機動戦士ガンダムSEED TR -輝ける星を目指して‐ 作:開いたぞ、性癖の扉が!!
戦艦、アークエンジェルには生き残った地球連合軍の士官とMSに乗ってしまった民間人とその友人―――そしてT3部隊が顔を突き合わせていた。
「バジルール少尉!」
「ご無事で何よりでありました!」
黒い短髪の女性『ナタル・バジルール少尉』が敬礼を行うと、出迎えられたマリューもまた敬礼を返す。
傍らにはサイ達を始めとする民間人が居心地悪そうに立っており、その奥に『ストライク』と『ヘイズル』が格納されていた。
アークエンジェル発艦後マリューの通信によって合流を果たそうとしたヘイズルにナタルは見覚えが無く、乗艦拒否を突き出しそうになったというトラブルもあった。
「貴方たち、よくアークエンジェルを守ってくれました……それで、この艦の艦長は?」
「……艦の主だった将官たちは皆戦死されました。残っているのは下位士官と十数名のみであり、現状はラミアス大尉が最も階級が高く―――艦長にはラミアス大尉がその任にあると思います」
「なんですって……!?」
マリューの階級は大尉―――上から数えても6階級も下であり本来は戦艦の艦長を務めるような階級ではない。
しかし現状はそうも言っていられない―――上位士官が居ない以上、マリューに白羽の矢が立つのは軍の規律的に何ら問題は無かった。
そんな絶望的な状況を知ったマリューや、その無理難題を押し付ける事になり黙り込む連合軍の生き残りたちをよそに二人のMSのパイロットが機体から降りる。
「子供じゃねえか」
誰かが言った言葉はその場に居た全員の総意だった。
年端もいかない子供―――紛争地やゲリラでは見るだろうが、正規軍として採用するには若過ぎる子供が二人もMSから降りて来たのはざわつくのも無理はない。
特にナタルはその現実を目の当たりにしてショックを受けたのか、暫く動かなかった。
「……片方は民間人、片方は連合軍特殊部隊『ティターンズ』のパイロットです」
「特殊部隊!?あの子供がですか!?」
ナタルが指を指して確認する。失礼な事ではあるが、それほどにMSというものは難しい扱いを強いられるものであり子供に出来る芸当ではない。
しかしマリューはティターンズという組織について、数少ない分かっている事をナタル達にも共有するためにそれを諫めた。
「やめなさい、バジルール少尉―――あの子……ケイ・ムラサメ君の階級は少尉。聞くところによればティターンズでの階級は連合の1階級上の扱い……低く見積もっても貴方と同等か、実質的には貴方よりも階級は上よ」
「なぁっ!?」
怒りで頭が爆発しそうな勢いでナタルが叫ぶと、後ろからトコトコと歩いてきたパイロット―――ケイがすれ違いざまに見上げて煽った。
「文句があるならさっさと昇級すればいい―――"少尉どの"」
「―――ッッッ!」
―――『俺はこの歳で少尉、いや中尉待遇だけどな』。そう言いたげな目をしている、というか何故かそう"感じた"。
『やけに整った顔しやがってこのガキ』と大人として"分からせ"たくなった気持ちを軍の規律を脳内で反復させて抑える。
T3部隊の人間と合流するまでクスクスと笑うガキに顔面の熱量が上がるのを感じながら、しかしナタルは冷静を装って会話に戻った。
「そ、それでッッ!!そちらの民間人ですがッ!!」
「ええ、彼はキラ・ヤマト君……そちらの民間人の子供たちの友人で、MSに乗って戦ってもらってたの」
ナタルは激怒した。ものの1分足らずの再びの爆発であった。
◆ ◆ ◆
しばしの休息の中、アークエンジェルに遅れてやって来た友軍機があった。
ムウ・ラ・フラガと名乗った青年は母艦を失い、その上突発的に起こったシグーとの戦闘で乗機をひどく損傷した状態で着艦した。
彼の名は有名であったが、今はその話題はさして会話の議題に上がらなかった。
ちぇ、と思う気持ちも無いでもないが、ムウ自身もまたこの議題に興味を持っていた。
―――民間人がMSに乗って戦った。
―――G兵器と同時にヘリオポリスに隠蔽されたティターンズ、その機体が件の白兎だった。
―――両機体のパイロットが子供であったこと。
「戦争ってのはつくづくヤなもんだ」
白兎、『TR-1ヘイズル』と言ったか。ムウは眼前にそびえ立つ頑強そうなMSを見て、パイロットへ目を移した。
核攻撃を阻止したのが、15歳の子供だったと世に広まればどう思うだろうか?
