こちらは、『ゴールデンえすけいぷ』と同じ時間軸のDead by Daylightキャラ達メインのサイドストーリーとなります。
※DbDのDLCキャラが登場している為、多重クロスオーバーとなっております。
ゲーム内のメタ発言や流血、猟奇的表現に加え、カップリング要素が含まれます。閲覧は、自己責任の元ご覧になって下さい。
気分を害されましても、当方は責任を負いかねますのでご了承下さい。
[登場人物]
・デススリンガー
自分は他人に興味無い。と思っているくせに、結構世話焼き。更に、関係が良い相手を信頼しすぎる面がある。故に勝手に相手に一喜一憂する。
・トラッパー
世話焼くのが嫌いだと断言しているが、根っからの世話焼き。ある儀式の後からメグを特別視している。儀式で会うにつれ、[殺人鬼と生存者]の関係ではなくなっている事は分かっている。だが、自分が抱いている感情が愛である事を知らない。
・レイス
トラッパーとは付き合い長いので、色々な感情は察している。だが、そんな事よりも彼はBPが身体を戻すものと知り、BPが欲しい。温厚だが、内に飼っている闇は意外と深い。
・メグ・トーマス
押しに弱い。エヴァン・マクミランの素顔を知っている唯一のサバイバー。エヴァン、ビットリオに迫られ、悩める霧の森ライフを送る。
エンティティの遊戯が終わり、待機所に戻る一行。
デススリンガーは、ケイトが零した一言が何となく気になり上の空で歩いていた。基本的に殺人鬼同士は互いに干渉し合わないし、何をしようが知ったことじゃないが、あの様子だと《殺人鬼(こちら側)》に色恋沙汰があるって事じゃねぇか?
枯れ果てた心に刺激が欲しい。
だが、いい歳したジジイが……と言われたら、傷付く心も無いはずなのに、妙に気分は重くなる。
これまで特に他人を気にした事がねぇから、誰がどいつと……と想像にも及ばないが、リージョン達やスピリットの姿が頭に浮かんだ。若い奴らは血気も盛んだろうが、他の事にも気が移るだろう。
オガタが待ってましたと言わんばかりに手の平を突き出し贖い主をせびってくる。
「オッサン。俺にそいつを寄越せ。俺ならもっと上手く使ってやれる。」
「……あぁ。そんじゃぁ、お手並み拝見って所だなぁ。」
そんな事よりも関心は周りの殺人鬼達に移っている。
カレブは、珍しく愛銃をそのままオガタの手に預けた。出会った時以外で、自身の能力を借りに来るオガタには、贖い主の「模造品」を渡していた。霧の森に来てから見つけたガラクタで組んだ物だが、「オリジナル」と性能は変わらない。気がそぞろで、「オリジナル」の方を渡してしまった事にも気付かなかった。
ふと、顔を上げるとエンティティに身体を小さくされたレイスが、デモゴルゴンに一飲みにされかけている所をトラッパーが救出していた。
オレ自身はさほど他人に関心も無いが、あの罠師は誰より他人をよく見ているはずだ。
安易にトラッパーなら、何か分かるかもしれないと閃いた。
「よぉ、相変わらずお節介妬いてんのか?」
「デススリか?お前、随分とあっさり負けやがったな。お前達のチームと鉢合わせられなくて残念だよ。」
「頭の方は、三角頭にそっくり言ってやれよ。オレは、奮闘してた方だぜ。オレは、あんたとやり合わなくてホッとしてるよ。これ以上脚を悪くせずに済んだ。」
