まらなくなって全力で逃げ出したのは秘密の思い出。
「それもたった一人で立ち向かったらしいのよ」
「すごっ!」
「だからね、そんな殿方を主役に祝賀会をやるのよ」
イケメンだといいなぁ。また同じクラスになれた幸助くんみたいな。
家のピンチを助けてくれた、強くてイケメンのヒーロー!
ふふふっ。
「了ー解っ」
多分おじさんたちも集まるし、家紋付きの一番いいお着物でビシッと決めなくちゃ!
あ、無理。
えっあれが……?二枝を救った?
見た目はアレだし、猫背で座り方からもオドオドしてるのが丸出し。ジーンズにTシャツって、いかにも私服みたいな恰好に締まりのない体型。
上座にいるのにみすぼらしくて違和感放ちまくり。
「あれが、厄災神社を治めた英雄殿ですか・・・?」
叔父さんがこっそり隣の人に話しかけるのが聞こえた。
「いささか・・・その・・・あれですな」
「人は見かけに・・・」
おじさん達の意見も私と大体同じみたい。だってヒドすぎるもん!
「無礼なことをいって気を悪くされたらどうする!?」
「いや失敬・・・」
「それにしてもいったいどのようなお人でしょうな・・・?」
うーん?おじさんたちもよく知らない人?
どこからやって来たのか、ますます謎すぎる!!
「平田様、此度は誠にありがとうございました」
お父さまがそんな声をかき消すように頭を下げた。
あんなにお父さまが下手に出てるの初めてみたかも……。本当はすごい人なのかなぁ?
「彼の神社の浄化は我が一門の使命でありながら、誰も手が出せずに悲願となっておりました」
「平田様はそんな我々をお救いくださったのです。改めて!」
お父さまが声を張ったから、ピンと姿勢を正す。
「感謝申し上げます」
お父さまに続いて親戚一同で頭を下げる。
当然私も。相手が誰だとかは関係ない、体にしみ込んだ反射みたいなもの。
対する反応は……。慌ててるのか何かごにょごにょと言ってるみたいだけど。
……もう少し頼りがいというか、いい年してるのに情けなさすぎない?
「……申し訳ありません。料理が覚めてしまいますね。……恐縮ではありますが、何卒乾杯の合図のほうよろしくお願い申し上げます」
あーあ。
お父さまが空気を読んで、先に進めちゃった。
「え゙っ!?」
えっ?
えっ、じゃないよ!当然でしょ!?
黙って天井キョロキョロしてないで、早くなんか言ってよ!こっちまで微妙な空気になっちゃう。
「えー、っと…あの……。かんぱーい」
え?なにそれ。
……ありえなくない?
「「「・・・乾杯!」」」
同じ気持ちだった親戚揃って顔を見合わせて、声をそろえる。
まぁいいや。
とりあえずオレンジジュースを流し込んで料理に目を向ける。
主役はこの鯛の塩焼きか……。いや、それともこっちのお鍋かな?
豪勢すぎてどこから手を付けようか迷っちゃう!
ここは、まず汁物のふたを開けて口に運ぶことにし……この匂いは!蟹っ!?
おいしっ。
一口目で口の中にあったオレンジの風味が、蟹とダシに包まれて流れていく。そして二口目には、純粋にお汁の味が堪能できた。と思いきや、最後の最後で柑橘の爽やかさが少しだけ顔を出す。
喧嘩になりそうな相手すら丸め込んで調和を生み出す、これが和食かっ!?
お次は鯛!
私はウッキウキで箸を運んだ。
これもおいしい!
シンプルな塩だけの味付けと思わせといてまさにその通り、本命は素材そのものの味という王道ストレートな一品。
嫌味にならない程度の潮の香りと生きた海藻と共に過ごして身にしみ込んだうまみが、追加で振られた塩によって整えられてる。これはもう海だわ。しかも本物ってだけの水たまりじゃなくて、心の中にある理想の海だわ。
これお父さま、やりすぎじゃないかな!やりすぎだとおもう!最高!
じゃあ、次はお鍋に行かせてもらお……なんだろう。
強烈な違和感。
風船のように膨らんだ楽しい気持ちが、音を立ててしぼんでいく感じ。
なんともいえないイヤな感じがする。
私はとりあえず、お赤飯を手にもって口に運びながら周囲に軽く視線を回す。
~っ!!
あの男だ!!
ヒラタ様と呼ばれた上座の男がじっとこちらを見つめてた。
何も言わずにただねっとりと。
お、落ち着け私。気にしない、気にしない。
せっかくのお料理が台無しになっちゃう!
