「へぇ、悟くん保護したん。まあ、上を説得するのは協力するで。反転を使える様にしてもらえたからな。ほんで?どないな子なん?」
そう俺に話し掛けている十歳の少年は禪院直哉。何故か原作よりかは生まれる年が早まっていて、ドブカス度が低めな理由としては、直哉が転生者だからだろう。それでもドブカス具合が少しでもあるのは……元の性格が悪いのがあるだろう。
そして直哉と俺の会話を真顔で聞いているのが加茂家の次期当主の加茂憲紀だ。ぶっちゃけ何で同世代なのかは知らん。まあ、転生者だからと納得をしておこう。それと、憲紀は転生者なので特典はある。それは【吸血鬼皇帝】、特典無しでもありでも体術だけなら俺と並ぶ化け物である。
ちなみにだが、直哉の特典は【理想郷】。体術の才能では俺や憲紀には一歩劣るものの、特典と術式の組み合わせで幻術やら強制行動を取らせる事ができる。一番の脅威で一番厄介なポイントは術式の投射呪法の領域展開、【時胞月宮殿】を特典の【理想郷】と組み合わせた地球全体に閉じない領域を展開である。その為、俺、直哉、憲紀の黄金世代で最も警戒をされているのが直哉である。妥当中の妥当だ。
「ブルアカのケイとアリスだ」
「ぶっはぁーー!やっば、やっばいわ悟くん。ウチが保護しとる子一人に憲紀くんが保護しとる子二人をハーレムメンバーにしとる癖にまた新たに作るのは」
「茶化すのはやめろ、直哉。悟は意図的にタラシているのではない。普通にしていたら惚れられた天然ジゴロなだけだ」
「おい?憲紀?それは援護をするふりして貶してるよな?」
「気のせいだ」
「んな訳あるかぁ!というか、過去の俺が守ってきた生徒を俺が汚すのは不味いだろ」
俺はそう口にしながら、スキルの【亜空間倉庫》をタブレットを取り出す。先程の会話から分かるであろう。何故俺が、過去の俺が先生だ、と気づいたのが。
このタブレット、【シッテムの箱】に入っているメインOS二人、アロナとプラナに教えてもらったからだ。まさか、五条悟に転生する前世の俺の前世が先生だとは思わなかったが。そう説明をすれば、二人は驚きの顔をしていた。いつも糸目な憲紀の目を開かす事ができたのは少し嬉しかった。
「っちゅうか、先生って好感度高いやんか。より悟くんもハーレム入りする確率が上がるだけでは?」
そんなクソみたいな意見を言いやがった直哉に顔を顰めながら殺気を飛ばしそうになっていれば、直哉はそれに反応をしてゲラゲラと笑いまくる。他の禪院家割と善院家なのに此奴だけドブカス具合高いのマジで何とかして欲しい。
まあ、原作ドブカスよりかは幾段が下がっているからマシなんだろうけどさ。というか、俺が話したいと思った事はこれじゃない。どうせ「ハーレム要因になるやーん」と言われるのを覚悟していたが、此の話をする為にケイとアリスを保護した、という話題を出したわけでは無い。
「おかしくなってるぞ、明らかに此の世界は。クロスオーバーしている世界が多すぎる。何より……アロナとプラナに聞いた所、滅んだらしいぞ。アリスとケイが来た世界は」
「それ、マジで言ってんのよな」
「悟は此のような時、嘘は断じて吐かない。原因が分かっているのか?」
「残念ながら、無い。だから、少しで良いから注意をして欲しい」
「これで嫌だ、なんてゆうたらホンマに天邪鬼やで。悟くん。僕もまだまだ死にたくあらへんし、最愛の女を一人残せへんからなあ」
▲◯▲
それから暗い話は終わり、恋人の惚気話や上層部への愚痴で埋まっていった。時にデートスポットに「コレ良いな!」と目を輝かせたり。時に上層部での愚痴で日頃の鬱憤を晴らしまくったり。
禪院家が雇っている側仕えで、直哉の恋人であり、直哉の趣味の為メイド服を着ている銀髪の美女。十六夜咲夜が作ったおはぎを「うまうま」と食べたりして。いや、本当に。直哉の専属料理人も兼ねているからか、ビビる程に美味だ。直哉の普段の惚気話を聞くに、家庭的な料理も作れるのだろうが、今回は客人に出す料理も兼ねているので、繊細な味わいになっていると思われる。
俺的にはきな粉よりもあんこの方が好きである。
「そういえばさ、最近恋人達の家事力が上がってるんだよな」
「え?あー、確か最近、悟くんの恋人に咲夜が家事を教えたと言うとったな。ええ恋人達やねえ」
