機動戦士ガンダムSEED TR -輝ける星を目指して‐ 作:開いたぞ、性癖の扉が!!
アークエンジェルが発艦すると、その後ヘリオポリスは崩壊した。
崩壊した一因は主にザフトの強襲が激しかったこともあるが、コロニーの外周で戦ったムウや敵を煽って攻撃させたケイに責任が無いわけでは無い。
ザフトのMSとなったイージスが去ってから、ケイとムウはコロニーの残骸から扱えそうな物資を集めて持ってくるという罰が与えられた。
これにはケイも抵抗があったものの、現状周辺に友軍は無くアークエンジェルも物資を積んでいるとはいえ心許ない量で発進したため致し方ないという艦長の決定だった。
「にしてもストライクに乗った坊主……じゃねえや、嬢ちゃんが女の子だったとはな。俺の鼻も鈍っちまったって事だ」
「……」
「ところで少尉はさ、好きな子……居る?俺はね~、同じクラスの~……キャッ恥ずかし~い♡」
「……」
「……何か喋ってくんね?俺だけおしゃべりみたいになってんだけど」
「いえ、他人の難儀な性格にケチをつける程暇ではないので」
「……俺の事嫌い?」
「はい」
「Oh……」
ムウは修学旅行の夜並のテンションでケイを品定めしようとしたが、大いに失敗していた。
戦闘中にハイになる人間は多い―――なんならムウ自身もそうして戦場に気圧されないようにすることだってある。
しかしケイのそれは異常だった。
攻撃的かつ冷徹かつ残虐―――兎に角人を殺すという事に対しての異常なまでの冷酷さと、それを楽しむかのような素振りは本来子供の持つべき感情ではない。
15歳と聞いていたが、これでは戦後マトモに生きていけるような人間にならないだろう。とムウは少年の未来を懸念していた。
―――子供が武器持って襲ってくる相手に『子供の遊び』なんて言ってるの初めて聞いたぜ。
挙句『お前も(死んだ人間の)仲間に入れてやるってんだよ!』だから目も当てられない。
もし精神的に問題があるなら早めに治療が必要であるし、元からこうなのであればムウとしてはあまり好ましくはない。
ヘリオポリスの住人たちに内心で謝りながら、ムウは作業用のMAに乗って氷を掴みながら話す。
「少尉はさ、何で軍に入ろうと思ったわけ?」
「……」
「ティターンズって今の今まで現物どころか誰が所属してるとか分かって無くて謎が多くてさ、俺もワンチャン入れないかな~なんつって。ぶっちゃけ興味あんのよ」
「……」
「ケイ君って呼んでいい?俺も"ムウお兄ちゃん"で良いからさ」
「……」
「……ちんちん何センチ?」
「はぁっ!?な……ぁっ!?」
―――あ、それは動揺するんだ。
◆ ◆ ◆
アークエンジェルのブリッジでは『少年の素性を俺が引き出してやんよ』と、ムウの計らいによりムウとケイの会話が筒抜けになっており、少しでも謎の少年の秘密を知ろうと人が集まっていたのだが―――
『……ちんちん何センチ?』
『はぁっ!?な……ぁっ!?』
「「「「何やってんだこの人!!」」」」
セクハラ祭りの後に投下された爆弾にブリッジの全員が吹き出したり、あんぐりと口を開けたりしていた。
『気持ち悪い……!』
『悪かったって。ほら、この作業単調だし相手してほしいんだよ』
『だからって普通……その。モニョモニョ』
『ちんちん?ンま~流石に思春期は恥ずかしくて言えねえか』
『はぁ!?誰が!!』
『じゃあ言ってみろよ~』
『…………っ!何で言わなきゃいけないんだよ!!』
『わーるかったって。そりゃあ、普通はちんちん隠して生きてるもんな』
『何言ってるんだお前!?……頭が痛い、これ以上意味が解らない事言うな!!』
『え、全開なの?常時開いてるの?社会の窓が』
『―――ッ!!!ッッッ!!』
ドンドンドン!!と作業用MAのコックピットを殴る音が聞こえた後、ケイの乗るMAからの通信は全てミュート設定に変えられてしまった。
セクハラ親父のエロトークに付いてこれなかった15歳―――多感も多感な上に複雑な産まれで更に難しい性格の子供にする会話ではない。
これで分かった事と言えば、ケイが下ネタにひどく敏感で、ムウが完全にケイから嫌われて今後のチームプレイに支障が出たことくらいだ。
マリューは『私も軍に入りたてはあんな感じでセクハラされて困ったなぁ』と考えながら、ケイのメンタルケアをどうするか悩む。
今の今まで子供に頼りっぱなしではあるが、いくら軍属とはいえ子供が抱えるストレスは大人のそれよりも多量だとマリューは考えていた。
そのため何とか気を紛らわせないか―――特に戦闘中は気が狂ったかのように残忍になるケイのそれが、何かしらによるストレス解消でなんとか解決できないかと考えていたのだ。
―――そりゃ、慰めてやりゃあいいんじゃねえか?