それが常人にこなせる業だろうか?
そして何故彼は平然とMSに乗って居るのか?
恐らくはムウの予想にあるどす黒い人間の汚い欲望によって彼は戦わされているのだろう―――或いはそれを疑問にすら思わないように育てられた可能性がある。
ムウはこの機体のパイロットを見るまで、むしろ手放しに称賛していたほどには信頼を置いていた。
何せザフトのMSを退けた上にこの機体に損傷はない―――コロニーに穴は開いたもののそれなりの腕が無ければ出来ない芸当だろう。
惜しむらくは取り逃がしたことだろうが、現状の戦力を鑑みればアークエンジェルとストライクが残っただけで万々歳だった。
しかし蓋を開ければ、その蓋が地獄の釜の蓋だった事に気が付き落胆もした。
「それに何だったんだ、頭に流れ込む何かは」
白兎がシグーと激突した瞬間、シグーに蹴とばされて戦線離脱を余儀なくされていたムウは何かを感じ取っていた。
それが何かはよく分からないが、もしかしたら白兎に何かあるのかもしれないという事だけは分かる。
「ティターンズ……ケイ・ムラサメか」
得体のしれない部隊と、その少年パイロット―――きな臭さしか感じないそれにムウは厄介な事に巻き込まれたと頭を掻いた。
もう片方の子供が第一世代のコーディネイターだと言う事も分かったし、この艦は疫病神かもしれない―――そう冗談めいて鼻で笑うが、現実として本来ストライク等のG兵器に乗るはずだったパイロットたちのデータを見たことがある。
その映像ではよちよち歩きの子供よりも動きが悪く、散々な結果であり―――キラという少年とケイという少年のMS操縦技術は感嘆の声が出る程確かなものだった。
その上キラはMSのOSを恐ろしいスピードで解析、書き変えを行って戦闘に勝利している。
明らかに異常な才能であり、だからこそストライクは無事だった。
何度目かのため息でムウはヘイズルの前から立ち去る。
強力な味方を得た、と手放しで喜びたい気持ちも彼らの年齢を思えば胸の底に消えた。
◆ ◆ ◆
ムウがヘイズルを眺めるのを止めた後、アークエンジェルは担当の振り分けと荷物の積み込みを終えた段階で敵機を捕捉していた。
それは盗まれたG兵器『イージスガンダム』の識別であり、その僚機として『ジン』が2機付いていた。
「フラガ大尉、出撃は!?」
「さっきの戦闘でメビウス・ゼロの出撃は暫く無理だ!」
「……」
マリューは腕利きと有名なムウに出撃させるつもりだった―――到底G兵器に敵うはずも無いのだが、出さないわけにもいかない。
しかしムウの乗機『メビウス・ゼロ』はラウ・ル・クルーゼとの戦闘で損傷しており、出撃できたとしてもターキーショットより酷い事になる。
そして運悪くマリューは民間人の子供たち―――キラたちと今後について話し合っていた最中だった。
じわり、と学生たちの顔に汗が滲んだ。彼らはまさかここでもキラをMSに乗せるつもりかと察していた。
キラはそれに対して答えようと前へ出たが、マリューは落ち着いた様子で彼らに背を向けると通信端末をブリッジへ繋いだ。
「ヘイズルは?ムラサメ少尉は出られる?」
「おいおい、相手は3機でこっちは兎ちゃんが1機って……なに、出られる?―――らしいぞ、艦長」
「そう、ではムラサメ少尉へ繋いでくれる?」
ムウは驚くような演技をしているが、現状動かせるのがストライクとヘイズルなのだから選択肢は最初から無かったも同然―――ムウがストライクを動かせるかもしれないという淡い期待もあったが、本人が否定したためその選択肢は消えた。
ムウによってブリッジからヘイズルのコックピットへ通信が繋がれると、そこには既にコックピットで出撃を待機していたケイが居た。
マリューは映る少年に申し訳なさを感じながら、しかし託すように指令を告げた。
