機動戦士ガンダムSEED TR -輝ける星を目指して‐ 作:開いたぞ、性癖の扉が!!
第八艦隊の迎えを受けたアークエンジェル。
その期待とは裏腹に実態は新米ばかりの痩せた虎とも言うべきこの艦隊は、MSの開発を打診し連合軍から冷遇されている知将と呼ばれるデュエイン・ハルバートンが指揮していた。
MSへの期待が高まったのはつい最近だ―――つい先日のヘリオポリス崩壊の時に連合軍の新造艦を守ったティターンズのMS。それがきっかけだった。
ハルバートンがその迎えに出た頃には、掌の返すのが早い連合軍はかねてよりMSへ主力機を移行しようとし礼遇された彼を無視して準備されていたMSの量産に全力GOサインを切った。
今のハルバートンは苛立ちでいっぱいだった。
何せ自身が先見の明を発揮して唱えていたMSという兵器の有用性に今頃になって連合軍首脳は気が付いたのだ。
MAなどは重力下での運用性はこれまでの戦闘機と変わらないが、宇宙ではMSと相対するために火力と運動性能に欠ける。だからこそMSが必要なのだ。
強力な装甲と強大なパワーを持つ兵装、そして何より宇宙での360度の空間をフルに使う高機動戦闘は直線的な軌道をする小柄なMAでは不可能だ。それらには莫大なエネルギーが必要であり、そのためには大型化するしかない。
そうなれば動きの単調なMAは大きな的―――ターキーシュートにされてしまうだろう。
「しかし、ティターンズか」
ティターンズ―――今の利権絡みで身動きの固い連合にとっては厄介な相手である。
特殊部隊であり技術屋でもある彼らはザフトがMSを生み出すより前にその先祖とも言うべきものを作っていたと言う―――かのジョージ・グレンが木星探査の時に使った作業機の応用だ。
そんな技術がありながら、連中は今まで雲隠れするように話題にあがらなかった。胡散臭いにも程がある。
だがハルバートンは表立ってこれを批判する事が出来なかった。何故なら彼がMSを推進する側の人間である限り彼らの技術はハルバートンにとって垂涎ものだったからだ。
それにあのアズラエル財閥が関わっていると聞く―――あの女狐が動いているとなればとうとう怪しさは増す。ブルーコスモス絡みという事だ。
ブルーコスモスの中でも比較的穏健とも言える彼女は、地球の自然保護と再生を謳ってザフトと敵対しているが―――連合軍に与している以上、かの血のバレンタインのようにプラントそのものに核を撃ち込みコーディネイターを根絶やしにしたいと考えている可能性も無くはない。
そんな人間にMSという兵器を与えてまともになるわけがない。
だがこの現在においてティターンズへ資金を、人を優先的に使おうという輩が居るのも事実だ。
その出資者たるムルタ・アズラエルの表立ったスローガンは『経済危機や戦争やニュートロンジャマーによって疲弊した地球とそこへ住む人々の生命を分け隔てなく守るため、害をなす者は何であれ排除する』だ。
幾ら過激派の父親やジブリールと仲が悪いからと言って、コーディネイターに対しての明言を避けここまでブルーコスモス性を隠したスローガンも無いだろう。
だがこれが支持されてしまっているのが現実だ。プラントが害をなさないのであれば、手を付ける必要はないという考えの人間を―――コーディネイターやナチュラルを上手く吸い取っている。
ある意味ではコーディネイターすら懐で飼いならして利用し、利権を得ようと言うのだ。
自治権をめぐる色々な問題は連合、プラント双方に問題点があり―――理事国がプラントの建設の際に手に入れた利権を捨てる事を嫌がったのが拗れた理由の一つでもある。
ただ原因はあまりにもプラントに対して自給自足を制限させるといった厳しい条件を突きつけた理事国にあり、それらに愛想をつかす人間が増えたという事だろう。
プラントを作った目的はジョージ・グレンの研究に一枚噛むためにその建設費用を出資したのが始まりだった。つまりこの時点ではwin-winの関係にあったのだが、プラントの生産能力が高過ぎたがために理事国の不安を煽ってしまい厳しいノルマを課されてしまったのだ。
それに反発したプラントは現在に至るまでに対立の姿勢を崩していない。
そんな相手を前に連合は国家、そしてブルーコスモス、そして新派のアズラエル派に分かれかけていた。
もしこれが一大派閥となり、連合やブルーコスモスと完全に袂を分かてば大変な騒動になるに違いない。
ハルバートンは決断をするときが刻一刻と迫っている事を感じ取っていた。
