休み時間。
授業と授業の合間を縫うように、外の渡り廊下を歩いていると、ポケットに入れていたスマホが震えだす。
それだけだ。
誰からの連絡かだなんてまだわからないのに、真冬の胸はドキドキと、スマホの振動よりも確かな鼓動を伝えてくる。
一体誰だろうって、考えることですら野暮。
そもそも、私の電話帳に登録されてる名前は多くはないし、連絡を取り合うような相手となると、片手ですら余るくらいだ。
お母さんかな? それとも清水くん?
反射的に思い浮かぶ名前の二人は、だけど、私が期待している相手ではなかった。
「次は、何時会ってくれますか?」
あの日、あの時、あの場所で、口にしてしまったその言葉は、私のすべてを変えてしまった。
きっと、疲れちゃってたんだろう。
初めて痴漢をされたその時から、耐えるのにも、秘密にしつづけるのにも。
口にしてしまった時にはもうボロボロだった。あの人に抱かれるのが嫌なはずなのに、その瞬間だけは、嫌な事の全部を忘れられていたんだ。
おかしいよね?
そもそも、あの人が私にあんな事しなければ、私がこんな風になる訳もなかったのにさ。恨み言はもちろんある。貴方のせいだからって、引っ叩いてやりたい気持ちも残ってるのに、それでもだ。あの人が与えてくれる快感を思うと、仕方がないのかなって、溜め込んだ不満も萎んでいった。
まぁ、お金だって貰えるしね。
後ろ暗い自分の行いを正当化する為の言い訳には、それくらいの方が都合がいい。
スマホの画面には、日付と時間。それに、私が乗る電車の車両までもが指定されていた。
別に、恋人みたいな関係を期待していたわけじゃない。それでも、あんまりにも簡単すぎる連絡に、少しだけ寂しさを感じてしまう。恋人の様にとは望まなくても、もう少し私を気にかけてくれても良いのになって。
まぁ、所詮はパパ活だ。
私も、あの人も、日々溜まってしまったストレスを発散するための 危ない遊びでしか無い。そこでしか得られない興奮が、一時の夢だったとしても。ううん、むしろ夢だからこそ、割り切れる部分もあったんだ。
「…どうしよう」
行くとか行かないじゃなかった。私の悩みはもうそこにはない。
問題だったのは、着ていく服。もっと言うなら下着の柄だ。
今まで無頓着だった部分が、見られる自分を意識しただけで、こんなにも気にかかるなんて思わなかった。
どうせ、電車の中でするんじゃ、そんなに見て貰えるものでもないのにな。
でも、またホテルに連れて行って貰えるかもしれないって期待もある。
「可愛いね」だとか「似合ってるよ」だなんて、お世辞にも思うくらい、在り来りの言葉でいい。
だって、して貰ってばかりじゃ悪いから。
お金と体の関係だけじゃ味気なさ過ぎる。どうせなら少しでも、あの人が私に夢中になってくれる方が、お互いにとっても気分がいいはずだ。
「ほんと、なにやってんだろ」
自嘲はしながらも頬は緩む。
頭の中に思い描いた自分の姿に、思いつくだけの下着のデザインを重ねてもいた。
年相応とはいえ、ふくよかでもない私の体に似合う下着を想像しては見ても、私の知識だけじゃ、どうしても子供っぽくなってしまう。
やっぱり、一目で分かるくらいエッチな下着の方がいいんだろうか?
そういう需要も分かるんだけど。私達の関係を思えば、普段の下着っていう日常の方が、より強く背徳感を刺激するものだと思う。
後で、清水くんにでも聞いてみようかな?
男の子がどんな下着を好むのか。ネットで調べても、いまいちピンとこない。
結局は相手次第だって結論づけておいて、如何でしたかも何も無いもんだ。
だったら、あの人に直接聞いてみる?