「……ケイ・ムラサメ少尉、今から無理を言うわ。ザフトの艦隊からイージスとジンが2機発進しました―――ムラサメ少尉にはこれをコロニーが傷つかないよう撃退し、アークエンジェルがヘリオポリスを脱出するまでの時間稼ぎをお願いします」
「了解した―――何が無理なものか」
短い返事の後通信はヘイズル側から切られ、艦内放送でヘイズルの発進が知らされた。
アークエンジェルとの合流後、T3部隊は暫くこの艦と運命を共にする事が本部から決定され、TR計画のテストもこの艦で移動中に行うことになった。
そのため連合への機密漏洩を恐れ制限されていたヘイズルはヘイズル改への移行が行われる事になり、T3部隊は既存のヘイズルのパーツと新規のパーツを短時間で組み合わせてみせた。
「ケイ・ムラサメ―――ヘイズル改、出るぞ!」
装甲を多くつけた印象だったヘイズルも、ヘイズル改になった事でスッキリとした印象を持たせる―――しかしこれで居て脆くなったわけでは無く、OSのバージョンアップやコックピットの変更によりむしろ総合性能は向上、軽量化により推力も上がった。
それはアークエンジェルから発艦する勢いを見れば明らかであり、推力にものを言わせて飛んでいた前身とは違って軽やかにそれは飛び立った。
連合に身を置くしか無くなった以上、隠すべきものも少なくなったためケイの心中も軽い。
「ヘッ、さっきはよくもやってくれたもんだ」
アークエンジェルから飛び立った軌跡を見下ろしながら、ジンのパイロット『ミゲル・アイマン』は吐き捨てた。
自分たちの隊長『ラウ・ル・クルーゼ』はエースと言っていいが、そのクルーゼが機体を著しく損傷させて帰ってきた事など一度もない。
そしてそれをやってのける敵機は恐ろしくもあり―――同時にこれは出世のチャンスでもあった。
コーディネイターの力はこんなものではないとナチュラルに叩き込まねばならない。
G兵器などと言って分不相応な物を作り歯向かおうとする意志が気に入らなかった。
「食らえよォ!!」
特火重粒子砲による先制攻撃を仕掛ける―――が、見た目の変わった白兎は機械である事を忘れる程滑らかにそれを躱す。
コロニーにビームが着弾し、コロニーに大穴が開いてしまうのも気に止まずミゲルは目の前の兎を狩るに集中していた。
次の装填が終わり次第に撃とうとするミゲルにアスランが近づき窘める。
「ミゲル!お前は連合軍どころかコロニーまで壊すつもりか!!ここは中立地帯だぞ!!」
「今更馬鹿言うなアスラン!何が中立だ、奴ら連合軍と組んで戦艦とMSを隠していたじゃないか!コーディネイターの俺はな、愚かなナチュラルにその"報い"ってやつを教えてやってるんだよ!!」
「―――ッ!」
アスランは冗談ではないとミゲルを抑えようとするが、彼の意識は既に白兎に夢中であり―――万が一にもこの戦闘データが残り誰かに公開されたものならザフトの信用は地に落ちる。
誰が人の住む第二の故郷とも呼べるコロニーを破壊したがるのか。民間人が避難し終わっていたとしても、救助される前に彼らの帰る場所が無くなってしまう。
何より奥に控える戦艦『アークエンジェル』にはアスランの幼馴染でもある『キラ・ヤマト』がまだ居る―――あのストライクと呼ばれるMSのパイロットがキラならば。
優しく、才能あふれる幼馴染をこんなところで殺すわけにはいかない。
咄嗟にイージスをミゲルの乗るジンと白兎の間に滑り込ませ、アスランは敵機と見合いながら通信をオープン回線にして叫んだ。
「連合軍へ告ぐ―――すぐさま武装を解除し降伏しろ!こちらはコロニーまで破壊する気はない!」
「アスラン、何をッ!」
「黙れミゲル!……もう一度繰り返す!武装を解除し降伏しろ!」
さもなくばと使えないのが現状だったが、ミゲルと白兎に動きはない。
