※この作品はR-18です。

機動戦士ガンダムSEED TR -輝ける星を目指して‐   作:開いたぞ、性癖の扉が!!

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原作第5話「フェイズシフトダウン」のお話。


第10話「クルーゼ隊の強襲」

 

 

 警報と共にざわめく民間人たち。

 その中にはキラの友人であるミリアリアを始めとする4人と、サイの許嫁のフレイも居た。

 キラはここには居ない。

 彼女もまたMSで戦うのだろうかとミリアリアは心配そうに俯いた。

 そして自分たちを助けてくれた白兎―――ケイ・ムラサメはもうこれで何度目の出撃だろうか。

 哨戒や資源の回収でかなりの回数を出撃している彼が、何の疲れも無いわけがない。

 自分たちは彼らによってもたらされたつかの間の平和を享受しているだけで、親友と年下の男の子を犠牲にして得たそれらに罪悪感があった。

 

「キラ、どうするのかな。ムラサメ少尉もひっきりなしでかなり疲れてるだろうし……」

 

 ミリアリア達はキラがケイを気にかけている事を知っている。

 度重なる出撃によって疲れた身体を休ませようと食事や睡眠を促してはいるが、年頃の思春期の少年には通じないのか中々難航しているのが伺える。

 だからこそ、優しいキラが彼のために戦場に出るのではないかとも考えられたし―――彼女が戦場に出る理由に自分たちも居るという自覚があった。

 

「あいつが戦ってくれないと、まずいよな。この艦」

 

 サイがどこか他人事のように言う。

 事実として現状キラとケイがMSに乗らなければ、頼りない艦砲射撃とたった一機のMSに自分たちの命運を預ける事になる。

 その状態で連合が起死回生のために作った兵器を鹵獲したザフトというコーディネイター軍団と戦うのは無理があった。

 キラは最悪ストライクに乗らずとも民間人だからという理由で済むが、ケイは違う。

 キラに対しての癇癪を思い出し、もし出撃の繰り返しでストレスが溜まりあの癇癪によって出撃拒否なんてされようものなら―――などとケイというパイロットを侮っていた。

 

「今自分に出来る事を、か」

 

 トールがそう言うと、他の3人も同じことを考えていたのか頷き合った。

 フレイはそれを見て首を傾げた。

 

 

 

 

 

 

 

 どうして、とキラは頭を抱えていた。

 ブリッジに行き、自分も戦う旨をマリューに直談判するつもりだったキラは道中で友人たちと鉢合わせした。

 どうして戦うのか―――守ると意気揚々に宣言しても、戦う覚悟はまだぼんやりとしている。

 しかし自分は戦うべき理由が確かにある―――友人たちを守り、そして一人で戦う彼と敵として立ちふさがる幼馴染を死なせないという理由が。

 だからこそ友人たちには安全な位置に居て欲しい―――それだけだったのに。

 目の前で『軍の制服』を着てこちらに微笑みかける友人を見て、キラはおずおずと理由を聞いた。

 

「ミリアリア、その服は…!?」

 

 先ほどケイに『友人が変な気を起こさないように』と注意されたばかりなのに、彼らはキラの退路を塞ぐように軍の制服を着ている。

 キラの問いに、アークエンジェルのクルー『チャンドラ』は「お前が戦うのを見てじっとしてられないってさ」とキラが良き友人を持ったことを褒められ―――とうとう苦笑いしか出ない。

 友人たちもどこか誇らしげに軍の制服を見せて笑う。

 

「こういう状況なんだもの、私たちにも出来る事があるって思って」

「守ってもらってばっかりじゃ、な」

「アークエンジェルは人手不足だって言うし、僕らもこういう所で役に立たないと」

 

 ―――そうじゃないんだ。

 ―――役に立たなくったっていいんだ。だって僕たちは民間人なんだから。

 

 キラはケイに言われた「軍人と民間人の違い」を頭で反復させながら、友人たちをどう説得するか悩んだ。

 しかしキラを想っての善意が原動力である限り、キラは強く言う事も出来ない。

 アークエンジェルが民間人を乗せているとして、それを敵に伝えて人道的な観点から停戦する事だって出来る―――とキラは考えていたが、実際にはアークエンジェルに連合軍所属としての識別コードが無い。連合はこの艦を最悪存在しないものとして扱える。

 だからこそマリューたちは民間人の保護を渋った上、ザフトの襲撃があっても未だ民間人の存在を明かしていない。

 明かしたところで、存在しないはずの戦艦と敵の人的資源になるような存在を易々と見逃すコーディネイターも居ないだろうと踏んでいた。

 ナタルに至っては最悪民間人をシャトルにひとまとめに詰め、人質のようにして逃げる事も考えている。

 