ふぅっと、心の中で深呼吸をして背筋を伸ばして、鍋には手を伸ばす。
脂がよく乗った牛。
おいしい…。目を閉じて、味に集中する。
おいしい。おいしい。
次も鍋。
別の食材を取り、息を吐きかけて冷ます。
ふーっ、ふーっ。
……視線が全身に絡みつく感じがする。
急に口をとがらせているのが嫌になってきた。
熱くてもいいや。食べちゃえ。
熱っ!?……がまん、がまん。
次は、えっとこの煮物。
おいしい。うん、多分おいしい……。
つ、次。次は……。
「
お父さまから声が掛かったので、手を止める。
「はい」
「平田様にお酌をさせて頂きなさい」
やです。
え、だってお預け?せっかくのご馳走なのに!?
ちょっと待って。それよりも、あの男にお酌?
ってことは近づかなきゃダメ?明らかに臭そうだし嫌なんだけど……。
そうも言ってられないかぁ……。
「……。はい」
「ぇひ……」
あっキモい。
もしかして笑った?今ので?
やだなぁ。
「失礼いたします。
三つ指ついてご挨拶。
一応大事なお客様らしいから、失礼のないように。
「あっ、…お、おオナシャス」
首だけの会釈。
そして、全然目が合わない。
嬉しいことにひどく臭うわけじゃなかったけど、凄いガン見。胸とか隠しもしないでしっかり見てくる。
そのくせして見てないとでも言いたげにたまに目を泳がせる。
やっぱり目は合わない。
「へぇーっ平田様は凄いんですね!」
……鯛の食べ方汚いなぁ。
どう考えてもそこに箸突っ込んだら、キレイに取れないって…。
「そ、いやそんなことないけどね…へへへ」
ほら言った通り。
はぁっ。こんなもったいないの見せられたら余計にお腹が空いてくる。
「もう一杯どうですか?」
「えっ、あー。もらいます……。んくっ……ぷはぁ」
おちょこに注ぐとすぐに、一口で飲み干す。
これもたぶん相当なお値段のお酒だよね?
そんな次々と流すように飲むものなのかなぁ。
「霊能力?だけじゃなくてお酒にまで強いんですね」
「えっいや……そうかな。まぁ確かに覚醒してからは体も丈夫になった気もするし、アルコールにも強くなったかもしれないけど、上には上がいるし別に大したことじゃないと思うけど?」
「しかも謙虚なんですね……」
「え?…け、そ、いやそうかも?」
「しかも向上心があるじゃないですか」
「こっ!?…こ、いや、逆にこんな世界でレベル上げしてないほうがおかしいというか、未覚醒のままとか不安でしょうがないと思ったからできる範囲で頑張ってみてるだけでそこまで褒められたものじゃないと思うけど……」
「ヒラタ様の頑張りで二枝家は救われたんです。……偉そうなことは言えないですけど、褒められて当然のことをしたと思いますよ?」
「ふぁっ!?いや……ごめ、ちが……」
だいぶ酔いが深まってきたのか、顔を真っ赤にしながら杯を差し出してくる。
「ご歓談の所失礼します」
やったー!!!お父さまありがとうございます!
やっと解放される!!
さーてっ、つっぎは何食べよっかなー!
……冷めちゃってるかもだけど。
「うちの娘お気に召したようでしたら、今晩ご一緒させてはくださいませんか?」
は?
「ふぇっ!?……そ、え、いいんですか!?」
え?それって……え?
「勿論で御座いますとも!」
「え、いや……でも、…いや……む!、ちゃ……。娘、……さんは、大丈夫なんで、すか!?」
いや、だめですけど?――とは口から出ない。
親族全員の視線が突き刺さる。
お父さまの入れ込みようといい、さっきまでの話の信ぴょう性といい、なんとしてでも縁を作っておきたいという気持ちが見なくても分かる……みたいな。
息が詰まる。
いやだ。
けど、この場で否定は、出来ない。
私は目をぎゅっと瞑って頷いた。
声を出せば、本音が漏れちゃいそうだったし、変に上ずりそうだったから。
「えっ!!……え、そ、ええ!?」
驚きで隠しているつもりなのかもしれないけど、喜んでいるのがバレバレ。
あぁ……気持ち悪い。
もうお酌もしたくないなぁ……。
「本人もこう言っております。何も問題はありません」
何も言ってないし、問題しかないんだけどなぁ……。はぁっ…………。
それから少しして祝賀会はお開きになり、お客様は風呂のほうへと案内されていった。
私はすっかり冷めてしまったご馳走を一心不乱に口にねじ込んでいた。
……まるで最後の晩餐みたい。って鯛ウマっ!冷めても全然いける!
