異世界転生してチートを手に入れた俺は勝ち組だと思ったが、性悪女どものせいでTSロリにされて娼館に売られてしまい絶対に復讐してやると客に犯されながら誓った。 作:ヤドリギの瓶
そして次の一話で最初に構想して話は終わりになります。
砂煙が立つ暗いコロシアムのアリーナへ続く地下道を、なんらかの草で編まれた粗雑なサンダルを履いて歩いている。
薄汚れた肌触りの悪い布で作られた、胸までしかない上着とギリギリお尻が隠れる程度のスカートを着て。
石造りの壁を越えて微かに聞こえる歓声に吸い寄せられるように、逆光で先の見えない鉄の檻の前に立った。
(緊張が心地いい、半年ぶりに帰ってきた……)
俺は軽くジャンプを繰り返しその時を待っていた。
すると突然笛の音と太鼓が響き渡り、微かに聞こえていた歓声は建物を揺らすほど大きくなり。
少しして轟音を立てながら鉄でできた戦いの幕が上がった。
しばらく浴びていなかった太陽の光に目をくらむのを無視しながら、前から吹いてくる風に金髪がたなびかせな、いつもと変わらない足取りでアリーナの中へ歩いて行く。
鼓膜を揺らす大歓声を無視して、だんだんと鮮明になってくる視界で対戦相手の元団長ヘレネが同じようにアリーナに入ってくる姿を捉える。
ふと視線を逸らしコロシアムの最上段へ目を向ければ、豪華な装飾がなされた来賓用の観覧席にあのババアが座っていた。
「…………ひさしぶりだな立川」
深みのある黒髪をポニーテールに纏め、すらっとした四肢はまさに理想のプロポーションだ。
しかしそんなヘレネも俺と同じような格好をし手にはボロボロの剣を携えていた。
そして目元に濃い隈を作りながらもこちらをあざけわらうような表情をして話しかけてきた。
「剣を持たせてもらえないとは、よほど女王に嫌われているんだな」
俺を嵌められた時にヘレネの本性を知ったため、うまくすればこの段階で俺の術中に嵌める事が出来るだろうと思った。
俺は自然と口角があがる。
「はっはっは! 俺がお前ごときに武器なんざ使わねぇよ」
大げさに腹を抱えながらうずくまり歓声よりも大きな声で笑った。
「お前は……」
チラッと効果のほどを確認してみれば、想像以上に効いていたらしく鬼の形相で俺を睨んでいた。
「いつもそうだ。……自意識過剰で傲慢。自分ならなんだって出来ると思って、そして私の功績を全て掠め取るッ!」
「……役に立ったことないだろ――」
「――だまれ! お前がいなければ全て私の思った通りになったのに!!」
髪を振り乱して癇癪を起した子供のように剣で地面を叩いた。
「どんな戦いで功績を上げたとしても評価されるのはお前だけ! あまつさえ私の傭兵団をお前が作ったと勘違いする輩さえいる! どうしてこうなったんだ! お前が入ってくる前は順調だったのにッ!!」
(順調っておまえ……)
ヘレネは自分の都合の良いように記憶しているが、最初の頃の傭兵団は領主達の言いなりで体のいい肉壁として扱われていた。
報酬のほとんどをヘレネが管理してしっかりと団の経営はできていたが、団員のほとんどは仕事と報酬が見合ってないと不満を持っていて。
俺がいなかったらいつか捨て駒として死んでいたか、反乱を起こされて解散していただろう事は容易に想像できるほどひどい状態だった。
「……自分が最強だっていうが、俺がいなかった当時からお前より強い奴はいたじゃねぇか」
「そ、それは時間の問題だった! お前がいなければ数々の戦場で経験を積んですぐに追い抜いていた! お前が私の機会を奪ったんだ!」
(直接戦ってるところなんて見た事ねぇぞ。いっつも後方から意味の分からない指示を出していただけだろ)
相変わらず聞き苦しい妄想の数々を聞かされて、勝利するために挑発したとは言えそろそろ気疲れしてきたためとどめを刺してやることにした。
「でも実際、俺のおかげで団が大きくなったのは事実だろ?」
「――ッッッッ!!!
剣の柄を握る音がここまで聞こえてきて、歯茎をむき出しにして睨んでくる姿は俺ですら背筋が震えた。
(やっべ、想像以上かも)
「――いくら強がったところで今のお前はそこらの少女と同じいやそれ以上に非力だ今の私が負けるわけがない絶対に勝てる……」
しかしすぐさま行動を起こすような事はなく、まくし立てる様に小声で何かを言いながらだんだんと狂気的な笑みをうかべ自分の世界に浸っていっている。
(多分もうあいつの中の俺は負けて犯されるのかもな……)
俺の作戦は相手から動いてくれなければ破綻してしまうため身動きが取れなかった。
肌が焼けそうなほどに今日の太陽の日差しは強く額を流れる汗に紛れ、予想外の展開に冷や汗も流れる。
が、俺はもう一度挑発を行って事態を動かす事を決めた。
「やっぱりお前って口先だけだよな、いつまで女になった俺にビビってるわけ? 最強なんじゃないの?」
両手を肩まで上げてやれやれと首を振る。
瞬間、ドスンという思い音が鳴ったかと思ったらヘレネが急速に近づいてきていた。
(ッ来た!)
ヘレネの行動に素早く反応し、右足を一歩引いて半身になり迎撃態勢を整える。
「殺すッ! 殺してやるぅぅッ!!!」
ヘレネは気炎を上げなら構えも何もなく豪快に剣を振りかぶってきた。
指導道理に引いた右足を、前に一歩踏み出して剣を握っている相手の腕を右手で抑え。
左手で相手の腰を掴みながら踏み出した勢いのままに右足で相手を転ばし、自分も一緒に後転するように後ろに倒れ込む。
そして、左足を相手の腹に当てながら突っ込んできた勢いのままに巴投げの様にヘレネを後方に投げ飛ばした。
飛んで行ったヘレネはコロシアムの石壁に背中から勢いよくぶつかって、頭から地面に落っこちた。
俺は素早く立ち上がり倒れているヘレネに向かって走り出し、追撃をしよと思ったら。
「あ? おい? ……こいつ……気絶してる」
まさかたった一撃で倒せると思っていなかった俺は、油断なくヘレネの意識を確認したがピクリとも反応せず間違いなく気絶していた。
(う、そ、だろ。あんなに啖呵切って……)
予想外にあっさり決着が着いた事に観客たちさえも困惑し、コロシアムにあるまじき沈黙が辺りを支配した。
アリーナの端に居た審判が我に返って急いで近寄って来てヘレネの確認をし、戸惑いながら俺の勝利を宣言した。
これで終わりじゃないだろうと思った俺は女王の方を見てみたが、すでに観覧席からはいなくなっていた……。
(こ、これで終わり? まじ? 俺の一週間って……)
そして俺は腑に落ちない気持ちを抱えながらアリーナを後にしたのだった。
口先だけの妄想女であったヘレネを倒して主人公は、自分を嵌めた相手とのあっけない決着に腑に落ちていませんでしたが。
しかしヘレネへのお仕置きはまだまだこれからです。