「先輩」
それはその場に似つかわしくない、聞き慣れた声だった。
「先輩ったら」
まぶた越しに届く陽光と、耳朶を撫でるように甘い声。
それは間違いなく俺の恋人の声なのだが、どうして朝っぱらから彼女がここにいるのだろうか。
「起きないなら、わたしも一緒に寝ちゃいましょうかねー」
そんな声が聞こえて、もぞもぞと彼女は布団に入ってくる。
そこまでされては、目を開けないわけにもいかず。
「あ、起きた」
「⋯⋯何してんの、君」
布団の中で目が合ったいろはは、微かな笑みを浮かべて俺を見ていた。
制服姿であることから察するに、登校前にうちに寄ったというところか。っていうか制服のまま布団に入ったらシワになるでしょうに⋯⋯。
「おはようございます。先輩」
「⋯⋯おはよう」
とりあえず挨拶されたので返してみるが、聞きたいことはたくさんあった。
「なんでここにいんの? こんな朝から」
「たまには先輩と一緒に登校したいなーって思いまして、お米ちゃんに入れてもらいました」
なるほどそこまでは何となく推察することができたところだ。
問題なのは──。
「もう一つ聞いていいか」
「はい、どうぞ」
「なんで、愛撫始めちゃってんの?」
問題なのは、何故朝っぱらから俺の股間を弄っているかということだった。
一色いろはは、俺の恋人であることに間違いない。バレンタインのなんだかんだの後に気持ちを伝え合い、お互いの初めてを捧げ合った仲になっていた。
だからまあ、俺たちの間にそういう行為があるのは自然なことだったとしても、何故平日の朝っぱらからなのかという話だった。
「だって先輩、こんなに大きくしたまま学校に行けないじゃないですか」
そう言ったいろははの顔は、とても年下の女の子とは思えないぐらい艷やかなものだった。
これは付き合ってから分かったことだが、いろはは相当に性欲が強いらしい。初体験だって彼女の方から促されてだったし、一度身体を重ねてからというもの、隙あらばという調子で性行為に持ち込もうとする。性に対しての直情さは、まるで男女反転しているような状況だった。
「だから、先輩」
いろはは可愛らしい顔を近づけてくると、チュッと俺の唇を啄んだ。
「わたしがお手々で鎮めてあげますから、じっとしててくださいね♡」
蠱惑的な声に、ぞわりと心と背中が震える。
間近に迫ったいろはの顔で、時計は見えない。時間はともかくとして、いろはの説明の通りであれば家には小町もいるというのに──。
「う、あぁ⋯⋯っ」
「あは♡ びくんってしましたよ♡」
俺はいろはの手に弄ばれるがまま、感じた声を出してしまっていた。
それに調子を得たのかいろはは両手で俺の下半身を剥くと、朝勃ちを続けているペニスがさらけ出される。
「カチコチですねー。えっちな夢でも見てたんですか?」
「これは生理現象⋯⋯うぁ」
いざいろはの手コキが始まってしまえば、その快感を拒否することは難しい。年下の彼女にこんなことをさせているという背徳感と、自分で慰めるのと一味ちがう快感。一言で言ってしまえば、俺はいろはという女の子に完全に夢中になっていた。
「ほーら、早くイッちゃわないと、学校行けませんよ?」
「は、あぁ⋯⋯」
コスコスと俺の肉竿を擦り上げながら、生暖かい吐息が鼻先に吐きかけられる。眼前で可愛らしい顔が蠱惑的に笑った、その瞬間──。
「いろはさーん?」
「──っ」
コンコンコンとノックの音に続いて、ドア越しに小町の声が聞こえてくる。一瞬いろはの手が止まり、しかしすぐにその動きが再開された。
「お兄ちゃんまだ起きないんですか?」
「うーん、もうちょっとかかりそうだから先に出ててくださーい」
「了解でーす」
どこか間延びした声と会話が終わると、足音が遠ざかっていくのが聞こえた。
心臓はバクバクと高鳴り、あろうことかペニスはさっきよりもガチガチに勃起している。
「ふふっ♡ 嘘ついちゃいましたね。こんなにおっきしちゃってるのに」
「お前、な⋯⋯、うぅ⋯⋯っ」
シュッシュと竿を扱き上げる動きを早くなると、どんどんと射精に向けて追い詰められて行ってしまう。さっさと出してしまった方がいいのは分かっていても、いざ果ててしまいそうになるともっとその快感が欲しくなるのだから、俺も業が深い。
「出そうなんですか?」
こくこくと頷いた俺の肉棒は、いろはの小さな手の中でビクビクと震えている。血管が浮き出るほどに膨張し、真っ赤になった亀頭から白いものを出すのを必死に我慢して、少しでもその快感を長く得ようとあがいていた。
「あは♡ じゃあカウントダウンしてあげますね♡ ゼロになるまでイッちゃダメですよ」
さっきまで早く出さないとと言っていたのに、いろはは射精を察知すると焦らしにかかってくる。俺の耳にキスをすると、鼓膜に向けて囁き声でカウントを始めた。
「じゅう、きゅう、はーち、なーな⋯⋯」
ゆっくりと数字が読み上げられていく間にも、シコシコと肉棒は高速でシゴき上げられている。制御不能な快感が体中を走り回って、全身はそれを押さえつけるかのように硬直していた。
「ろく、ごー、よん」
不意にくすりと笑って、その続きを声に出すのをあえて止める。いろはの方を見ると、彼女は確かに笑っていた。
「さん、にーい、いー⋯⋯」
最後まで言わないまま、いろはは俺の頬にキスをしてくる。そして。
「にーい、さーん、しーい♡」
「は、あぁぁ⋯⋯っ、いろは⋯⋯っ!」
「あは 先輩、そんなに射精したいんですかー?」
シュッシュと手コキが激しくなり、俺の身体はブルブルと快感に跳ねだした。
もう暴発だろうがなんでもいいから、射精してしまいたい。切実にそう考えるぐらい、俺はもう限界だった。
「さあ、じゃあいっぱい出しちゃいましょうね♡ さーん、にーい、いーち」
「はぁ、う、ぁぁ⋯⋯っ!」
ペニスを握り込む力が強くなり、いろはの手の動きは一気に早くなる。
射精させる為の激しい手技に、これ以上の我慢ができるはずもなく──。
「ゼロ♡」
びゅるるるるるるるるうううぅぅっ!! びゅっ、ビュクッ! びゅくんっ、ドピュぅぅっっ!!