「…うぅ……ぐず……、ふっ……うぅ…」
おいしいなぁ……。
どうしてこうなっちゃったんだろうなぁ……。
どうして、……はぁっ………。
助けて……。
お風呂に入って気持ちも整えた。
着替えもした。
……大丈夫。
上手くやれば、一晩中気持ちよくおしゃべりさせて終わらせられるかもしれないし、あれだけ飲んでたらすぐに寝るかもしれない。
大丈夫よ、愛望!
私は深呼吸を五つ。それでも、手の震えは止まらない。
いまから、怪物のねぐらに入っていくんだから。それもしょうがない。
何とか言い聞かせて、ノックを三回。
「ぇ!?ホントに来た!?……どうぞ!!」
「失礼します。今晩お供させていただきます、
「ふぇ!?…あっ…え、…。ひ、
お風呂上がりで髪型はぐちゃぐちゃ。
寝間着の浴衣のせいでお相撲さん……いや、あんなにパンと張った体型じゃなくてもっとダルっとした……。
しかも椅子に座ってるのに猫背というか前かがみというか……。もっと堂々とできないのかなぁ。
「そっ!……その、ま、愛望ちゃん!……そ、聞いておかないといけないことがっ!」
私は廊下に正座、部屋は開けっ放し。
響くから、そんな大声を出さないでほしい。
「……大事そうなお話ですね。ひとまず入ってもよろしいですか?」
扉を閉めるときの私の覚悟はそれはもう“決まって”いた。
弱い自分との決別くらいの一大決心のつもりで、私はこの部屋に入ったんだ。
そんな気持ちに気づいていない様子のおじさんは、鼻息を荒くしたままゆっくりと近づいてきた。
そして、ややうつむいたまま口を開いた。
「愛望…ちゃん。……ぼ、おじさんのこと、すきになってくれるかな?」
嫌だ、無理、気持ち悪い、絶対に好きになれない。
頭の中には否定形の言葉でどんどん満たされていく。
それがパンパンになって、ついに口から出ようとしたとき――。
『愛望、すまない。頼んだぞ』
『まなちゃん、とびっきりのお客様だから失礼のないようにね?』
ここに来る前の二人の言葉がそれを封じ込めた。
「ぃ……っ。…はい」
「…!ほ、んとうかい!!」
まるで子供みたいに嬉しそうに目を輝かせて喜ぶ。
こうやって逆らわずにいい気分にさせて二枝家に好印象を持ってもらう。それが私に与えられた任務だから。
ひとまずは正しかったようでほっと胸をなでおろす。
「…じゃ、じゃあ!…………キス、してもいいかい?」
は?無理!
このおじさんと?絶対に嫌だ。嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!
考えるだけで気持ちが悪い。全身が拒絶反応を示してる気がする。
ファーストキスは幸助くんみたいなイケメンじゃないと……。
「うっ……。ど、どうぞ……」
私の思いとは反対に、口は勝手に許可を出してしまっていた。
「はぁはぁ……ま、愛望ちゃんっ」
ガッチリと肩に両手が置かれて逃げ場がふさがれる。
嫌。
おじさんが目を閉じて徐々に顔を近づけてくる。
嫌。助けて!嫌、嫌!
首を引いても、逃げれる距離なんてそんなになくて……。
『ごめんね。幸助くん』
心の中で謝って、私はぎゅっと目をつぶった。
触れた唇はガサガサしていて気持ち悪かった。
「はぁ…ちゅー……。はぁ…ちゅう…」
お酒の臭い息が顔にかかり、また唇に気持ちの悪い感触。
その最中、肩にあった手が抱きしめるように背中に移動する。一々さするように手が動いて、それも気持ちが悪い。
思わず震えそうになるのをぎゅっとこらえた。
「へへへ……キス、しちゃったね」
くっついては離れてを5回くらい繰り返してから、少し照れたようにおじさんは言った。
勝手にしたくせに!
一瞬頭に浮かんだが、それを言うだけの気力はもう残ってなかった。
私はもう汚れてしまったから。
「そう…ですね」
「おじさんは……初めてだったんだけど愛望、ちゃんは?」
聞いてもいないし聞きたくもない情報。
「初めてでした」
私は投げやり気味に素直に答えた。
「そっかあ!!いや、うれしいなぁ!おじさん嬉しいよ!!」
「…そうですか。私もです……」
これだけ喜んでもらえたならもう十分…かな?
