第三次
現二年生の生徒数は約六十人と三クラス分の生徒がいるが、現一年生は十五人と、その三分の一程もいない。
その十五人の生徒と、引率の教師が三人。
ゲート内部に備え付けてあるスタートダッシュ用の発射台に、エクスは自身のレッグを乗せた。
出撃時はこの発射台に乗り、勢いよく射出されて出撃する。この発射台を使うことで、外で使うエネルギーを節約するのだ。この発射台をうまく使えるかどうかも優秀な
ザザッ――
ヘルメット内に装備した無線機が、チームメイトの声を伝える。
『出撃直後はすぐわたくしの元に集まること。わたくしがこのチームのリーダーなのだから、わたくしの指示にしたがいなさい。』
我らがチームリーダーは、……なんとかかんとかとか言う少女で、どうやら現在の一年生のメンバーの中で首席らしい。
その肩書にふさわしく、専用機を纏っていた。そのため、どこにいるかはすぐわかるだろう。
横一列に並んだ発射台の同一線上、エクスが乗った発射台の一つ飛ばしたすぐ横に見える。
真っ赤なスーツを身にまとった金髪の眼帯女。スーツと同じく真っ赤な四肢は、他の
エクスと目が合うと不機嫌そうにそっぽを向いて無線を入れる。
『実力もないくせに、男というだけで専用機をあてがわれた転校生君は特に話をよく聞くように。』
……どうやら嫌われているようだ。
彼女のスーツはメーカー名が見慣れない企業のものだ。新参か、もしくは個人で作られたようなものなのかもしれない。
スーツに刻印されているメーカー名は『DP LL』。
それが何を意味しているのか、どういう性能のエンジンを積んでいるのか、エクスにはわからなかった。だが、彼女はスーツおよび四肢をすべて赤一色で統一している。
換装が激しい四肢をカラーリングするような人間は、割と珍しい部類の人間だ。
実力がないと思われても仕方がない。実際、エクスの動きはどこかぎこちない。
まだ、半年ぶりの操縦に慣れていないのだ。四肢もかなりアレである。
金髪眼帯女が長いストレートの金髪をなびかせてそっぽを向きながら無線を切る。
ほどなくして、出撃開始のカウントダウンが始まった。
機械音声と共に着々と発射準備が進められる。
発射台にエネルギーが充填され、ゲートの人員が忙しなく移動する。
……カウントダウンが進むに連れ、なぜかそわそわしてきた。
何故だ……?何故背筋がぞくぞくするんだ……?
――そうかッ!
催眠音声のカウントダウンモノを聞きすぎて感覚が敏感になっているッ!!
半年前にはなかった事象だ。何故今回はこんな事に――
その時、エクスの脳裏によぎったのは、長い入院生活でお世話になった催眠音声たちだ。
長期間戦闘外で射精をする機会が多くなったせいで、感覚が狂ったのかもしれない。
そうこうしているうちにもカウントダウンは着々とゼロに向かって進んでいる。
「まずいまずい、どうする……?」
どうもこうもしない。遠くで響いているはずの機械音声が間近に感じられ、まるで耳元で囁かれているような錯覚に陥る。吐息の幻聴まで聞こえ始めた。
『十二。十一。十。』
出撃レールが点火する。レッグパーツの下に設置されたスターティングブロックが衝撃で震え、力を溜めている。
『じゅう。きゅう。はち。なな。』
研ぎ澄まされた感覚は、無機質な機械音声案内をエロく聞こえるように改ざんした。頭の中に響き渡るッ!
『ろく♡ごー♡よん♡』
足ががくがく痙攣する。快感を感知したオナホールエンジンが、勝手にストロークを開始した。
「じ、自動射精誘因システムッ!?切ってるはずじゃ……!」
そこで気が付いた。切っていない。このスーツを着たのは今日が初めてで、今まで使っていたスーツはもうないのだ。本来自分で使っていたはずの設定はすべて消え去り、現在スーツに備え付けのシステムはすべて初期設定のままだ。
『さん♡にー♡いーち♡』
オナホールは激しい駆動音を立てながら陰茎をしごく。耐えられそうにない。
抗いようのない快感に脳を揺さぶられ、エクスは唾液を飲み込むのも忘れて口の端から涎を垂らした。
『ぜ……ろ♡』
激しい音と光と共にスターティングブロックが打ち出される。その上に乗った総十五機の
びゅるるるッ!!
