「大空にひろがる稲光! キュアライトニング!」
プリキュアに姿を変えたヒカル君が高らかに名乗りを上げる。変身したヒカル君もといライトニングは長くなった金髪に青の瞳、黄色のフード付きのコート、黒のフィンガーレスグローブ、黒のズボン、黄色のショートブーツを身にまとっていた。
「キュアライトニングぅ? くそぅ……また脇役が変身を……」
「キミの目的はなんだ? なんであの子を狙う?」
「けっ! おまえに教えてやる義理はねぇ! やれランボーグ!」
「ランボーグ!」
カバトンから指示を受け、ランボーグがバーガーを射出。くっ……ここから抜け出せれば私たちだって戦えるのに……!、と……悔しがる中、ライトニングは飛んできたバーガーをかわす。ランボーグはめげず次々とバーガーを飛ばすが、ライトニングはその全てをかわしながら、ランボーグとの距離を詰めていく。
「2人は返してもらう!」
握りしめた拳を振り上げ、アッパーを繰り出すライトニング。衝撃が加わったことで、ランボーグの上半身が持ち上がったので、私とプリズムはこれを逃すまいとランボーグから脱出した。
「ありがとうございます! 助かりました!」
「お礼は後。あいつまだ戦える」
「そうでした! プリズム!」
「うん!」
スカイミラージュにスカイトーンWシャイニングをセットし、プリズムと手を繋ぐ。その状態でスカイミラージュを掲げると、ランボーグの頭上に青とピンクの円盤が出現。やがて虹色の光によって円盤に吸いこまれたランボーグは“スミキッター”という声とともに元のバーガーに戻った。
「あと少しだったのに……覚えてろよ! カバトントン!」
お決まりの捨て台詞を吐くと、カバトンは去っていった。あの様子だとカバトンはまた来ますね……懲りないカバです。
「最近噂になってるヒーローって、キミたちのことだったんだね。驚いたよ」
「それはこっちもだよ。稲葉君もプリキュアになるなんて……」
それは私も思っていた。でも、先ほどまでのヒカル君の行動にはヒーローの素質が感じられた。そう考えればヒカル君がプリキュアになったのは必然なのかもしれない。
「2人はこれまであいつと戦ってきたんだよね? あいつは何者なんだ? なんでエルちゃんを狙ってる?」
「それが……私たちにもわからないんです。でも、なにが目的だったとしてもエルちゃんを渡すわけにはいきません。この子には、帰るべき場所があるのですから」
こうしてる間もエルちゃんのパパとママはエルちゃんが帰るのを待っている。スカイランドを繋ぐゲートは今ヨヨさんが作ってくれているが、それは時間を要する。だから、ゲートが完成して無事にパパとママのところに送り届けるまでは私たちがエルちゃんを守らないと。
「それで、ですね……ヒカル君、私たちと―――」
「わかった」
「まだ最後まで言ってませんよ!?」
「それでもわかるよ。いっしょにエルちゃんを守ってくれ、でしょ?」
「え~!? なんでわかったんですか!?」
「そういう流れだったから、かな?」
流れ、というのはよくわからないが、協力してくれるのはうれしい。それにさっきの身のこなしとアッパー、鍛えればすごいヒーローに成長しそうですし!
「本当にいいの? 危ない目に遭うんだよ?」
「わかってる。でもここまで関わった以上は他人のフリなんてできないし、乗りかかった船だと思って協力するよ」
“顔も知られちゃったしね”と付け加えて自分の顔を指さす。今回でカバトンは間違いなくヒカル君が私たちの知り合いだと認識した。カバトンの性格を考えれば、次ヒカル君と会えばエルちゃんの居場所を聞き出すべく脅しにかかるのは容易に想像できる。つまり、私たちに協力しようがしまいが危険な目に遭うのは変わらないということだ。
「ありがとうございます! 改めてよろしくお願いします! ヒカル君!」
「う、うん……よろしく……」
差し伸べた手を握り、ヒカル君と握手を交わす。しかし、ヒカル君は目をそらして俯いている。なんでかはわからないが、これではいけない。
「ダメですよ。あいさつする時はちゃんと相手の目を見ないと」
「そ、そうだね……」
私からの指摘を受け止め、ヒカル君は視線を私に向ける。でも笑顔がぎこちない。ヒカル君ってもしかして、恥ずかしがり屋?
「そういえばヒカル君、人探ししてるんでしたよね? 遅くなりましたけど、改めて探しましょう! 誰を探してるんですか?」
「実はもう、見つかってるんだよ……探してた人……」
「え?」
首をかしげる。まだ人探ししてなのに、どういうことでしょう……?