「……そろ「もう一回!…してもいいかな!」」
「ぇ……」
嫌だけど、あと一回キスして終わってくれるなら……。
「どうぞ……」
「ところで、何か言いかけてなかった?」
「……何でもないです。」
『早く終わってほしい』
頭の中はそれでいっぱいだった。
「……そう?じゃあ失礼して……」
私はもう一度、祈るように目をつぶった。
ぬちゃり。
唇の下から上に生暖かい何かが通過した。
「…ぅぇっ……。」
その気持ち悪さに軽く声が漏れる。
……もしかして舐められている!?
ありえない気持ち悪さ。まさかそんなことをされるなんて思ってもいなかった。
拳を握って鼻から息を吸う。
『お家のため。お家のため』
唇が重なる感触。
こんな相手で知りたくなかった感覚だけど。
そして、固く結んだ唇をなぞられて、隙間をほじくるような感触。
さっきの舌だ。
強く口を閉じて、歯を食いしばっていたら入ってこられないと思う。
けど、それじゃダメなんだ。
このおじさんのしたい様にさせてあげてあげないと……。
嫌で嫌でどうしようもなかったけど、私は口を緩めた。
すぐさま中に舌が侵入してくる。
同時にお酒と、おじさんの臭いが口に入ってくる。
口の中を探索してかき回すみたいに舌が動きまくる。
「…ぇっ!」
吐きそうになる気持ちを必死で抑えなきゃいけない。
何も考えないように…。何も考えないように…。
「舌出して?」
出したらどんな目に合うんだろう。
…きっと私もおじさんと同じようにしないといけなくなる。
このおじさんの口になんて舌を入れたくない。絶対に気持ち悪い。そんな舌口に戻したくない!
けど、二人をがっかりさせたくない。
そう。もう、私の口の中におじさんの舌は入ってしまったし、きっと同じことよ!大丈夫!大丈夫だから…!
「……ぇ、ぇっ!」
様子見で少しだけ出しかけて、同じことだと思いなおして一気に舌を口から出す。気持ちはあっかんべー。
べろり。
舌を舌で舐められる。
うわぁっ!!!
おじさんの舌ざらざらしてる!?私の舌の表面がこそげ取られているみたいな……おぇっ!
キモッ!!!!!
キモイ!気持ち悪い!もう無理!
いくらそう思ってもおじさんの動きは止まらず、私の舌を口の中に吸い込んできた。そして自分の舌を私の口に入れてさっきみたいに動かし始める。
やらなきゃいけない……やれ!やれ!私!!
その動きを真似して私も舌を動かす。
口の中のヌルヌルが舌にこびりついてきて、たまったよだれがこっちに流れ込んできて…おぇっ!
おじさんは私が舌を動かすと「おっ…」みたいな声出すし、ほんともう無理。早く終わってほしい。気持ち悪い。
「はぁ…はぁ…」
口が離れた!!!
歯磨きしたい。それが無理でも口ゆすぎたい。せめて、この唾だけでも吐き出させてほしい。
「愛望ちゃん!」
おじさんが急に抱き着いてくる。
はぁはぁ言って気持ち悪いけど、顔が見えない分思いっきり嫌な顔できるから少し楽かも。
「愛望ちゃん、本当に可愛いよ。……おじさん、……」
いったん手に吐き出そうかな。顔見えないし、今だったらいけるかも。
「おじさん、…愛望ちゃんのこと……」
でも、床に落とすのも嫌だし、服でなするのも嫌。ティッシュで拭くか手を洗うのがベストだけど………。このまま飲むのが一番嫌。
私は頭と同じ方向の手を口元にもっていき、そっと溜まった唾をそこに出した。
「!!……愛望ちゃん!」
急におじさんの声が大きくなる。びっくりするから耳元で叫ばないで!
「ぇ……何ですか?」
もしかしてバレた!?
「おじさんも愛望ちゃんのこと好きになっちゃったかもしれない!」
そう言ってより強くおじさんは私のことを抱きしめた。
……。
よく分からないけどチャンスかも?
私も同じようにおじさんの背中に手をまわした。
ついでに手についた唾をなすり付けた。
おじさんもハッピーだし私もハッピー!
私って天才かもしれない!!
「愛望ちゃんは?……おじ……。僕のこと好き?」
雰囲気もいい感じだし、このまま好きって言っておけばいい感じに任務達成にならないかな?
「私も好きです」
「っ!嬉しいよ愛望ちゃん!」
え、嘘!?
おじさんはそのまま私のことを持ち上げる。どう見てもただのおじさんなのにどうなってるの?なに?