エクスはオナホールの中に精液を射出した。
「あっ、んあっ、でちゃった……」
オナホエンジンは精液を取り込んで燃料に変える。
エクスは快感で悶えながらもちらりと
オーガズムメーター。
orgasmeterと呼ばれる。
エネルギー残量を示すとともに、貯蓄できる限界量も示している。最大で貯蓄できる量を上回ると、その分は無駄になる。とてももったいない。
エネルギーを管理する上でとても大事な要素であり、これを切らさないように、貯蓄量を上回らないように調整するのが優秀な
そして現在、エクスのオーガズムメーターは上限値を振り切って超えようとしていた。これはもったいない。もったいないので――
「――オ、オーーバーードライヴッ!!」
起動パスワードにより、オーバードライヴを実行。
オーバードライヴは無理やり出力を向上させる仕様上、激しくエネルギーを消費する。
エクスの乗るTENBA機が淡色の激しい白光を放ち、スラスターを起動した。
周囲からどよめきが上がる。しかし、それらすべてをかき消してエクスは加速する。
「うおおおおおおおおおお!!!」
射精をごまかすため、大声を上げてアクセルを踏み込む。脚部スラスター、背部スラスターが大きく開き、うなりを上げる。
オーガズムメーターがみるみる減っていく。上限値は超えずに済んだ。
機体の加速×発射台の加速が重なり、エクスは驚異的な速度で他の十四機すべてを置き去りにした。
◇
『あのね……ハアッハアッ……』
目の前で金髪眼帯女が膝に手を付いて息を乱している。
『正直、すまんかったとは思ってる。』
エクスが謝ると、金髪眼帯女は歯をむき出しにして猫のようにシャーーッと威嚇した。
『勝手な行動は慎んでくださいましッ!わたくしの内申点に響いたらどうしてくれるんですのッ!?そもそも出撃前に言いましたがッ!わたくしの話を聞きなさいッ!わたくしの元に集まりなさいッ!わたくしの指示にしたがいなさいッ!どれ一つ聞いてないじゃあありませんのッ!!大体――』
他のチームメンバーよりも早くエクスの元にたどり着いた金髪眼帯女が説教を始める。
やがて、遅れてほかのチームメイトのメンバーもやってきた。
チーム構成は学年首席の金髪眼帯女。
エクス。
ペル。
金髪眼帯女の金魚のフンA。
金髪眼帯女の金魚のフンBだ。
金髪眼帯女が怒鳴り散らしているさまを無線機で聞き流しながらペルがやってきた。
金魚のフンも無事定位置につく。金髪眼帯女の背後へ。
金髪眼帯女の説教が続く中、黙ってエクスは話を聞き流していた。
ヘルメットに備え付きの機能である拡張電子頭脳を起動。
これは、エクスの代わりに敵の出現や自分の他の
そんな中、彼女の側近の一人がくいくいとご主人様のアームを軽く引っ張って話を止める。
『ユ、ユリス様!あれ……』
側近Aは指をさしながらアレ、と言った。彼女がさした指の先には何かがある。高い岩壁。その周囲で複数の何かがうごめいている。エクスの装着したTENBAシリーズの拡張電子頭脳はそれが
だが、交戦範囲外だ。TENBAは
『おや、あれは……メカアントですわね。しかも巣付き、メカアントクイーン付きの……』
ユリスと呼ばれた金髪眼帯女が
まだ
『ちょうどいいですわ。何も知らないあなたの為にわたくしの実力を見せてあげましてよ。』
ユリスが腕を前方に構える。一体何を――
メカアントの巣の方向へ両手を向けたユリスは、起動パスワードを唱える。
『オーバードライヴッ!』
途端に彼女の股間が激しく震え始める。彼女の専用スーツの中では、二本のディルドが激しく彼女の二つの穴を貫いていた。
『DP』
ユリスの母親である、現DP社社長が独自の研究を行い完成させた二穴責めに重きを置いたバイブディルドを作る会社である。名前の由来はダブルペネトレーション。二穴同時挿入だ。
おケツの穴とおマンコの穴を同時に犯されているときが、一番興奮するのですわと社長は熱く語る。
そして、一つの穴だけでは満足できない同志の為にこの会社を立ち上げた。
『DP LL』尻に着いたLLの文字は、サイズ。長さ二十センチの極太ディルドが二つ、まるでクワガタの角のように付いた、歪曲したディルドは違う穴から侵入し、二方向から同時に子宮を責める。
『DP LL』エンジンがうなりを上げる。激しくユリスの膣とケツを刺激し、巨大な快感の衝撃を起こす。
何度もしつけられたユリスのケツ穴と膣穴は、悦びに震え、ディルドをきつく締め付けて悶える。