「無理に手伝わなくっても……」

「お前が無理してんだから、俺らにだって……な?」

 

 キラの苦し紛れの提案にトールはそう言って笑っているが、キラには内心ミリアリアにそそのかされて恰好付けているだけじゃないのか?と思わなくもない。

 何故ならこの同級生たちの集まりにキラを誘ったのはミリアリアであり、正直なところ彼女以外の同級生とはどこか距離を感じるところがあった。

 何にせよ、友人たちは皆して考えが甘すぎる―――ケイが思うキラよりも甘い。

 キラは善意によって地獄への道が舗装されていくのを感じ、ケイにどう報告すべきかを悩んだ。

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

 イザーク・ジュールはこんなにも早く雪辱を晴らす機会がやって来るとは思わず、戦意に満ち溢れていた。

 白兎―――それが隊長であるクルーゼの機体をあそこまで痛めつけるとは思わなかったが、しかしG兵器の仕様にも慣れた4人相手にそれがもつかどうか。

 卑怯やらっきょうは犬にでも食わせておけ、戦争は数だと言わんばかりに今のイザークには容赦というものが無かった。

 言い換えれば、それほど余裕が無かった。

 クルーゼ隊はエリートの集まりであり、出来て間もない部隊でもある。そんなエリートであるはずの部隊員もG兵器強奪とその後の戦いによって数名を失っていた。

 

 ―――ナチュラルの癖に、生意気なんだよ。

 

 ごく一部では議員を務める親の七光りとも呼ばれ、戦功を焦るイザークにとってみればアークエンジェルとストライクと白兎の存在は邪魔そのもの。

 そしてライバルのアスランが謎に不調であることから、戦果を挙げるには今が好機と言える。

 

「ニコルとディアッカは『足つき』をやれ―――オレはアスランと共に白兎をやる!」

「何だよ、お前とアスランだけ良い思いか?」

「相手が呑気に射撃戦に付き合ってくれると思うのか?―――"大きな"戦果を渡してやったんだ、さっさと行け!」

「行きましょう、ディアッカ。適材適所です」

「ちぇっ、こいつに格闘戦が出来りゃあな」

 

 同僚がジョーク混じりに離れる様を見て、イザークはいい気なものだと舌打ちした。

 アレとマトモにやりあえばどうなるか―――あの性格でロクな死に方をしなさそうなニコルとディアッカの事を考えて編成を組んだと言うのに。

 と、気遣う様子を見せた瞬間ビームが的外れな方向へ飛んでいき―――ミラージュコロイドによって姿を消したはずのニコルが通信で喚いた。

 

「今、ブリッツを確認して撃った……!?あの距離で!?」

「何……?ロックされた警告も無いが」

「馬鹿な事言うなよ、俺だって見えてないってのに」

 

 的外れな射撃は、一見そう見えただけでブリッツを掠めそうになったらしい。

 ミラージュコロイドは可視光線や赤外線などを偏向させる、悪質極まりない光学迷彩技術である。それを目視で確認できたとなれば、相手は化け物同然と言える。

 しかしミラージュコロイドを発動したブリッツを狙えることがあるはずがないと、イザークは確信できる。

 今の射撃も威嚇のために撃っただけであり、それがたまたまブリッツの近くを通っただけだと。

 交戦距離に無いクルーゼ隊の面々はまだ緊張感も無い。この距離で有効な射撃が狙えるわけも無いのだから。

 

「気配はそのまま、見た目が『消えた』?……光学迷彩の類か」

 

 眼前に遠く見える4機のMSを見てケイが呟く。

 イザークたちとアークエンジェルの間にヘイズル改がライフルを構えていた。

 出撃後ケイは『目に見えないがそこにある殺気』に反射的に撃ったが、感触が無い事で自身が射撃を外したことを確認した。

 これが遠距離狙撃も可能な兵装であれば、もっと精度を上げた射撃が出来たと後悔しつつ艦砲射撃の届く距離で相手を待つ。

 まさかケイが本当にブリッツの居場所を認識出来ているとも知らず、クルーゼ隊は白兎の姿を確認すると声掛けと共に一斉に目標に躍りかかった。

 デュエルを差し置き、イージスは白兎を正面に捉えるとライフルも撃たずサーベルで突貫した。

 背後でイザークが怒りに喚いているが、アスランにはそれが聞こえない。

 ヘイズル改もサーベルを抜き、両者のそれがぶつかりあうとオープン回線でアスランは叫んだ。

 

「またお前か!!」

「キラ(おんな)じゃなくてガッカリしたか?」

「―――このッ!!」

 

 自分の素性が割れている―――キラが話したのか?