その手のスマホは何のためにあるんだか。「どんな下着が良いですか?」なんて短いメッセージを送信するのに、10秒と掛からないだろう。
「…」
メッセージを打ち込んで、だけど、そこから先には気が進まない。
なんかそれだと、私だけが夢中になっているみたいで不公平だ。
遊ばれてるのは分かってる。私だって縋っているつもりもない。だからこそ、気兼ねなく夢中になっていられてる。
好きな人が相手なら、きっとこんな簡単な気分でいられなかっただろう。
喜んでくれるかな? がっかりされないかな? 最悪、嫌われるかもしれないと思えば、何をするにも足が竦んでしまっていたはずだ。
好きな人…ね。
そう考えて、思い浮かんだ彼の顔にチクリと胸が痛んだ。
そっか…。
振り返れば、気軽にパパ活をしている自分の姿が見えた。
この痛みは古傷だ。未練がましい恋心でしかない。
こんな風に、たまに思い出しては、チクリ、チクリと…私の胸を刺し続けている。
酷いもんだ。
勝手な罪悪感に、勝手に傷ついてさ。
今なら、リストカットを繰り返す女の子の気持ちすら分かる気がした。
だって、この痛みにすら軽い陶酔を覚えているんだもん。
あの人は、今度はどんな風に私を犯してくれるんだろう?
彼の顔を思い浮かべながら、私はどんな風に犯されるんだろう?
期待と興奮で体が熱くなる。
約束の時間までは随分遠い。授業だってまだ残っているのに、悶々とした気分は重くなり、自分の体に興味が向いて仕方がなかった。
授業中なら平気だろうか?
どこか、教室から遠いトイレにでも入ってさ?
バレないかなって、バレたらどうしようって。不安になるほど胸のドキドキが強くなり、胸のドキドキが強くなるほど、快感への期待に意識が向いてしまう悪循環だ。
「おい、北見」
「…っ!?」
その時だった。フラフラと、教室に向かっていたはずの足が道を外れ、どこか一目につかない場所を探そうとしていると、背中から乱暴に声を掛けられた。
考えてることがバレちゃった?
一瞬浮かんだ想像に心臓が跳ねるけど、それはないと胸を撫でつける。
けれど、聞き慣れない男の子の声は、私を萎縮させるには十分で、胸の前で手を握りながら、恐る恐ると振り返った。
そこにはやっぱり、知らない男の子の顔。
ネクタイの色を見るに、同級生ではあるんだろうけど、それ以上に私と彼との接点は思い浮かばない。
「…なに?」
訪ねた私の顔を、ニヤついた顔が眺めてくる。
気分が悪い。どこか、品定めをするような好奇の視線だ。
ニヤついたまま、彼が向けたスマホの画面には私の姿があった。
電車の中で あの人に抱き竦められている私の姿。あの時がいつなのかも、もう分からない。ただまぁ、思いついた中のどれか一つなのはそうなんだろうとは思う。
上手く隠れてるな。
シートの陰と、あの人の体に阻まれて、私がどうなっているかまでは分からない。疑問は浮かんでも、それで声を掛けるには苦しい印象だ。写真の日付さえなければ、適当な良い訳をしても誤魔化せただろう。
脅されているのに、私は随分と呑気に構えていた。
写真を撮られていた事実には、思ったほどの衝撃はなく、ついに こうなったかって、その程度。胸の内を占めていたのは半分以上の諦観と、この先のつまらない予想でしかない。
「これ、お前だろ?」
「…」
私は答えない。ただ、スマホの画面から目を背けて、気まずそうな雰囲気を出しただけ。
「いいのかよ? 清水と付き合ってるんだろ、お前さ? パパ活っていうの? いつも優等生ぶって、やることはやってんじゃん?」
言葉の端々からにじみ出る下卑た笑みに、彼が私に何を求めているのかは容易に想像がついた。
「あの…こっち、来てください」
幸い、外の渡り廊下にいたことで、人目から外れることは簡単だった。
陽の当たる廊下から、深い陰を落とす校舎裏へ。彼の手を引き、人目から隠れる様に身を隠す。
「なに? こんな所に連れ込んで、なにか言いたい事でもあるわけ?」
「…その写真。どうする…つもりなの?」
「別に? パパ活なんて皆隠れてやってるだろうしな? でも、バレたら困るんじゃね? 特にお前みたいな優等生はさ?」
「…」
優等生…ね。
勝手なイメージの押しつけだけど、バレたら困るって点だけは当たっている。
ううん、それも少し違うけど。隠せるうちは隠しておきたいというのが本音だ。