数歩歩いた先、私はベッドの上に寝かされた。
…ベッドの上?ちょっと待ってもしかして!?
「愛望ちゃん……」
おじさんが覆いかぶさってくる。
「いやっ!」
私の口から短く拒絶の意思が飛び出た。
あっ……やってしまった。
おじさんが勢いよく離れる。そしてその顔が怒りに染まっていくように見えた。
この先は絶対に嫌だ。でも、ここで断ると今までの苦労もすべて台無しになってしまう。お父さまやお母さまにも……!
「ごめん…なさい。少し急だったので驚いてしまって……」
「いやこっちこそごめんね?驚かせちゃったか……。嫌だったら止めるからね」
嫌だ。止めてほしい。
けど、その選択肢は私にはないから。
「だい…丈夫です。」
私は今日何度目かの噓を自分に言い聞かせた。
「本当に…無理だったら大丈夫だからね?嫌でしょ、こんなおじさんとなんて……」
それを分かってるならどうしてこんなことするんだろう?
「本当に大丈夫です。平田様は我が家を救ってくださった英雄ですから」
英雄なんだからこんなことしなきゃいいのに。……思い直してくれないかなぁ……。
「本当かい!…じゃあ脱いでもらってもいいかな?……僕には少し難しそうだ。ハハ……」
やっぱり諦めてくれないよね……。
でも、無理やり脱がされてせっかくのお着物が汚れないだけマシだと思おう。
……。
おじさんはこちらをじっと見つめて息を荒げている。
それは後ろを向いても、ずっと刺さるように私に突き刺さった。
すごく嫌で怖くてあふれた涙を、動作に紛れ込ませて拭う。
一枚脱いで、念のためにと着替えさせられた白い寝間着姿になる。
お母さまには最初からこの格好でって言われてたところを、ワガママで上に着せてもらったのに……。
「えっと…この紐をほどけばいいのかな?」
振り返ると下着姿のおじさんがいた。
汚い。体形はだらしないし、毛むくじゃらだし……。
「そっ…そうです」
一瞬声が飛びそうになり、一呼吸おいてから冷静に返事を返す。
「愛望ちゃん……」
ポンポンとベッドをたたきながらおじさんが呼ぶ。
『最後のチャンスだ』
今ならまだ……逃げられる。
『このままだと、こんな男に処女を奪われてしまう』
逃げよう。
『でもどこへ?』
そう、そうだよ。
私にはこの家しかない。逃げられやしないんだよ…。
「はい……。平田様」
一歩が重い、体が拒絶を示している。
こんな人としたくない。
けど、けど。私も、
「あの、愛望ちゃん……、」
ベッドに転がった私に上から声が降ってきた。
「……」
私は黙って言葉を待った。
おじさんは少しキョロキョロとして言葉に詰まっているようだった。
このまま朝になればいいのに。
「愛望ちゃん……」
「はい」
「ぼ、僕のことは
……。
もうここまで来たらそんなことどうでもいい。
それでこの人の機嫌がよくなるんだったらそれでいいや。
「…はい、正男様」
「ぬふっ……!愛望ちゃん!!」
特大に気持ちの悪いにやけ顔を披露してから、それを隠すように私の胸元に飛びついてくる。
いーち。にー。さん。しー。ごー。ろく。しち。はち。きゅう。じゅう。じゅういち。じゅうにー。じゅうさん。じゅうしー。
きっかり14秒強く抱きしめた後に、寝間着の紐をほどいて私の肌を晒した。
「っ…」
ゴツゴツした手が直に触れる。顔も強く押し付けられる。
やだな。
なんかテカってた顔の脂が私の体になすられてるんだろうな。
手も汚そうだし。本当にやだな。
「かわいい…」
ブラが押し上げられて、上半身をほとんど見られる。
ぬちゃぬちゃじゅるじゅると下品な音を立てながら胸を舐められる。
どうやったらそんな音が出るのか、不思議に思って目線を動かす。
すっごい幸せそうに口元を吊り上げながら、真剣そのものって感じで目を血走らせてた。怖っ。
あと、頭のてっぺんがちょっと薄くなってきてた。キモっ。
