「エクス君はさ、大分メカローチの四肢性能に頼り過ぎちゃったね。動きがかなり大雑把になった。それだけで十分勝ててきちゃったのがよくない。」
地面にうつ伏せになり、転がったままぴくりとも動かないエクスの頭に尻を乗せて座りながら、ツバキは微笑んだ。
「昔の方がよっぽど強かった。この程度じゃうちのシリオにはどうやったって勝てない。義手だから、病み上がりだから~の言い訳は通用しないよ。だってもう十分手足は動いてるし。」
エクスが用意していた逃げ道はあっさり潰される。打ちのめされた心と体に、ツバキの発言がグサグサと強く突き刺さった。
結論から言うと、ボロ負けだった。弟子のシリオにすら勝てないのに、師匠のツバキに勝てるわけがない。
泥と傷だらけになったエクスの体から立ち上がって離れて、ツバキは帰っていく。
ツバキの装備した訓練機用の四肢や、体には一切の汚れがない。傷一つどころか、汚れ一つ、ツバキに付ける事は敵わなかった。
「ふふっ。でもシリオに負けて悔し泣きしながら私を頼ってきたのは嬉しかったよ。少し昔を思い出しちゃった。」
エクスは一人、夜の運動場に取り残される。
◇
ツバキが備品をエクスタG専用の格納庫に片づけて出てきたころには、運動場にエクスの姿は無かった。
綺麗な運動場には何もなく、空では三日月と星々が輝いている。
星を眺めながらツバキは独り言を言う。
「『
黒い塗料で塗りつぶされたように真っ黒な空に、一筋の光が流れた。
そして、その光を追うように続けていくつもの流星がやってくる。
流星群。滅多に見られない幻想的な姿に、しばらく目を奪われていた。
いくつもの星が、輝きながら落ちて、流れて、どこかへ消えて行く。
「そういえば、星って寿命長くてしぶといんだっけ。……案外星も似合っているのかもね。」
◇
部屋に差し込む太陽の光で目が覚めた。
シリオにボコボコにされ、ツバキにもボコボコにされた前日の痛みが、まだ体に残っている。
エクスはのっそりとベッドから体を起こし、腹に出来た青あざの痛みでうめいた。
「いてて……ツバキの奴、一撃で剣壊しちまってたからな。どんな馬鹿力だよ。」
ベッドに座ったまま布団をめくる。薄い肌着と下着だけで寝ていたエクスの体の横に、もう一つ人体が転がっていた。
体を起こしたエクスにしがみつくような形で、金髪少女が寝ている。
「……シリオ。」
シリオは何故かエクスのベッドに潜り込んでおり、彼女もまたエクスと同じように薄い肌着と下着だけを着用していた。
「って、その服、そのパンツどっちも俺のじゃねえか!おい!何やってんだ起きろ!」
気持ちよさそうに眠っているシリオを大きな声で起こす。シリオは、眠ったまま足を上げてエクスの顔面に蹴りを叩き込んだ。
「うるさい。」
一言だけ文句を言うと、シリオは再び入眠。めくられた布団を引き寄せて寝床にくるまった。
エクスは蹴りの衝撃でベッドから追い出され、頭から地面に落下していた。
エクスの頭に血が上る。
「ここは俺の部屋で!それは俺の服で!お前が今寝てるところは俺の寝床だぞ!」
エクスは立ち上がり、シリオが被っている布団をはがす。シリオは寝ぼけまなこで唸りながら文句を言った。
「断固抗議。布団の返却を求む。」
「自分の部屋に帰れ!」
「やだ。」
「なんでだよ!」
不毛な争いをしているうちに、昨日のダメージが響いてきたので布団をシリオに投げつけて終戦に入る。シリオは何かぶつぶつと小声を言いながら布団を被った。
「そういや、シリオ。お前登校する前にちょっと付き合え。」
