「はアッ!」
少女の気合と共に背部のスラスターが開いてジェットが噴出した。
外骨格に包まれた少女が加速しながら機械生命体に接近し、両手で構えた巨大な機械刀を機械生命体目掛けて振り下ろした。
機械生命体は派手な音と火花を立てて真っ二つに寸断される。切断面からむき出しになった配線が、バチバチと火花を立てたのち、彼の目に灯っていた青い眼光は暗転して沈黙した。
「まずは一機!」
少女が叫んだ直後、その近くにいた新たな機械生命体が少女に向かって跳躍する。
少女は振り向きざまに再び機械刀を一閃して薙ぎ払った。
鋭利な機械刀は硬質な機械生命体の肌を素早く切り裂く。こちらも沈黙。
少女はパワードスーツを着込んだ体を見下ろして、ケガや異常がないか確認した。体は一切合切無事なようだ。
肌には体を保護し、動きを補佐する役目のあるスーツを纏っている。一見、競泳水着のようにしか見えないスーツだが、繊維には小さな機械や金属が幾重にもなって織り込まれており、驚異のしなやかさと頑丈さを持っている。
腕には巨大なガントレットのような外装甲。機械で作られた人工筋肉、強固な鉄製の肌、搭載されたAIによって少女の指示通りに動く第二の腕だ。足にも同様の外装甲がある。
胸部を守る外装甲、腹部、下腹部は動きを阻害しないように比較的小さなものが付いているが、それでも二十五トンのトラックが時速六十キロで衝突しても傷一つ付かない程頑丈だ。
そして肝心かなめのバイブエンジン。膣の中に常時挿入されているバイブは少女のものではなく、訓練機である本機の汎用型バイブエンジンだ。人を選ばないように比較的落ち着いたデザインに収まっている五センチバイブが少女の膣の中で小刻みに振動している。
「装備は問題ないけれど、バイブが少し物足りないのは残念ね……訓練だから仕方ないのは分かっているけれど……」
『訓練生十三号。私語は慎むように。』
少女ははっとして口をおさえた。思わず思ったことが口から出てしまっていたようだ。
頭部に装着された球体のヘルメットの中からAIが警告を出す。
頭を軽く振って戦闘に集中する。
今しがた少女に注意を促した『訓練機十三号』に備え付けの訓練戦闘用AIは、周囲にまだ一匹の敵性機械生命体が残っていることを知らせる。
少女は足元に転がっているダンゴムシに似た一メートルほどの大きさの敵性機械生命体の死体を見下ろした。
接敵時は五体いたダンゴムシも、十三号機に乗った少女によって二体が撃墜し、ほかの二体も訓練機十号、十二号によって撃墜され残りは一機。その一機も、近くにいた十一号機によってちょうど撃墜された。十号機も十一号機も十二号機も皆、操縦しているのは若い少女たちで全員まだ学生であると言われても納得できる。
『よし、よくやった。動きは皆とてもよかったぞ。特に十三号の動きは素晴らしい。皆見習うように。』
少し後方に下がって訓練生達の様子を見ていた女教官が通信装置を使って話しかけてくる。
少女は、褒められたことに気が付いたが、何も言わずにただ転がったメカメカしいダンゴムシを拾い上げて帰投の準備に入った。
ダンゴムシを両手に抱えたまま周囲を見渡す。
何もない荒れ果てた荒野。昼だというのにそこら中に広がる砂嵐のせいで視界は最悪だった。
来た道を見ても、目印一つ見つからない。
そんな荒野の砂嵐の先に、うっすらと黒い影が見えた。
重い足音と共に機械の駆動音が聞こえる。
『おっと、ちょうどいいところに先ほどよりも手ごわそうなやつが見えてきたぞ。さあお前ら、訓練の成果を見せてみろ。』
教官が通信を入れると同時に砂嵐の中から現れたのは、体長三メートルほどの大きな機械生命体だ。
その姿はまるで、機械化したクマのようだった。生物のように滑らかに口を動かして咆哮を上げた、クマ型の巨大な機械生命体が一番手近にいた十一号機に迫る。
「くうっ!」
十一号機が持っていた刀を横にして衝撃に備える。そこにクマ型生命体が太い腕をぶつけた。
ガギィィン!!