 アスランは一瞬キラを疑ったが、"あの"キラに限ってそれは無いと迷いを振り払う。

 ―――きっとこいつがキラから無理やり情報を引き出したんだ。あの手この手を使って。

 キラはどこかこの白兎を気にかけていた―――それは先だっての戦闘でもその様子が見て取れたのが何よりの証拠。

 つまりコイツが連合軍の勝利のためにキラを誑かし、優しいキラの心を弄んでいるとアスランは考えた。

 脳裏で姿の分からない白兎のパイロットに組み敷かれる、自分の知らない所で女性として成長したキラを思い浮かび、すぐに振り払う。

 キラは白兎のパイロットに精神的な枷をかけられ引くに引けなくなっている―――それは偽物の感情だと誰かが教えなければならない。

 

「お前のような奴が!!」

「面白いな、最初に見た時とは動きが違う」

 

 怒るアスランに対して、ケイは笑っていた。

 強い―――アスランと呼ばれたキラの幼馴染は面白いほどに強かった。

 このイージスのパイロットは感情をむき出しにすればするほど戦略的に悪手へと突き進むが、個人的な戦闘力は格段に飛躍している。

 そのデータは必ず計画の役に立つだろう―――ケイはアスランの動きに合わせながら、アスランを煽るように動いてその才能を引き出す。

 そうする事で相手の部隊は足並みも悪くなるだろう―――現にイージスと白兎が派手に戦う事でブリッツとバスターは艦へ近づこうとも両者が邪魔で動けず、デュエルはイージスが邪魔で介入が出来ない。

 

「キラを……あの子をどうするつもりだ!!」

「戦場で女の名前を呼ぶなんてのはなぁ!!」

 

 確かにアスランは強かった。

 しかし対応できない程のものではなく、未だ格闘戦においてもケイのアドバンテージは覆ってはいない。

 イージスはサーベルでの戦闘に拘ったがためにヘイズル改の足で蹴とばされると、体勢を戻すためにスラスターを吹かす―――そこへ追撃と言わんばかりに多目的ランチャーからグレネードが射出された。

 幾ら実弾に強いPS装甲だからといってダメージを全て消滅させるわけではない。中のアスランには衝撃が伝わり、コックピット全体が揺さぶられる。

 

「くぅっ」

 

 更に追い打ちと言わんばかりに放たれたビームライフルの射撃を、イージスはすんでのところで機体を転ばせて回避した。

 ケイにはアスランに容赦する理由が無かった。

 キラが自身の身柄をどうするか決められない以上待ってはいられないし、相手も待ってはくれない。

 それに目の前の人間が自分やキラの思うような手段で彼女の身柄を引き受けられるかと言えば―――目の前のイージスを見れば恐らくは無理だと悟った。

 一介のパイロットの権限で、民間人と言えども連合の機密を握った少女をプラントの強硬派とも言える武装集団のザフトが見逃すわけが無い。

 いくらケイがアスランの父がプラントの議員だという事を知らなくとも、彼自身の言動や行動がキラを任せるに値しない事を示していた。

 その上アスランには理性が無く、キラをどうのこうのと言っているがこのパイロットには一切その後のキラを守れる策は無いと見える。

 

 ―――買いかぶり過ぎたな、あの女も。

 

 彼女の中でアスランは特別なのだろう。逆も然りだ。

 だからこそキラはどこかで「アスランなら」と希望的観測に基づいた想像が出来る。

 しかし見れば彼が猪突猛進かつその場の勢いで生きている事は明白であり、戦場で友人に機体ごと投降を迫る等非現実的で自分勝手な言動ばかり。

 口を開けば「キラキラキラ」とうるさいやつだと、ケイは戦闘以外にまるでダメなアスランをそう評した。

 

「何を腑抜けた戦いをしている―――アスラン!」

「イザーク!」

 

 デュエルがライフルを撃ちながらイージスの隣に並び、ヘイズル改と対峙する。

 機体のスペックで言えば、G兵器の方が勝っている―――持つ兵装の威力も小回りも。

 だからこそのチームワークなのだと、イザークはアスランを諫めた。

 何の権限があって独断行動をしているのか、イザークにはアスランが分からなかった。父の威光を振りかざしているのか、はたまた何も考えていないだけか。

 どのみちこのまま見過ごして居ればイージスは落とされていたかもしれない。

 

