機動戦士ガンダムSEED TR -輝ける星を目指して‐ 作:開いたぞ、性癖の扉が!!
どちらの名称も現状ではケイたちの研究所のテストチームのみ所属しており、これを指します。
ヘリオポリスにザフトの部隊が襲撃を仕掛けた。
それはケイが研究者の男を退けて物思いにふけっていた暫く後であり、キラにとっては唐突な平和の終わりの始まりだった。
目的は地球連合軍の新兵器。
中立だったはずのオーブ連合首長国のヘリオポリスで地球連合軍の新型兵器が開発されているという疑惑が確信に迫ったからである。
それはMSというアドバンテージを持っているザフトにとっては都合の悪いものである事は両者の共通の認識だった。
同時に連合は新兵器の隠れ蓑のついでにヘリオポリスにTR計画の研究チーム「
幾ら出自が隠されているケイとはいえ、世間に出るという事は所属不明のままではいられない。連合軍の人間として正式に戦う事がここで確定してしまったのと同じ。
そうこうしているうちにも連合にとってもオーブにとっても都合の悪い事が一気に露呈してしまう。
「銃撃戦か……あくまでもコロニーを潰すまではしないってか。中立国に武器を持って押し入るんだ、どうせ殺すなら同じだろうに」
Gと呼ばれる新兵器の事はケイも知っていた。
自分たちを匿う際にあんなにデカデカと新造艦とMSを見せつければ機密も何もない。むしろTR計画にあてつけるようにも見えた。
そしてザフトはそれを破壊、もしくは鹵獲して利用したいのだろう。わざわざ中立国に足を踏み入れて銃撃戦を行うのだから、作戦への相当な自信があると言える。
「流石に自機を奪われるわけにはいかないな」
曲がりなりにも地球連合とは足並みを揃えている研究所の顔を立てる必要がある―――地球とプラントの双方が関与を否定しているものの、血のバレンタイン事件を起こそうとしたのが誰であれ、核でコーディネイターが大勢死ななかったのが気に入らない人間も連合には多く存在した。
そのため事件の阻止は良い顔をされなかった経緯もある。
銃撃戦の影響を受けないように走りながら思考を張り巡らせていく。
敵が歩兵である以上殲滅するにはこちらも歩兵による銃撃戦が最適ではあるが、しかし歩兵が居るという事は悠々とそこまで近づけたという事実が付随する。
コロニーの外には敵の軍艦ないしMSが待機していると思っていい。つまり相手はいつでもコロニー外から攻撃を仕掛ける事ができる。
「どのみち袋のネズミか」
連合やT3部隊の秘密が暴かれようが、現状オーブが関与を否定したところでザフトの認識は変わらない―――中立が真っ赤な嘘どころか、どこよりも凶悪な研究を行っていると言われても仕方がなく思える。
だがその背景にはプラント―――コーディネイターへの恐怖があるだろう。
どちらが先かなどとはケイも興味が無いが、事実としてコーディネイターの中には無意識にナチュラルを「劣っている者」と差別する人間が多い。
コーディネイターを必要以上に恐れるナチュラルも同じだが―――両者の確執はこの世界でたった1世紀も経ずに深くなった。
ケイにとってはその確執によってTR計画が生まれ、自身が生まれたのは苦い現実だと言えるが。
「ムラサメ少尉!!」
「なんだ、無事だったのか」
ケイが所属するムラサメ研究所のT3部隊、そのパイロットはケイのみであるが整備員や研究員が武装し一か所に留まっていた。
彼らは唯一のパイロットの姿を見ると、まるで子ガモが親ガモに付いて行くように、縋るように近寄る。
普段はあまり良いとも言えない関係だったが、襲撃を受けたこの時だけは生命の危機を感じたのかどれも安堵の感情をむき出しにしてケイの登場を喜んだ。
「『なんだ』って。まるで死んでほしいみたいな……自分たちが居なくなればTR計画は白紙になりますよ。ともかく少尉も出撃を!幸運にも『TR-1』は気づかれていませんが、ザフトの兵士が【G】を強奪し始めています!!」