「だろ?」
俺の為に頑張って家事を教えてもらっていた場面を想像しながら言っているのか、微笑ましい物を見るような笑顔を顔に浮かべる。恋人達三人が素敵だ、という言葉に否定する意味も無いので、全力の笑顔で肯定をする。
そんな俺の様子に「ホンマ好きやなあ」と言葉を直哉が送ってくるのだが、当たり前だと思ってしまう。呪術師とか、探索者とか。そんな色々な危険な仕事をしている俺を待ってくれる。どんな時であろうと、支えてくれる。そんな子達を好きにならない方がおかしいのではないか。
思っていた事全て、打ち明けてみれば、笑っていた。可笑しい、という事では無く、嬉しいのだ、と感じられる。五条悟と生きようとしていた俺が、今は原作五条悟には無い道を歩んでいる事に。そんな友が、今俺の周りに居る事も嬉しく思う。まあ、そんな事俺は絶対に言わないが。直哉が確定で調子に乗る事が見えてるし。
「私の恋人のシオンはなあ…どう転んでも料理ができないんだよ。私の側仕えや私が見るんだが、どうしてもレシピ通りにならない。悟、治す手段とかってないか?」
「知らん。俺はご存知ありません。そういうのは直哉に」
「悟くん?僕も無理やで。咲夜がお手上げなのに僕ができる訳ないやん」
分かっていた筈なのだが、八方塞がりな状態に頭を抱えている。味はうまくできている。しかし、見た目と感触が絶望的だ。アレを見た瞬間、俺は死神が迎えに来たのかと思ったぞ。
割と不死な俺が死期見えるって相当だぞ。「憲紀も吸血鬼なんだから、鬼であるシオンを何とか説得したらどうなのだ」と言葉を口にすれば、絶望したような真っ暗な顔が浮かび上がる。えぇ、恋人愛している憲紀が此の反応をするなんて、相当だぞ。
アニメで知ってはいたが、シオンの料理の矯正ってそんなに大変なんだな。失礼ながら、恋人達が料理の腕が並で良かった、と思ってしまった。
シオンの料理に関しては答えが出ないまま、終わってしまったが、まあ大丈夫だろう。これだけ料理に関してボロクソに言ってはいるが、それを強制的に止めようとしない所から、料理をしたいというシオンの意思を尊重しているのだろう。良い関係である憲紀とシオンの関係を壊す必要もない。多分、直哉も同じ気持ちだ。
「そろそろ、帰ろうかな。メイに会って」
俺が口にした名前。それは禪院家が保護している少女の一人の名前であり、先程直哉が言った俺のハーレムメンバーである。"保護"の時点で察していると思うが、呪術世界にクロスオーバーしたキャラだ。ポケットモンスターブラック2、ホワイト2の女主人公。この世界でも女優をしたり、ショッピングモールの経営をしたり、とポテンシャルがやべぇー子だ。
探索者としても活躍しており、スキルの【怪物球体】で造られたモンスターボールをモンスターに投げれば、確率で捕まえる事ができ、捕まえたモンスターはポケモンに変化する事ができる。メイ以外にもこのスキルを持っているのは居るのだが、メイ程探索者に向いているのは居ない。その理由は色々あるのだが……後程。
直哉と憲紀にそう言ってから、俺は直哉の部屋を離れる。それから数分、テクテクテクテクと歩くのだが、まあ迷う。昔の禪院家は他の御三家に負けられない、と家を広くしたらしいのだが、大き過ぎる。ウチの屋敷を見てみい、無駄を削ぎ落とした屋敷ぞ。今は咲夜や直哉が居るのだから、屋敷が小さくても中身を広げられるだろうに。
一個人の抗議では何にもならないんだろうが。愚痴っぽい物を心の中で口にしていれば、「キュイイイィィ」と鳴き声が聞こえた後、超スピードで俺の肩に乗ってきた。此奴はメイのポケモンであるムクホーク。『スレイ』と名前を付けられている。
メイがスレイをゲットした時に俺も一緒に居たからか、スレイはメイの次に俺に懐いている。スレイが此処に来たという事は、メイ達の鍛錬が終わったという事を指す。
「あれ?悟、来てたの?」
「ああ、直哉や憲紀に用があったからな。それで帰ろうとしてたんだが、最後にメイに会いたくて」
「私も会いたかった。嬉しい、悟」
そう言いながら抱きついてくるメイに、俺も微笑みを顔に浮かべながら抱き締める。愛と体温が心地良く、暖かかった。