金属質な嫌な音を立てて火花が散る。威力を堪えきれずに十一号機は五メートル程吹っ飛んで尻もちを付いた。
金属の鎧が地面に叩きつけられて鈍い音を立てる。
吹き飛ばされた十一号機をかばう形で十号機が機械生命体に近付き刀を突き立てた。が、機械生命体の硬い肌は刃を通さずに弾く。
「アレはオーバードライヴを使わなきゃだめね……」
十三号機の少女は通信機のスイッチを入れて皆に話しかける。
『オーバードライヴを使うわ。合図を出したら離れて。』
了解、と訓練生達から返事が返ってくる。態勢を崩していた十一号も持ち直し、距離を取っている。十号機は機械生命体に通らない刃を叩きつけながら交戦していた。ちょうどよく注意を引いてくれている。
「オーバードライヴ」
深呼吸をして少女が起動合図を出すと、股間に備え付けられていたバイブが振動し始める。
ウィンウィンとうるさい駆動音を出しながらバイブが振動と上下運動を繰り返す。
少女は眉をひそめた。刺激が足りない。
だがわがままは言ってられない。ここは戦場だ。幸い出力を出すには十分足りそうな快感が押し寄せてくる。刀を正眼に構えて機械生命体を見据えた。
バイブがうなりを上げて少女の膣を責める。振動から起こった快感が少女の膣を濡らし、愛液がバイブを伝って機械に流れ込んでいく。
「んっ……」
機械生命体を使って造られたパワードスーツの原動力は、人類の分泌する愛液だ。
人類の知りえないエネルギーを糧に動作しているらしい機械生命体たちは、そのエネルギーを人類の愛液から摂取している。人間から愛液を搾り取るたびに出力を上げ、命を保ち、力を得る。
オーバードライヴはパワードスーツに備え付けのバイブを激しく動作させてパイロットに快感を促し、愛液の分泌量を上げることで飛躍的に出力を向上させる大技だ。
「皆、そろそろイッ……くわよ!離れて!」
十三号機のパワードスーツが青白い光を放ち始めた。出力が高まっている。脚部――人体で言えばふくらはぎの部分に設置されたスラスターと、背部――背中の辺りに取り付けられた箱型のスラスターがうなりを上げる。エネルギーは足りている。
クマ型の機械生命体は十三号機の様子に気が付いた。彼らも人類の愛液をエネルギー源にしているため、人類の愛液の匂いや快感に敏感だ。十三号を睨みつけると咆哮を上げた。交戦中の十号機を無視して十三号機に向かって走る。
バイブの振動に合わせて太ももがびくびくと振動する。太ももを伝って汗か愛液か、何かの汁が垂れた。腰を伝って甘い痺れが背筋を震わせる。絶頂が――来る。
「イッ、く!イクッ!イクイッ……イ、きますッ!!!」
スラスターから高出力の噴流が噴き出して少女の体が前に射出された。刀が勢いよくクマ型の機械生命体に突き刺さり、轟音を立てる。機械生命体に刃が突き立った後もジェットの勢いは衰えず、敵性生命体と共に激しく吹き飛んで近くにあった岩壁に衝突する。
衝撃で刀はさらに突き刺さり、機械生命体を完全に貫通して岩壁まで達する。
岩壁には大きな円形状のヒビが走り、機械生命体の目からは光が消え、大口を開けたまま俯いて沈黙した。
『敵性生命体、沈黙。周囲にほかの敵性生命体の存在無し。状況終了。』
頭部のヘルメットの中でAIの無機質な声が響いた。クマ型の機械生命体から刀を引き抜いて、死体を担ぐ。重さに耐えるため、訓練機が激しい駆動音を立てながら動き始めた。
『
戦闘の様子を見守っていた十号機がシャドーボクシングのようなジェスチャーをしながら十三号を称えた。