「稲葉君、探してた人ってまさか……」
「うん。僕はキュアスカイ、キミを探してたんだよ」
「私を、ですか?」
「うん。デパートでランボーグと戦った時、助けてくれたでしょ? あの時お礼を言えなかったから、それを言うために探してたんだ」
「そういうことだったんですね……」
私はヒーローとして当然のことをしただけなのだが、わざわざお礼を言うために探してくれてたなんて、律儀な人だな……ヒカル君って。
「あの時も言いましたが、あなたにケガがなかっただけでもよかったです。人っ子一人守られないようじゃヒーロー失格ですから!」
「それでも僕は君に救われた。ありがとう、助けてくれて」
「いやぁ……そんな面と向かって言われると照れちゃいますよぉ~!」
でも、悪い気はしない。とまあこうして、私たちに新しい仲間が加わったのだった。キュアライトニング……頼もしい限りです!
―――――
あれからヨヨさんにあいさつした後、自宅に帰ってきた。今日はいろんなことがあった。バケモノに襲われて、プリキュアになって、あの子と再会して……。
「プリキュアになったことは秘密って言われたけど、言ったところで信じてくれないよな……」
言いながら、ミラージュペンを片手で持ち上げる。夢みたいな話だが、これは夢じゃない。ミラージュペンがあるのがなによりの証拠だ。
「これから戦うなら、やっぱり体を鍛えたほうがいいよな。今日はなんとかなったけど、いつもああ上手くいくとは限らないし……」
協力すると決めた以上、足手まといになるわけにはいかない。足手まといにならないために必要なことは強くなること。強くなるために必要なのは体を鍛えること。そして、体を鍛えるために必要なことはそう、トレーニングだ。
「……よし」
思い立ったが吉日、早速体を鍛えよう。ちょうど家にダンベルがあるし、ランニングだってできる。ということで……。
「いってきます!!」
ジャージに着替え、ダンベルを持ち上げながらランニングコースを駆ける。しかし、もう既にしんどい。流石にダンベル持ちながらランニングはムリがあったかな……。
「おや? ヒカル君じゃないですか! また会いましたね!」
しばらく走っていると、ソラさんと出くわした。彼女もランニング中なのか、ジャージを着ている。
「ソラさんもランニング?」
「はい! 普段は朝に走ってるんですけど、急に走りたくなりまして! それにしても……」
僕の手に視線を向けるソラさん。ダンベルを持っている手だ。
「ダンベルを持ちながらランニングなんてすごいですね! 私も明日からダンベル持ちながら走ろうかな……」
奇怪なトレーニング法を伝授してしまった……。まあ、ソラさんの身体能力ならやれそうだけど……。
「そうだ! せっかくですし、いっしょに走りませんか? 話し相手がいたほうがランニングも楽しいですし!」
「え!?」
心臓が跳ね上がる。僕から言おうとしたことをソラさんから言ってくれるなんて……。予想外なことではあるが、これは非常にうれしいことだ。
「あれ、どうしました? もしかして……迷惑でした……?」
悲しみを帯びた目で言ってくるソラさん。ソラさんになんて顔させてるんだよ僕のバカ! せっかくソラさんから誘ってくれてるのに! と、自分にキレつつ、首を左右に振った。
「全然迷惑じゃないよ! 走ろう! いっしょに!」
そう言うと、悲しみを帯びたソラさんの顔が笑顔に変わる。
「よかったです。じゃあ、早速行きましょう!」
僕の手を取り、ソラさんは走りだす。これもうれしいと言えばうれしいが、これではランニングにならない。
「ソラさん、手を引っ張る必要はないんじゃないかな……?」
「あ、そうでした! すみませんつい!」
慌てて手を放すソラさん。きっと無意識でやったのだろう。彼女に罪はない。
「大丈夫だよ。じゃあ、行こうか」
「は、はい!」
横に並んで走りだす。ゆっくり、ゆっくりと。
「ヒカル君は普段からランニングしてるんですか?」
「今日から始めたんだよ。プリキュアになった以上、体を鍛えようと思って」
「プリキュアになったの今日ですよ!? 意識高いですね……すごいです!」
「中途半端なのは好きじゃないんだ。やるからにはとことんやらないと」
「その考え、とてもいいと思います! 私もその姿勢、見習いたいです!」
ソラさんが憧憬の眼差しを向けてくる。ソラさんも十分意識高いと思うけど……。
「そうだ! 今日から始めるなら、これからもいっしょに走りませんか? この機会にヒカル君ともっとお話ししたいですし!」
またもや僕が言おうと思っていたことを言われた。きっとソラさんは仲間と交流を深めるべく誘ったのだと思うが、どんな理由だとしてもソラさんといられることが僕にはうれしかった。もちろん、この誘いを僕は……。
「ありがとう。これからもいっしょに走ろう」
喜んで受けたのだった。