見てるだけで気分が悪くなりそうだったから、天井に視線を戻す。
……。
……あ、あそこの隅ちょっと汚れてるからあとで掃除しとかないとなー。
……あっ!そうだ。
何も体を貸してあげる必要はないかも。
タイミングを見て、なんて言おうかなー。
胸を触ってた手が下に向かった時、私は次の作戦を決行した。
「正男様」
「はぁはぁっ…何かな?」
一度口を止めてこちらを向くが、その視線は私の目を見ない。
「そろそろお辛くないですか?…私にもさせてくれないですか?」
射精してもらっていい感じに終わってもらおう。そんな感じの作戦だ。
「はぁ…いいのかい?じゃ、お願いするね」
おじさんは体を起こして膝立ちになった。
「えと、失礼します」
うわっ、パンツが盛り上がって先っちょのほうが濡れている。
『気持ち悪い』
けどこんなのが私の中に入れられるよりはマシだから。
私はパンツのゴムをつかんで一気にずり下した。
「うぇっ…!」
なんというか汚かった。
お稲荷さんの切れ目からウィンナーが顔を見せている感じ。
実際はもっとグロイし、生臭い。あと、毛が皮に数本巻き込まれてて、余計にどうなってるのか訳が分かんない。
「あ、ごめんよ。今剥くからね?」
おじさんが片手で皮をめくり上げていく。
ピンク色の内臓みたいな部分がどんどん露出していって、皮は縮んで棒と一体化していった。
ちょっとツヤツヤしてて、透明な汁でテカテカしててキモイ。
「…………。えっと、手でしますね?」
指先で数回押してみてから、意を決してつかむ。
硬くて熱くてぷにぷにで、上下左右に動く。ゲームセンターで触ったジョイスティックみたいな感じだ。
「い、痛くないですか…?」
手全体で握るのは気持ち悪そうだったから、指先で軽く持っているだけに近い。
「あぁぁ……っ。もう少し強くてもいいよ」
「こうですか?」
少し強めにつまんで上下に動かす。皮がグニグニしてなんか変な感触。
「あっ…愛望ちゃんの手気持ちいい…」
気持ちいいって言ってるのに腰を引かせてビクビクしてるし……なんか情けないかな。
「あっ出る!」
「え?」
宣言して直ぐに精子が飛び出して床を汚した。少しずれてたら私にもかかってたかもしれない。
そのまま続けていると、勢いをなくした精液が垂れてきて手にもかかる。汚い。けど、我慢して続ける。
「そんなに続けたら……あっ!」
喘ぎ声すらキモイ。
……いけない。もっと心を無にして手を動かさないと。
「愛望ちゃん。な、舐めて?」
嫌だなぁ。
嫌だけど、それで満足するなら……。
顔を近づけていくと、生臭いにおいが鼻に入ってくる。もちろん口に入れたくなるにおいじゃない。
こらえて舌を出す。
ぎゅっと伸ばした先を軽く先端に当てて少しだけ動かす。
「あふっ!」
手は止めずに、舌でぺちぺちと刺激を繰り返す。
舌はもちろん口に戻さない。戻したくない。
唾液は洗い流すように舌先からどんどん垂らしていく。
「あっ……お、女の子にちんちん舐められてる!」
そんなに嬉しいのかな?
わざわざ大声出して、本当に気持ち悪いなあ。
感動するのはいいけど、頭なでるのやめて欲しい。髪が崩れるし、何より汚れる。せっかく伸ばしてるのに切りたくなっちゃうくらい気持ち悪い。
「あ、あぁ!出る!舐めて!」
出すためにやってるんだけど、出て欲しくない。
このままだと、舌についちゃう。けど、ここで止めるわけにもいかな…うわああっ!
閉じた唇や鼻に熱い液体がかかる。
臭いし熱い。うー気持ち悪いよ。
手は止めない。もうここまで来たら、このまま終わらせる。
ああああ舌に垂れてきた!しょっぱいし苦い!口拭きたい!
もう、おかゆ食べれないかも。風邪の時に食べるの好きだったんだけどな…。
「もう我慢できないよ!」
え?
私はベッドに押し倒されて、パンティを奪われてしまった。
ちょっと待って、それは本当にダメ!嫌だから!嫌なの!嫌!