―――貴方に聞いた私が悪かったです。
―――いや、含みも何も普通に慰めてやればって言おうとしたんだけどなぁ……。
ムウに相談したが、胸部を視姦されながら答えられてはまともな答えではない事が分かる。と判断したがその実その言葉のままの意味で放たれた言葉であることは知る由もなく。
それにマリューから見たケイはそういったことをする範囲にすら入らない子供であり、そんな子供にマリューが下手に手を出して性格をゆがめてしまうと犯罪臭がする。
『しかし15歳なんだからそろそろ色も覚えたっていいと思うわけよ、お兄さんは。そこで一つ、"とびきりのやつ"貸してやろうか?タイトルはだな~』
『―――』
『おーい?聞こえてるか~?』
ああ、ダメだ。
これ以上この人に任せると少年の心と大事な戦力がストレスで壊れてしまう。
マリューはムウに通信で怒鳴りつけると、両者に程ほどにして帰還するように命じた。
しかしこの会話でアークエンジェルの乗員はケイに人間味を感じたのか、帰ってきたケイが居心地悪そうに足早に自室へ戻る背中を生暖かい目で静かに送った。
◆ ◆ ◆
ムウとケイが資源を回収しても、尚も不安要素がある。
行き場の無いアークエンジェルには目的地を探す必要があり、しかし物資の状況から悠長に航行できるものではなかった。
そのため数時間後に哨戒も兼ねてケイはキラを伴って氷を搬入する作業に再び従事していた。
一人でもいいとゴネたケイをキラが何故か半ば強引に押し切り、二人での共同作業となる。
「ヘリオポリスの人達には申し訳ないけど、緊急事態だから仕方ない……よね」
「見る人間が違えば海賊行為だけどな」
「…………そう、なのかな。ケ…ごほん。ムラサメ少尉、何か優しいね?(フラガ大尉にセクハラされて疲れてるのかな)」
「―――精神安定剤飲んだし、落ち着いてなきゃ困る」
「!!」
キラは唐突なカミングアウトに戸惑う。
精神を安定させたおかげか、ケイは当たりは強いものの普段よりもまったりとした喋り方になっていた。
何事も無かったかのように振舞うが、薬というのはそれなりに症状が出ていなければ処方されないものだ―――というのが民間人の思う薬である。
実際は天然のニュータイプという希少性故にストレスも極力小さく抑えなければ実験の数値に影響が出るため、こういった薬での治療も少なくは無かった。
中毒にならない程度に、強度とラインは決められているのだが、今の段階でケイに処方される薬は昔と比べてだいぶ可愛らしいものである。
「コロニーが壊れる前、変な奴と戦って嫌な気分になった後服用せずにすぐに出撃したせいでイライラし過ぎた」
クシュン!と仮面の男がくしゃみをした。
キラはおずおずと、気になっていたことをケイに聞く。
「大丈夫なの……?普段からそういうの、使ってるとか……?」
「使ってる……と言ってもうちは俺みたいな"天然もの"は薬物でブーストすると修正が効かないって理由で違法なのは使ってない」
「……よく無いよ、子供のうちからなんて」
「どいつもこいつも子供子供って……
そもそもそれが無ければニュータイプの感応能力が高過ぎて落ち着かないし眠れないんだよと、ケイは心の中で吠えた。
兄弟は違法な薬物の投与をされていたし、別の分野で連れて来られた子供はそもそも薬物の研究の被験体であり、そちらは強度の手加減なんてものは無かった。
それを思えば、天然のニュータイプというだけである程度の要求が通る現状はケイにとっては楽な方だった。
仮に薬が無ければ、ケイは今頃訓練のストレスや死んだ兄弟の精神に魂を引かれて廃人になっていたかもしれない。
何においても死人の上に成り立つのがケイの命だ。
「君以外にも、そういう子は沢山居るの?」
「当たり前だろ。一人だけじゃ得られる情報が限られるからな……コーディネイターだって失敗作が居るに決まってる……胎児にもなれなかった人間未満や注文通りに生まれなかった奴がゴロゴロいるって話だ」
「コーディネイターの……失敗作……」
「仕方ないだろ。誰もが人類の進歩のための仕方ない犠牲とか、言う事なんでも聞くハイスペックなお人形が欲しいんだよ……俺は進んで研究に参加してるけど」
研究―――TR計画はケイにとっての夢でもあった。
誰にも言わない、研究に携わる者達しか知らないそれが兄弟とケイの夢。
キラが表情を曇らせる中、ケイは喋り過ぎたと口を真一文字に結んだ。
暫しの沈黙の後、キラはデブリの中から救援ポッドを発見した。
「これ!ヘリオポリスの――!!」
「放っておけよ、こっちは余裕が無いんだ。どうせ信号をキャッチした暇なやつが回収する」