「何だその情けない戦い方は」

「それは……」

 

 キラの事があってはアスランも気が散る。

 如何にセンスに任せた操縦を見せても、脳内では幼馴染の姿を思い描いている以上どこかに隙が生まれる。そこを突かれて死ぬなんて言うのは間抜けだと言われているようだった。

 そしてヘイズル改の後方ではストライクが発進し、ブリッツとバスターに挑む様子が確認できる。

 キラもまた、戦いを選んで出てきたというわけだ。

 

「キラ……どうして俺とお前が戦わなくちゃいけないんだ」

 

 MS強奪時に会ったキラを思い出す。

 面影はそのままだったが、年頃にもなり可憐にとても健やかに成長しているようで―――しかしだからこそ戦場では会いたくなかった。

 だからこそ、か。とアスランは再びイージスの操縦桿を強く握った。

 強引な手を使ってでも、彼女をプラントへ連れていく―――それは彼女がコーディネイターであり、反プラントを掲げる地球連合に彼女を利用させるわけにはいかないからだ。

 地球軍に居ては、彼女が虐げられる事は明白だった。

 コーディネイターと言えども無敵ではない―――地球軍の卑劣な輩に彼女が取り返しのつかない事をされる前にプラントへ連れていく。

 

「お前がその気なんだとしたら―――こいつを倒してお前を無理やりにでも連れて帰る!!」

 

 その前にこの邪魔な兎を排除しなければならない―――アスランはイージスをデュエルの前へ進めると、イザークに後衛を任せた。

 

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 キラは目の前の2機のMSに翻弄されながらも、アークエンジェルを守るためにオプションパック『エールストライカー』を装備した『エールストライク』に機体を換装し戦っていた。

 ブリッツに気を割けばバスターが射撃をしてくる―――逆も然りだ。

 誰が見てもキラが不利に見えたこのマッチアップだったが、意外にも民間人でありながらストライクを動かしただけあるキラのパイロットとしての才能がここでも活きてきた。

 ブリッツの攻撃を盾でいなすと、キラはここぞとばかりに射撃を行うバスターにカウンターショットを狙う。

 

「うおっ!?あぶねぇ」

「ディアッカ!」

 

 射撃はバスターの又坐を潜り抜ける結果になったが、ディアッカの額に汗を書かせる程度にはなった。

 キラは前方で戦うヘイズル改の動きを見ながら、真似をするように無駄撃ちを減らし、しかし牽制のための射撃を逐一行えるようになっていた。

 見て学ぶ―――全く違うMSでありながらも、その戦術を目の当たりにしてすぐにフィードバックできるのはキラの才能の成せる業だった。

 迫るブリッツをヘイズル改がイージスにそうしたように蹴り飛ばし、バスターとの距離を詰める。

 

「アークエンジェルはやらせない!!」

「くっ!」

「もっと、もっと強くなるんだ―――強くならなきゃいけないんだ!!」

 

 引き撃ちを狙うバスターだったが、キラはそれが射撃しか出来ない機体だと分かっている―――だからこそ敢えて近づく。

 散弾やミサイルで迎撃しようとするディアッカだったが、笑ってしまう程にそれら全てが避けられ、迎撃され、外れていく。

 

「ははっ……化物かよ」

「戦いたくないのに―――君たちみたいなのが居るからッ!!」

 

 その鬼気迫る動きにバスターが観念したかのように鈍る―――事実ディアッカはここで死を悟った。

 

「ディアッカはやらせない!!」

「……後ろ!」

 

 あと一歩と言う所でエールストライクの背後からブリッツが追いつき、ライフルを撃った。

 キラは反射的ににそれを無理やり避けると、挟み撃ちをされないように後退した。

 こうして状況は振出しに戻り―――ディアッカが若干の及び腰になったものの、一度目の攻防は双方被害を受ける事なく終わった。

 

「くっ、ニコルか!助かった!」

「白兎にばかり気を取られていたけど……あのMSのパイロットも尋常じゃない」

「あぁ、一瞬死ぬかと思ったぜ」

 

 2機のMSを相手につい先日まで民間人だった人間が戦っていると知れば、二人の驚愕はさらに大きなものになっていたかもしれない。

 それほどまでにキラは戦いの中で成長していた。

 

「はぁ、はぁ………」

 

