※この作品はR-18です。

機動戦士ガンダムSEED TR -輝ける星を目指して‐   作:開いたぞ、性癖の扉が!!

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主人公の設定画が欲しいという票が多かったので用意してみます。クオリティの保障はありませんが。
ともあれ今回の話はやりたかった展開の一つです。


第11話「温もり」

 

 

 撤退したザフト軍を確認後、アークエンジェルへと帰還した2機のMS。

 出迎えた整備員を始めとする全ての乗員がその無事と自らの生存に安堵する中、異変は起こった。

 まともに訓練を受けておらず、そして戦闘経験も無かった民間人『キラ・ヤマト』が駆ったストライクガンダム。

 そのコックピットが一向に開く気配が無かったのである。

 格納されたまま動かないストライクに整備員が不審そうに近づくが、キラは出て来ない。

 

「おーい、嬢ちゃん。出てこーい」

「何か問題でもあったか?」

「さあ……戦闘中は気にならなかっただろうが、Gに耐え切れずに戻しちまったとか?」

「まあ、パイロットあるあるだな」

 

 出迎えたムウが手を口に当てて悩む。

 自身もまたMAのパイロットとして訓練していた頃の話であるが、やはり最初はシミュレーターとはいえ気分が悪くなったこともある。

 ムウはパイロットになるためにそれを我慢し乗り越えたが、キラは民間人の少女―――あり得ない話ではなかった。

 だからこそ女性に気を利かせて、ムウの出番というわけである。

 

「何やってんだぁ?キラ・ヤマト」

 

 まるで俺は何があったか知りませんよと装って、ムウはコックピット横にある装置で強制的にコックピットを開き、キラの状態を覗き込んだ。

 そこには目を見開き、呼吸を荒くする少女がおり―――おおむねムウが懸念していた状態で固まっていた。

 戦闘後に殺した兵士の顔が浮かぶだとか、手に血が付いたと錯覚して手を執拗に洗いたがる―――そうした症状は軍隊につきものである。そしてこの少女もまた、殺しはしていないものの戦場の気配に呑まれてしまったのだろう。

 

「……もう終わったぞ、早く出てこい。誰も死ななかった―――お前も、俺も、ムラサメ少尉も、皆も」

 

 キラの手を操縦桿から外し、ムウは出来るだけの優しい声で少女をコックピットから引っ張り出す。

脇に手を入れて高い高いの要領でキラを外へ出すが、キラの足腰には力が入らずにへたり込んでしまった。

あれだけの立ち回りをしたのだから、精神的にも肉体的にも疲労するのは想像に難くない。

 

「―――」

 

 キラはへたり込んだまま己の手を見て、それが今まで兵器を扱っていたものだという実感がようやく身に染みて分かった。

 そしてそれらを扱うザフトのパイロットやケイが、生半可な覚悟で戦っていない事も。

 戦えた―――しかしこれからもこの重圧の中で戦わなければいけない。戦って、守っていくと決めたのだから。

 キラは気が遠くなるような錯覚を覚えた。まるで自分が暗い穴の中に落ちていくような感覚だった。

 ムウたちはそっとしておいてあげようとその場を離れた。女の子という事もあってか、触れづらいというのが彼らの中にもあった。

 しかしそんなキラを現実へと引き戻す声が聞こえた。

 

「こんなところで何やってんだ、お前」

「ケ、イ君……?」

「『ムラサメ少尉』だ……って今のお前に言っても無駄か」

 

 キラの状態を見たケイはすぐにその症状に思い当たる節があったのか、口を噤んだ。

 何しろケイも初めて実戦に出た時には同じように過呼吸と金縛り、それに人を殺した際の『気持ち悪い感覚』にあって動けずに居たのだから。

 その時、兄弟たちはケイを落ち着かせるためにとある事を行った。

 今日のキラはケイから見ても合格点、むしろ戦うのを渋っていたキラにしては十分すぎる動きだったため―――ケイはご褒美とは言い難いがそれをキラにも行ってやることにした。

 すくんで動けないキラと目線を合わせるために、ケイもまた床に膝を付ける。

 そしてキラのヘルメットを外しパイロットスーツの首元を緩めると、彼女の頬に両手を添えて目を合わせた。

 ケイの碧い瞳がキラのアメジストの瞳に刺さるような視線を送り―――

 

