第11話 天国のバカンスは儚くも消える(松下千秋)
1
常夏の海。広がる満点の青空。澄み切った空気。そのすべてが身体を優しく包み込む。
「うおおお!最高だあああああああああああああああ!!」
クラスメートの池くんが豪華客船のデッキからそんな咆哮を上げる。
いつもならうるさいなどの文句も出るが今日に限ってはそんな注意もされていない。
それはここにいる全員が少し浮ついた気持ちを持っているからだろう。
俺たちは夏休みに入り、茶柱先生の話していた通り俺たちはバカンスに連れて行ってもらうことができた。
それも、大きな豪華客船に乗って向かうというとんでもない待遇付きで。
「凄い眺め!マジ超感動なんだけど!」
軽井沢さんを始めとしたクラスの女子がはしゃいでいるのが見える。
「まさか本当にバカンスに連れて行ってもらえるなんてね」
俺の彼女である千秋さんは隣で静かに海を眺めている。
心地よい常夏の風が千秋さんの髪をなびかせ、ふわっと優しい香りを鼻に届ける。
「どうしたの、そんなとろけた顔して?」
「いや、千秋さんはやっぱり綺麗だなって」
「ちょっ、いきなりなんなの。からかってるわけ?」
「本心に決まってるじゃないですか、俺が千秋さんのこと大好きなのは知ってますよね?」
「もう、そういうこと平気で言っちゃうんだから……」
千秋さんは少し恥ずかしそうに頬を赤らめる。
そんな千秋さんも愛おしい。
「あっ、松下さん、上條くん!」
俺と千秋さんがデッキから海を眺めていると、後ろから俺たちに気づいた佐倉さんが駆け寄ってくる。
俺たちは慌てて間隔を開け、自然な距離感を保つ。
「2人ともここにいたんだね、クラスのみんなとは少し離れたところにいたから……」
俺と千秋さんはクラスで隣の席だからと言っても、デッキで2人きりだと何か噂される可能性もあるため、クラスとは少し離れたところで話していた。
大抵の生徒は気づかない。佐倉さんのように俺たちを探している人物がいて初めて見つけられるような位置だ。
「佐倉さんも楽しめてる?」
「う、うん。そうだね……でも、友達とかいないから……」
佐倉さんは俺と千秋さんには徐々に距離を詰めてくれているが、まだ他の生徒とよく話すといったことはない。
クラスの中で話せる人ができたのはいいことだが、まだまだ社交的になったとは言い難い。(まあ、それは俺にも当てはまることだけど)
「それにしてもすごいよね、ポイントがいらないなんて」
そう、佐倉さんの言う通り。
この豪華客船ではどの施設も無料で利用することができる。
一流レストランや演劇が楽しめるシアター、高級スパまで。
これだけいろいろなことが詰まった施設があると言うのにポイントを使わないなんてどうかしていると思ってしまう。
「じゃあ、今度みんなでレストランに行こうよ。ポイント使わないんだしさ」
千秋さんからの提案に俺と佐倉さんも頷く。
「でも、テストのご褒美だからってさすがにやりすぎな感じはしますよね」
茶柱先生は中間テストと期末テストの両方で赤点を出さずに済めば、バカンスに連れて行くと言っていたが、それにしても限度というものがあるだろう。
「確かに、上條くんの言う通りこんな豪華客船。普通に乗ろうとしたら10万は軽く超えるだろうし、それを200人近くっていったいどうなってるのかな」
「テストだとあんなに緊張したのに、なんだか拍子抜けしちゃうよね」
正直そんな気持ちが強い。
だが、一之瀬さんから聞いた言葉が妙に頭に残る。
バカンスがターニングポイントになる、と一之瀬さんは以前語っていた。
中間テストや期末テストのようなものでは、到底Aクラスとそれ以外のクラスのポイントの差が埋まることはない。
だからこそ、このバカンスでは学校側が大きくポイントを変動する要素を作っているのではないかと、一之瀬さんは考えていた。
こんな豪華客船に何も言われずに乗りはしゃぐ。それは入学したての俺たちに10万ポイントが支給された時と妙に似たような感覚だ。
「もしかしたら、このあと少し身構えた方がいいかもしれないよ」
「え?」
困惑した様子を見せる佐倉さんに俺は一之瀬さんから聞いた話を織り交ぜて話をする。
「た、たしかに……言われてみたらそうかも」
「この学校のことだし、有り得なくはないよね」
「でも、これから何をするのかなんて想像もできないけど」