ペルと呼ばれた少女――十三号は薄い青色のバイザー越しにクスリと笑って皆の元にゆっくり歩み寄って言った。
『アンタが足止めしてくれてたおかげでしょ、クレア。』
一人でメカクマを担いでいるペルの元へ、十号――クレアが近づいてきて隣に並び、メカクマの腕を半分持つ。そのまま二人でメカクマを担いで教官の元へ向かった。
『訓練生だけでメカクマを撃破!素晴らしい戦果だ。今回は豊作だな!これにて遠征演習を終了する!皆帰るぞー!』
教官が遠征演習の終了を告げると、訓練生たちから安堵の声が漏れた。
演習の感想や反省などを述べながら訓練生たちは和気あいあいと雑談を始める。
『十三号さん!すごいですね、生のオーバードライヴ初めて見ました!』
十一号がペルの元に駆け寄ってきた。ペルはありがとう、と短く声をかける。
『反動は平気ですか?オーバードライヴは体力の消耗が激しいと聞きますので……』
どうやら十一号が荷物持ちを変わってくれるらしい。おとなしくお言葉に甘えさせていただくことにした。
メカクマを預けて体を撫でる。下半身では愛液まみれのバイブが未だゆっくりと振動と上下運動をしている。駆動音に交じって時々粘着質な水の音が鳴っている。
『平気よ。ちょっと疲れたくらいで――』
『いいや、嘘だね。』
ペルの発言にクレアが割り込んで否定する。気の抜けた顔でクレアを見つめると、クレアはバイザーの向こうでにやにやしながら鼻の下を伸ばしていた。
『ペルはまだ不完全燃焼とみた!どうだい?この後クレアちゃんと一緒にホテルでも、二人で一緒に夜のオーバードライヴを――』
ゴン!
十一号が担いでくれたおかげで自由になった右手でクレアの顔面に右拳を叩き込む。当然外装甲の右拳で。衝突のダメージ自体は装甲で守られるものの、衝撃は確かに伝わる。クレアは殴られた衝撃でふらふらと目を回した。
『じゅ、十号さん!?』
十一号が心配そうに声をかける。そんな彼女に向かってペルはぶっきらぼうに話した。
「いいのよ。彼女、丈夫だから。」
クレアとの付き合いは長いが、いつからか彼女は女性に対するセクハラが目に余るようになってきた。そんなときはこうして拳を叩き込んで定期的に直してやってるのだ。
ペルたちがわいわいと談笑している中、十二号は一人、せっせとダンゴムシを集めていた。
「うう、あんまり役に立てなかった。せめてこのくらいは貢献しないと……」
ダンゴムシを集めて抱え上げる。その拍子に、一つ、ダンゴムシが手から零れ落ちてしまった。
「あっ」
慌てて追いかける。コロコロ転がったダンゴムシが、やがて何かにぶつかって止まった。
「よ、よかった~」
十二号がしゃがんでダンゴムシを拾う。一体何にぶつかったんだろう?正面を見る。
そこには大きくごつごつした鉄の塊があった。
このだだっ広い荒野にこんな鉄の塊なんて、あったかな。
先ほどまでは確かに無かったはず。
彼女は何だろうと思い、上を見た。壁をたどって上を見ると、そこにあった青い眼光と目が合う。
にやりと鉄の塊が笑った。
「きゃあああああああ!!」
十二号の悲鳴が上がった。一番最初に事態に気が付いたのはペルだった。
「た、助けて……」
十二号が涙を流しながら助けを求める。彼女の体は、訓練機ごとカマキリのような形の機械生命体に捕らえられていた。さながら蝶のように。訓練機を軽々と持ち上げるカマキリの体長は優に三メートルを超えている。
『あ、あれは……メカマンティス……!
