「おはよー」「ぉはよ」
僕は教室の自分の席で頬杖を突きながら、グループの子に挨拶する花房を見るともなく見ていた。にこやかにほほえむ彼女は、いつも変わらないように見えた。歩き方が少しぎこちないことを除けば。
ちらと花房が僕を見やった。が、すぐに目を逸らされた。何もなかったかのような涼しい顔で友達と談笑している。
一抹の寂しさが胸裏に吹き込んだ。昨日はあんなにかわいかったのにな、と思うと、嫉妬めいたちくちくが起こる。
夕暮れの差し込む部室にて僕は、体液を拭き取ったりショーツを穿いたりして身なりを整えた花房に、勝者の権利を行使して要求を伝えた。
「はぁっ?! 何であたしがあんたなんかの彼女になんないといけないんだよっ?!」
しぶしぶながら自らの敗北を認めていた花房だったが、その要求はにわかには飲み込めなかったようで、不服そうに文句を飛ばした。
僕の要求は、「花房さん、これからは僕の彼女ね」だった。
「ぜってぇーやだっ」敗者のくせに、あんなに良がっていたくせに花房は生意気な態度を改めなかった。
彼女はぷいっと顔を背けさえした。しかしその頬は赤く色づいていて、何かを期待しているようにも見えた。
嫌よ嫌よも好きのうち、というやつだろうか、などと考えつつ──まぁ仮にそうでなかったとしてもこの好機を逃すつもりなんてなかったのだけれど──僕は冷淡に言った。
「ああ、そう、そういうこと言うんだ? いいよ、じゃあ」
えっ、というようにまぶたを大きく開けてこちらを見た花房に、続けて言った。
「花房さんが、チビ童貞の雑魚ちんぽにもイかされまくる超絶雑魚まんこだって拡散するから」
「なっ」と頬を引きつらせつつも、どこか安堵するように、「駄目に決まってんだろっ」と言った。「脅迫とかサイッテー!」
器用だなぁと感心しつつ、「僕はどうしても君が欲しいの。君を手に入れられるならサイッテーでも何でもいいよ」
花房が、ぶるっと震えた。「……お前の彼女になったら本当に言わないでいてくれるの」ささやくような口調で尋ねてきた。
「言わないよ。花房さんの全部を独占したいし」
はぅ。花房から妙に艶かしい吐息が聞こえた気がした。「お、お前って──」しかし彼女はそこで一度言葉を切り、わざとらしく、「ちっ」と舌を鳴らした。「わぁーったよ! 彼女にでも何にでもなってやるっ!」
投げやりな荒っぽい口調だったけれど、恥ずかしそうに、「でも勘違いすんなよ?! 付き合ってやるのは、さっき転んだ時に守ってくれた借りを返すためからだから! そんだけっ! 別にお前とのえっちが気持ちよかったわけじゃねぇからな! 意外と男らしくてキュンキュンしてるわけでもねぇからな!」などとツンデレな言い訳をする姿は、とてもかわいらしかった。
溜め息が洩れた。
そろそろ朝のホームルームの時間だ。先生はまだかな。そう思って前のほうの入り口に視線を移そうとした時、花房の流し目が一瞬だけ僕を見た。
気になるのはお互い様らしい。
何となく
などと浮かれていたのだけれど、この日は花房とはろくに会話もせずに家に帰った。彼女はバレー部で、平日は基本的に練習がある。自分の気分でどうとでもなるぼっち文芸部とは訳が違うのだ。
しかし、ヤりたい。とにかく花房を抱きたくて抱きたくて仕方なかった。
覚えたての猿という揶揄を耳にすることがあるが、それが極めて的確な表現なのだと知った。
夜、部活が終わった頃合いを見計らって僕は、スマホで花房にメッセージを送った。
『土日のどっちか空いてる? デートしようよ』
返事は文字どおり秒で来た。イくのだけでなくフリック入力も神速──すごい、これが陽キャのコミュニケーションスキルか、と
メッセージには、『はぁ? あいてるけど、なんであたしがそんなことしなきゃいけないの?』とあった。
「……」僕は閉口した。
毎回この段取りを踏まなきゃいけないのだろうか。まぁいいけど。
『もっと花房さんのことを知りたいから』
『きも』いつもの悪態が来て、しかしすぐに、『どうしてもってゆーなら、かわいそうだからあいてしてやる』
というわけで、土曜日に駅前で待ち合わせることになった。