馬鹿野郎と叫びたくもなるが武装を解除したところで連合軍に利は無い―――武装を解除してもこちらから攻撃されない可能性は捨てきれないからだ。
だからこそミゲルは撃ったが、それでもと抗う気持ちがアスランには抑えられなかった。
アスランの通信を聞いた白兎のパイロットがオープン回線で答える。
「―――ならお前の乗ってるソレ、返せよ」
元は連合軍の物であり、それを強奪された以上連合軍には攻撃する理由がある。
ザフトが来なければヘリオポリスは戦場にならなかったとでも言いたげに、白兎は構えを解く事をしない。
「……返す気はない!!」
「幾ら偽善者でも自分が不利になるのは我慢できないみたいだな―――!」
「撃った!!そらみろアスランッ!!」
「正気か!」
白兎―――ケイのテンションはハイになっていた。
MSに乗るといつもそうだった―――ニュータイプだからか知らないが、頭が嫌にクリアになるあまり生と死がよく分かる。
だからこそ死に呑まれないためにも無理やりに自分を奮い立たせなければならない―――殺さなければ、こちらが殺されるだけなのだから。
バシュウッ!と空を焼くような音を響かせて白兎はイージスを掠めるようにビームを撃った。
攻撃された事でジンは急いで距離をとり、イージスも慌てて盾を構える。
何故攻撃したのか―――アスランの怒りは最高潮へ達し、まくし立てて白兎へ問う。
「何故撃つ!コロニーを破壊してまでやる事か!?」
「お前らが襲撃を行うからいけないんだろ?大人の言う"正当防衛"ってやつだ。それにさっきまでコロニーに穴を開けまくっていたのはお前のところの人間だろ?やってる事と言っている事が真逆なんだよ!」
「それは……しかし」
「形勢が悪くなれば『でもでもだって』か……!!」
白兎はアークエンジェルに対して誘導弾を撃とうとしたジンにライフルを向け、躊躇なく引き金を引く―――。
目標にされたジンは股からコックピットの真ん中を綺麗に撃たれ、武装に誘爆する事無くこと切れて地面へ落ちた。
驚くべきはビームの出力を抑えたのだろう、射程がコロニーに到達しない程度だった。
つまり"機体のコックピットを貫く程度に加減した"という事でもある。
「オロールッ!!」
「コックピットを直撃!?……ナチュラルのくせに妙な芸当をッ!!」
「『コロニーに優しく』してやったんだよ。破壊したくなかったんだろ?ならお前らが静かに死ねば良い話だ」
「何、だと……!?そんな事を言うために……!」
跡形もなく消し飛んだであろう同僚を前に放たれた暴言。アスランは正気を疑った。
まるで遊んでいる―――アスランは話が通用しない事よりも、あんな子供のような精神の人間が地球連合軍のパイロットをしているという事にも驚いていた。
操縦桿が死ねば動かなくなるのは、自立兵器でもない限りどの兵器でも同じ―――パイロットを狙い撃ちにすればMSは容易く機能を停止する。
驚異的な芸当と人を人とは思わない敵を前にしてアスランは呆然とするが、ミゲルと白兎は依然として戦闘を始めるつもりだった。
激昂したミゲルが再び重粒子砲を撃ち込む―――しかし白兎は意にも介さず煽るようにアクロバット飛行じみた大袈裟な回避を行う。
まるで子供の見栄の張り合いのようにも見えたアスランはやはりミゲルを止めようとするが、意味がない。
「貴様、オロールをよくも!!」
「子供の遊びでやってんじゃないんだ!……そんなにお友達に会いたけりゃ、お前もその"仲間"に入れてやるってんだよ!!」
「この野郎ぉっ!!」
「乗るな、ミゲル!!戻れ!!」
ミゲル機が装填された最後の弾を撃ち、白兎が回避し外れたのを見て重斬刀を大振りに構える―――MSのパワーで振り下ろせば行けるとミゲルは確信した。
見ればPS装甲ではない―――つまり実体剣は通用する!