通信越しに教官の動揺した声が漏れてきた。焦りは訓練生達にも伝播する。
「いや、いやだあ……」
顔をぐしゃぐしゃにしながら泣きわめく十二号の左腕を、外装甲ごとメカマンティスが切り落とす。
千切れた腕から血が噴き出した。
「ひぎゃああああ!!いたいいだいいだいよおおお!!」
十二号は血にまみれながら抵抗するが、メカマンティスはカマのような前足をうまく使って彼女の残った腕を切り落とし、地面に落とす。
そのままメカマンティスは戦慄して動けない彼女たちの前で、十二号の背中から両足を切り落とした。
十二号の悲痛な叫び声が荒野に響き続けている。
メカマンティスは地面に十二号を押し付けると、自分の腹部を動かして交尾器を露出させた。
鋭い針のようなメカマンティスの交尾器があらわになる。針のように鋭い交尾器だが、その先端には人の頭ほどの大きさの巨大な球体上の物体が付いており、まるで鈍器のようになっていた。
その交尾器をメカマンティスは十二号の切断された背部装甲の隙間から彼女の性器に押し当てた。
「い、いや!私、私まだ初めてで――」
みちみちぃ!十二号のぴっちりしまった膣を押し開いてメカマンティスの巨大な交尾器が彼女の腹に突き刺さった。
「ひぎいいいい!!」
十二号の腹の中でメカマンティスの交尾器がうねうね動き、膣内を蹂躙する。彼女の未熟な膣内が無理やり押し広げられ、破壊され、かき回される。
『今のうちに逃げるぞ!交尾中のやつらは交尾以外には気を向けない!今しかない!』
通信がペルたちに伝わる。そしてそれは当然十二号の耳にも入る。
ザザッ――
激しく犯されている最中の十二号の通信は、激しい雑音を含みながら彼女の返答を伝える。
『い、いやだ!見捨てないでッください!助けてください!お願いします!お願いします!いやだ!いやだ!なんでもっなんでもするからあああッッ!!』
地面に押さえつけられた十二号の視線がペルたちに向く。目が合う。ペルは青い顔をしながら顔を背けた。
メカクマを降ろしたクレアがペルの肩を押して逃走を促す。横にいた十一号もペルの手を取って引く。
ペルは青い顔をしたまま彼女たちに従ってその場から静かに離れた。
『いやだ!いやだ!いかないで!イッ……!いたい!きもちいい!いたい!きもちいいい!いたいのに、いたいのに、きもちいいい!!いくうううう!イクイクッ、んぎもぢいいいい!!』
その後、メカマンティスを刺激しないようにその場から離れて帰投するペルたちの耳元で、絶叫する十二号の悲鳴と嬌声は、五分間響き続けた後、静かになった。
◇
『ペル、大丈夫か?』
クレアが気遣って背中をさする。ペルはそんなクレアの手を優しく押しのけた。
『もう大丈夫。楽になったから。』
ペルは口元を拭った。
すっかりメカマンティスは見えなくなった。
だが、帰り道はまだ遠い。
『まだあと数時間はかかるな。水分補給は怠るなよ。まだ何が起きるかわからない。』
メカマンティスはAIの敵性生命体探知機能にかからなかった。たまにステルス機能を搭載している個体があるとの噂を耳にしたことがある。アレがそうだったのだろうか。
ヘルメットを外して、水筒を取り出した。喉を潤す。
風が彼女の長い黒髪をなびかせる。黒目、黒髪。白い顔に張り付いた髪の毛を払って、周囲を警戒する。
