※この作品はR-18です。

絶頂神機エクスタG   作:五日十巻

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二十三話 リベンジ

 

時は少したって、午前五時。

エクスとシリオはいつものように運動場に立っていた。

少し前から審判役として様子を見てくれているツバキも含めて、合計三人のドライバーがここにいる。

 

すっかり日課になってしまったエクスとシリオの練習試合の時間だ。

 

若干二日酔い気味で微妙に体調が悪そうなシリオを前に、エクスは心の中で静かに笑みを浮かべていた。今日こそは勝てるかもしれない。

尚エクスも寝不足で、コンディションは万全ではないが。

 

乾いた風が大地を撫で、微かに揺れる移動都市の表層の端っこで、エクスはシリオと向き合った。

腰から訓練用のボロい片手剣を抜き、シリオに剣先を向けて構える。

対するシリオはいつものように、剣を腰に差したまま、静かにエクスの出方を待っていた。

 

二人の準備が整ったのを見計らって、ツバキが合図を出した。

 

『試合開始!』

 

合図を聞いてエクスが飛び出した。

それから、決着が着くまで時間はかからなかった。

 

 

武装者(ドライバー)に要求される技術とはなんだろうか。

彼らに要求されるものは、長時間、強化外骨格型(エク)武装戦闘機械(スタG)を動かすために必要な性持久力と、敵性機械生命体(エネマ)を倒すための戦闘力である。

より細分化していくと、敵性機械生命体(エネマ)の硬い装甲を貫くための火力と、彼らの強靭な武器から生き残るための耐久力が求められる。

 

そのため、武装者(ドライバー)たちの戦闘はやや対人には向かない傾向にある。

相手の動きを見切り、避け、時には受けて、相手の装甲を貫けるだけの火力があれば十分。

それ以上の力は必要のないものだった。

 

故に、自身の放つ斬撃に、完璧なまでに呼吸を合わせ、防御に使った動力でさえも返す力に応用され、わずかに体を逸らして攻撃を避けるような動きをする相手と戦うのには慣れていなかった。

自身よりも遥かに遅い相手に太刀筋を見切られ、明らかに動きを視認できているのに何故か芯を捕らえて攻撃を受け止める事が敵わず。数手で、遂に自身の装甲に剣を叩き込まれる。

 

機体に当たり、砕けたのはエクスの剣だった。

試合に負けたのはシリオだ。

 

訓練用の片手剣は、決して武装者(ドライバー)を傷付けないように、機体よりも脆く作られている。機体に有効な一撃が入れば、砕けるのは剣の方だ。

 

それが、武装者(ドライバー)同士の試合において勝敗を決するルールであることを知っていた。

だが、何故シリオが負けたのか、シリオには理解が出来なかった。

 

真っ二つに叩き折られたエクスの片手剣。その剣先が派手な音を立てて地面に転がる。

 

「……なんで」

 

シリオがその場に膝を付いて、崩れ落ちた。

いつも無表情な顔の彼女の目元に、うっすらと涙が溜まっているのが見える。

 

じっと、彼女の顔を見る。その表情には何となく、覚えがあった。

……恐らく、選抜トーナメントでシリオに負けた時のエクスも、同じような顔をしていただろう。

 

「動きに無駄が多い、攻撃が単調、思考が浅い。」

 

返した言葉は、全て選抜トーナメントでエクスがシリオに言われた言葉だ。

エクスは決して、負けたことを忘れない。

 

「全てにおいて俺の方が上だった。それだけの事だろ。じゃあな。」

 

言い放つと、歩いてその場を後にする。

シリオに背を向けて歩き出したエクスは、誰にも聞こえないように静かに呟いた。

 

「……速さは、まだお前の方が速いがな。」

 

エクスが去った運動場に、シリオとツバキが残される。

 

試合が終わってから数分が経過したが、シリオは微動だにせず、運動場の真ん中で座り込んだままだった。もうすぐ都市も起きてきて、この辺りも騒がしくなる。

 

「シリオ。そろそろ片づけをしないと――」

 

ゆっくりと歩み寄り、折れたまま放置されていたエクスの片手剣の剣先を拾うついでに、シリオの顔を覗き込んだツバキだったが、次の瞬間、ぎょっと、驚いた。目は細めたまま。

 

シリオは、未だ着けたままのヘルメットの中で、大粒の涙と大量の鼻水を流して歯を食いしばって泣いている。

 

「ちょ、ちょっとシリオ……」

 

今まで静かに泣いていたシリオだったが、ツバキと目が合ってしまったせいか、遂に大声で泣き始めてしまった。

 

「うわああああああん!!うわああああああああああ!!」

 

ツバキは、慌ててシリオの元に近付くと、ヘルメットを優しく脱がせる。

 

「うわああああああああああ!!」

「ちょっとちょっと、どうしたの……急にこんな……」

 

熱の籠ったヘルメットが外れ、汗と涙と鼻水でびちゃびちゃになったシリオの顔が、湿った空気と共に外に出る。

真っ赤になったシリオの顔を、持っていたハンカチで拭いたが、とめどなく液体があふれてくるせいで、きりがない。顔に張り付いた乱れた髪をかき上げる。前髪は汗で湿っていた。

 

幼い頃からシリオの面倒を見ているツバキだったが、こんな風に大泣きするシリオの姿は見たことが無い。

 

……いや、一度だけあった。数年前、持って生まれた天才肌のおかげでいくつもの戦績を勝ちとり、すっかり天狗になってしまったシリオを、ツバキが教訓がてらに叩き潰した時の事だ。

 

記憶が蘇る。あの日も、今みたいに顔が真っ赤に腫れるほど大泣きをしていた。

 

「もしかして貴方、超負けず嫌いなの……?」

 

全然泣き止む様子がないシリオの機体を脱がせると、涙と鼻水だらけのシリオを抱きしめて、持ち上げる。ここに置いたままにはしておけない。

ツバキに抱きかかえられたシリオは、ツバキの肩に顔を押し付けて、布越しに大声を上げて泣き続けていた。

 

負け知らずの負けず嫌いは、今日、初めて同世代の男の子に負けてしまった。

 

 

◇

 

 

 

『設備不調の為、本日の学年対抗敵性機械生命体(エネマ)大量殲滅祭は一時中止といたします。』

 

そんなアナウンスが流れたのは、もうすっかりギャラリーが出来上がり、エクス達も用意を済ませていた頃だった。

 

「今中止の案内って……遅すぎじゃありませんの?これならもう少し……眠っておけば良かったですわ……」

 

ユリスがあくびを噛み殺した。

ざわざわとざわめく周囲の声を聴きながら、エクスは機体の整理を始める。

 

シリオの姿はどこにもなかった。

 

機体を専用格納庫にしまって、出てきた。

突然できた休みだが、特に予定はない。

ユリスみたいに寝なおそうかと思った時だ。

 

「エクス。」

 

エクスと近い場所に専用格納庫を持つ、ペルにあった。

彼女も今しがた片づけを終わったようだ。

 

「今日、暇?良かったらどこか遊びに行かない?」

 

ペルが長い黒髪を片手でおさえながら、恥ずかしそうに目を逸らして言った。

 

特に予定がない。今日は暇だ。

 

ペルと遊ぶことにした。

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