「お前が最初からハグやナースを相手にしておけば、磐石だったろうな。」
「馬鹿言え!試合見てたろ?相手が悪ぃよ!罠の方にナースに追いやられちまったら敵わねぇって!」
「……だから、テメェがその状況を生ませないように立ち回るんだろうよ。先回って狙い撃ちにしとけば良かったんじゃねぇか?」
「流石、罠に嵌めるのがお得意な事で。どうした?ヤケに突っかかって来るじゃねぇか。」
「別に、お守りにイライラしてるだけだよ。」
レイスを小脇に抱え込んで動きを制御している。
ブモブモと、特徴的な呻き声を上げながらレイスは窮屈そうに身体を捩らせていた。収まり良く頭と両腕が脇から出ると、レイスはモゾモゾと抜け出そうと更に動きを活性化させている。
「……くそっ!何だ?ションベンじゃねぇだろ?」
「ブモ」
「あ?腹減ったのか?」
「ッモ!」
「……ほらよ。これでも食っとけ。」
トラッパー自身が儀式で集めたであろうBPをレイスに放り投げる。
レイスは慌てた様子でそれを取ろうと、脇からの拘束から解かれBPを拾い上げて、ちょこんと座り込んだ。両手にBPを持ってゆっくり咀嚼し出す。
「ハハァ。レイス。これはこれで良いじゃねぇか。小せぇだけで得してんなぁ。」
「……たく、世話焼かせやがって!」
「面倒見なきゃ良いだろ。アンタがお節介なだけだ」
「じゃあ、デススリお前が替わるか?」
「面倒くせぇ。アンタに任せるぜ。」
「……クソったれ」
「……何だ?何荒れてんだ?」
「お前には関係ない。」
一方的にレイスを押し付けて、トラッパーは足早にその場を去っていった。
レイスはパチクリと瞬きをし、トラッパーが去っていった方向と、こちらを交互に見て、手に残ったBPを見る。しばらくして、残るBPをモグモグとまた咀嚼し始めた。食べ終えてしまってから、こちらを仰ぎ見てトラッパーの去った方を指さし奇妙な声で何か訴えているが、何を言わんとしているか分からなかった。
「……何言ってるか全然分からねぇけど、取り敢えずオレも行くぜ?おめぇは……他の奴らに踏まれねぇ様にな?」
レイスと別れて、待機所から離れた場所まで歩いた。暫く行くとボロボロの小屋が見えて来て、すぐ近くにドラム缶に火が焚かれている。近づくと、火に薪を焚べているトラッパーの後ろ姿が目に入った。先程の彼の怒りの原因が何か聞こうと声をかけようとすると、そのすぐ近くにもう一つの人影がある事に気付く。
「そんなに怒らなくっても良いじゃない。」
驚いた事に、サバイバーであるメグの姿がそこにあった。儀式以外でサバイバーと会うとすると練習試合を邪神に要請するか、改めてフィールドへ出る事を申し出るかだ。今回の様な邪神の気まぐれでも会う機会はあるが、交流を好んでするのはごく一部だった。
トラッパーは、交流を好まない側のキラーであると認識している。
「……怒っているように見えるか?」
「私には怒ってるように見えるわ。何に怒っているの?……ビットリオの事?」
「……あんな優男に求愛を受けてご機嫌だな。メグ・トーマス。あの男とお前がどうなろうが、俺は全く興味が無い。」
「……分かった。ヤキモチ妬いてるんでしょ?」
「俺が、お前にか?有り得ない。呆れてるんだ。
あんな子供騙しな罠に嵌りやがって。自惚れてるから詰めが甘かったんだ。」
「ハグのトラップに掛かった事に怒ってるの?
