楽しい異世界ドスケベ牧場経営~ただし家畜は人間とする~ 作:ベリーナイスメル/靴下香
半裸の女性が年老いたとはいえ男に背後から胸を揉みしだかれるシーンを見て想像することは一つだろう。
リビングへと場所を移し、カリスの遠慮ないジト目が祖父、ハーツへと注がれている。
「お前とて家畜の乳搾り位見た事がるじゃろうて。わしは確かにお前が子供のころに目の前でやったことがあるぞ。だからこうして会うのも久しぶりなんじゃし、いい加減その目は止めろ」
「知ってるけどさ、流石に家の中でやってたら勘ぐりもするよ。ばあちゃんの墓前でどう報告すれば良いのやらって思いっきり悩んだよ」
「わしがばぁさん一筋なのは知っておるだろうに……まったく。ほれ、ミーシャからも何か言ってやれ」
「はい~。わたしは別に気にしてませんからぁ~」
ニコニコしながら、フォローになってないフォローをするミーシャと呼ばれた女の人を一瞥してからカリスは肩を落とした。
追及するつもりは欠片もない、ハーツが自分で言った通り今は亡き祖母一筋であることはよく知っていたし、仮に遅すぎる第二のロマンスが一回りどころか自分と恐らくそう変わらない歳の女性とあったところで、ちゃんと一度最後まで終わってるのだし、そう言うこともあるかと言った程度である。
「はぁ……いや、うん。とりあえずご無沙汰していました、お久しぶりです。父さんから連絡はあったと思いますけど、牧場を片付ける手伝いに来ました」
「あぁ、久しぶりじゃな。今は建築ギルドの認定大工をしておるんじゃったか? あの鼻垂れが立派になったもんじゃ。コキ使ってやるから覚悟しておけ」
かっかと笑うハーツの姿は記憶と変わらないまま。
確かに白髪交じりだった髪は白一色になってしまったし、顔にもシワが目立つようになったが人柄はそのままであったことにカリスは大きく胸を撫でおろす。
「はい、よろしくお願いします。けど、えぇと、家畜と言ってましたけど、こちらの方は?」
「あぁ、そうじゃな。ほれ、ミーシャ」
「はい~。ミーシャ・ロクトールですぅ。少し前から、こちらにお世話になっておりまして~。よろしくおねがいしますぅ」
「カリス・ヘルシアです。お察しかもしれませんが、孫です。よろしくお願いします」
イスに座りながら頭を下げるミーシャに合わせて頭を下げようとしたカリスだったが。
「……で、っか」
「はい~?」
「い、いや、なんでも」
たゆんっと音でも鳴ったのか、服の上からでも主張の激しいミーシャの胸、その深い谷間に目を奪われ無意識に口で言ってしまった。
「訂正しておくか。立派なスケベになりおったわい」
「うぐ」
二人のやり取りに首を傾げるミーシャだったが、男なら誰もが目を奪われてしまうだろう爆乳と言って良い胸の大きさ。
目は丸く、顔立ちが幼い事もあってこれじゃあ祖父が過ちを犯してしまう気持ちもよくわかるなんて、なんともイケナイ気分になってくる。
「じゃなくて、牧場を畳むって話なのに家畜を買ったんですか?」
「家畜として買ったわけじゃない。腰が悪くなり始めてから世話人というかな、助手として雇ったんじゃが……雇ってから紋様が浮かんでの」
「あぁ、だから搾乳機。じゃあ、ミーシャさんはミノタウロスか何かの?」
「はい~、どうやらそのようで~。紋様もご覧になりますかぁ?」
言うや否や上着を捲ろうとするミーシャを慌てて止めるカリスだったが、先ほど見てしまった谷間にはそういえば紋様が浮かんでいた。
遥か昔に魔族と人間の戦争があった。
どういう経緯で共存という形で決着が着いたのかは現代に伝わっていないが、人間と魔族の血は混ざりあった。
異形であった魔族の血を引いているからと言って人間の姿形は変わらないが、中には先祖返りとして身体の何処かに紋様が浮かぶ人間がいる。
中でも胸に紋様が浮かぶのはミノタウロスという種族の血を引いている証左だった。
「ご覧の通り独特な娘でな。最悪次の働き口が見つからんでも、家畜としてなら生きていけるじゃろうと乳しぼりをしておったんじゃが……」
「ミノタウロスのミルクは希少ですし、美味しいらしいですもんね。けど、何か問題でも?」
「えぇと~……どうにも、上手くお乳が出なくて~」
眉をへにょんと落としながら、自分の胸を叱りつけるように揉むミーシャが色んな意味でカリスの理性をガリガリと削っていく。
「乳詰まり、じゃな。命に害はない程度に搾ることはできるが、如何せん量が少ない。家畜として牧場に入ってもこれじゃあ金にならん」
「うう~やっぱり、救いはないんでしょうかぁ~」
「安心せい。牧場を畳む準備はこうしてカリスも来たし問題ないわい。お前さんをちゃんと世に送り出せるようにするのがわしの最後の仕事じゃよ」
「ありがとうございますぅ~」
好々爺然としたハーツの笑みに下心のようなものは感じられない。
それもそうだ、伴侶一筋であることもそうだが、畜産農家は家畜にそういった感情を抱かないからこそ多くの意味で成り立っている面がある。
実際、ミーシャ自身もそういった部分を信頼しているのか貞操に危機感を覚えていない様子。
「とはいえ、じゃ」
「うん?」
笑みから表情を困っているというものに変えたハーツがカリスへと視線を向けて。
「さっきやっていた後ろから揉むことで興奮を煽って循環を――いや細かいことは良いか。わしの持っている知識、技術はすべて試してしもうての。完全に解消するには八方ふさがりじゃというのも事実」
「爺ちゃんで無理なんですか」
「あぁ。何度かミノタウロスの血を引く家畜の乳しぼりは経験があるが……どうにもならなくての。そこで、物は試しということでカリス。やってみんか?」
「……はい?」
さて、これにはカリスも驚いた。
驚いたというか、言っている意味がわからないと言ったところだが。
「いや、資格だって持ってないですよ? 俺」
「試しと言っておるじゃろう。なに、ミーシャにも事前に言っておる。指導ということでわしも傍についておるし、いろんな意味で心配するな。襲い掛かろうとしたらその瞬間張り倒してやるわい」
腰痛はどこに行ったと突っ込みたい気持ちを堪えながら、カリスは生唾を飲み込む。
「……」
ちらりと横目で見るミーシャの胸。
つなぎ服の下からはち切れんばかりに大きさを主張し、小さい動きであってもたゆんたゆんと揺れ動く、魔性と言っていいだろう男を刺激されるモノ。
これを、揉んでいい。
「え、っと……」
「お願い、できませんかぁ?」
「う」
上目遣いで懇願の姿勢を見せるミーシャは本当に困っているのだろう。
あるいは、監督につくというハーツを信頼しているが故にここまで無防備になれるのかもしれないが。
「わ、わかりました」
「わぁ! ありがとうございますぅ!」
男として、人間として。
カリスに断りたいという気持ちが生まれるはずもなかった。