身の振り一つで味方に撃たれる事になるかもしれないのだから。
「さて、どうしたものかな」
ハルバートンは知将と言われてはいたが、現状でその力を発揮するのは難しいだろう―――なにせ知力はあっても武力を削がれ、補給も渋られているのだから。
アークエンジェルには申し訳ないが、彼らに補給する事すらもままならなかった。
ティターンズの兵士が居るのであれば、アズラエルから援助が貰えたかもしれないが―――得体のしれないものに借りを作るのも良い手とは言えない。
ともあれ、アークエンジェルとストライクが無事な事は良かった。
これをアラスカの本部まで持って行けば、連中は舌を巻いてMS路線に更なる発破をかけることだろう。
そしてアークエンジェルの艦長を務めたマリュー・ラミアスはかつての教え子であるが、それが1つの戦艦を指揮してこうも生き延びるとは。
ハルバートンの頭痛の種は一つや二つでは無かった。
兎に角、今は合流してその実態を調べなければならない。彼は眼前に迫る白い艦を見て唸った。
◆ ◆ ◆
キラはようやく手に入りそうな平穏に心を休めていた。
第八艦隊―――何だか強そうな名前のその艦隊が来れば、アークエンジェルもストライクも正規の軍人に入れ替えられて自分たちは解放される。
それはまさしく地獄からの解放であり、長らくストレス下で戦闘をしていた彼女にとってとてつもない朗報だった。
艦内は浮足立っており、サイやカズイ、トールにミリアリアも随分と明るい顔で話をしていた。
「はぁ~、やっと降りられる」
「いやぁ……本当に良かった」
口々に喜びの言葉を放つ中、キラはふとケイの事を考えてしまった。
自分たちが降りればケイはどうなるのだろうか。
マリューやナタル、ムウも居る―――だがMSで戦えるのはキラとケイだけだ。
そうだ―――ケイ・ムラサメは連合軍の軍人だ。キラはやっと思いをはせた相手が軍人だと言う事を思い出した。
では、と最近は居心地の悪い同級生たちと別れたキラは整備のために格納庫へ向かったケイを探しに行った。
「ケイ!」
格納庫にたどり着くと、大人に混じったその小さい背中を見れば誰だかすぐに分かった。
ムウやマードックと共に何かを話しているケイはこちらを一瞥すると、不愛想にまた視線をムウやマードックに移して話を再開する。
対する大人二人はそれに苦笑いしつつも、キラに同情的な目を向けて話すのを躊躇った。
「何、話してるんです?」
「え?……そりゃあ、今後の進退だろ」
「まぁオレは整備員だからここを動くわけにはいかねえだろうが、艦を降りた嬢ちゃんたちの空いた穴をどうするかって話をな」
「それって……やっぱりストライクが問題ですか?」
キラは薄々感じていた戦力としてのストライクのパイロット問題を聞いてみる事にした。
が、思っていたのとは違う答えが返ってきた。
この時のキラは少しばかりストライクに乗れる事をアイデンティティのように感じていたし、アークエンジェルを降りる事を止めるような返事が返って来ると思っていたのだ。
しかし―――
「いやぁ?今はまだメビウスを降りるつもりは無いけど、ストライクは俺が頑張って操縦を覚えるかな―――MSの操作じゃ頼りになる先輩もいるし」
「OSが違うんだから、戦闘機乗りに戦車のコツを聞いてるようなものですケド」
「心構えとかで良いんだよ……そういう不可能を可能にするのが、俺って男よ」
ムウのやたら整った顔から繰り出されるドヤ顔に二人は無視を決め込んだ。
暫くの静寂の後、居たたまれないムウを他所にマードックはケイに今までの疑問をぶつけることにした。
「しっかし坊主の機体のOSはどうなってんだか―――機密って言われてオレは整備すら殆ど手ェ付けてねぇが、ナチュラルの子供のお前さんが乗れるんだ……あの機体のOS積めば大尉でもストライク動かせられるんじゃねぇのか?」
「整備に関しては専門家が居るから必要ないってだけで……OSに関しては機体専用でも無ければ―――言うなれば俺にしか使えないってだけです」
「嬢ちゃんの作ったスパゲティコードみたいなもんか?」
マードックは親指を立ててキラを指す。
ケイは頭に美味しいパスタを作ったキラを思い浮かべて、それがMSと何の関係があるのか分からず説明を要求した。
「すぱ……?」
「スパゲティコード……複雑に絡み合ったソースコードとか、そういった意味合いの言葉だよ。僕のは急ごしらえだったのもあって複雑すぎるんだって」
ああ、とケイは何となく理解した。