エクスが話しかけると、シリオは聞いてるのか聞いてないのか分からない曖昧な返事をして布団で強固な睡眠用装甲を作り、寝た。
◇
「何度挑んでも同じ。何度でもかかってきたらいい。」
地面に仰向けになり、倒れたまま清々しい青空を眺めていたエクスの顔面に、シリオの尻が押し付けられる。ヘルメット越しだが。
青空を背景に眼前に広がったシリオの尻は、若干控えめな質量で小さい。彼女の背丈がエクスよりも一回り小さいせいもあるので、体格にはあった大きさではあるが。
「何度でも打ちのめしてあげる。エクスの強さじゃシリオには一生勝てない。」
シリオは言葉でもボコボコにエクスを殴りつけると、尻を上げてさっさと帰って行った。
流石弟子。時々、師匠の姿と重なる時がある。
「何度でも、な。後悔させてやる。」
既に近くにシリオの姿はなく、エクスの独り言は誰にも聞かれず消えた。
早朝。シリオに負けたことが悔しくてしょうがないエクスは登校前にシリオに練習試合を申し込んだ。
結果は見ての通り、惨敗だ。
朝の運動場で一人、空を見上げながらエクスは今日の一人反省会を始めた。
◇
授業が終わり、夕方。自室に帰ってくる。
「ただいま、っと。」
部屋には誰もいないので、当然帰ってくる返事はない。自室のカギはシリオが破壊してしまったので閉まらず、常に開いている。貴重品も自室には置いていないので問題は一切ない。
「ただいま。」
エクスに続いてシリオも帰ってくる。学生かばんをその辺に放り投げてベッドに向かって一直線に走り、飛び込む――直前で、その腹にエクスが抱き着いて止めた。
「お前の部屋はここじゃないだろ。あとベッドに入るな。」
「ここはエクスとシリオの部屋。あとベッドには入る。」
「ここは俺だけの部屋だ!あと汚れた体でベッドに入るんじゃねえ!」
「ケチ。あとシリオ、汚くない。」
「一日中動き回って汗かいてるんだよ!そんな状態で俺のベッドを汚されたくねえ!風呂に入れ!」
「ケチ。仕方ない。」
シリオはベッドに入るのを諦めて、踵を返した。
大人しく諦めたシリオの様子をみて、エクスはふうと息を吐き、安堵した。
気を抜いたエクスの前で、シリオは制服をその辺に脱ぎ散らかし、素早く全裸になると、エクスの部屋の風呂に入っていく。
「待て待て待て待て。」
慌てて駆け寄り、シリオの肩を掴む。
「あ。エクスのすけべ。」
「……お前、何風呂に入ろうとしてるんだ?」
「エクスが風呂に入れって言った。」
「……自分の部屋の風呂に入れ。」
「エクスも一緒にお風呂入る?」
「俺の話聞いてる?」
「エクスも一緒にお風呂入る?」
「……」
頭を抱える。シリオは頑固で、自分勝手で、やりたい放題の超絶わがまま娘だ。我が物顔でいつの間にかエクスの部屋を占領し、もはや王のような振る舞いで好き勝手やっている。
エクスが頭を抱えている間にも勝手に冷蔵庫を開け、楽しみに保管してあった缶コーラを開け、一気に飲み干した。
「エクスもげふっ。お風呂入る?」
「……わかった。わかったよもう。」
止められそうにない事を悟ったエクスはシリオを風呂に押しやり、自分の着替えを用意して一緒に風呂に入った。
◇
「もう目を開けてもいい?」
「ああ、開けてみろ。シャンプーが染みて痛い思いをするぞ。」
「エクスはいじわる。」
風呂に入った直後、シリオは体を十秒くらい水で流したかと思うとさっさとあがろうとしたので全力で引き留めた。コイツ、まさか今までずっとそうしてきたんじゃなかろうな。
「エクスがいてくれてよかった。ツバキは最近一緒にお風呂に入ってくれなくなったから、困ってた。」