『あ、ああ!イくッ!イキますわッ!おケツの穴と、おマンコの穴を両方奥の奥までほじられて、イキますのッ!イくッ!イグイグッ!おケツポルチオとおマンコポルチオ、キマってイぐぅうううッッ~~~~!!』
無線機をつないだまま、高らかに絶頂報告オーバードライヴ公開オナニー。
分かれた始点、重なる終点。二穴の自慰棒、二倍の振動で感じる強力なポルチオオナニーにより、ユリスは端正な顔立ちを快感に歪め、白目を向きながら、顔の穴という穴から汁を流し絶頂した。
十分な絶頂エネルギーが満たされたことを引き金に、ユリスの背後にあった巨大な鉄塊が動く。
最初にソレを見た時、大型背部装甲か、背部スラスターだと思っていた。しかし、その予想はどれも外れる。
それは、巨大な武器だった。
鉄塊から、ガコンッガコンと音を立てて変形し、巨大な砲身へと姿を変える。
余りにも、人が背負うには余りにも不釣り合いな大砲。人体よりもはるかに長い巨大な砲身長。照準を向けた途端、バランスが前に傾いてユリスの機体が揺れる。しかし、すぐに砲身から極太バイポッドが伸びてそれを支える。さらに、ユリスのレッグがガパリと開き、地面に三本の極太アンカーが打ち付けられた。
口径百五十ミリ。砲身長六メートル。重量八千キロの超巨大エネルギーカノンが、
『さあ!刮目なさい!ツインエネルギーカノン、発射ァッ!』
キュィィィィッッ――
エネルギーカノンの砲身が青く発光し、銃口に
刹那、まるで風船のようにエネルギーの塊が膨れ上がったかと思うと、それは爆ぜて棒状に伸びた。
まっすぐにメカアントの巣目掛けて打ち出され、地面を、鉄を、岩を、空気を、砂を、地形を、機械を、生命を、破壊し尽くす。
轟音と共に、一キロ先の地面が多量の土石をぶちまけて爆散。地形は大きなすり鉢状のクレーターへ変貌し、先ほどまでそこにあったはずのメカアントの巣は、跡形もなく消えた。
『おーーっほっほっほ!おーーっほっほっほ!超火力砲は、ロマンッ!ロマンですわ~~~!』
ユリスは口元に手を当てて、高笑いをしている。
金魚のフンABは彼女を褒めたたえ、エクスとペルは――
呆れと、諦めと、疲労が混じった顔で彼女を見ていた。
基本。
エネルギー弾を射出する都合上、それはもう恐ろしく絶頂エネルギーの燃費が悪い。
さらに、射撃前には必ず待ち時間が発生し、無防備になる。
そんなことをするくらいなら直接殴る、という戦闘方法に落ち着いているのが現代の主流だ。
一応、メリットもある。
相手の交戦距離外から一方的に殴れる。近接攻撃と比べて段違いに高火力である、等。
しかし、先ほどのメカアントの巣程度であれば、現地まで歩いていき、一匹倒ずつ倒した方がより確実で、エネルギーの消費も少なく済んだだろう。
射撃型は、良い意味でも悪い意味でも、尖った性能をしている。
射撃型の
『ふう、メカアントの巣を一つ撃破で、
彼女がその発言をするまで、エクスはすっかり忘れていたのだが、今回の校外学習の目的は《生徒たちだけで
これを達成することで、生徒たちに評価を与えるという授業であった。今の戦果であれば余裕で達成である。
『そこの黒髪少年少女は、何もしてないのだから、せめて資材を持って帰りなさい。わたくしは人一倍働いて疲れましたわ。ふあ……帰って休みますわ~~!』
資材……。エクスはちらりと、メカアントの巣跡地を見る。彼らの死体は、破片すら残さず消え去っているように見えるんですが。
ユリスは、ペダルを踏み込んでブースト移動を開始し、宙に浮く。それに合わせて金魚のフンAも宙に浮いた。
『あ、待ってくださいユリス様~』
金魚のフンBも慌てて後を追う。ペダルを踏み込んで、空に浮かび上がろうとしたその瞬間。
真横に、緑色の巨大な物体が現れた。
『――あっ』
巨大な鎌状の腕が金魚のフンB目掛けて振り下ろされる。鎌は背部スラスターを破壊して、彼女のレッグパーツを両断し、地面に突き刺さる。
『きゃああああ!!』
背部スラスター、レッグパーツをやられたが、どうやら体は何とか無傷なようだ。彼女の容体は心配ない。だが――
『メカマンティス……ッ!なぜここに!?いや、それよりも――』
コイツ、今、まるで虚空から突然湧き出るように――
メカマンティスは、まるで最初からそこにいたかのように、何の予兆もなくそこに湧いた。
しかも、拡張電子頭脳には一切の反応がない。いや、なかった。
今は、けたたましい緊急用
『どうなってやがる……いや、それよりもまずは……』
エクスは誰よりも素早く事態の収拾に動いた。
腰に下げたボロボロの片手剣を右手で振り抜いて、さらに二の鎌を繰り出そうとしているメカマンティスの首に直撃させた。が、