「―――アークエンジェルに傷も無いし軍人相手に死ななかったんだ、頑張ったな」

「っ」

 

 キラの頭を抱えるように抱くと、ケイはそのまま子供をあやすように頭を撫でた。

 

「偉いぞ……お前は戦った。怖いのを我慢して、俺たちがしてほしい行動を取ってくれた……したくもない事をするのは辛いだろ」

 

 

 兄弟たちが、戦闘に怯える他の兄弟や実験の最中に気が触れてしまった兄弟をなだめる時によく行ったものである。勿論ケイはこれの世話に何度もなってきた。

 そうした経験がケイを戦いへ赴く現実から今も守っている。戦いが辛いのは研究所生まれのケイにとっては人間である最後の証明だった。

 アークエンジェルに居た人間の中ではマリューしかまだ聞いた事の無い優しい声色をした少年に、その近くに居た人間全てがぎょっとして少年を凝視した。

 無論、口から出てくる優しい言葉の数々はキラを落ち着かせるための言葉であり、ケイが本当に思っているかは別問題である。

 しかしキラが求めている言葉はケイにはよく分かるため、そうした言葉が出てくるのは当然とも言えた。

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 キラはケイの言葉で闇の中から引き上げられると、その腕の中で泣いた。

 相手が容赦なく攻撃して、それに当たれば死ぬ―――ゲームではなく、現実としてそこにあった恐怖が今更になってキラを襲っていた。

 一歩間違えば自分はここに居らず、そして委縮して行動しなければここに居たすべての人間が死んでしまうかもしれない。

 命があまりにも軽い。

 吹いて消える蝋燭の灯くらいしかない命が、今になってとてつもなく惜しく感じる。

 一挙一動が全てを決める重圧から解放され子供のように泣きじゃくると、少年が頭を撫でてくれる。

 

「ううっ……うあ……」

「嫌だったら、もうやめてもいい。お前の友達と一緒にこの艦を降りればいい―――そうすれば戦わなくて済む」

「うぅぅ……!!!」

 

 キラは情けなくもケイの細く薄い身体を抱きしめ返す。

 まるで母のように甘い言葉と抱擁がキラを包み、頭がそれ以外の事を考えるなと信号を送る。

 ケイがキラの事を想ってそんな事を言うはずがない―――どこかに棘を持っている言葉しかかけないケイが。

 しかしキラはその嘘偽りまみれの取り繕った言葉が身に染みて、そして自身がそれを与えられて喜んでいる浅ましさに情けなくなりつつ―――甘美な誘惑に耐えられなかった。

 嘘でもいい―――この抱擁がキラにとって何よりも欲しかった安心であり、冷たい戦場とコックピットから解放してくれる温かさだった。

自分を抱く体から発せられる温かな感覚、温度ではなくもっと本質的な『安心』。

 

 ―――欲しい、もっと安心が欲しい。

 

 彼を抱く腕に力が籠る。寄りかかって、彼が後ろに傾いてもキラはお構いなしに甘えた。

 今はこの薄く小さな身体がキラにとっての『母』であり、温もりを与える家にも感じた。

 

 ―――お母さん、会いたいな。

 

 思い出すのはキラにとっても自慢の両親。二人とも、恐らく今のキラを見ればケイのように抱きしめてくれただろう。

 ホームシックになりかけたキラ。しかしケイはある程度抱きしめ続けると、唐突にキラの両頬を片手で摘まんで顔を上げさせる。

 キラは『う』の口のまま動けず、困惑した顔でケイを見た。

 

「う?」

「さ、落ち着いたろ?終わりだ終わり―――ママのミルクが欲しけりゃ他をあたることだな」

 

 フンといつものように感じ悪く鼻で笑うと、そういえば年下だった少年はキラの腕からスルリと抜け出してヘイズル改の調整をしている研究員とフィードバックの話をし始めた。

 取り残されたキラは全身から温かい熱が冷めていくのを感じた。

 

「……そんな」

 