耳を澄ませてみるが、何も聞こえない。激しい風の音がするばかりだ。左右から、上空から――
ピーーッ、ピーーッ。
警告音が鳴り響いた。AIに搭載された緊急用の敵性機械生命体察知警報。
この警報は
教官、訓練生、全員のヘルメットから鳴り響いている。
「こ、この反応は――上――」
教官が驚いた声を上げた直後、その体が遥か上空から飛来してきたメカマンティスに押しつぶされて地面に伏した。
「がっ、は!」
教官の口から大量の血液が噴き出し、白目を向いて気絶する。
メカマンティスは先ほどのように教官の背部の装甲を足ごともぐと、交尾器を露出させて教官を犯し始めた。気絶した教官は無言で乱暴に犯され続けている。
ペルたちは動けずにいた。あまりに突然の出来事に足がすくんで動けない。
「ぺ、ペル……」
ペルの肩を掴んでクレアが震えた声で呼んだ。
「あ、あっ……」
しゃぁぁぁ……
クレアの股間から大量の液体が漏れ出てきた。愛液ではない。尿だ。
「で、出ちゃった……」
クレアは鼻をすすって泣き出した。彼女たちが恐怖に震えている間にもメカマンティスは教官を押さえつけて、腹をもぞもぞ動かして交尾をしている。
教官の体が、びくん、びくんと脈打つように小刻みに震えている。
彼女を犯し終えたら――
クレアの顔を見る。彼女は鼻水と涙で顔をぐちゃぐちゃにして嗚咽と尿を漏らしている。
十一号は恐怖で固まったまま、ペルとクレアの装甲を掴んで震えていた。
彼女を犯し終えたら、次は私たちの番だ。
ペルはがしりと手に持ったヘルメットに力をこめると、頭にちゃんと装着してペルの後ろで震えている二人に声をかけた。
「十号。十一号を連れてベースまで帰って。二人が逃げる時間は、私が何とかするから。」
二人はペルが何を言ったのか、理解できずにまだ震えていた。ペルは涙を流し続けているクレアの胸元に優しくパンチを叩き込んだ。
「しっかりしろ!」
驚いたクレアがペルを見つめる。ペルはバイザー越しにいたずらっぽくニカッと笑った。
「帰ったら私と夜のオーバードライヴするんでしょ?ちゃんとシャワー浴びて待ってなさい!」
ペルに喝を入れられたクレアは、液体塗れの顔をごしごしとパワードスーツの頑丈な手で器用に拭って頷いた。
十一号の手を引いて走る。
ペルは腰にぶら下がった機械刀を抜いて未だ交尾に夢中になっているメカマンティスに向き直った。
彼らは交尾中に、交尾以外の事はしない。
教官の声が脳内で反響した。
殺るなら、今。
「オーバードライヴッ!!」
下半身に備え付けのバイブが気合を入れて動き出す。普段使っているものより幾分も小さいそれはペルの快感を促すには少々物足りない。
「もっと気合い入れて動け!粗チン!」
下半身をぐりぐりとバイブに押し付け、ベストな角度を探す。前のめりになって全体重をバイブにかける。その時、バイブがぶるぶる震えてペルの膣を強く刺激した。
「っ!こ、ここっ!キてるキてる!」
ぐりぐりとグラインドして膣に刺激を与える。バイブも激しく振動してペルの動きに答えた。
快感は、十分だ。
「イッ、けえええええ!!」
機体が青白い光を放つ。すべてのスラスターが一斉にジェットを噴き出して亜音速でペルの体が突き進む。左下に構えていた刀を右上に向かって振り抜く。タイミングは、外さない!