『き、切れねえッ!』
刃が錆びついて鈍くなった剣はメカマンティスの首を切断するには至らず、折砕いて止まった。
首が折れても尚、メカマンティスの意識は途絶えず、鎌を構えてエクスに切りかかる。
『ぐぬ、仕方ねえ、借りるぞ!』
エクスは、腰を抜かしたまま地面に座り込んでいる金魚のフンBの剣を腰から勝手に抜いて借りると、目の前のメカマンティスの首を断ち切った。
『ふう、間に合った……』
エクスはメカマンティスを何とか仕留められたことに安堵して、地面に座り込んだままの金魚のフンBに手を差し出す。
『平気か?』
エクスが差し出した手を取ろうと、座り込んだままの彼女がエクスを見上げ――
その顔が、絶望に染まった。
ヘルメット内部のモニターに、緊急用
後ろを振り向かなくても分かる。
そこにはメカマンティスが五体。エクスを囲うように立っていた。
無呼吸で剣を振り抜き、背後のメカマンティスの首筋へ一直線に剣を叩き込む。
嫌な金属音を立てて最初の一機を撃破。続いて、二匹目のメカマンティスの首に、刃が直撃し――
刃が真っ二つに砕けた。
『――これだから安物は……!』
二匹目のメカマンティスは首を破損し、何とか絶命には至ったものの、まだ三体も残っている。
エクスは金魚のフンBを担いで大きくメカマンティスから離れた。
『早く逃げて、あいつらと一緒に教師を連れてこい!』
エクスの声に喝を入れられた少女は、大急ぎでペダルを踏んだ。
レッグパーツと背部スラスターは完全に破損しているが、どうやら足のスラスターが一つ生きていたようだ。よろよろと飛び上がりながらマグへ向かった。
そんな彼女を目の前のメカマンティスがちらりと横目で見る。
エクスはその隙を逃さず、メカマンティスの顔面に右拳を叩き込んでアイカメラを破壊した。
彼らは生命体らしく、視覚から得られる情報と、触角から得られる情報で敵を把握している。
一応、気休め程度ではあるが時間が稼げる。
エクスの目前のモニターは、まだ一機、逃走が出来ていない
ペルだ。
『ペル!俺がこいつらを足止めしているうちに逃げろ!』
しかし、彼女はどうやらエクスの声が聞こえていないらしく、頭を抱えたまま地面にうずくまっていた。
『ペル!』
エクスは二体のメカマンティスを相手にしている。その間に、余った一体のメカマンティスがペルに忍び寄った。
急いで逃走を指示するが、彼女は全く動く気配がない。
どれだけ声を張り上げて叫んでも、彼女の耳に声は届かない。
◇
『ペル!』
どこからか声が聞こえる。
しかし、彼女の目の前では複数のメカマンティスが徘徊している。何か行動を起こしてしまったら、ここに私がいることに気が付いてしまうかもしれない。そう思うと、足が動かなくなった。
耳をふさぐ。外の気配をシャットアウトして、冷静にならなきゃ――
呼吸の音が聞こえる。自分の呼吸か、それともそれ以外か――
ザザッ――
『い、いやだ!見捨てないでッください!助けてください!お願いします!お願いします!いやだ!いやだ!なんでもっなんでもするからあああッッ!!』
誰かが近くで襲われている……助けなきゃ――
周囲を見回す。うずくまって震えているペルのすぐ近くで、巨大なメカマンティスに組み伏せられ、襲われている少女が目に入った。彼女は、助けを求めながらこちらを見る。目が合った。
『いやだ!いやだ!いかないで!イッ……!いたい!きもちいい!いたい!きもちいいい!いたいのに、いたいのに、きもちいいい!!』
泣き叫びながらペルに手を伸ばす。メカマンティスによってその手は切り落とされ、ペルの足元まで転がる。
切り落とされた手首、切り落とされた両足、血だまりと、悲鳴と――
『どうして……』
少女が叫ぶ。
『どうして助けてくれなかったのおおおおおおおお!!』
目元に力が入って、顔が引きつる。
「これは、これは夢だ……これは夢だ、これは夢だ、夢だ夢だ夢だ――」
泣きながら耳を抑えて顔を地面に向ける。何も聞こえない、何も見えない、何も、何もかも。
全てを拒絶してその場で耐える。耐え忍ぶ。
耳をふさいでも、通信は途切れない。悲鳴は未だに大音量で鳴り続ける。メカマンティスが足を運び、大地を揺るがす振動が確かに伝わってくる。
不意に、音が止まった。
ようやく終わったのかと、焦燥に駆られて顔を上げた。
視線の先に、青い眼光。
にやりと鉄の塊が笑う。
うずくまったままのペル目掛けて鎌が振り下ろされる。
鋭い鉄の鎌は、不快な摩擦音と共に鉄の人形を切り裂いた。