よく晴れた週末の駅前は人だらけだ。
けれど、身長の伸びがいまいちな僕とは違ってグラビアアイドル顔負けのスタイルを誇る花房は雑踏の中でも目立っていた。
花房は、駅の東口の所にある謎の銅像の前で仏頂面でスマホをいじっていた。
「おはよ」
と声を掛けたけれど、今はもう昼前だ。昼食を一緒に食べる予定だった。
「おう、おせーよ馬鹿」
と男くさく応じた花房を頭のてっぺんから足先まで舐め回すようにまじまじと見る。
全体の印象は大人系ギャルファッションという感じだろうか。向日葵のように明るいセミロングは緩く巻かれ、謎の金飾りの付いた黒のキャスケット帽を被っている。体のほうは大胆に肩を出した暗めのオフショルダートップスにハイウエストの黒い膝上スカート、そして足元には夏らしい白っぽい厚底サンダル。差し色のつもりなのか淡い黄色の小さなショルダーバッグを肩に下げている。あるいは、下着も同系統の色だったし髪もそうだし単に好きなだけなのかもしれない。
スタイルの良さも相まって高校生か、がんばれば大学生くらいにも見える。
「大人っぽくてよく似合ってるよ」と言ってみる。「バッグもかわいいし」
「う、うん」花房の頬にほんのりと朱がにじむ。照れているようだった。
ちなみに、僕の格好は何の変哲もないプリントTシャツにデニム、スニーカーというものである。女の子と初デートに行くコーデとは思えないナチュラルっぷりだと自分でもあきれる。でも仕方ないのだ。垢抜けブランドの服など持っていないし、お小遣いも多くはないし。
「行こっか」僕は歩き出した。
「ほんとガンガンリードするよな」花房が小走りに隣に並んだ。
「マイペースなだけだよ」
「ぼっちだもんな」
「うるさいよ」
それから僕らは、ファーストフードを食べたり、冷やかして回ったり、平積みされた新作ミステリーを横目に推理作家談議に花を咲かせたり、UFOキャッチャーで奇跡を起こしてハイタッチしたりして楽しく過ごした。
まぁ正直そこまでは前戯のようなものである。僕の目的は、
「どうぞ」僕が自宅の玄関扉を開けて促すと、
「お、お邪魔します」花房は緊張した面持ちで敷居を跨いだ。
あるいは、これからもたらされる快感に期待しているのかもしれない。花房は落ち着かない様子で視線をきょときょとさせている。
時計の針は午後四時五十分を指している。今日は両親は仕事で遅くまで帰ってこない。だから僕ら二人きりで、特別広くはない一般的な一戸建ても多少は広く感じる。
「じゃあ始めよっか」
自室に入り一息ついたところで僕は言った。こっち来て、と手招きすると、花房は文句を垂れることもなく僕の右隣、シングルベッドに腰掛けた。
セックスのやり方なんてほとんど知らないけれど、挿入して出し入れして射精するだけ、というのは味気ない気がする。なので、
「花房さんは、してほしいこととかやりたいこととかってある?」
どストレートに尋ねた。
「え、いや」花房はまごついて、結局、「そんなの知らねーよ」とそっぽを向いて答え、「お前の好きにすればいいだろ」と早口に小さく言い足した。
「それなら胸でしてほしい」
は? 胸で……? 花房は僕を振り向いて怪訝そうな表情を浮かべたけれど、すぐにその意味に思い及んだらしく、かぁぁっと頬に朱が差した。
「な、何でっ? そんなのしなくてもいいだろっ」花房は腿の上の、スカートを握った手を見つめ、「この前みたいに、その、普通にシてよ」と不明瞭な口調でごにょごにょと付け加えた。
しかし僕は、「やだ」言下に拒絶し、「どうしても花房さんの胸でイきたい」駄々をこねた。「花房さんのおっぱいじゃなきゃ駄目なんだよ」言葉にも、魅惑の膨らみを見つめる眼差しにも熱がこもる。「花房さんだからしてほしいんだよ? こんなことほかの子には絶対頼まないっ、花房さんじゃないと気持ちよくなれないんだっ!」
どんだけパイズリしてほしいんだよ──頭の中にいる鳥瞰気取りの冷静な自分があきれている。
が、花房は、ぞくぞくとした戦慄が背筋を駆け上がったかのように軽く腰を反らしてびくびくっと震えると、
「わ、わかった」首肯した。「あたしだけだもんな、あたしじゃきゃ満足できないんだもんな、じゃあしょーがないよな」