とどのつまり目の前の少女が異様な事をしたんだなという認識で。
だが三人の意識はケイの無知ではなく、やはり未だ謎の多いMS―――ヘイズルと少年の事だった。
このまま別れて謎のままより、やはり知りたい気持ちの方が強い。
ムウはそれどなくといった具合に言葉を選んだ。
「しかし坊主はテストパイロットって言うし……ヘイズル、だったか?これが連合の主力機になるとすれば恐ろしいもんだが―――生産できんのかね?」
正直に言えば、連合の技術開発の進化の過程をすっ飛ばしたこの機体を連合が作れると思っていなかった。
ティターンズと名乗ってはいるが、恐らく別の組織の人間が連合に加担しているのだろうというのは―――ケイ以外の整備員や研究員といった人間を見ればわかる。
何せ未だにムウやマードックといったアークエンジェルの人間はヘイズルの細かい情報を知らない。
この機体に何が積まれているのか、どんなOSで動いているのか―――なぜパイロットがケイ・ムラサメでなくてはならないのか。
その色々な考察を含めた質問ではあったのだが、それに対して少年はあっけらかんとして言った。
「無理」
「いや結論出すには早すぎだろ!?」
「だってアレ、俺でしか動かないから増やしたところで……」
「……生体認証とか?」
「そんなとこ。……ただ量産に関しては今のままじゃ誰も乗れないから、スペック落として盾とビームライフルとサーベル持たせた簡易版を開発しましょうねって段階になったのは聞いてる」
「それで勝てんのかぁ?」
「『ジンにコテンパンにやられてるからせめてスペックで同等のモノを作ろう』ってのは間違ってませんぜ。兎に角今は相手と同格の土俵に立たねえと」
マードックがムウに言う通り、現状ではジンにすら良いようにやられているのだ。相手がプラントのコーディネイターでなければ―――例えば連合のような数を揃えた軍勢であればジンを大量生産するだけでも連合はかなりの被害を被るだろう。
ともあれ、ケイの言う通り現状のヘイズルは量産には向かなかった。
というのもヘイズルのパーツ自体は量産を目指した設計であり難しいものではなかったが、問題は中身だった。
強化人間人格OS―――『BUNNyS』と呼ばれたOSはコズミック・イラきっての闇の結晶のような技術で作られた。
計算だけでなく思考するOS―――幾人もの人間の技術、知恵、経験、そして命を吸って現在進行形で育てられるそのOSは、ケイとムラサメ研究所の真の財産とも言うべき代物だった。
研究所にとっては秘匿したいのはMSの技術ではなくこのOSにまつわる事全てだ。
そして心血を注がれ育ったそのOSは研究所が想定していたスペックをはるかに凌駕した結果乗り手を選ぶようになった。
だからこそ量産するにあたってこれらOSを別のモノ―――『BUNNyS』の学習結果を基にした、外に出しても問題ない代物を用意しなければならない。
それ自体は簡単だが、研究所と連合はそれなりに距離を取っているためすぐに売り渡すなんてことはしない。
何せ連合はまだ出来上がって10年も経たない組織だ―――バカげている話だが、内ゲバが激しい。アルテミスの件のように。
「ヘイズルに載ってる教育型コンピューターから吸い取ったデータを量産型のOSに入れて何とかするんだろうけど」
「……教育型コンピューター?」
キラが反応した。
反応自体はしていたのだが、会話に入れなかったのだ。
ヘイズルのOSはキラも思う所があり、ナチュラルのケイが扱えて尚且つあれだけの動きができるOS―――ストライクのOSを書き変えたキラからすれば喉から手が出る情報だった。
「ヘイズルは戦えば戦うだけそのデータを自分で覚えるんだよ。だからロックや予測や回避行動のある程度は機体がやってくれる―――俺は使ってないけど」
「いや使ってないのかよ」
「―――自分で感じて動かした方が早い。初期より断然改善されてるけど、直感にダイレクトに反応してくれなきゃ困る」
「ケイの直感って、アレだよね……敵がレーダーに映ってないのに撃つとか、避けるとか」
キラは思い出す―――戦いの最中でケイが行った意味不明な行動と、その行動によってもたらされた戦果を。
敵が見えないと言うのに正面にライフルを撃ち、なんと直撃した。
敵との交戦中に相手の銃口から弾が射出されるよりも先に回避行動をした。
そうした未来予測にも似たケイの直感はキラには真似出来ないものだった。
ケイからすればOSのサポートをロクに受けないのは理由があり、機械に頼り過ぎる事で過信を生んでしまう事や、BUNNySに頼るほどの複雑な兵装をヘイズルが積んでいない事にある。