ケイは言う―――民間人を抱えながら限界状態で目的も無くブラブラ航行できる程戦争は甘くない。
それに民間人を乗せているからといってザフトに攻撃を止める理由は無い。
ヘリオポリスが崩壊した今、民間人ごと殺してしまえば彼らが生きている証拠など無いわけで。後始末はいかようにも出来る。
「ダメだよ!いつ助けが来るか分からないのに放ってはおけない!」
「軍の機密の塊みたいな戦艦に置く方が可哀想だろ―――うちじゃ飼えません」
「人をペットみたいに言わないでよ!!ずっと思ってたけど、何でそんな酷い事ばかり……!」
未だに自分の置かれた状況が余裕の無い、いつ死ぬかもわからない状況だという事が分からないキラに、ケイはうんざりとしながら思っていた言葉を口に出した。
「お前戦いたくないんだろ?戦う理由を増やして何になるって言うんだよ。俺がMSと敵艦を相手にしながらアークエンジェルも守れって言うのか?」
「…………」
「まさか俺にそいつらまで守って戦えって言うんじゃないだろうな?戦艦は人員不足と経験不足でロクに戦えない、エースだとか謳われたムウ・ラ・フラガは使い物にならない、挙句最新鋭のG兵器4機と腕利きの部隊と戦いながら呑気な民間人と愉快なお友達の子守りと来た」
―――僕が弱いから。
ズキリ、とキラは胸が痛んだ。
確かに戦いたくはないが、同時にケイを戦わせたくないという気持ちもあった。
表面上では強く取り繕っても儚い、いつ消えてなくなってしまうか分からないような少年をこれ以上戦いに送り出したくなかった。
だがケイからは疎ましく思われていた―――しゃしゃり出てイージスとの戦いに水を差したことが気に入らないのかもしれない。
しかし命の取捨選択が出来る程、キラは非情でもない。
安定剤の効果が未だ完全に効いているわけではなく、ケイは見るからに攻撃的な意思を隠さない。
「戦う覚悟も無いんだ、大人しく守られておけばいい―――邪魔が無い分こっちも派手に殺せるし戦えば戦った分データも取れる」
「!!」
―――守られてばかりで、僕は。
そうやって死に向かっていくのを、キラは止めたかった。
敵に友人が居るからとか、年下だからではない。
ケイ・ムラサメはどこか命を軽視する少年だった。
風に吹かれるように軽やかに、神秘的な少年―――それが戦争で歪んでいくのが嫌だった。
ケイは戦う事しか知らず、世界にはまだ楽しい事や嬉しい事、戦う以上に幸せな事がある。
だからこそ、ここでキラが曲がるわけにはいかなかった。
救命ポッドは推進剤が切れて漂流しているも同然。命を救えるかもしれないのに、見捨てる事なんて出来なかった。
「この人達はアークエンジェルへ連れていく」
キラは覚悟したようにケイに告げた。
「僕が皆を……僕"も"皆を守るから―――きっと強くなって、君の事だって守ってみせる!それでいい!?」
「守られる筋合いなんか無いし、戦いたくないくせに何でまた」
「戦いたくないけど……見過ごせないんだ、君のこと。どうしてか分からないけど、僕は君が知りたい!!だから君は僕が
「はぁ?」
涙目になりながら何かを決心したキラの突然の告白に、ケイは間抜けな声で返した。
―――シグーのパイロットといい、キラといい、意味が解らん。
この数日でやたらと湿気の強い意思を向けられるのだが、とケイは困惑のあまり頭を掻いた。
艦ではマリューやナタル、ムウからも時折そういった視線を感じるし、キラの友人もだ。
昔、研究所に来たばかりの研究員がよくそういった目をしていたが―――あれも真意は知る由も無かった。
意気揚々と去るキラを見ながら、ケイは何故か無性に苛立つ感情を覚えた。
Tips:ケイ・ムラサメ
下ネタに弱い。ムウが苦手。
年齢や生まれにより精神面で不安定さが残るニュータイプであり、調子がいい時は戦闘マシーンのように粛々と戦うが、現在はどちらかと言うと不調。
Tips:ムウ・ラ・フラガ
調子のいいセクハラおじさんになってしまった。
謎の部隊であるティターンズを警戒しているも、子供であるケイやキラの心配もしている。ある意味清涼剤。
Tips:キラ・ヤマト
守護る宣言をしたものの、未だに戦う事に対する忌避感は否めない。これは今後ずっと悩み続けることになる。
戦わなければならない、戦えてしまう、戦いたくない、戦わせたくないの四重苦に苛まれている。
Tips:マリュー・ラミアス
図らずも海賊行為に手を出してしまったが、人命のために致し方ないと処分を覚悟で命令を出した。
戦闘後のケイの精神に不安を募らせ、一計を案じている。
主人公の見た目に関する挿絵
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いらないね