「そうそう」僕は大いにうなずいた。「もう僕は花房さんじゃなきゃ駄目なんだよ。ずっと君のことばかり考えてる」
耳まで真っ赤にした花房が、トップスのボタンを外し、それを取り払った。床に落とされ、ぱさりと軽い音がした。
肩紐のないピンクレースのブラジャーが現れた。ぷにぷにの乳肉が寄せられ、淫靡な谷間を作っている。
自然と喉が鳴った。股間に官能的な熱が漲ってくる。
「そういうのもあるんだね」しかし僕は、平静を取り繕う。
「ぅん、オフショルで、ストラップが見えると、かっこ悪い、から」含羞の小雨が降るような、ぽつぽつとした言い方だった。
花房は背中に手を回すと、ガチと音を鳴らしてホックを外した。ブラが背後で開き、抑えられていた胸乳が左右に少しだけ開いた。かと思ったらブラの片側がずれ落ちて右の乳房が、たぷんっとまろび出た。弾み揺れる桜色の乳首に視線が吸い寄せられ、しかし花房の細腕がすぐにそれを覆い隠してしまった。
「あんまり、その、見ないでよぅ」
恥ずかしくてたまらないといった様子の消え入りそうな声で花房は哀願した。普段の威勢は完全に鳴りを潜めている。
そんなふうにされると、いじめてあげたくなってしまう。
「駄目」僕は花房の手首をやんわりと掴んだ。「よく見せて」そうして彼女の腕をゆるりと開いていく。
「ぁぅ……」顔を背けて恥じらいはするものの、抵抗はなかった。
肌と同じ優しい象牙色の、量感のある乳房が露になった。そのサイズに比して乳輪は小ぶりで、淡い桜色の乳首がぷくりと尖っていた。
思わず手が伸び、下から支えるようにして触れる。とっぷりとした柔らかな重み。
「んっ」花房から甘い声が零れた。
構わずにゆっくりと優しく揉む。かすかに汗ばんでいて手のひらに吸いついてくる。ぬくぬくとした人肌の優しい火照りとたぷたぷとした芯のない柔らかさ、まるで温かなスライムのようで、それなのに不思議な張りがあって垂れることなくきれいなお碗型を保っている。
はぁ、はぅっ、んっ、と淫らな吐息を洩らす花房に尋ねる。
「気持ちいい?」
「べ、べつに、んっ、ふ、ふつう」
肯定とも否定ともつかない曖昧で狡い言い方だったけれど、その上擦った声色は、潤んだ瞳は、上気した頬は、性感の昂りを伝えていた。
「じゃあこれは?」
僕は努めて平静な口調で言い、つんと尖った乳首を親指の腹でこするようにして軽く弾いた。
「ひゃぅっっ!!」泣き出しそうな嬌声が上がった。
乳輪の周りの柔肌をすりすりとさすりながら僕は尋ねる。「痛かった?」
「いたくはっ、あふぅっ、ないけどっ、んっ」
そう、よかった、とささやいて僕は、本格的に乳首責めを始めた。弾力のあるグミのような硬さのそれを、くにくにとつまんだり、ころころと転がしたり、ぴんっと弾いたり。
「んっ、ああっ、ふぅっ、びりびりっ、きもちいっ、はぅっ、らめっ、んんっ、それらめっ──」
花房は何やら言っているけれど、気にせず僕はその尖りを口に含んだ。女の子の甘い汗の味が口腔に広がる。
「ひゃっ」花房がおびえるようにびくっと震えた。
かわいらしく勃起した乳首を舌で舐め転がし、左手でもくにくにと慈しむ。
「やぁっ、きもちいいよぅっ、んっ、はぁふぅっ、あぅっ、やらぁっ、イっちゃうっ、んんっ、はぁっ、ああっ、イくっ、またイかされちゃぅ──ぁぁイっくぅ~~っっ!!」
花房の腕がしがみつくようにして僕の頭をきつく抱きしめた。
ぬくぬくたぷたぷのあったかおっぱいに顔が埋もれ、
「んぐっ」
花房のふんわり優しい香りが鼻腔一杯に広がり、脳が甘く痺れる──が、ちょっと息が苦しい。死ぬかも。死因・パイ窒息。何それ笑えなすぎて笑える。
その時、ギンギンに勃起している男根に熱い戦慄が走った。
あ、何か、僕もイきそ。
死に瀕して生殖本能が刺激されたのか、射精感が込み上げてきた。しかしそれが放たれる前に、ふいと冷たい空気と電灯の光を感じた。花房が腕を緩めてくれたようだった。
顔を上げて、すぅぅぅ、と大きく息を吸う。はぁぁ、すぅぅ、はぁぁ。生き返る心地だ。
「あ、ごめん、息できなかったよな」花房は場都合が悪そうに言った。