「どうしたら…良い?」
私の問いかけに、彼の顔が喜悦に歪む。
言いたい事は、言われなくても分かっていた。あんな写真を見せつけてきて、それで終わりな訳が無い。黙っていたって、事態は悪い方に転がるだけ。
止めてくださいって言葉ですら無意味なのを、身を持って知ってしまっていた。
まぁ、仕方ないか…。
内心の溜息を悟られないように、私は自分から胸元のリボンを解いていく。
ブラウスのボタンを一つ、また一つと、外していく間にも、開けた胸元へと彼の視線が突き刺さる。
「ははっ…。まじかよ、自分から脱ぐとかさぁ」
その乾いた笑いは何だったのか。あんまりにも上手くいきすぎて、逆に戸惑ってしまっている雰囲気さえあった。
「…脅しておいて」
「脅してなんかねーよ。俺はまだ何も頼んでないしな?」
「そうだね。私が勝手にやってるだけだもん…」
屁理屈も良いところだ。選択肢なんて、私にはほとんど無いのにさ。
「じゃあ、これで満足してくれる? 見ることは見れたでしょ? その写真、消して?」
「はぁ? おまえ、それが人に物を頼む態度かよ? 誠意ってのがあるんじゃねーの?」
誠意…誠意ね…。
「分かった…から。やるから、少し…こっちに来て?」
自暴自棄なのは分かっている。それでも、絞り出した勇気が消えない内に、彼のズボンのジッパーを引き下ろした私は、取り出した彼のモノに指を掛けていた。
意外と違うものなんだな。
男の人の おちんちんなんて、どれもそんなに変わるものじゃないと思っていたけれど。触ってみると色々な違いに気づくものだ。
まず、触った感じからして別物だった。
肌触りっていうのか、触り慣れているおじさんのものに比べると、まだまだ真新しい感じを受けた。流石に、小学生の男の子って雰囲気でもないけれど、本人の横暴な態度と比べても、垢抜けていない彼のモノはいささか可愛らしくも思う。
なんていうかさ。
少し拍子抜けだ。
だって、もう少し乱暴にされるものだと思っていた。
あれだけ強要するような事を言ってたんだもん。おちんちんはもうすでに勃起を終えていて、なんならすぐにでも行為を求められるんじゃないかって。
それなのに、触れた おちんちんの固さは、まだ十分とは言い難い。
これから女の子を犯そうって男の子のモノにしては、いくらか遠慮がちだ。
それとも、これが普通なんだろうか?
あの人が元気過ぎただけでさ?
それはそれで、嬉しいような、呆れるような。
女としての自分の体にそこまで興奮してくれるのは嬉しいけれど、良い年したおじさんが若い子に夢中になってる絵面というのは、見栄えのするものではない。
「ねぇ…んっ、わたし…これ、いつまでしてれば…」
「いつまでってっ…はぁっ、くっ…まだ触った、ばっかりだろ? ちゃんとしねーとおわらねーぞ…って」
射精させろって?
今更、求められてどう思うでもないけれど。それならそれで、自分のモノくらいちゃんと勃起させて欲しいもんだ。私は貴方の彼女じゃないんだよ? ましてやセフレって関係ですら無いのに、他人の おちんちんをあやしてまではいられない。
はぁ…。
内心吐いた溜息は口には出さず、彼のに触れる指先に意識を向けた。
大きさ、形、固さ や 熱さ。触り心地以外にも、おじさんのモノと比べると 同じ肉棒とは思えない。若干の物足りなさを残しつつも、それを気持ちよくさせる方法こそ、そう大きく変わるものでもないだろう。
こうやって、まずは優しく擦って上げている内に、私の手の平に包まれたモノが膨らんでくる。それが、ビクンっと力強く跳ね出す頃には、さっきまでの頼りなさとは裏腹に、やっと それらしいくらいにはなってくれた。
良い子だよ、偉いねって?
溢れてきた先走りの汁を亀頭の先に塗り拡げながら、指の腹で鈴口を擦る。
荒くなってくる彼の吐息。震えの強くなる肉棒の先からは、だらだらと量を増した先走りが、快感の気配を強くする。
「はぁっ…っ、北見…おまえっ、うますぎっ…」
まぁ、勉強だけは得意だから。答えのある問題ほど楽なものはない。
どこをどうすれば気持ち良くなってくれるのか。おじさんと 全く同じにはならないけれど。顔色を伺いながら、指先の刺激を変えてやると、面白いように彼は体を震わせ始めていた。
気づいてないんだろうか?