正直、なにかあるんじゃないかとは思っているが、肝心の中身については見当もつかない。
わざわざ豪華客船に乗ってテストを受けさせられるというわけでもないだろう。
いつものようなテストなら当然Aクラスに分があるわけだし。
『生徒の皆様にお知らせします。お時間がありましたら、是非デッキにお集まり下さい。間もなく島が見えて参ります。暫くの間、非常に意義ある景色をご覧頂けるでしょう」
そんなアナウンスが船内から流れる。
俺たちもそれとなくクラスのみんながいる場所に近づき、島を見る。
地平線の向こうに小さく島のようなものが視認できるようになる。
「うわぁ、綺麗……」
思わずそんな声を漏らしてしまう。
こんな豪華客船から見る島なんて初めてなもので、ただの島なのについ感動してしまった。
「おい邪魔だ、どけよ不良品ども」
島を穏やかに眺めていたところに、Aクラスの生徒が近寄ってくる。
そしてAクラスの生徒たちは俺たちが島を見ていた場所を押し退けるかたちでどけ、近くにいた綾小路くんも肩を思いきりぶつけられていた。
「テメェ何しやがる!」
それを見た須藤くんはAクラスの生徒に敵意を剥き出す。
「お前らもこの学校の仕組みは理解してるだろ。ここは実力主義の学校だ。Dクラスに人権なんてない不良品は不良品らしく大人しくしてろ。こっちはAクラス様なんだよ」
なんだこいつ。心の中ではそう思いながらも口では何も言わない。
須藤くんも不満そうな顔をしているが、暴力には発展しない。うまく自分のことを自制しているようだ。
その後、平田くんが来てからはこの場も静かに収まり再び落ち着きを取り戻した。
千秋さんと佐倉さんも女子のもとに合流して、俺も男子の多くいる場へとやってきた。
「なあ平田。おまえ軽井沢とはどこまで進んでるんだよ」
池くんが平田くんに近寄って進展について聞く。
「折角の旅行なんだから、もっとベタベタしてもいいんだぜ」
池くんは平田くんに対して言っているのだが、その言葉に俺の股間が反応する。
今日は豪華客船にいたため一度もセックスできていないので、とてもムラムラしております。
夏休みに入るまでは朝にセフレになった星之宮先生とセックスをして午後に千秋さんとセックスをするという習慣を送っていた。
しかし、豪華客船に来てからいろいろあってセックスができていない。
というより男女が2人きりになる場所がそもそも少なすぎるため、セックスがなかなかできないのだ。
「僕らには僕らのペースがあるから。ごめん、三宅くんが困ってるみたいだから行くよ」
「何だあいつ。旅行先でもクラスメイトの心配ばっかりかよ」
池くんはどこかつまらなさそうに言う。
「でも軽井沢は軽井沢で、最近あんまりベタベタしないよな平田とさ。もしかして二人が別れたとか?だとしたら最悪だぞ……櫛田ちゃんを巡るライバルが増える!」
勝手な憶測で平田くんと軽井沢さんの事情を語って、勝手に絶望する池くんと山内くん。
「決めたぜ春樹。俺……この旅行で櫛田ちゃんに告白する!」
「ま、まじかよ。フラれたらすげぇ気まずいじゃん。いいのかよ」
熱くなる池くんとそれを友達として心配する山内くん。
「おまえ、覚悟決めたんだな」
「おうよ!」
池くんはそう言って櫛田さんのもとへと向かう。
「ねえねえ櫛田ちゃん。ちょっといいかな……」
「んっ?なにかな?」
「そのさ、なんつーか、俺たち出会って4ヶ月くらい経つじゃん?だからそろそろ、下の名前で呼んでもいいんじゃないかなって。ほら苗字だと他人行儀だしさ」
「そう言えば、山内くんたちとはいつの間にか名前で呼び合ってるね」
「だ……ダメかな?き、桔梗ちゃんって呼んだら?」
「もちろんオッケーだよ。私は寛治くんって呼べばいいかな?」
「うおおおおおお!!桔梗ちゃあああああん!」
池くんは大きな声で空に向かって叫んだ。
告白するのではなかったのか、とも思ったが人前で告白するというのは難しいものだ。
まずは苗字から名前呼びになっただけでも進展と言っていいだろう。
「下の名前か……そういや堀北の下の名前って、なんだっけか。なあ?」
須藤くんは中間テストのことと、目撃者を教えてくれたこと。そして暴動事件での過ちを教えてくれたことで、すっかり堀北さんのことを好意的に思っているようで名前が気になっているようで、隣の綾小路くんを名前を聞いていた。
「富子だ。堀北富子」
「え?」