頭を振って、脚を閉じて必死に抵抗しようとする。
ぴとっ――。
「ひぃっ」
恐怖が口から洩れる。
怖くて恐ろしくて……私は抵抗をやめるしかなかった。
「入れるよ!」
こちらのことなんて一切考えていない一方的な宣言。
「ひぃぎ……!?」
無理やりこじ開けられるような裂けるような痛みが体の内側から襲ってきた。
歯を食いしばって、ベッドシーツを強くつかむ。
「あはっ……!全部入ったよ!!」
「はっ……は、は……」
その声を聞いたとき、絶望と安堵で私の心はぐちゃぐちゃになった。
こんな男に初めてを奪われてしまったという、先の未来への絶望。そして、もうこれ以上こじ開けられることによる痛みはないという、現在への安堵。
「動くよ!」
「い゙っ!?」
その安堵も一時のものでしかなかった。
傷口を熱い棒でこすりあげられる。動きをスムーズにするためにどんどん裂ける。
そんな苦痛がずっと私を襲い続けた。
「愛望ちゃん!出る!出すよ!」
『最悪』
こんな人の赤ちゃんなんてできたらどうしよう。でもこれでようやく終わる。
さっきと同じ未来への絶望と今への安堵。
耳元で私の名前をしきりに叫びながら、おじさんは必死に腰を振る。
気持ち悪い。けど、ここまでやれば満足でしょ?もう私は自由。
「正男様」
最後にこちらからも少しだけサービス。抱き着いてきた耳元でささやいてあげる。
「あ、あああっ!!!」
痛いくらいに腕の力を強めて、気持ちよさそうに全身を震わせる。
「はぁはぁ……最後にキス……いいかな?」
「いいですよ」
もう怖いものは何も無くなったような気分。
こんなに汚されてしまったんだ。もう、……もう。
「……では、お体が汚れると困るので私は失礼いたします」
「ぇ……あ、…そ、分かった」
適当な理由をつけて逃げ出した私はお風呂場に逃げ込んだ。
「うう……おぇぇぇ……」
全身を何度もガシガシと洗い、出された体液をかき出した。
うがいをしてる時、我慢できなくなって吐き出した。
もったいない……。
と思ったが、吐しゃ物の中の磯のにおいに耐えられなくてもう一度吐いた。
その日は泥のように眠り、翌日は昼頃に目覚めた。
あんなに洗ったのにまだ全身が気持ち悪くて仕方なくって、もう一度お風呂に入った。
私にとっては朝食の昼食を食べるころには平田様はいなくなってて、昨日のは悪い夢だったんじゃないかと思えるようになっていた。
そう思わないと、自分の体が許せなくなりそうだった。
「愛望」
部屋に戻ろうとしたときに、お父さまに声をかけられた。
なんだろ?
……昨日の件かな。
良くやったって褒められるかな?
それとも、ちゃんと一晩一緒に居なさいって怒られるかな?
「お前には平田様のお子を産んでもらう」
…え?
なん……て?
「はぁ……はぁ……」
足ががくがくと震え、冷や汗が一気に流れ始める。
心臓が激しく拒絶の意思を伝えてくる。
目の前がチカチカする。
え……?
あの人とまた会う?
そしてセックスする?
子供ができるまで……?
「なん、で…ですか?」
気に入られ足りなかったのかな?
……逆に、気に入られすぎたくらいだったのが悪かった?
「二枝家のためだ。どうしても彼の才能を継いだ子が欲しい」
「……!……。……わかりました」
トイレに行って吐いて、部屋に戻って泣いて、また吐いた。
「雨、やまないね」
「梅雨だもん」
私の心の中もずっと雨模様。
最近いろんなことがイライラしてしょうがない。
例えば、学校の椅子ですらなんか固くなった感じがする。あとなんかずっとだるいし体調がよくならない。
天気のせいか、あの人のせいか。
「そういえばさ……」
「もったいぶっちゃって!言ってよ友子!」
お茶らけて強めに言っただけのはず。
少し気を抜くと八つ当たり気味になってしまいそう。
「幸助くんと付き合うことになった」
「へ?」
雨の音が強まった気がした。
最悪の天気、最悪の心情。二度あることは三度あるって。
最悪の相手が私の帰りを待っていた。
「まなちゃんおかえりなさい。平田様来てるわよ」
「え~っ!熱っぽいからパスしたいんだけど~」
あと、生理が少しだけ遅い気がする。
なにか体のバランスがおかしくなる前兆、みたいなそんな感じがする。
「でもせっかく来てくださったんだから、顔くらいは見せないとだめよ?」
「はーいっ」
返事をしながらお風呂場に向かう。
こんな日はゆっくり浸かって温まるに限る。
で、さくっと終わらせてまたお風呂だーっ!