さっきまで私を支配しようとしていた人が、私に支配されてるっていうのに。
快感に耽る彼の様子からは、自分が手玉にとられている自覚は見られない。
ビクビクと、強く震えた肉棒が膨らみを増していく。
近づいてくる射精の気配に、あえて刺激を緩めた途端、わなわなと彼の唇が震えだした。
「きたみ…っ。おまっ、わざとやってんじゃ…ちゃんと、しろってっ…もっとつよくさっ!!」
「わざとじゃ…っ、私だって、ちゃんとやってるもん…無理言わないでよ…」
気弱な女の子の言葉を口にしつつも、肉棒を弄る指は いじめっ子のそれだった。
泣きそうになりながら、慌てて肉棒への刺激を強くしてはみても。射精の気配が近づくほどに、刺激を緩めていく。明らかな手抜きよりも酷い、明確な嫌がらせだ。
きっと、おじさん相手にこんな事をしたら、私がお仕置きされてしまうんだろうけれど、自慰以上をした事なさそうな彼が、私の意地悪に気づく気配もない。
嗜虐心…ていうのかな?
一般的にはSとか言われる性癖に理解は無いつもりだったけど。
私の手で身悶える彼の姿を見ていると、少しだけ、女の子をイジメたがる男の子の気持ちがわからないでもない。
「クソっ! もういいっ、そろそろやらせろよっ!」
「きゃっ!?」
快感は容易く人の理性を削り取る。それは、痛みや恐怖に繋がる束縛よりも簡単にだ。 私にだって覚えがある。最初は怖くて仕方がなかったのに、適切に与えられる快感に、気づけば抗えなくなっていた。
ましてや、射精の瞬間を延々と引き伸ばされ続けている彼にとっては、下手に殴られるよりも厳しい拷問だったんだろう。ついには痺れを切らした彼に、私の背中は校舎の壁に押し付けられてしまった。
抵抗はしない。
ううん、しては見せた。
「いや」だとか「やめて」ってさ。気弱な言葉を口にして、弱々しく彼の胸板を叩いてそれだけだ。中途半端な抵抗こそが、彼の支配欲を刺激すると、目の色を変えて私の服を掴んでくる。
中途半端に開いていた胸元を引っ張られ、弾けるような勢いで外れるボタン。ブラを剥ぎ取られ、曝け出された胸の膨らみが乱暴に掴まれる。
興奮に焦れた彼は、スカートを捲りあげるのすら煩わしそうだった。
ようやくとヒラヒラ遊ぶ布地を捲っても、今度は下着に邪魔をされ、とうとう我慢がしきれなくなると、そのまま肉棒を擦り付けてくる。
「ほらっ、もっと足開けよっ、俺の挿らないだろっ!」
挿れていいなんて、一言も言ってないんだけどな。
彼の中では私を犯すことは、もう決まっているみたいだった。
まぁ、どっちみち力で適うわけもない私に出来ることはない。
ましてや、興奮しきった彼の力は痛いくらいで、掴まれた胸の膨らみがヒリついてもくる。
ちょっと、からかいすぎたかな。
早めに出させて上げないと、私の方が怪我をしてしまいそうだ。
「いたっ…いたい、からっ。せめて、もうちょっと…優しく、して…」
仕方なく、いやいやと、目尻に涙まで浮かべて見せて、彼の行為を誘い込む。
逃げるように腰を引き、ますますと壁際に追い込まれた振りをする。
ためらいがちに開いた足の間に、割り込んでくる彼の体。熱り立った肉棒の先が下着の上を掠めた途端「んっ…♥」と、そこから生まれた淡い快感に声が漏れてしまう。
「はっ、ははっ。なんだよっ、北見? おまえ、犯されて感じてるの?」
「ちがっ、そんなんじゃっ…私はっ、違うから。お願いだから…こんな事、やめ…っ」
まぁ、そこを我慢してもしょうがない。
焦ったような腰の動きでも、恥丘を刺激され続けていれば、それなりの反応を返してしまう。ぽぅっと、下腹部が熱くなり。ムズムズと体が落ち着かなくなると、肉棒の押し付けられている恥丘の隙間から、滲み出してくるものはあった。