かつての愛機であれば、その仕様をフルに使う機会もあるだろうが―――この戦争中に見られるかどうか。
ただOSとしてはワンオフという事もあり破格の性能をしており、正直に言えばパイロットは従うだけで生き延びる事が出来ると断言していい。今の状態でもOSだけの無人操作による戦闘は可能だ。
ケイの直感、それについてムウはまたしても気になっていた事を思い出した。
「直感か……俺も似たような事を感じる事があるんだが、もしかして同じようなモンだったりしないか?」
「?」
「例えば……そう、ラウ・ル・クルーゼが戦場に出た時、俺はアイツの居場所がわかる。アイツも俺の居場所がわかる……と思う」
「…………へえ」
それはニュータイプである可能性はある。
ムウのメビウス・ゼロに搭載されたガンバレルを扱える能力もニュータイプのサイコミュ兵装への適性に似ているし、あり得ない話ではなかった。
そもそも研究所がニュータイプの存在に気が付いたのがケイの父親の代である―――他に先人が居てもおかしくはない。
ケイが考え込むよりも先に熱が入ったのはマードックだった。
「だとしたらやっぱりMS適性もあるのかねえ、大尉には」
「あってほしいけどな?いくら愛機とはいえ、メビウスはそろそろ通用しないだろうし」
ムウもまた彼の言葉に同意する。ザフトは既にいくつものMSを生産してきた―――その技術の進化速度であればジンが型落ちになる日も遠くはない。その脅威を生で感じてきたのがムウだ。
一方でキラは自分の頭の中の構想に夢中になっていた。
「教育型コンピューター…………教育型コンピューターか……それがあればストライクのOSがナチュラルに適さないのも改善できるかな。僕やザフトのMSの動きを真似出来れば訓練したパイロットなら十分動けるだろうし……そうなれば」
「何をブツブツ言ってるんだ……」
教育型コンピューター、ナチュラルでも複雑なOSを使ってMSを動かすには支援AIのような存在が欠かせないだろう。
そこでキラやケイの動き、思考を再現できるようなOSがあれば―――言い方は悪いがコーディネイターに操縦で劣るナチュラルでも動かせるようになり戦力個体差は少なくなるだろう。
むしろ学習元の質が良ければ良い程その価値はある。
ケイのようにOSの示す補助が無い方が戦えると言うのであれば、学習される側に回ってその他大勢の戦闘経験値を増やす事も出来る。
しかし果たしてケイの機体に搭載された教育型コンピューターをどうやって簡易化し量産するのか。
ここにムラサメ研究所と連合軍の脅威のメカニズムと量産体制が活きてくるのだが、キラは知るところでは無かった。
そしてどうにもオタク気質が漏れ出てしまったキラはケイにドン引きされた。
◆ ◆ ◆
デュエイン・ハルバートンを迎えたアークエンジェルの搭乗員は、その人柄の良さそうな姿に安堵していた。
何せ第八艦隊の長とも言うべき人物であり、階級で全てが決まると言っていい軍隊では彼は准将である。上から数えた方がよっぽど早い。
そうしてハルバートンは輸送船から降りると、一目散にマリューへ労いの言葉をかけた。
「ヘリオポリス崩壊の報せを受けた時はどうなるかと思ったぞ―――それがこうして合流できるとは」
「ありがとうございます、お久しぶりです閣下」
「うむ……道中でも色々と災難だったな」
で、とハルバートンは後ろに居た士官たちを見た。
ナタルとムウが名乗り出て挨拶をすると、ムウを見たハルバートンはその名と姿にエンデュミオンの鷹の異名を思い出した。
「いや、君がいてくれて良かった」
「いえ、俺は大して……」
ムウは視線をケイに移す。
何せ戦闘の殆どはケイによって艦に傷なしといった具合であり―――ストライクも消耗が少ないおかげか未だに綺麗な姿を保っている。
そんなムウの視線に気が付いたハルバートンが、ようやく一際小さい軍服の人物を見つけた。
―――子供じゃないか。
その余計な事を悟ったのか、ケイの眉が動く。視線が合うと一歩前に出て敬礼した。
「ケイ・ムラサメ少尉であります」
「君がティターンズの…………ムルタ・アズラエルの寵愛を受けるだけある」
ハルバートンはその少年を見て、色々と思う所があった。
これは確かにあの女が父親と袂を分かって別派閥を作るだけあると。要するに彼女は彼に首ったけなのだろう。
まあ本当に容姿だけなのであれば彼女がパイロットなどにするわけが無い―――報告に聞いた戦果は真実なのだろう。