「お、お帰り愛望ちゃん」
はぁっ……。
顔を合わせるとやっぱり気が滅入る。
友子の相手はクラスメイトで爽やかでイケメンの幸助くん。
私の相手はコレ。キモデブおじさんの平田様。
「…ただいま帰りました」
「き、今日もこれ持ってきたから!ね!」
そう言って飲み干したのは白い小瓶。
げっ!嫌だなぁ……。
でもさっさと妊娠するために今はがまんがまん……。
「愛望ちゃん!おふっ!好きだっ……出るぅうう!」
嘘つき。好きな人にこんなことするわけない。
「……」
もう、7回目の射精。
おなかは張ってるし、アソコも擦れ過ぎて痛い。
ここまでくると不快を通り越して苦痛だった。
「ごめっ。あふっ…もう一回だけ…」
あの精力剤効きすぎて本当に怖い。絶対ヤバい薬だと思う。
幸助くんも、友子相手にこんな感じでシてるのかな…。
いや、さすがにこんなにはないかっ!…ははは。
「…はい」
あと一回の辛抱……。
「んちゅ……れぇ……ま、愛望ちゃ……でっ!」
「いっ…たぁ……っ」
結局三回追加で出された。
おまたがヒリヒリして、なんとか壁伝いで歩くことしかできない。
早いのはいいけど、やりすぎ。
ほんと気持ち悪い。道具か何かと勘違いしてるんじゃないのっ!?
「ぐっ……はぁ、やばっ……」
なんかお腹も痛くなってきたし…最悪!
あーっ最悪!最悪!最悪!最悪!最悪!
ほんと最悪!どうしてっ!……どうして私があんなのと……っ!
「ひぐっ……うぇっ!」
涙をぬぐった手が生臭い。
……もうやだ。もうやだよ!
どうして私ばっかりこんな目に…!?
……生理は普通に来た。
ちょっと遅れてただけだったみたい。
…………。
………。
……。
…。
また、抱かれなきゃダメだ……。
雨が止んだ。
体調の不具合を感じた私は、すぐさま妊娠検査薬を使用した。
結果は陽性!
最悪だけど最高の気分だ。これでアイツと会わなくて済む!
「お父さま、私、妊娠しました。もういいですか?」
「そう、だな。よくやった。よくやってくれたよ愛望!」
お父さまにほめられるのは何年ぶりだろう?
過程は最悪だったけど、もう少しの辛抱だし……私も自分をほめてあげたい。
「じゃあ、もう会えないことをあの男に伝えてください」
「あい分かった」
ふふっ。やった♪
その数日後、アイツがやってきたことをお父さまから聞かされた。
なんでも伝えたいことがあるらしい。
嫌だけど、まぁこれで最後だし?
別れの挨拶は礼儀だからね。……がまんがまん。
私も何か考えておかないとね。
『おなかの子のことは心配しないで』とかいいんじゃない?
『あなたのことは忘れない』とか?いや、サービスしすぎ!
……できれば忘れたいけどね。
客間に行くとアイツは似合ってないパツパツのスーツ姿で待っていた。
少し真剣そうな顔に手にはバラの花束。
…やっと訪れた卒業式かな?
そう考えると、女子生徒からキモがられてるタイプの教師にも見えてきた。
アイツは立ち上がるとこちらを見据え、花束を差し出して口を開いた。
「愛望ちゃん、結婚して欲しい」
は?
け、っこん?
コイツと?
…一生、一緒?
「嫌ぁあああああああ!!!!!」
ダムが砕けた。
「え?」
「嫌!ぜったい無理!キモ過ぎ!あり得ない!!!」
「ま、なみちゃ…?」
「一目見た時からキモかったの!!ずっっっと我慢してた!結婚なんて無理!!消えて!もう二度と現れないでっ!!!」
「ぇ……あっ……。うわあああああああっ!!!!」
はぁはぁ……。ざまぁみろ!二度と来るな!
やった!やってやった!全部言ってやった!
……いや足りないけど。
でも、もう二度とアイツにかかわらなくてすむ!私は、自由だ!!
数年後――。
薄暗く、よどんだ空気の一室に少年が足を運んだ。
「お、お母さ「うるさい!私はあんたの母親じゃないって何回言ったらわかるの!?」」
霊能と共に、容姿も受け継いだ息子は――。
「ひゃっ……。ご、ごめんなさ「謝らなくて良いから消えて」」
こうして、トラウマも引き継いで――。
「うっ……うぅ……」
負の連鎖は続いていく。
「うわぁああっ!?」
「まーちゃん?どした?怖い夢でも見た???」
「いや、あ……そうだよ。ごめんね情けない男で」
「んなことなくない?……むしろさ、まーちゃんの夢に出られないアタシの方がダサくない?」
「いや…そ、そんな…ごめ…んぷっ?」
「うりうり~っ!おっぱい攻撃~。いい夢見させてやる~!」
「……息……っは……」
もちろん黒札として真っ当に生きれれば、そんなものからは簡単に抜け出せるが。
最後の最後で冷や水を浴びせるようなお話でした。
ここで一言――。
「顔射!!」