綾小路くんが当然のように須藤くんに嘘を伝えたのに思わず声が出てしまった。
堀北さんの下の名前は確か鈴音だった気がするんだが……
「富子か……かわいい名前だな。俺の予想通りだぜ。フィーリングばっちりだな」
「えぇ……」
須藤くんもそれに納得したのか、うんうんと頷いている。
「あーいや、間違えた。鈴音だった」
「てめ、間違うんじゃねえよ。……鈴音か。富子の百倍フィーリング感じるぜ」
この調子だと須藤くんは堀北さんの名前が何であろうと全肯定しそうではあるが……
「っし、この夏休みの間に俺も下の名前で呼ぶぞ。鈴音、鈴音っ」
須藤くんは意気込んで堀北さんの名前を連呼している。
面白いのでもう少し近づいてみるか。
「そうだ、なあ試しに練習させてくれよ綾小路。鈴音って呼ぶ練習をよ」
「練習って何だ、練習って……。普通ないぞそんなもの」
綾小路くんは須藤くんの様子に若干引いている様子。
「なあ堀北、ちょっといいか?少し話があるんだけどよ……」
「オレは堀北じゃない」
「バカ野郎!練習だっつの。俺だってやりたかねーよ、けど練習は必要だろ?」
そう言って須藤くんは再び言葉を紡ぐ。
「……」
「なんか言えよ。練習になんねーだろうが」
「いやいや……何かってなんだよ。オレに何を言えと?」
「堀北が答えそうなことをだよ。付き合いの長いおまえならわかるだろ?」
綾小路くんはそれでも無言で何も言わない。
こういうのは綾小路くんは苦手なのだろう。ここは俺が一肌脱いでみますか。
「須藤くん、じゃあ俺が練習台になるよ」
「上條っ!おう、よろしく頼む」
須藤くんはそう言うと、早速練習を始めた。
「堀北。いつまでも他人行儀って変じゃねえか?俺らも知り合ってだいぶ経つしよ。他の連中は結構下の名前で呼び合ってるみたいだし。俺らもそろそろどうだ?」
「私とあなたが?他の人たちは下の名前で呼び合う関係なのかもしれないけれど、それが私たちに当てはまるかしら?それに私は他人と馴れ合う気はないわ。下の名前で呼びたいなら櫛田さんにでも頼んでみたら?彼女なら喜んで承諾してくれるでしょうね」
「くぅ~、やっぱり一筋縄じゃいかねえかぁ。でもやっぱ堀北の声じゃないと調子乗らねえな」
そんなこと言われても、さすがに声までは変えられない。
これでも自分なりに堀北さんの言いそうなことを考えて言ったつもりなんだけど。
「上條、お前堀北の解像度高くね?どんだけ堀北のこと見てるんだよ」
池くんがいつの間にか近くにきていて誤解されそうな発言をする。
「いや、別に堀北さんだけを見てるわけじゃないから。綾小路くんと堀北さんの2人が話してるのを見てるだけだから」
「は?お前カプ厨かよ」
「かぷちゅう?それってピカチュウの仲間?」
「お前カプ厨も知らないのかよ」
その後、なぜか池くんからカプ厨について教わった。
「おい、綾小路。もしかしてお前堀北のこと好きなのか?」
「いや、まったく」
俺が綾小路くんと堀北さんのことを見てると言ったせいで、綾小路くんまで被弾させてしまった。申し訳ない。
そして、その後船内アナウンスが流れてお手伝いを済ませるのと、ジャージに着替えるように案内された。
「ではこれより、Aクラスの生徒から順番に降りてもらう。それから島への携帯の持ち込みは禁止だ。担任の先生に各自提出し、下船するように」
拡声器を持った教師の言葉で、生徒たちは船から降りていく。
荷物検査までされて、貴重品と呼べるものは持っていけずジャージの状態で島に整列した。
2
俺たちが無人島に降り立ち、整列してからしばらくは生徒たちもこれからの期待で騒がしかったが段々と空気の変化を感じ、静寂へと包まれていった。
「ではこれより――本年度最初の特別試験を行いたいと思う」
「え?特別試験って?どういうこと?」
特別試験。その聞き慣れない単語に、ほとんどの生徒が疑問を感じたことだろう。
俺は一之瀬さんに聞かされていたため、少し覚悟はしていたが、旅行だと思っていた生徒たちは思わぬ不意打ちを食らったことだろう。
「期間は今から1週間。8月7日の正午に終了となる。君たちはこれからの1週間、この無人島で集団生活を行い過ごすことが試験となる」
「無人島で生活って……船じゃなくて、この島で寝泊まりするってことですか?」