 周りの目もお構いなく、キラは呆然と手を虚空へ伸ばした。

 今までの言葉はキラの想像通り本心ではないにせよ、もう少ししてくれたって良いじゃないかと燻る。

 恐ろしい少年だと、この時切に思った。

 そして今の行為が彼の性格からして出てくるものではないと言う事は、これを誰かが彼に『仕込んだ』という事でもあり、その人物に嫉妬すら覚えた。

 少年に母性を感じるなんてことはおかしなことだと分かっているが、キラはそれを少年に垣間見たがために虜になりつつあった。

 キラの身体にはその温度がまだ消えず残っている。

 それを抱くように蹲ると、キラは暫く動かないでいた。

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 

 アークエンジェルは近くにあるアルテミスという要塞に逃げ込むことになった。

 それによりある程度の余裕が出た艦内は人の賑わいを取り戻し、笑い声が聞こえる事もあった。

 マリューは余裕が出たという事もあって艦長の席から、未だ少し違和感の残る腰を久しぶりに外した。

 そして勇猛に戦い艦を守った二人の英雄を出迎えてあげようと格納庫に行き、少年と少女が抱き合うのを目撃してしまった。

 

 ―――えぇ!?そこの二人って、そういう関係……って事!?

 

 と、一時は邪推したものの最終的にはケイの態度を見てそれがキラを落ち着かせるための手段―――自分がケイに行ったストレス発散のような気遣いだと感じた。

 まずあの少年から気遣いが出たのが成長を感じて微笑ましい。

 しかしマリューには未だに納得がいかない、心の中でモヤつく事が一個だけあった。

 

 ―――私も甘えたいなぁ。

 

 別に彼の言う所の『ママのミルク』が望みなわけではない。

 しかし拠り所の一つは欲しいと思うのは我儘だろうか。

 艦長という命を預かる立場に居る以上は威厳も保たねばならないが、マリューとしてはその役割は重く、そして甘えても文句の言われようがない少女が羨ましかった。

 少年を目で追うと、彼は自分の部隊の整備員と話をしていた。

 白兎―――ヘイズルと呼ばれたその機体は未だ謎が多く、連合の人間は未だにその全容を把握できていない。

 

「アルテミスで他の機体も持ち込む?見せて大丈夫なのか?」

「アズラエル財閥からご支援を頂くことも増え、状況を鑑みて連合との歩み寄りをより強固なものにしてもいい頃合いだと聞きました。ジムを改造しただけの普通のヘイズルでは少尉も不満でしょう?」

「それは……そうだが…………アズラエル、アイツは嫌いだ」

「嫌いでも何でも我慢ですよ。それにTR-6の最終調整もそろそろ佳境に入る頃ですから、ヘイズルをヘイズル・アウスラにしてTR-6が最悪遅延した時の事も考えるべきでしょう」

「そんな金がどこから湧いてくるんだか。これじゃ戦争屋を笑えないな」

「話ではアズラエル財閥のご令嬢に一枚噛んだ『ジャミトフ』って政治家が関わってるって話です。上層部は好きな研究を好きなだけ行える金を貰えますがね、我々下っ端は富裕層や上層部の玩具って所ですよ」

 

 何やら聞いてはいけないような話をしながら、少年は整備員と唸っていた。

 どうやらこの先のアルテミスで機体の構成を変えるようであり、それは技術士官としてこの軍に入ったマリューにとっては興味のある話題でもある。

 

「まあ、仮にアルテミスで機体の更新をせずともフルドドがある。緊急時にはアレで何とかするしかないな」

「しかし……自分は比較的新参なので言いづらい所がありますが、アレはかなり運動性に欠けると思います」

「まあその代わり推力が伸びるからな。地上での戦闘なら重量が心配だが、宇宙なら推力次第で無理やり飛ばせるだろ」

 

 そう言って整備員に呆れられながらも少年は去ろうとし―――|マリューこ(・)ち(・)ら(・)を見た。

 瞬間、顔を赤くして逃げるようにその場を離れる彼をマリューは何となく追いかける。

 

「何でついてくる……!」

「逃げられると追いかけたくなるじゃない?」

 

 捕まえた、とマリューが少年(うさぎ)の肩を掴み物陰へ連れていく。

 少年がマリューを意識しているのは分かりやす過ぎた。

 壁に少年を押し付けるようにして、マリューはにやつく顔のまま少年を弄り始めた。

 

「意識してたんだ?」

「……違う」

「そう?残念」

 