「何が違うんだよ? これ、お前の愛液だろ?」
「ぅぅぅぅっ…。ちがう、ちがうの…それは、貴方の、でしょ…」
「俺の、なんだよ?」
「だからっ! さき、んっ。はぁっ…か、かうぱー、で…」
別にどっちでも良かった。
先走りって言っても、カウパーって口にしても同じことだ。
ただ、真面目な女の子が口にするには、俗な言い回しから逃げるような表現の方が興奮を煽れると思っただけ。
「でも、俺の先走りだけにしては濡れすぎじゃん? それにほらっ、こうやって、おしつけたら…んっ、さっ。お前の方から、ドロって、溢れてくるんだけど?」
「んっ♥ はぁっ、や、だ。おしつけちゃ、んっ、はぁっ、はぁっ…ふぁっ♥」
急な刺激に甘い声を上げ、だんだんと吐息を乱す私の姿に、彼の興奮が高まっていくのが見てとれる。押し付けてくる肉棒が固さを増して、ようやくと、あの人のそれと変わらないくらいの力強さになった。
「ほらっ、はぁっ! 北見もっ、ほんとは嬉しいんだろ? 俺の肉棒、お前の中に、今、はっ…いれっ、くっ!!」
でも、同じになったのは精々固さくらいのものだった。
熱り立った先端が下着を押し込み、割れ目と一緒に食い込んでくる。
それは、私を焦らす為のものじゃない。ただ焦った様な腰の動きに、狙いを外した肉棒は空振りを繰り返すばかりだ。下着に阻まれ、中に挿れられず、かといって、それをズラすといった所にまでは気が回っていない。
そういうのも可愛いとは思う。
たとえば、清水くんが私の体に興奮して、とかだったらね。
そのまま、中に挿れる前に出しちゃってさ、気まずそうにする彼の顔を想うだけでも、愛しさの様な感情が浮かんできた。
淡い快感が行ったり来たり。
退屈な刺激とはいえ、そんな事を繰り返されていると、私の方だって焦れてくる。
いつまでもこんな事には付き合っていられない。校舎裏にだっていつ人が来るかも分からないんだ。バレたらバレたで良いけれど、流石に少しは面倒だ。
「いやっ、やだっ…おねがい、だから…中には、挿れるのは…やっ」
見た目は、嫌がる女の子そのものだっただろう。彼の胸板に手を置いて、体を引き離そうにも敵わない。そんな ささいな抵抗が、彼の興奮を逆撫ですると「にげるなよっ!」て、より強い力と言葉で押さえつけられる。
グイグイと、押し付けられる肉棒に下着が引っ張られ、横にずれ始めたのは行幸だった。直接に触れる肉棒の感触は、生々しく私に行為の続きを思わせると、ゾクッとした痺れに体が震え上がる。
慣れていた、つもりだったんだけどな。
肉棒が割れ目を開くこの瞬間だけは、どうにも居心地が悪くなる。
ましてや、それが望まない相手ともなると尚更だった。
こんなの、誰に許して良い訳もないのにね。一番好きだった人とは出来ないのに、こんなどうでもいい相手と体を重ねて、エッチな事ばかりを覚えていく自分がイヤになる。
逃げるように腰を浮かせる振りをして、肉棒の先を穴のある方へと充てがった。
一瞬の戸惑い。それを振り切るように、浮かせた腰から力を抜くと、勢い込んできた肉棒が、そのまま ズルっと私の中に挿ってきた。
「あひっ♥ はっ、あっ、や、だっ、ほんとに…はいって、や、うごい、ちゃっ、はぁっ、ま、まって、まってっ、んぁっ♥」
甘い声で鳴きながら、だけど、言葉以上に気持ちは乗り切れない。
まだ、エッチに不馴れだった頃の自分を演じながら、辛うじて気分を盛り上げている様な状態だ。
だって、下手なんだもん。
これならさ?