「そうだ。試験中の乗船は正当な理由無く認められていない。この島での生活は眠る場所から食事の用意まで、その全てを君たち自身で考える必要がある。スタート時点で、クラス毎にテントを2つ。懐中電灯を2つ。マッチを1箱支給する。それから日焼け止めは制限なく、歯ブラシに関しては各自1つずつ配布することとする。特例として女子の場合に限り生理用品は無制限で許可している。各自担任の先生に願い出るように。以上だ」
教師の言葉に池くんを始めとした生徒が騒ぎ立てる。
突如、俺たちは1週間もの間無人島で過ごさなければいけなくなってしまった。
さすがに俺も無人島で生活する試験なんてものは頭の片隅にも考えがなかった。
そんなの非現実的で有り得ないと。
しかし、生徒のために豪華客船を用意するこの学校ならおかしくないことだったのかもしれない。
無人島での生活、正直やっていける気がしない。
「だが安心していい。これが過酷な生活を強いるものであったなら批判が出るのも無理のない話だが、特別試験と言ってもそれほど深く考える必要はない。今からの1週間、君たちは海で泳ぐのもバーベキューをするのもいいだろう。時にはキャンプファイヤーでもして友人同士語り合うのも悪くない。この特別試験のテーマは『自由』だ」
その言葉に俺たちはより混乱した。
しかし、この試験の概要はその後の説明でなんとなく理解できた。
この特別試験は各クラスに最初に300のポイントが与えられる。
そして、そのポイントを使うと1週間の試験を旅行のように楽しむことが可能らしい。
ポイントの使い方はマニュアルに書いてあるらしく、マニュアルには旅行を楽しむためのアイテムが載っているようだ。
そして、ここでポイントをいくら使おうと2学期以降に不利益になることはないそうだ。
そのため、これがはたして試験と呼べるものかと疑問を感じ始めていた。
「この特別試験終了時には、各クラスに残っているポイント、その全てをクラスポイントに加算した上で、夏休み明けに反映する」
その言葉で俺たちの間に一瞬の静寂が訪れる。
つまり極端に言えば、試験中ポイントを1ポイントも使わなければクラスポイントが300増える。
来月からのお小遣いが3万ポイントになるということだ。
クラスから湧き上がる声。多くの生徒が喉から出るほどのクラスポイントが300も貰えるのだから当然だ。
その後、マニュアルの説明などを受けてクラスごとに集まることになった。
クラスからリタイアする者が1人出るごとに支給された300ポイントからマイナス30ポイントされていくこと。
そして、Aクラスの1人の生徒がすでに欠席しているためリタイア扱いになっていることなどだ。
クラスで集まると、来月から3万ポイントが貰えるかもしれないという期待で興奮が治まらない様子の池くんがいた。
先生からは、防水機能に優れた腕時計がクラス全員に渡された。
これは試験終了までの1週間常に付けなければならないものらしく、装着者の体温や脈拍、GPSなど生徒の体調管理や安全のためのものらしい。
その後に説明された茶柱先生からの細かな注意によると、大怪我や著しい体調の悪化で試験続行不可と見なされた場合はリタイアになりペナルティが発生してマイナス30ポイント。環境を汚染する行為や他クラスへの略奪や器物破損、朝と夜の8時に行われる点呼に不在だった場合などにもペナルティが発生するようだ。
そして、300ポイントがすべてなくなった状態でリタイアするようなことになってもマイナスにはならないということ。
つまり、無理をしてポイントをまったく使わない生活をしていれば体調を崩す可能性もあるため、ある程度の支出は念頭に入れておくべきということだ。
平田くんも同じ考えらしく、クラスに提案をするがポイントを少しでも残したい池くんから反対意見が出る。
意見がクラスでまとまらない中、須藤くんがその空気を破って先生に言った。
「なあ先生。話の途中で悪いんだけどよ、さっきジュース飲んだせいかトイレに行きたいんだよ」
すると先生は須藤くんの要望に応えるように簡易トイレを取り出す。
簡易トイレはクラスに1つ支給されるらしく、この1週間は基本的にこれを使うらしい。
「もしかして、私たちもそれを使うんですか!?」
女子である篠原さんから大きな声が届く。
「男女共有だ。だが安心しろ。着替えにも使えるワンタッチテントがついている。誰かに見られるようなこともないだろう」