 ぷに、と女性の指が少年の頬を押した。

 嫌よ嫌よがマリューを悦ばせているのだが、ケイはそれを知らない。

 垣根を超えてしまった関係であり、ケイにとっては恥しかない記憶と経験もマリューにとっては素性の知れない少年の芯を覗いたようにも見え、両者の関係性はマリューに主導権があった。

 指を白い頬で遊ばせていると、ケイはムッとしてマリューを見た。

 

「キラちゃんの事、ありがとう。気遣ってくれたのよね?」

「……訓練も受けていないんだ。実戦で軍人相手にあれだけ動けたら褒めもする」

「私たちは艦の事でいっぱいいっぱいで……褒めたりしてなかったかも。どこかあの子ならって頼ってたかもしれない」

「……もしかして褒めて欲しいんですか?」

 

 ―――鋭いなぁ。

 マリューはまさか小娘に嫉妬しているなどと悟られる事は無いと思っていたが、ケイはニュータイプである。

 ぼんやりとした感情がケイに悟られていた。

 マリューは少年が自身の心を見透かしているようで、しかしどこか期待した面持ちで見つめた。

 するとケイはマリューの思っていた展開とは真逆、全力で嫌な顔をした。

 

「……大尉もママのミルクが欲しいタイプの人間ですか?」

「なにおう……!?」

 

 煽るようなクソガキムーブに色々と口から出かけたが、なんとか口を噤む。

 これだけの重責を負って艦を指揮しているのだから、御褒美も欲しい―――そう言いたいだけである。

 身体を重ねて少しは気心も知れたと思っていたが、マリューが少年に対して丸くなっただけであって少年の刺々しさはいまだ健在だった。

 まあ、美しい薔薇には棘があるもので。マリューはそう言い聞かせて落ち着かせる。

 

「……欲しいんですかって、聞いてるんですけど」

 

 露骨に嫌な表情でキッとマリューを睨みながらも、ケイは敢えて聞いた。

 

「えっ、いいの?」

「掌返すのがはやい」

 

 マリューはズンッと少年に詰め寄って『男に二言は無いな』と言わんばかりのオーラを放つ。

 ケイは呆れながら、自分よりもはるかに大人のマリューも先ほどの戦いで精神を擦り減らしたのだろうと我慢しつつ彼女の頭を撫でた。

 獰猛な獣(マリュー)に飛び掛かられて、慌てた結果手なずけようとする―――そんな構図にも見える。

 

「……よく頑張りました」

「え~、もっとこう……キラちゃんにやったみたいなのは?」

「新兵特典です。大人の軍人であるラミアス大尉にはありません」

 

 足らぬ足らぬと腰をくねらせながら駄々をこねる三十路が見え始めた女。しかしキッパリと断るケイ。

 明らかに異常事態だったキラと違い、どこの誰が通るか分からない廊下でマリューとただならぬやり取りをするのは危険だと判断したのだ。

 

 しかしマリューはそんないじらしいケイに、期待させた分のお仕置きと称して飛び掛かった。

 その後マリューにキスだけでめちゃくちゃに、大人の力を解らされ壁にへたりこむまでケイが解放される事は無かった。

 

 




Tips:キラ・ヤマト
「ケイ・ムラサメは僕の母になってくれたかもしれなかった少年だ!」というのは冗談、ではないがケイ・ムラサメに湿気の多い感情が芽生えた。

Tips:マリュー・ラミアス
「ケイ・ムラサメは(ry」
何だかんだで少年を気に入っている。
大人も甘えたい時がある。

Tips:ケイ・ムラサメ
兄弟の真似をして優しくしたらとんでもない湿気を帯びた感情を向けられることになった。お母さんではない。
キラの事は純粋に評価しているものの、民間人が戦場に出ている事に対する感情は良くはない。

Tips:アズラエル財閥
ムラサメ研究所に出資する財閥。その殆どがご令嬢によるもの。
ケイはこれが嫌い。

Tips:ジャミトフ
ユーラシア連邦で活動するとある政治家。

Tips:Gパーツ『フルドド』
ヘイズル改に装備できる支援ユニット。推力は上がるが、細やかな運動性は下がるらしい。

Tips:TR-6
万能化換装システムの構想の完成形。諸々の事情で遅延された。

主人公の見た目に関する挿絵

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