……まるで子供みたいね。」
火に薪を焚べる手を止めて、トラッパーはメグに向き直りおもむろに腕を掴んで自分の方へ引き寄せた。短い悲鳴が耳に届くのと同時に、誰の前でさえ絶対に外そうとしない無骨な笑みを携えた仮面を自ら外して、メグへ身体を寄せる。
カレブからは、彼の素顔を見る事は出来なかった。
「うるさい。お前を罠に嵌められるのは、この俺だけだ。」
熱い抱擁とくちづけをトラッパーはメグへ交わす。思いも寄らない二人の関係に動揺が身を支配し、生唾を飲み込んで身を隠した。
メグにしてみても、満更でもない様子で口内を弄ぶ舌を受け入れている様だった。
「……トラッパー……。やっぱりビットリオとの事。……気にしているんでしょう?彼とは何も無いわよ。」
「俺の前でお前の都合なんて関係無い。
それと、またお前は言い付けが守れなかった。
俺と二人きりの時は[トラッパー]じゃない。エヴァン・マクミランだ。」
更に身を寄せ、メグの衣類の下に手を滑り込ませるトラッパーの様子に、いよいよ罰が悪くなってくる。
ぐるりと身を元来た道へ向けると、よちよちと歩きを進めるレイスの影が見えた。
「ブモ!」
「……ッ!?バカ、大きな声出すな!……レイス、向こうに戻るぞ。……気は進まないが、オレが面倒見てやるから。」
「ブモブモ」
「……はぁ。………お前、呑気なもんだなぁ。」
こちらの気も知れず、レイスは抱き上げられた腕の中にすっぽり収まり、外套止めの金具を摘んで口に運ぼうとする。
「オイオイ、腹減ってんのか?……たく、オレは今BP少ねぇのによぉ……。ホラ。」
「ッモッモ……。」
「あぁ〜あ。呑気で良いねぇ。」
レイスと共に、待機所へ戻る。
最初に抱いた好奇心は、今は影を薄くして、勝手に他人に無関心な男(こちら側)と括っていた男が、実は未だ情を残していたと知って、裏切られたような失意を感じる。
鬱々とした気持ちを一瞬で腕の重みが払拭した。
重みというレベルじゃない。
岩の下敷きにでもなったのではないかと思う程の衝撃がレイスを抱えた側の腕に走る。重みと共に身体が下方へ崩れた。
そのまま尻もちをつく。腰と膝にも激痛が走った。
見ると、元の大きさに戻ったレイスの尻に腕が持って行かれていた。レイスも慌ててその場から離れ、衝撃で崩れたオレを気遣いすまなそうに顔を覗き込んでいる。
「デススリンガー。ダイジョウブ?……怪我シテナイ?」
「……腰……イッタ……。」
「俺、マッサージシテアゲル!ナースニ、褒メラレタンダ!」
ブモブモとやたら張り切り出すレイスのマッサージを何とか阻止して、助け起こされるに留まった。
「……本当にお前は呑気で良いな……。こっちのこの何とも言えない気持ちなんてどうも思っちゃねぇだろうなぁ……。」
レイスの瞳が一瞬暗い色に染まった様に見えた。
普段の人の言葉を忘れたような舌足らずと発音の聞き取りにくい低い声色と違い、おぞましい程明瞭に頭の中に直接響く。不思議な感覚の話し方だった。
「俺、他ノキラーヨリモ、オ人好シダトカ優シイトカ言ワレルケド。何モ考エテ無イワケジャナイヨ。
トラッパーガ、愛スル気持チニ縋ル事ヲ忘レテ無イ事ヤ、デススリンガーガ少シ情ニ厚イノモ知ッテル。[マトモ]ナ頃ノ名残デショ?
俺ハ、ズイブン忘レチャッタケド……。
俺タチ、キラーナンダカラ。一人一人考エテルコト違ウシ、勝手ニ生キレバイイト思ウ。ココハ、ソウイウ所ダカラ。」
レイスは、オレが思っているよりもしっかりと[殺人鬼(キラー)]だった。お人好しに見えて、実に関白で、他人の事を理解した上で干渉せずにいる。
そして、感情の一部が欠落している事もそうだが、何より自分が[殺人鬼(キラー)]だと自覚しているのが驚きだ。
「……お前、実は一番キラーらしいんじゃねェか?」
ブモと小首を傾げて、不思議そうにこちらを見つめる。言っている事を理解して無いという風に首を横に振った。
「アト、俺ハドウダッテ良イケド。気ヲ付ケテ。アイツハ、都合良ク[戻す]カラ、儀式ニ失敗続キダト[戻される]……俺タチノ都合ナンテ考エズニネ……。」
首を傾げるのは今度はこちらの方だった。
[戻す]とは一体……?と疑問符で頭が一杯になる。そこで会話は終わりとばかりに、レイスはさっさと待機所へ戻ってしまった。
疑問が払拭されるのは、何度目かの儀式での事だった。