「分かってる―――ヘイズルの調整は?」
「拡張用のシールド・ブースターと兵装の幾つかは未だ調整中ですが、シールド1基での運用ならば万全です」
整備員が機体の状態を説明するが、それを聞いて嫌そうな顔をするケイを見て整備員らも察した。
ケイの専用機でありTR計画の機体郡にある『TR-1ヘイズル』は、戦局に応じて武装を換装し特性を変化させることで1機で全てに対応できる万能機として開発されているものである。
よりにもよってコロニー防衛という局地戦でその武装が使えないとなると、本来の使い方でも無ければこれからのTR計画に支障が出ると言っていい。
コロニー内での防衛なら、今の装備でも行けなくはないが問題はコロニーの外に居る敵である。
『想定はしていたしそのための武装を開発したが、準備が間に合わず使えません』では話にならない。
「相手には軍艦もいるかもしれないのに、シールド・ブースターは左腕部の1つのみで接近するにはリスクが大きくなる。武装は接近戦想定のショートバレル式ビームライフルにサーベルと多目的ランチャー……チョバムアーマーも無ければロング・ブレード・ライフルも使えないのか」
「チョバムアーマーやバルカンポッドを付けてもいいですが、アレは少尉が『視界や運動性の妨げになる』と言って嫌がってたじゃないですか。それにロング・ブレード・ライフルは運悪くさっき調整に入ったばかりなんです……使えたとしてもコロニーの中や近くで撃ち損じれば大穴が開くどころじゃありませんよ」
ヘイズルは未だ実験のための機体にすぎない。それもケイからすれば過去に実験しつくした機体をわざわざ引っ張り出してきたのだ。
データ収集の都合上中立の隠れ蓑としてこのヘリオポリスへ来たものの、連合の完全な支配下でもない場所に極秘計画の全てを持ってくるわけにもいかず、現実としてケイの本来の乗機やヘイズルが想定していた兵装の殆どが使えなかった。
そうこうしているうちにも連合からの出撃命令が発令され、ケイはしぶしぶといった様子でシンプルな愛機のコックピットへついた。
「良いですか?少尉は連合への被害を少なくすることを第一にしてください。最悪コロニーが崩壊しても、それはザフトの引き金によるものです」
「……了解」
コロニーが崩壊しても問題ない。
それはオーブを見捨ててでも軍の機密を守れと言う事でもあり、今現在銃を持って戦っている連合の兵士ですら有事の際は見捨てるという発言でもある。
ケイにとっても最悪、自身もそうして捨てられていくのだろうと察しがつく。兄弟たちはそういった「大人の不都合」によって死んだのだから。
TR計画はまさしく連合と研究所、T3部隊にとっての虎の子と言えるのだからそういう措置が取られても仕方がない。仕方がないのだ。
「機体の進路上に居るやつらは道をあけろ!『ティターンズ』のケイ・ムラサメが出撃する!」
「『ティターンズ』!?こんなところに何故、それにあのMSは……」
「ティターンズもヘリオポリスに居たのか……ならコーディネイターもこれで終わりだな!!」
機体のスピーカーから発せられたその声に、連合の関係者は戦闘の勝利を確信した。
ティターンズ―――表向きは地球を守る『大地の子ら』という意味を持った地球連合のエリート部隊となっているが、その実態は連合がニュータイプを研究する独立機関『ムラサメ研究所』とその被験体を用いたMS開発部門とテストチーム『ティターンズ・テスト・チーム』通称『T3部隊』に与えた仮初の組織名である。
言わば実験のデータの一部を連合と共有する事で、研究所と開発チームは資金と後ろ盾を得たと言える。