「死ねえええええッ!!!」
「―――お友達にでもなりに来たって言うのか?」
傍から見れば破れかぶれに突撃してくるジンに、ヘイズル改は腰部にライフルを納めると冷静にビームサーベルを抜いた。
そしてシールド・ブースターの推力をフルに活かし、落ちてくるジンの側面へスラスターを吹かしてバレルロールの要領で回る。
常人であれば機体にかかるGに耐えられないそれを飄々とこなして、ヘイズル改はサーベルをジンの脇からコックピット目掛けて突き刺し、確殺を得るとすぐに刀身を消した。
あまりにもあっけない結末に驚いたのはミゲル自身だった。
「――――――!!」
「直線的すぎるんだよ―――遊びなら地獄でやってろ」
「ミゲルーーーっ!!」
ジンが落ちながら空中で爆発する。中に居たミゲルはサーベルの直撃を免れたとしてもどのみち助からないだろう。
ミゲルは『黄昏の魔弾』と呼ばれる程にMSの扱いに長けていたが、アスランの静止を受けていれば長生きが出来たかもしれない。
「何でだ……どうしてこうも簡単に……」
アスランは怒りと悲しみに暮れていた。
『ミゲルは確かに攻撃的だった』が、『オロールは確かに誘導弾で戦艦を狙いはした』が、しかしコロニー内で危険が及ぶ戦闘は止める事は出来た筈。
それを止められなかった自分も情けないが、どうして―――
「どうして撃った!?そんなに人殺しがしたいのか、お前はっ!!」
「―――そういうお前は武器のセーフティ外して敵地へピクニックか?」
「戯言を……やはりナチュラルは野蛮だ!!」
「野蛮?MS欲しさにコロニーを襲撃して大穴開けておいてよく言うよ」
「喋るなぁッ!!」
衝突するイージスとヘイズル改。
出自や境遇に悩みながらも戦争に加担した若者と、元より戦争のために育てられた存在では価値観が違う。
アスランとケイの間には戦争への迷いという一点が深い溝を作り上げていた。
ぶつかりあう2機のMSだったが、ケイは内心対面に居るMSのパイロットに関心した。
―――強いな。予測でこちらが主導権を握っているのに、咄嗟に対応してきているのか?
こいつもニュータイプかと勘繰ったが、兄弟やシグーのパイロットのような感覚は無い。
しかし実際にさっきのジンのように怒りのままに突撃したかと思えば、冷静にフェイントを挟んできたりと非常に巧みにMSを操っている。
―――MSの性能ってわけでも無さそうだ。
イージスとヘイズル改が戦う最中でもコロニーの崩壊は始まっていた。
ザフトが思っているよりも作戦は手こずり戦火を拡大させてしまった事もあるが、その上MS戦の混乱に乗じて連合軍の艦がコロニーに衝突した事も原因としてあげられる。
そこにミゲルやオロールによる図らずもコロニーに開けた穴―――崩壊のカウントダウンは迫っていた。
「お前、名前は?」
「言う義理も無い!!」
「つまらないやつ」
ヘイズル改は飛び掛かるイージスをスラスターを吹かせて飛び上がって足蹴にし、その上空を取りながらライフルを放った。
「くうっ……!!」
アスランは無意識にそのビームをシールドで弾く。
二人の攻防が途切れたのは、背後からやって来る機体に気が付いてからだった。
「アスラン!ムラサメ少尉!!二人とも止まって―――これ以上戦えばコロニーが崩壊する!!」
「キラ!!」
「(何でまた民間人がMSに乗ってんだよ)……」
キラの静止により、2機のMSは止まった。
「キラ、今すぐそのMSと共にザフトに来い!お前はナチュラルに利用されているんだ!」
「そんな事言われても……アークエンジェルには友達が居るんだ、君とは行けない!」
「くっ……お前はコーディネイターだろ、どうして連合軍なんかに」
「色々あったんだ、僕だって戦いたくないよ」
キラは伏し目がちに答えた。
戦いたくなんかない。