贖い主から放つ銛がメグに命中し、ジリジリと引き寄せて攻撃を当てる。オレとのチェイスは前々から距離を取られて長引く事が多いメグとの駆け引きなのだが、初歩的な読み合いで容易く追い込む事が出来て手応えを感じさせない終わり方だ。
「よそ見でもしてたか?今回の儀式はオレの勝ちかな?」
「……あんた、デススリンガーだっけ?その銃、何処まで伸びるの?射程だけでも教えてよ!」
「あぁ?何言ってるんだ?そんなモン教えたら、オレの持ち味を潰されんだろ!機密情報だ!」
「……ちぇっ!」
初対面の様な物言いに冗談かと思ったが、冗談では無いらしい。真面目に悔しがる様子を見て儀式後に悶々とした気持ちをエンティティにぶつけようとしたその矢先だった。
「クソゴミカス邪神野郎出て来い!……話がある!」
その他にも、呪詛、暴言、罵声の数々を止めどなく吐き捨てながらトラッパーが怒気を惜しげも無く外気へ放出させ、エンティティの姿を血眼になって探している。
笑う仮面の下の表情は見もしなくても、怒りで煮えたぎっている事が伺い知れる。
どんな弱体化を受けても、逆境環境であろうと、理不尽な不具合があろうと、トラッパーがここまでの怒りを他人に見せた事は無かった。
「オイオイ、一体何があったってんだ?」
「……エンティティ……。邪神野郎に用があるんだ……。後にしてくれ、デススリンガー……。」
「……オレもアイツに用があってこうして彷徨いてるんだけどよ……。」
「……クソッたれ……。」
「……一体、どうしたんだ?」
近くにあった丸太の倒木にトラッパーはどっかりと座り込み、昂る感情を宥めるように仮面の上から掌で顔を覆って、数度首を横に振った。
見下ろす彼の背中には哀愁と、焦燥感が雪崩込む。
重い空気に罰が悪くなり、カレブも向かいの切り株に尻を落ち着けた。
「……最近の俺の儀式結果……。……知ってるか?」
「耳くそが鼻くそを笑う位の差しかねェだろ?」
現環境の向かい風を真っ向に受け立つのはよく知ってはいるが、カレブ自身も逆境環境であり儀式の調子は芳しくない。率直な感想を答えた。
「ッハ……。違いねぇ。…………その俺に、エンティティ様からの賜り物ってのが、盤面の[仕切り直し]だ。……何もかもまっさらにするんだ。先入観や経験則、全部忘れ去って此処に来た頃にそっくりそのまま戻される。」
「……マジで?全然そんな風に見えねぇぞ?」
「…………今回は、俺自身にじゃない。…………メグだ。アイツがまっさらだ。」
あぁ。合点がいった。
気が狂いそうな時間を儀式に費やして、その中で見出したトラッパーの[救済]が[メグ・トーマス]だったという事か。
どうやって心を通わしたか知り及ぶ術は無いが、唯一の拠り所が失われた。それはこの森に赦しも救いも希望も無い事の裏付けだ。
有るのは儀式。そして永遠の虚無。
「……オレに、他人を愛する気持ちは残ってるか知らねぇけど。トラッパー……。あんたは、一度心を許し合えたんだ。……また、お互い惹かれ合うんじゃねェのか?」
「……『愛』だと?」
「……それ以外に何なんだ?性欲だけじゃねぇんなら、愛してるんだろうよ。」
「…………クソッたれの森の中で、ただ邪神の駒に過ぎないこの俺の、俺だけの能力を……。
……アイツは誰よりも理解し、完全に読み解き、仕掛けた位置を暴かれ欺かれてきた。……儀式の度に、アイツの行動の裏を描き罠を仕掛け、追い落とす……。
心躍る狩りの興奮と沸き立つ血の渇望……。俺はこの感情をメグ・トーマスとのチェイスでしか味わった事がない。
……俺が『愛している』だって?」
それまで気付きもしなかった感情を改めて言語化した所で気付いてしまったのか、決まりが悪くなったトラッパーは大きく一つ咳払いをした。ゆっくりと上体を起こして、オレに一瞥視線を寄越したかと思うと、また頭を抱え蹲った。
「……あぁ。……クソッたれ。
『愛してる』らしいな……。俺は……。」
背を丸め込ませてしまったトラッパーの様子を見て、我々はどう足掻いても人間なのだと改めて思う。
その側面を削ぎ落として、どれだけ『殺人鬼』を演じようと、どこか無意識の範疇で人としての側面が自分を形成している。
残ってしまった『人間』の部分が、自身の存在に矛盾を産み、歪な形を形成する。
そんな歪な存在がこの森の『殺人鬼』となるのかもしれない。