 しかし戦場の空気と生死の賭けたやり取り、殺意の入り混じるそれらの中でキラの精神は摩耗し始めていた。

 精神的な疲労だけではなく、長期間慣れない軍艦での生活により肉体的な疲労もキラが汗を流しながら息を荒くする原因でもあった。

 ストライクの操縦桿は軽々しいものではない上にそれを才能に任せて咄嗟に最大の力で操作しなければならない事もあり、幾ら筋力的にもナチュラルとは比べ物にならないキラでも少し辛いところがある。

 操縦桿を握る手を覆うスーツが汗で滑り、また握力も緊張で思うように制御できない。

 

「でも、彼もこれをやってるんだ」

 

眼前では迫るイージスを踏み台にしてデュエルに躍りかかるヘイズル改を見ながら、キラは何とかといった様子で気を持ち直した。

 あのヘイズル改―――聞いたところによればスペック上では推力と重量以外でストライクに勝る点はほぼ無いと言う。その推力もシールド・ブースターを複数搭載しなければエールストライクにも勝らないと聞いた。

 それを駆って自分よりも上手く立ち回るケイが居る以上、キラが頑張らない理由は無い。

 アークエンジェルには友達が居る―――手伝いと言ってブリッジに上がった彼らだが、このまま敵を通せば狙われるのは指揮系統が集合するブリッジだ。ここを通させるわけにはいかなかった。

 少しばかり褒められたいと思う自尊心もある―――命を預け合い頼られたいと。

 

「守るんだ、僕だって―――!!」

 

 幼馴染が友達を殺そうと、少年兵を殺そうと言うのなら―――キラは盾とライフルを再度構えた。

 

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 一方でイージスとデュエルはデュエルの右腕部をヘイズル改の射撃によって失うという状況に陥っていた。

 ヘイズル改はこの戦闘においてデュエルとイージスというパイロットの気性に問題のある2機を相手にするにあたって、2機のパイロットの分断を図った。

 相手にコンビネーションアタックをさせないよう、敵の前衛と後衛が一直線に並ぶように立ち回り、後衛に仕事をさせない。

 そうする事で後衛は前衛の動きに不満を漏らし、前衛は後衛の頼りなさに苛立つだろうと考えていた。

 事実としてデュエルとイージスの間には確かな溝が生まれ、連携にも穴が開く。

 そうしたやり取りの中でデュエルの右腕を破壊する事に成功した。

 

「ちくしょう……チラチラと邪魔をするな、アスラン!」

「俺が悪いとでも!?」

「そうだ、後衛を任せておきながら射線上から離れもしないお前が悪い!!」

 

 イザークはこの時白兎とストライクが羨ましいとすら思っていた。

 白兎が自分とアスランを真正面からMS戦で止める中、ストライクは足つきを背後にニコルとディアッカを相手に圧をかけ攻めさせずに居るというのに、こちらは最低のコンビネーションで相手に笑われる始末。

 2対1で遊ばれるとは恥も良い所である。

 自分にも白兎やストライクのような強力な相棒が居れば、こんな奴と―――イザークは眼前の白いMSを惜しむ。

 隠れファンと言うべきか、イザークは白兎が血のバレンタイン事件で核を優れた操縦と射撃で撃ち落としたことに感銘を受けていた。

 だからこそ多少の憧れのような気持ちがあり―――今やっとその気持ちがイザークにも理解できた。

 悟られずにイザークたちを一切足つきやストライク、ディアッカとニコルに近づかせないのは、まるで頼れる恋人のようである。

 

「チィ、その力があって何故ナチュラルなんぞに……!」

 

 しかし惜しんだところで形勢は変わらない。

 前方でストライクに押され、足つきからの射撃を受けた母艦とそれに焦るニコルとディアッカを見てイザークは撤退を決意した。

 

 

 




ケイが居たのでキラちゃんはフェイズシフトダウンしないという変更になりました。

Tips:ケイ・ムラサメ
キラの友人(オーブ国籍)がアークエンジェルの制服を着ているのに気が付いて頭を抱えている。
ブリッツのミラージュコロイドを気配読みで見破るも、距離が開いていたせいで回避された。

Tips:キラ・ヤマト
同上。バスターの弾を全て回避したり背後から迫るブリッツに気づき反撃する等、戦いの中で成長し始めているも気持ちが追いつかない。

Tips:アスラン・ザラ
キラと戦って捕縛するつもりがケイと戦わされて不満。イザークが邪魔で仕方がない。

Tips:イザーク・ジュール
血のバレンタイン事件当時の白兎の動きに関心があった。
デュエルの右腕を破壊されてイライラ中。アスランが邪魔で仕方がない。

主人公の見た目に関する挿絵

  • いるね
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