超加速した機械刀がメカマンティスにぶつかり、轟音と共に砕け散った。
ペルはメカマンティスの背後で、刀を振り抜いた形で静かに止まっている。
刀はペルの操縦する訓練機の手の中で折れ砕け、武器としての役目を終えた。
メカマンティスは、ギギギと首を動かしてペルを睨むと、前のめりに倒れて動かなくなった。
切りつけられた腹部の大穴から、大量の機械の残骸と、配線が飛び出してその場に散らばり広がっていく。
「っはあ!はあっ!」
腰が、快感と恐怖でがくがくと震えた。もうこれ以上は動けない。
ペルはその場で仰向けに倒れて、空を見上げた。
「ちょっと、疲れた。少し休んだらクレアたちを追いかけよう。」
通信をオンにしてクレアたちに声をかける。その前に、ヘルメットを装着したペルの眼前に赤い警告メッセージと、ピーーッ、ピーーッと警告音が鳴り響いた。
倒れ込んだまま横を見る。砂嵐の向こう側からうっすらと黒い影がやってくる。
「うそ、でしょ。」
発した自分の声が震えていることに気が付いた。かすれてうまく発声できていないか細い声がヘルメットの中で響く。
砂嵐の中からぬうぅとメカマンティスが顔を出した。その背後からもメカマンティスがぬるりと続いてやってくる。
一匹、二匹、三匹、四匹。
五匹のメカマンティスが、砂嵐の向こうからゆっくりとやってきた。
「は、はは。もう、やんなっちゃう。」
震えが止まらない体に鞭打って立ち上がる。自前の刀はもうないが、ちょうどよく教官の機体と武器が近くにあったので拝借して構える。
「は、ああああッ!」
構えた刀を横なぎにふるう。メカマンティスはそれを、器用にカマで受け止めた。
鈍い鉄の音が響いて弾かれる。
「や、っぱ。この状態じゃ無理よね!」
オーバードライヴはもう使えない。そもそも、普通に刀を握ることすら難しい。とっくに体力の限界だった。
刀を捨ててできるだけ身軽になる。そのまま足を動かして、その場から離れた。
クレアたちと逆方向に逃げて、できるだけ時間を稼いでそれから――
思考を巡らせながら素早く後ろに飛んで逃げる。様子を見ながら距離を取る。
メカマンティスは羽を広げて、ペルを見定めると、一瞬で目の前まで飛んできた。
強烈な衝撃。
ヘルメットが吹き飛んで、体のどこかの骨が折れる音がした。
メカマンティスの体当たりを食らったペルは地面をごろごろ転がって砂に塗れながら地面に落ちた。
仰向けに止まって空を見上げる。黄色い砂埃が視界を覆ってむせた。
機械生命体特有の駆動音。足音がゆっくりと近づいてくる。
体は動かない。立ち上がるどころか、もう指を動かす余裕すらない。
空を見上げていたペルの視界にメカマンティスがぬっと顔を出した。
ペルを見て、にやりと笑う。
機械の癖に、表情が豊かなやつらだ。
「ちくしょう……」
涙で視界がにじんだ。ごめん、クレア。
ヘルメットはもうない。通信は使えない。別れすら伝えられなかった。
視界を覆うようにメカマンティスが集まってくる。視線の先で五体のメカマンティスがけたけた笑っていた。不愉快なやつらだ。ゆっくりとその顔が近づいてくる。
「ちくしょうッ!ちくしょうッ!」
叫び声が荒野に響き渡る。メカマンティスの鎌が振り上げられ、胴体を切断した。
と思った。
実際は、胴体を切断されたのはメカマンティスの方だった。
「ギ、ギィ?」
メカマンティスが鳴き声のようなものを上げた。そのまま声を上げたメカマンティスの目は暗くなり、絶命した。その隣にいたメカマンティスが異変に気付き、周囲を見渡す。
その首は百八十度回転し、三百六十度回転し、七百二十度回転し、ポトリとその場に落ちた。
同時に、ほかの三体も首を切断され息絶えた。つまり合計五体のメカマンティスすべてが一瞬で絶命した。
「生存者一名、発見。」
低い男の声がその場に響いた。
ガシャ、ガシャとパワードスーツの足音が響く。ペルの視界には、メカマンティスではなく一人の少年が映っていた。