「──ふぅ、本当にね」僕はやおら立ち上がり、デニムとトランクスを下ろした。腹につくほどに反り返った剛直が跳ねるようにして躍り出た。
「ひゃっ」花房が息を呑むように短い悲鳴を上げた。
彼女は口元に手を当てておっかなびっくりという様子で、先走り汁でてらてらと照り光る男根を見つめている。
ベッドに座り直すと僕は、クッションを置いた床に花房を膝立ちにさせた。彼女が見上げる形で差し向かっている。
「どうすればいいの」上目遣いの表情で言われ、股間が焦れる。
「まずは全体を舐めてたっぷり唾液をつけて」ローション代わりのつもりだ。
こくっと花房はうなずくと、少しだけ出した赤い舌先で、ちろっと鈴口を舐めた。ぬちゅっ。粘りのある水音が立った。
花房は、れろっ、れろっと根元から先端に掛けて丁寧に舐め上げていく。
唾液でぬるぬるの、温かくて柔らかい舌の感触が心地よく、微弱な快感が絶えず走り、その献身的な姿には征服欲が満たされていく。
花房は一所懸命に舐めつづける。僕がいいと言うまでやめるつもりはないようだった。偉そうに命令するな、と喚いていた彼女はもういない。従順でかわいい雌でしかなかった。
男根全体が唾液まみれになり淫靡な光を放つようになると僕は、
「もうそれくらいでいいよ。じゃあ、おっぱいで挟んで」
素直に顎を引いて花房は、両手で左右から乳房を寄せるようにして、その瞬間を今か今かと待ちわびて震えている怒張を挟み込んだ。
「んっ」花房が甘やかに湿った吐息を洩らした。窺うような上目遣いに僕を見て、「気持ちいい?」
「すごく気持ちいい」
あったかくてたぷたぷの乳肉に剛直を包まれるのは至福の感覚と言えた。安心感にも似た癒やしの官能だった。
一瞬、安堵のほほえみをたたえた花房は、「えっと、おっぱいで上下に扱けばいいんだよな……」つぶやくように言うと、恐る恐るといったぎこちない手つきで、乳肉を押しつけるようにしてピストン運動を始めた。
快感の強度が跳ね上がる。ぬくいスライムがぺニスに絡みついて締め上げ、
そして、何よりその光景が僕の劣情を掻き立てた。
ぷるんっぷるんっと揺れる、押しつぶされて歪む胸乳、上下するたびに現れては消える亀頭、時折上目遣いの視線を寄越す自信なげな瞳、「んっ、はふぅっ、あんっ、はぁっ」と感じ喘ぎながらも懸命に奉仕を続ける健気な表情──今、僕は花房を完全に支配しているのだと実感できる。
花房は僕のものだ。
学校中の男子が、教師さえもが憧れて卑猥な妄想の対象にしているだろう大きな胸乳も、付き合ってきた、おそらくはカースト上位の男たちが求めてやまなかった蜜穴も、嫉妬と羨望を向けられる、アイドルをも欺く端麗な容貌も、すべて僕のものだ。
僕だけの、僕だけが好きなように堪能できる女の子なんだ!
そう悟った瞬間、腰の奥でマグマが弾けた。
「ぅっ、出そうっ」
「う、うん」花房は、ラストスパートとばかりにピストンを激しくする。「いっぱい、んっ、出してっ」
甘く熱く痺れるような感覚と共に精液がせり上がってくる。
そこで僕は妙案をひらめいた。「口開けてっ、花房さんの口に出したいっ」
僕の切羽詰まった必死な語勢に押されたのか、
「は、はいっ」
花房は上擦った敬語調で言下に答え、間髪を容れずに敏活な動きで、あむっと亀頭を咥えた。
瞬間、パンパンに膨らんだ亀頭が痙攣し、ゼリーのようにどろりと濃い白濁液がものすごい勢いで噴き出した。
「んんっ?!」花房からくぐもった悲鳴が聞こえた。
「そのまま全部っ、受け止めてっ」
──びゅるるっ、どぴゅっ、びるるるっ!
花房は苦痛に耐えるように固く目を閉じて、しかしけっして男根を放そうとはせず、精液を注がれるたびに、「んっ、んんっ」と鼻息を震わせる。
射精のあまりの量に、朱唇の端から黄色がかった精液が溢れてきた。
すると花房は、
「ずずっ、ずずずーっ」
それを吸い上げた。吸引により、尿道を駆け上がる精液の勢いが強制的に引き上げられ、甘美にして強烈な電流が剛直を走る。あまりの快感に目の裏で閃光が弾けた。
やがて射精は終わった。心地よい倦怠感が腰にまつわりついていた。