「……お前もしかして最近までずっとツバキと一緒にお風呂入ってたのか?」
「うん。」
シリオの金髪にシャワーを当ててシャンプーを全部流す。シリオはエクスにされるがまま頭を流されて、頭を洗われている間、ずっと必死に目を閉じていた。
椅子に座ったままエクスに頭を流されているシリオは、小さな子供のようだ。
「体も洗って。」
「……はいよ。」
断ったらそのまま風呂から出るんだろうなと思ったので、おとなしく体も洗う。
シリオの背中から覆いかぶさるように重なり、手を伸ばして上から順に洗っていく。
シリオの体は同年代の中でも小柄な方だ。胸も小さく、お尻も小ぶり。エクスが知っている女体と言うものが、AVとペルの体しかないので若干知識が偏っている可能性は否定できないが、少なくともペルよりはいくらか幼く見えた。
肌があまりにも滑らか過ぎて、傷つけるんじゃないかと思い、垢すりは使わずに体を洗う。
「エクスの手、カッコいい。」
「……ああ、これか。怖くないのか?」
「うん。とてもカッコいい。」
「そうか。」
義手は当然防水だ。耐久性も高く、常用、戦闘用、全てのあらゆる状況に対応できる。
ツバキに素材を聞いた時、妙なはぐらかし方をされたことだけが気がかりだが、ツバキは口が堅いので問いただしたところで意味はなく、諦めている。
「っあ。そこ、気持ちいい。もっとちゃんと洗って。」
「……もう十分汚れは取れてるよ。」
シリオが少し色っぽい声を上げたのは、エクスが乳房を洗い始めたからだ。薄い胸を優しく撫で、桃色の乳首を泡立った義手でゆっくり洗った時、シリオからアンコールが入った。
彼女は少し、常識を知らない様子がある。なんだが、悪いことをしているような気分になって、尻込みしてしまった。
胸を洗い終え、細い腰に手を回す。スリムなお腹を泡立てて擦り、下腹部に手を伸ばしていく。
心なしか息が荒くなっていく気がする。それとも、シリオの吐く息か。
「そこは大切な所だから、ちゃんと洗って。」
「分かってる。」
シリオの要望通り、しっかり洗う。そこは股の間。性器だ。
ぬるぬるになった手でシリオの股を擦るたび、シリオの小さな体がびくびくと跳ねて、小さな声が漏れる。四本の指で表面を優しく上下に擦って綺麗に洗い、続いて中指だけで膣内も優しく丁寧に洗う。
優しく粘り気のある穴を擦るたびに、シリオが小さく喘いで、体が震える。穴に指を入れるために近付いたエクスの体がシリオの背中に触れて、お互いの体の熱が伝わる。
「もっと、っ。ふっ、ん。」
吐息が強く混じった震え声でシリオがせがむ。抱きしめるように回されたエクスの左腕を、強く握りしめて快感に耐えている。
十回程、膣内を往復したとき、シリオの足がガクガクと震えて膣がきゅううと指を締め付ける。
同時に、穴から大量の潮が噴き出てシリオの体が細かく何度も痙攣した。
「ふっ、ん、んんんっ!」
シリオに左腕を強く掴まれた事で、我に返った。
「も、もう十分洗えたな!」
温かいシャワーを出して、シリオの体を流し、綺麗にする。シリオは、口を開けて宙を見ながら呆けていた。
「ほら、綺麗になったぞ。」
「ん、ありがと。」
流し終わって、自分の体を洗い始める。
シリオは立ち上がり、振り返ってエクスを見た。
正確には、エクスの下半身を見た。
そして口をあんぐり開けて叫ぶ。
「エクスのちんちん、さっきと違う!」
勃起している事を指摘されたエクスは、顔を真っ赤にしながら慌てて弁明。