地球連合ではまことしやかにその存在が噂されていたが、それが血のバレンタイン事件で核を撃ち落とした『白兎』だとは思いもよらなかっただろう。
結果的に事件の舞台「ユニウスセブン」は内部に潜伏していたテロリストによって崩壊してしまったため、白兎の存在も世に大きく報じられる事は無かったが。
「―――こんなところで計画を終わらせてたまるか……ティターンズ・テスト・チームの力を見せてやる」
ケイの想いを汲んだように、ヘイズルのツインアイセンサーが光を灯した。
◆ ◆ ◆
ザフト軍の歩兵が襲撃を行った直後、キラはその事態に困惑しつつも嫌にクリアな思考で避難行動に移る事が出来た。
とにかくシェルターに逃げ込む―――コロニーという一歩外に出れば生身では生きられない環境だからこそ、コロニーに住む者たちにとってはそれが最善の方法である。
しかしキラは逃げる人々とは別方向に走る人物を見かけ、善意から追いかけてしまった。
「ちょっと君!シェルターはそっちじゃない!!」
「放せ!私には行く場所が……お前こそさっさと逃げろ!」
キラがその腕を掴むとようやく二人は足を止め、少しお互いの眼を見合う。
深く被られた帽子の中には金髪、そして端正な顔だちの少女がそこに居た。
「女の子…?」
「何だと思ってたんだ!」
「あ、いや……」
極力喋らず、迫力を纏っていたからてっきり男だと思っていました。とは言えるわけもなくキラは狼狽えた。
自分の知るところにそういった女性が居なかったからだと言うのもあるが、この少女にただならぬ何かを感じさせるところがあったのも誤解が生まれた要因だっただろう。
「悪いが私にはまだ行くべき場所があるんだ」
「そんな事言ったって、外はもう滅茶苦茶だよ!」
「そんな事はどうでもいい!」
「無茶な!巻き込まれて死んだら元も子も無い!」
特別な用事でもあるのだろうが、しかしどこか浮世離れしているようにも見える。今外に出れば銃撃や爆発に巻き込まれて用事どころではない。
数秒の押し問答の末に、キラは少女を無理やり引っ張ってシェルターに連れていく事に決めた。
恐らくパニックになって家族を探しに行こうとしているのかもしれない―――そう考えれば今はとにかくシェルターに連れていくのが最適だと判断できる。
「放せっ!」
「いいからこっちに!」
コロニーにあるシェルターのうち、まだ近くに残っていそうなシェルターを脳内で探して走る。
その間にも爆発音と悲鳴がそこかしこから聞こえてくる―――死がすぐそこまで迫っている現実がキラの足を急かす。
―――道をあけろ!ティターンズが出るぞ!
―――ダメだ!Gが盗まれた!!
―――いやぁ!!私のGAT-Xがっ!!
キラたちの行く先からそんな声が聞こえた時、手を繋いでいた少女の動揺が手から背中から感じ取れた。
「ティターンズだって!?お父様はヘリオポリスで一体何を…!!」
「ティターンズ……?」
通路から開けた場所へ出る二人。
そこには銃撃戦を行うザフトの兵士と連合の兵士、そして奪われたと思われるMSと―――キラが何度も動画で視聴していた白いMSが閉ざされていたゲートからゆっくりと歩いて出てきた。
目立つ左腕のシールドには3つのTを合わせたマークと白兎のエンブレムが備えてあり、それが『白兎』だと思わせるには十分な要素だった。
「あれは、白兎……」
「何でこんなところに連合のMSが……!!しかもあの白い機体は何なんだよ!オーブは中立じゃなかったのか!」
少女がその機体に吐き捨てるように叫ぶ。
世に出ない機体がここに5機も存在している事はオーブにとってあってはならない事態である。幾ら戦争から遠ざかるためにオーブに居るキラと言えども、その事実は理解できた。
そしてその1機が白兎―――件の核攻撃を瞬く間に沈めた謎の機体。
―――つまり連合は血のバレンタインを起こそうとしていたわけではない?