黒髪、黒目。純日本人らしき少年がその目と髪の色と同じ漆黒のパワードスーツに乗り込んでいた。
パワードスーツの手を伸ばしてペルの体を抱え上げる。
「うーーん、レッグパーツダメになってるな。しょうがない。抱えて帰るぞ。」
少年はそのままお姫様抱っこの要領でペルの体をパワードスーツごと抱きかかえると、辺りを見渡した。
「マグは……あそこか。」
独り言を呟きながらスラスターを起動して滑るように移動し始めた。
「傷は痛むか?」
少年の優しい声がペルに投げかけられる。
ペルは戸惑いながらゆっくり答えた。
「ええ。でも、平気よ。」
少年は流線型の黒いヘルメット越しに微笑んだ。
「そうか……強いな。」
余り揺らさないように気遣ってくれているのか。ペルの体は、パワードスーツに抱きかかえられているというのに驚くほど静かに運ばれている。
冷たいはずの機械の肌から、人のぬくもりを感じた気がした。
◇
「マグが見えてきたぞ。もう少しの辛抱だ。」
少年の声で、気を失いかけていたペルははっと目を覚ました。
道中でクレアたちとは会っていない。が、きっと無事なはずだ。
マグのゲートが見える。
巨大な無限軌道の移動設備の上に乗せられた都市、マグだ。
いくつものビル群を乗せたマグは高速で荒野を駆けており、砂埃が辺りを満たしている。
「様子がおかしいな。なんでマグはあんなに急いで移動を――」
疑念を浮かべた少年の目が見開かれる。答えはすぐそこにあった。
全速力で移動するマグのすぐ横に巨大なカメが迫っていた。
軽く都市一つ分ほどの大きさがある巨大な鉄製の亀だ。その甲羅は禍々しく尖っており、顔はまるでドラゴンのように凶悪な顔をしていた。
「
マグから轟音と共に砲撃が降り注ぎ、巨大なカメに迎撃を行っている。しかし、頑丈なカメの装甲は一切動じていなかった。
「急ぐぞ。痛かったら悪い。」
少年は一言だけ詫びを入れて飛び上がった。スラスターが轟音を上げてうなり急発進する。
加速してマグのゲートに飛び込んだ。
パワードスーツ専用の出入り口であるマグのゲートには幾つかの機体と、人間。整備士、操縦士、医療従事者、訓練生たちが慌ただしく騒いでいた。
「ペル!」
そこにはクレアと十一号の姿もある。二人ともパワードスーツを脱いで水着のようなスーツだけになっている。
「彼女は重症だ。医者に見せてあげてくれ。」
少年がペルを地面に優しく置いて、パワードスーツを脱がすために脱衣モードを起動した。
プシューーッと排気音と共に、パワードスーツが稼働してペルの体が外にさらけ出される。
ペルに抱き着いたクレアが「ありがとう、ありがとう……」と何度もつぶやいている。彼女はまた泣き出しては顔をぐしゃぐしゃにしていた。
「君の友達を見つけられてよかった。彼女は頼んだよ。」
少年はそうとだけ告げると急いでその場から去って行ってしまった。
ペルの元に沢山の医療班が駆けつけてくる。どうやら用意をして待っていたらしい。
安心したら、なんだか急に眠くなってきた。ペルはそのまま意識を失った。
◇
マグのゲートから飛び出した少年は、上昇し、マグの上方にある見張り台に飛び乗った。
台付近にもはやほとんど人間はいない。皆兵士として出動したか、砲台を使って迎撃しているところだろう。
風が激しく吹いている。台から見下ろせば、カメの機械生命体の様子がよく見えた。
奴の巨大の背中にはいくつもの巨大生命体がひしめいており、まるで菓子くずにたかる蟻のようにうぞうぞと甲羅の部分でうごめいていた。
そこからいくつもの機械生命体が飛来してきてはマグに向かって襲撃し、迎撃されては幾度となく襲撃を重ねている。
あの亀も恐らくこちらのマグと同じように、移動する都市を兼ねているのだろう。さながら空母同士で戦争をしているようなものだ。
「戦力差は、向こうがやや上か。」