大地の子、とはよく言ったものである。これが自然由来の産物であるなら、人間はわざわざ容姿の遺伝子を弄ったりはしない。ハルバートンはMSに乗れる事や浮世離れした容姿のケイをコーディネイターだと思っていた。
何せムルタ・アズラエルは自身に従う者であればコーディネイターでも懐に入れる女だ。そういう意味では確かに彼女の父や対立するジブリールとは別の考え方でもある。
それに連合の特殊部隊に居るコーディネイターは多い。その能力もあるが、ナチュラルの軍では表立ってコーディネイターで居る方が難しいからだ。
「その働きは聞いているよ。随分頑張ってくれた」
「お心遣いありがとうございます」
「ん、見たところ若いが……幾つだね」
「15になります」
「15……さしずめ孫と言ったところかな。こりゃ参った、ははは」
ハルバートンは顔と声では笑ったが、内心でそれほどまでに若い人材をどこからか調達してきた軍に対して呆れていた。
孫とも言うべき年齢の子供が、自分が欲していた兵器のパイロットという―――それも他の大人たちが動かせない代物だ。気に病みもする。
しかしそうも言ってられないのが戦争だ。プラントと戦う前から、地球ではこれくらいの子供がゲリラになる事も少なくはない。
その小さな肩に手を置きながら、ハルバートンが期待を込めて言う。
「君のような人材が居るならば、使えんひよっこの押し付け合いに負けた第八艦隊を辞めてティターンズに入隊でもするか―――がはは!!」
「質の悪い冗談をおっしゃらないでください」
「なに、いずれ分かる―――あの女狐がMSの開発に一枚噛み、この子がそれに乗って戦果を挙げた……発言力が増したら後は人材の更なる確保だろうよ。そうなれば私のような冷や飯食いは勝ち馬に乗らなければ厄介払いの受け皿になり腐るだけだ―――君とて男だ、性能の良い最新鋭の技術を搭載した戦艦に乗って時代を作りたいだろう」
「それは……」
窘める副官を逆に言いくるめるハルバートン。
アズラエルは既にMSのパイロットになる候補を手元に置いているという―――それらが彼女謹製の金のかかったMSに乗れば何かが変わるかもしれないというのだ。
それに新造艦を彼女が大枚を叩いて半ば私物化しようとしているだとか、そういう話もある。
財閥のお嬢様が首を突っ込む事ではないが、それほどまでにアグレッシブな組織であれば停滞しきった連合の凝り固まった価値観も動こうというものだ。
やれユーラシアだの大西洋だのとは言っていられない所まで来ている。ブルーコスモスという組織が既に連合の中に根を張ってしまっている以上は排除するか、或いはどちらがマシかを決めなければならない。
そうなればハルバートンは己と連合の未来のために選択する事を厭わない。
「で、あそこにいる彼らが件の民間人だな」
マリューやケイよりもさらに後方―――固まるようにしてハルバートンを見る少年少女を見てやはりと言うべきかハルバートンの内心は良い物では無かった。
「ストライクを動かしたと言うのは?」
「―――僕ですけど」
「……ほう、君が」
ストライクのパイロット、こちらも見た目麗しい少女だった。
薄幸そうな雰囲気をした大人しい少女だったが、報告にあったストライクの難解なOSを一瞬で書き変えたという才能の持ち主。
ケイ・ムラサメといいこの少女といい―――その細い体のどこに才能が隠れているのか分からないものだ。
「まあ、話は追々だ―――まずは諸君らの協力に感謝する。そのおかげでここまで艦とMS、そして他の民間人も無事だ。君たちのご家族に関しては所在が分かっている……皆さんご無事だ」
その報告にアークエンジェルのクルーとして働いていた民間人は皆安堵した。
何せコロニーが崩壊したのである―――地球での戦争と違い、コロニーの外は宇宙だ。ノーマルスーツ無しに外に出るなんて事は出来ない。
そうした中で避難出来たというのはとてつもなく幸運だった。恐らくはアークエンジェルでヘリオポリスから旅立ったあの日以来の朗報。
浮足立つには十分過ぎる内容だった。
その幸運も、その後の事を思えば些細なものだったと彼らは気づく事になる。
主人公の見た目に関する挿絵
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いるね
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いらないね