「ああ、ちんちんは大きくなったり小さくなったりするんだ。」
「すごい……さっきのちんちんより大きい。」
シリオはしゃがんでちんちんと同じ高さに顔を持ってくると、まじまじとエクスの股間を観察し始めた。エクスは何も言わずに体を洗い続ける。
「カッコいい……このちんちん、とてもカッコいい。」
シリオは目を輝かせながらちんちんを凝視し、指でつんつんとつつく。顔は相変わらず無表情だが、だんだんシリオの目だけで感情が読めるようになってきた。
「そりゃどうも……」
褒められて妙な気分になりながら腕を洗っていると、既に全身洗い終えたはずのシリオがボディソープを手に取り、泡立て始めた。
「今度はシリオがエクスを洗う番。」
宣言すると、泡立てた両手でエクスのいきり立った男根を洗い始めた。
「シリオ、そこは大事なところだから――」
「分かってる。優しく、しっかり洗う。」
勃起した肉棒を優しく両手で包み込むと、ゆっくりと上下しながら擦る。シリオの柔らかい、ぶにぶにの手のひらが陰茎を包み込み、時間をかけてしごく。エクスにされた事をそのまま返しているみたいに、ゆっくりと。
シリオが好奇心に満ちた瞳で陰茎をしごいている様子に、どうしようもないほど興奮してしまい、腹の底から込み上げた快感が感情をすべて支配した。射精欲が沸騰するように込み上げてくる。
「ごめん、シリオ、でるっ!」
急に上ってきた精液に歯止めが効かず、肉棒は白濁液を大量に吐き出し、風呂の床と、シリオの手、顔にかかった。
シリオは顔でエクスの液体を受け止め、鼻を鳴らす。
「ヘンな匂い。エクスの汁、べとべと。」
「ごめんな、目を閉じてろ。今洗い流すから……」
「ん。」
シリオの顔、体を洗う。水と混ざった精液は落ちづらい。若干の申し訳なさを覚えながら、射精の充足感が体に満ちていくのを感じた。
顔を洗い終えて、シリオが目を開けると、目の前には小さくなったエクスの肉棒があった。
「ちんちん、カッコよくなくなった。」
「……あんまそう言ってやるな。」
シリオはエクスの俯いたちんちんを、指でトントンと叩くと、鼻を鳴らして嬉しそうに呟く。
「これはこれで、かわいい。」
いつまでもちんちんをつつき続けているシリオに風呂を出るように促し、体を洗い終える。
風呂を出たエクスが水浸しの床を見て怒ったのは、数分後の出来事だった。
◇
「シリオ……お前、十五歳なんだからブラジャーは着けろ。」
「やだ。窮屈。」
エクスの服を着たシリオが勝手に冷蔵庫からストックの缶コーラを取り出して飲む様を見ながら、エクスはため息を吐いた。
シリオはエクスの部屋から出て行く様子がない。半ば諦めと、賢者モード故の寛大な心でシリオの滞在を許している。
「そろそろ寝る。」
すたすたとベッドに入り込むシリオの首根っこを摑まえて、洗面所に連行する。
「歯を磨け。」
「分かった。でも仕上げはエクス。」
「お前、自分が何歳なのか分かってるのか?」
「十五歳。」
年齢を告げてピースピースと指を二本づつ立て、両手でピースをする。精神年齢が四歳と言う意味だろうか。
自分の歯を磨き、シリオの歯磨きの仕上げを終えてベッドに入る。
当然のようにシリオもエクスのベッドに入った。
エクスにしがみついて、数秒。すぐにシリオは寝息を立て始めた。
「こ、こいつ……」
気持ちよさそうに寝息を立てるシリオの寝顔を見ると、自然と心に浮かび上がったわずかな怒りもすぐに消えて行った。
ため息を一つ吐いてシリオの頭を撫で、電気を消す。
窓から外の景色を見ると、夜空ではいくつもの星が輝いていた。