色々と考える事はある。
しかし白兎が構えた事でキラの思考は完全に現実へと引き戻された。
「始めるつもりだ!本格的になる前に早くシェルターに行こう!」
「うわっ!?急に引っ張るな!!」
少女を掴んでまた走る。
視界の端で閃光が走り、白兎の持つライフルからビームが射出され一つ目のMSが1機堕ちた。
耳をつんざくような轟音の中、キラは残っていたシェルターに少女を押し込む。
「何を……!」
「僕は別のシェルターに行くから大丈夫!」
そう言って少女をシェルターへ送ると目もくれず走る。
白兎がどれほどのMSであれ、コロニーの中での戦闘は極めて危険な行為である。
ビームライフルで戦闘をすればコロニーに穴を開ける事になるため、少しでも遅れれば空いた穴に生身で吸い込まれて死ぬ事もあるだろう。
しかしキラは足を止めてしまった。
視界の端で、銃を持つツナギを着た女性が狙われるのが見えたからだ。
「危ない―――後ろ!!」
「っ!!」
女性はキラの声に反応し、咄嗟に回避した後敵を撃ち殺した。
声の主が子供であったことに動揺した女性だったが、キラへ叫ぶ。
「民間人が何をしているの!?」
「左ブロックのシェルターに行きます……お構いなく!」
「もうあそこには扉しかないわ!!こっちへ!!」
扉しか無い―――シェルターの中身は脱出済みという事だろう。つまりキラには行くあてが無くなった。
他に行く場所が無いが女性の下へ行けば戦火の真っただ中であり―――しかしキラにはそれ以外の方法が見つからず、少し横着をして高所から女性の下へと飛び降りる。コーディネイターだからか、着地は難なくこなした。
「なっ!?無茶な事を……ぐっ!」
「だ、大丈夫ですか!?」
高所から飛び降りるキラに視線を移したばかりに女性が右肩を撃たれる。
慌てて近寄るキラだったが、その発砲の主を見てさらに驚く事となった。
「あ、アスラン……?」
「キラ……!?」
キラの脳裏には、幼い頃からの親友の姿が浮かんだ。
その顔と、目の前でライフルを構える兵士の顔は瓜二つ―――別人なわけがないと直感で分かった。
狼狽える二人を他所に戦火は激しくなり、やがてあわや爆発に巻き込まれると言ったところでキラは女性によって足場にしていたMSのコックピットへと押し込まれた。
その間に幼馴染は別のMSへ搭乗し、その場を離れて行く。
「何なの、急にザフトが攻めて来たと思ったら白兎にアスランに……!!」
「良いから今は私の言う事を聞いて―――あの白いMSと一緒に敵を討つの」
「な……なんで!?僕は民間人ですよ!?」
「民間人が軍事機密を知った以上、私は君の処分を上層部に仰がなければならないの。G兵器だけではなく、何故居るか分からないティターンズの機体……そのまま帰すわけにはいかないわ。今は兎に角生きる事を最優先に考えて」
アスラン―――キラの幼馴染が乗った機体は他の強奪された機体や随伴の機体と一塊になっているが、それを白兎が単騎でつかず離れずの距離で追跡している。
ザフトも未だMSを完全に解析していないからか、射撃戦ではなく格闘戦主体で白兎を落とそうとするも失敗している様子だった。
「生きるために……」
「そうよ、ここから出てもザフトの兵士や艦隊が居るもの―――生き残れば私が身柄を保障します。必ずあなたを安全な位置まで送り届けるわ」
そう言うと女性士官はMSの操縦桿を握り、ゆっくりと機体を起こし始めた。
Tips:ムラサメ研究所
ケイの所属する、宇宙のどこかにある謎の研究機関。地球連合軍と手を組んでいる。
所属する者はナチュラル、コーディネイターを問わず何かしらの目的があり所属している。
そのため、この研究所はコズミック・イラきってのパンドラの箱と呼んでもいい技術を保有している。(理論や実験機があるだけで即時利用できるわけでは無い)
ケイの祖父はジョージ・グレンの木星探査にも一枚噛んでおり、その際の技術の応用で裏でコソコソとザフトがジンを作るよりも早くにMSの原型『ジム』を作った。
ジムはザフトのMSとは別の流れを汲んでおり、出典元の機動戦士ガンダムのジムよりも見た目が変わり大きく劣った作業用人型建機と言っても良い性能をしている。
そこから発展したのが『TR-1ヘイズル』である。
Tips:TR-1ヘイズル
ケイの乗る白いMS。傍から見ればまるでケイの愛機のようであるが、その実ムラサメ研究所では型落ちも良い所。
ジムの発展形に頭部パーツを取り替えただけの本機は動きが鈍く重量は重く、さらなる発展を遂げたTRシリーズを知るケイにとっては「化石」という認識。
Tips:ティターンズ
連合軍に存在すると言われる『大地の子ら』を意味する名前の謎の特殊部隊。現状ではテストチームしか存在しないためT3部隊とも言う。
その情報の無さと連合のMA乗りが悉くこの部隊の機体テストに挑戦し失敗した事から、曰くエリートでなければ所属出来ないなどと噂されている。
その実態は連合の資金を得て活動するムラサメ研究所の隠れ蓑。
ちなみに大地の子らと言っているものの、ケイは生まれも育ちも宇宙のナチュラル。
主人公の見た目に関する挿絵
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