一人でオナニーしていた方がいい。自分の好きにできる分だけ、まだ気持ちよかったかもしれない。ううん、射精された後の面倒くささを考えると、そっちの方が絶対良い。
本当は、もうちょっとだけ期待していたんだけどな。
嫌がりながらも、犯されて感じる私って奴にさ。
あの、仄暗い興奮を味わいたかった。最近は薄れていた被虐的な快感が欲しかった。なのに彼は、ただ腰を振りながら「すげぇ」とか「やべぇ」とか、言葉を漏らすばっかり。私の反応なんて見てすらいない。
胸を掴んだ手はそのままに、愛撫の一つもしてくれないし。ただ激しいだけの腰の動きは単調すぎる。挿入の刺激で頂点を迎えた快感は、そのまま右肩下がりに熱を逃がしていくばっかりだ。
「やだっ、あっ♥ はげしっ、とま、とまってよっ…このままじゃ、あっ♥」
「にげんなよっ! もうちょっとっ、おれっ…だしてっ、んっ。いっしょにっさ? イこうぜ? 北見もそろそろイキそうなんだろ?」
「ちがっ、イキたくなんか…わたしっ、んはっ♥ はぁぁっ、ぁぁぁぁっ、やっ、やめっ、んっ♥」
なんか拍子抜けだ。
あの人が出してくれるって言う時は、あんなに待ち遠しかったのに。
同じ様に早くって思っても、今は早く終わって欲しいだけ。
まぁ、オナホみたいに使われてるって思えば、こんな奴にって、少しは悔しく思うんだけど。あの人に使われた時は、もっとメチャクチャにして貰えたし、思えば思うほど何もかもが足りていない。
結局、欲求不満を解消するつもりで付き合っては見たけれど、余計にこじらせただけみたいだし。
そろそろ、いいかな…。
飽きちゃった。
急激に快感の熱が冷めた後はもう、私の中で動く肉棒は、ただただ煩わしいだけになっていた。
「で? 幾ら出してくれるの?」
その言葉と同時に、彼の肉棒の根本を指先で抑え込む。
「なっ!? あっ、くぅっ。きた、み? おまえ、なにやっ…いくらって」
「当然でしょ? あの人だってお金払ってくれるのに、あんたはタダ乗りするき? 気持ちよくしてくれるなら、まだ見逃そうとも思ったけどさ? 下手なんだもん。いつまでも、貴方の筆下ろしに付き合ってあげられないの、私は」
下手って言われたのがショックだったのか、童貞がバレたのが恥ずかしかったのか、私の言葉に彼の顔が赤くなる。
「何、調子乗って、バラされたいのかっ! 清水だけじゃないぞ、皆にもだ。学校にいられなくなるどころか、お前はっ」
「やって見なよ?」
「は?」
彼は、あの日の私と同じ顔をしていた。
鳩が豆鉄砲を食らったようなさ? いや、そんな鳩は見たこと無いんだけど。ほんと、バカみたいな顔して私を見つめてくる。
「まぁ、面倒ではあるけどね? それでも無理やりやらされただけって、貴方とエッチしたのだって、その時のこと脅されてってさ? 泣いて見せれば皆信じてくれるんじゃない?」
「そんなこと、誰が信じ…」
「この国の常識は女の子には甘いから。特に私みたいな優等生にはさ? 疑問に思う人もいるかもしれないけど、大っぴらにはそういう事になると思うよ?けどね? あなたは違うでしょ? 私を脅して無理やり犯して、それで? 無事でいられるつもり? むしろ助かるかな、私は。パパ活女って話題程度じゃ多分、貴方のレイプ犯って話題に流されると思うし?」
口を開いては閉じて、体を震わせて怒りを顕にするけれど、それで彼が私をどうこう出来るわけじゃない。本当なら、私を叩いてでも無理矢理に組み伏せて、生意気言えなくなるまで、もっと激しく犯してやりたいだろうに。
そうしてくれれば、まだ見直しても上げたんだけどな。
でも、中途半端に残った理性に背中を冷やされた彼は、何も言えずに固まるだけだった。
「で、幾ら払うの?」
挿りっぱなしの肉棒を、膣の柔肉で包み込む。さわさわと撫でつけた後、きゅっと締めると、彼の顔が面白いように歪んで見えた。
射精したくて、でも出来ない。肉棒を震わせ、腰を跳ね上げては見るものの、私だって、そう簡単に離してやるつもりなんかない。