いろはのカウントダウンが終わると同時に、俺は思いっきり射精していた。
自分の腹に向けて大量の白濁液が迸り、はだけていた寝間着にかかる。飛びすぎたザーメンは、いろはのスカートにまで付着していた。
「ちょっと、出しすぎですよ♡ 制服にかかっちゃったじゃないですか♡」
びゅぷっ、びゅるるるるるっ! びゅるるっ、ドピュッ、びゅクゥッ!!
そう言われても、もう放出が始まってしまえば止まらない。
いろははこれ以上制服に精液がつかないように亀頭を握り込んで蓋をすると、もう片方の手で肉棒をシゴき上げてくる。最後の一滴まで搾り取るようなその仕草に促されて、俺の肉竿はビュービューと射精を続けていた。
「うわぁ、すご⋯⋯。やっぱり朝一番の搾りたては濃厚ですね♡ 量も凄いです♡」
ようやく俺の射精が終わると、いろはは右手に受け止めた特濃のザーメンを見せてくる。指の間に糸が引くほど粘度の高い生殖液が、いろはの白い手をベトベトに汚していた。
「ん⋯⋯♡」
そしていろははドロドロの精液にピンク色の舌先を伸ばすと、ペロペロと丁寧にそれを舐め取っていく。
俺の目の前で全てを口の中に収めると、いろははこくんと小さく喉を鳴らしてそれを嚥下した。出したてのザーメンを、ゴックンしたのだ。
「ん、はぁ⋯⋯。匂いもすっご⋯⋯♡ 昨日えっちしたばかりなのに、もう溜まっちゃったんですか?」
いろははそう言うと唇に残った僅かな精液をぺろりと舌先で舐め取る。
「さあ、そろそろ行かないと遅刻しちゃいますよ。⋯⋯って」
いろははそう言って、未だ勃起しままのペニスを見て呆れていた。
正直、まだ出したりない。いつもいろはと行為に及びだすと、二回戦三回戦は当たり前だからだ。
「流石に今から続きはできないので、我慢してもらうしかないですけど」
「ああ⋯⋯。分かってる」
分かっていないのは、俺の下半身のみ。身体の反応までは抑えきれないが、家を出る頃には多少収まってくれるだろう。
「じゃあ、準備していきましょう」
その一言を合図に俺は着替えを、いろはは制服にかかってしまった精液を処理し始める。
身支度を終えて家を出ると、頭上には清々しい青空が広がっていた。歩き始めてしばらくすると、いろははちょいちょいと俺の袖を引いてくる。
「先輩、見てください。ここ」
いろははそう言うと、スカートの一部分をつまみ上げて見せる。もちろん、大事な部分は見えないようにだ。
いったい何だと目を凝らしてみると、そこには濡れたような跡と白く固まりかけたものが見えた。
「これ、分かる人が見たら精子だってバレちゃいますね」
「⋯⋯⋯⋯」
からかうように言ったその顔には、小悪魔というより淫魔めいた笑顔が浮かんでいた。
そんなちょっとした冗談にすらまた下半身は元気になりかけているのだから、我ながらいい加減にしろって話だ。
「先輩」
俺が黙ったままでいると、いろはは背伸びをして耳に口元を寄せてくる。
「溜まってても、自分でしちゃダメですからね」
「⋯⋯分かってるっての」
甘く耳朶に響いたその声に、俺は思わず生唾を飲み込んだ。俺の反応に満足したのか、いろはは半歩だけ前に出て上機嫌そうにスカートを揺らす。
──ああ、今日が学校のある日でなければ。ずっと二人っきりでいられる時間があったのなら。そんな願望の続きを思い浮かべると、また勃起してしまいそうになる。
『先輩はわたしとする時以外、出しちゃダメですよ』
その約束は俺といろはが付き合い始めて、一番最初にできた決め事だった。初めて行為に及んだ際に、いろはの方からそう求められたのだ。
今となってはその約束を後悔している。思っていた以上に俺の性欲は強く、満たしても満たしても欲望は大きくなるだかりだった。
「また昼休みに」
その一言が、過剰に俺の期待を誘ってしまう。
ただいつものように、一緒に昼飯食べるだけの
「⋯⋯おう」
俺はそう返すと、また固くなりそうなそれを必死に抑えつけるのだった⋯⋯。