そのためにヘリオポリスに来たというのに、そのヘリオポリスには本来あるはずの無い地球連合軍の新型MSと戦艦が存在し、現状ストライクはキラにしか扱えない。
その上自分よりも年下の少年が戦争で人殺しを行っていて、見過ごせるわけがなかった。
キラが本来持つ優しさが自己犠牲へと変わり、それがキラを突き動かす原動力になり始めていた。
アスランはそれを察していたうえでナチュラルに加担するのを止めろと言った。
「それにお前は女の子だろ!仮に運よく生き延びたとしても、一生の傷でもついたらどうするんだ!」
「性別は関係無いよ!僕はただ、友達を守りたいんだ!」
対艦刀を構えながら、ストライクがイージスを睨んだ。
アスランはそれに凄んで動けない―――キラが、自分の中にあった記憶の中の少女が自分に刃を向けるビジョンが衝撃として強すぎたからだ。
僚機を失った今、イージスは孤立している―――アスランは退却する他無かった。
ケイも動けない理由があった。
それはキラに原因があり、戦場でイージスのパイロットが放った言葉によるものである。
「女……?」
思わず操縦桿から手を離してストライクを指さし、何度も脳内でキラの間の抜けた顔と自分の知る女という性別を反復させ―――混乱した。
じめッとした性格だなとは思っていたが、ケイには信じられなかった。
一人称は僕だし、やけに女々しいが―――男の恰好をしていた。
それを見たキラは苦笑いして「仕方がないよね」と小声でつぶやく。
「…………うん、僕は女だよ」
「―――」
「僕が小さい頃からプログラミング得意で、他の子と比べて色々出来たからさ……『女だからといって変に利用されないように男の恰好をしなさい』って言われてたんだ。父さんと母さん、アスランも口酸っぱく言ってたから……今の今まで何とか女の子っぽい趣味を我慢したり、胸を隠したり、肩パッド付けたり、髪を短くしたりしてたんだ。一応隠してるわけじゃなくて、ゼミでも女の子として通ってたよ」
よいしょ、とキラはプライベート通信でケイに胸を抑えていた器具を服に手を入れて外して見せた。
何が、とは言わないがケイの視界の中で大きく揺れる。
その後ケイの中でキラが『破廉恥女』と呼ばれる事になるのだが、キラには伝わらず。むしろ不安げにケイを見た。
「ミリアリアにもおかしいって言われたけど……そんなに変、かな」
―――何が変なんだ、恰好か、
ケイは頭の中に強烈に張り付いた衝撃の映像―――ばいんばいんに揺れたそれに暫く悩まされていた。
Tips:ナタル・バジルール
地球連合軍の士官で階級は少尉。ケイを分からせたい気持ちでいっぱい。
Tips:ムウ・ラ・フラガ
地球連合軍のMAパイロットで階級は大尉。援護に来てくれた機体に乗っていたのが子供と知ってショック。
Tips:キラ・ヤマト
実は女の子。脱ぐとすんごい。
父親と母親の教育方針で才能を下手な男に利用されないために男装をしていた。
アスランから何とも言い難い感情をぶつけられている。
Tips:アスラン・ザラ
中立地帯を気にして武装解除を呼びかけたが、聞き入れてもらえずやむなく全力で攻撃している。味方を殺された上にキラも敵になって出てきたせいで既に種割れ寸前。
キラはどこか抜けているので幼少期から気にかけていた。
既に少し錯乱している。
Tips:ケイ・ムラサメ
日頃の不摂生とストレスで言動が過激に。
MSで敵を倒す際には余計な行動はせず、ニュータイプの勘を使ってなるべく最小限の動きで倒すタイプ。
これをきっかけにキラの一点に視線が吸い寄せられるようになる。
主人公の見た目に関する挿絵
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いるね
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いらないね