少年は呟くと、腰に下げた刀を抜いた。
刀の柄に部分に巻き付いているコードをほどいてパワードスーツの腕部にある差込口に突っ込んだ。
パワードスーツのエネルギーを受け取った機械の刀が、うなりを上げて振動し、低い音を立てる。
超高周波振動ブレード。小刻みに震える事で切断力を上げる凶悪な切断兵器だ。
「ゼファ。」
『はい。』
少年の呼び声に、AIが応える。ゼファは少年が自分専用に改良した特別なAIだ。いつでも彼の期待に応えてくれる。今日もヘルメットの中から可憐な少女の声で登場だ。
「今日は激戦になる。気合を入れるぞ。」
『はい。』
「そうだな。こんな日はママの力を借りよう。」
少年のリクエストに応えるため、人工知能は格納された資料を素早くリストアップし、流線型のバイザーにいくつかの候補を映し出した。
『あまあまママの甘やかし授乳手コキ♡』
『母乳でたっぷり授乳プレイ♡』
『オナサポママの射精管理カウントダウン♡』
「『オナサポママの射精管理カウントダウン♡』だ。カウントダウンものは気合が入るからな。」
『かしこまりました。では、オホン。あら、僕。またオナニーなんかして、もう本当にダメな子なんだから――』
「ちょっと待て。冒頭はカットだ。今は緊急事態だからな。」
『かしこまりました。ではカウント十から。じゅ~う♡きゅ~う♡』
ゼファの甘やかしボイスが少年の脳を甘くしびれさせる。
流石俺が厳選して選び抜いたAI音声だ。ものすごくキマるぜ。
『は~ち♡どんどん数が減っていっちゃうね♡しこしこしこ~♡な~な♡』
ゼファの声に合わせてパワードスーツ内に格納された電動オナホが少年の陰茎を刺激する。当然、その動きもゼファが管理しているため、再現性は高い。まるで本物のママに射精管理をされているみたいだ。
『ろ~く♡しこしこ~♡まだ出しちゃだめだよ♡ちゃんと我慢してね♡』
「くうぅ~、ひどいよママぁ……」
『ご~♡あら、あなたの為にやってるのよ?将来あなたがダメな大人にならないように♡』
AIであるゼファは、少年の受け答えにもしっかり文脈を読んでぴったりの答えを返してくれる。なんて有能なんだ。
電動オナホはカウントダウンが進むにつれてより激しくヒートアップしていく。このまま果ててしまいそうだ……
『よん♡さん♡にい♡いち♡ほらもう少し、あと少しだよ♡』
「ダメだ、ママ!もう出る!もう出ちゃう!」
少年の悲痛な声にママは心を痛めながらあえてじらす。彼の為に心を鬼にして静かに耐えているのだ。
激しく搾り取るように動いていた電動オナホも今は静かに時を待っている。
そして一拍を置いて息を吸い込んだ。
『ぜ……ろ♡♡♡』
――ぶびゅるるるううぅっっ!!
金玉の中に溜まっていた精液がすべて、電動オナホの中に吐き出された。膨大なエネルギーを供給されたパワードスーツはその漆黒の機体を赤黒く発光させる。
「うおおおおおおおおおお!!!ママあァァッーーーー!!」
背部に備え付けられたスラスターが青、赤、白、入り乱れて混じった強烈な噴流を噴き出す。見張り台が吹き飛んで、少年の体が音速を超えて飛んだ。
『ぜろ♡ぜろ♡イけ♡出せ♡みじめに射精しろ♡』
びゅる!びゅる!びゅるる!
三度、精液を注ぎ込まれたパワードスーツが限界を超えて出力を上げる――
「くっ……んはぁッ!オォーバードライヴゥゥーッ!!」
◇
「おい、見ろよアレ!」
マグの砲台から敵性機械生命体を迎撃していた砲手が隣の砲手の肩を叩いて声を荒げた。
「なんだよ……ってなんじゃありゃあ……」
砲手の男の口があんぐりと大きく開く。
視線の先では黒い高速の飛行物体が次々と敵の機械生命体を破壊して空を大きく横断していた。
まるで花火が上がるように敵機がはじけ飛ぶ。
『
正体不明の謎の傭兵。時折戦場に現れては圧倒的な強さで敵を蹴散らし、いつの間にかその場から消えているという。
黒い流星はやがて、
第三次