焦れて、焦れて、堪らなくなって、ついには観念したかのように、震えた声が返ってくる。
「せ、1000円…で」
「は?」
お話にならない。
子どものお小遣いじゃないんだ。
バイトの時給だって、最近はもう少しマシな金額をくれるっていうのに。
「エッチも下手。お金もない。おまけに人を脅すなんて卑怯者。そんなんだから彼女もいないし、童貞のままなんじゃないの?」
「うぐっ、あっ、やめ…それ、きつっ…」
喋りながらも、私は肉棒への刺激を続けていた。
決して射精はさせない、けれど快感からも逃がしてやらない。
吹き出しそうな精液を根本で押し留めたまま、射精を促すような腰使いで肉棒を刺激してやった途端、快感で染まっていた頬ですら青冷めた様に見えた。
「ごっ、5000円っ…だすからっ、頼む、ゆび…どけっ…。今は、それしかもってなくてっ…」
「人に物を頼む態度じゃないよね、それさ? 私を買えないなら、少しは素直になってもバチは当たらないんじゃない?」
「くっ、はっ…ふざけ、るなよっ、おまっ、あぅっ…!!」
まだ何か言いたげな彼のモノを締め上げると同時に、ぶら下がっていた袋をぎゅっと掴まえる。それだけで言葉を失った彼は、ガタガタと震えだし、助けを乞うような瞳で私を見つめてきた。
「出させてください、お願いします。言えるよね?」
「だ…くそっ。あ、やめっ…つぶれ、はぁ。だ、ださせて、くだ、さい…おねがい、しますっ」
「良いけど。今日の事は二人の秘密だよ? 分かってる?」
「うん、うんっ。分かって、る。言わないから、頼む、北見…俺が、悪かったから、だからっ、ゆるし、て…ください」
まぁ、ここら辺で良いか。
あんまり追い詰めて自棄を起こされても嫌だし、追い詰められた人間が面倒くさいってのは自分が一番良く分かってる。だからって、5000円じゃ中出しなんかさせてあげないけど。
腰を浮かせて、あっけなく中から肉棒を引き抜くと同時に、根本を抑えていた指を離す。「あひゃっ」と、その瞬間にバカみたいな声を上げた彼は、溜まりに溜まった精液をそのまま撒き散らすと、腰を抜かした様に地面に座り込んでしまった。
「うわ…最悪」
それは当然、目の前に立っていた私にまで降りかかってしまっていた。
白いブラウスの上にすら、それと分かる染みが付くと。スカートに、上着に、太もも、靴下にまで。勢いだけは一丁前に飛び出した精液の少なくない量が、私の体を汚していった。
射精を終え、固さを失くした肉棒の先から溢れた精液が、ダラダラと未練がましく地面に零れる。私を脅していた時の勢いはそこにはなく、射精後の脱力感も手伝ってか、項垂れてしまった彼は随分と情けなく見えた。
♪♪♪♪
同時に、鳴り響いた授業開始の音楽に、私は呆れ返ってしまった。
念の為、スマホを確認してみても、私の体内時計に狂いはない。休み時間の合間に始まった行為は、授業開始の合図とともに終わった事になる。
それに多分さ…。
項垂れる彼の前で屈み、萎えた肉棒に指を添えてみた。
「ひっ…」と、漏れた声に構わず、少し擦ってやると、彼の口から情けない悲鳴が飛び出してくる。
「あっくっ! 今はっ、やめ…出したばっかで、敏感で…っ」
まるで、女の子みたいな反応だ。
これが、好きな人の反応だって言うなら可愛げもあるけれど。彼はそれを埋められるほど、可愛い顔もしてはいない。どっちかといえば格好いい系で、それが更に情けなさに拍車をかけていた。
「はぁっ…もう少し期待したんだけどな」
下手なのは良い。早いのだって仕方がない。けれど、おじさんより若いならって、そのくらいは思って当然でしょ?
「下手で、早くて、一発だして萎えるとか、おちんちんまで弱いんだね。向いてないよ、君にはさ? 今日のことは黙ってて上げるから、レイプとか卑怯な事してないで、真っ当な恋愛しなよ?」
「っ…あ、ぅぅぅっ…」
その言葉がとどめになったんだろう。
嗚咽を漏らし、俯いてしまった彼からはもう、私に反抗しようって色は見られなかった。