「そう言う問題じゃなくて!だ、段ボールなんて!絶対無理です!」
先生はその後も簡易トイレの使い方について説明するが、絶対無理という顔をした女子が複数いるのが見てすぐにわかった。
千秋さんも正直嫌そうな顔をしている。
「だ、段ボールとか絶対無理だし!それに男子も近くにいるんでしょ?きもいし!」
「はあ?うわ、傷つくわー。俺超紳士だし」
池くんと篠原さんが言い争っていて話がなかなか進まない。
それを見ていた茶柱先生の視線が急に不機嫌そうなものに変わった。
「やっほ~」
「……何してる」
「何ってスキンシップ?どうしてるかなーって」
Bクラスの担任の星之宮先生が突然茶柱先生に絡みにきたのだ。
茶柱先生は鬱陶しそうにしながら星之宮先生を見る。
「あっ。上條くんじゃない。久しぶり~」
そう言って星之宮先生はターゲットを俺に変えて近づいてくる。
「あっ、えと……どうも」
ここ最近は午前の性処理を星之宮先生にお願いしていたため、すでに何回も身体を交えているので、なんとも言えない空気感だ。
「上條くん、そのもしよかったらなんだけど――」
「――はい、わかりました」
星之宮先生にあることを伝えられ、少し距離を取った。
それから星之宮先生が俺たちのクラスから少し離れると、茶柱先生がまた試験の説明を始めた。
この島にはスポットがいくつかあるようで、それらには占有権というものがあり、占有すると権利が与えられるらしい。
そして占有権は8時間で切れるらしく、その度に更新が必要らしい。
更にスポットを占有するとポイントが1増えるらしく、試験終了時に加算されるようだ。
スポットについての説明はこうだ。
スポットを占有するには専用のキーカードが必要。
1度の占有で1ポイント、占有したスポットは自由に使用可能。
他が占有しているスポットを許可なく使用した場合50ポイントのペナルティ。
キーカードの使用はリーダーとなった人物に限り、正当な理由なくリーダーの変更はできない。
他には、占有されていなければ何箇所でも同時にスポットを占有できるなど細かい説明があった。
そして、スポットを占有することのリーダーについて、もう1つのルールを説明される。
試験終了の7日目にに点呼のタイミングで他クラスのリーダーを言い当てる権利が与えられる。
その際に他クラスのリーダーを当てることができたなら、的中させたクラス1つにつき50ポイントを得る。
そして逆に言い当てられた場合には代償として50ポイントを失う。
しかし、もしも誤った人物をリーダーとして学校に報告すると、マイナス50ポイントとなる。
そのため、適当にリーダーを当てずっぽうで報告するということはできないわけだ。
しかし、このルールがあることでスポットをあちこち探しに動くということはできなくなる。
もしもリーダーがスポット探しに奔走したならば、他クラスにリーダーと悟られる可能性が出てしまうからだ。
そして一通りの説明が終わり、再びクラスはトイレの話題になる。
簡易トイレを使いたくない篠原さんと、それくらい我慢しろという池くんの対立。それに乗っかる形で女子と男子で口論が始まっていた。
マニュアルにはトイレもあるらしく、篠原さんはそれがなければ絶対に嫌だと声を上げる。
しかし、トイレには20ポイントも必要らしく、これには池くんだけでなく幸村くんまでもが反対する。
試験開始早々、なかなか話がまとまらない。このままではいつスポットを探しにいけるのか。なんだか先が思いやられるな。
しかし、俺にはこれと言ってやれることもなく……
「はぁ……」
「どうしたの、ため息なんかついて」
そんな俺のもとに千秋さんが寄ってくる。
「なんだか、この試験大変そうだなあって」
「そうだね。この様子を見るとちょっと不安になっちゃうね」
「千秋さんも簡易トイレはやっぱり嫌ですか?」
「うーん、私としてもあんまり使いたくはないかな。非常時でそれしかないなら仕方ないって思えるけど、一応ポイントで買えるって言われたら、ちょっと欲しいって思うかも……」
千秋さんとしても、やはり簡易トイレはあまり好ましくないらしい。
この試験の厄介なところは、無人島という過酷な環境であるにも関わらず、マニュアルに自分たちの生活を快適にするものを置くことで、我慢する気持ちを崩そうとしてくるところだ。
マニュアルにトイレがあるため、どうしても簡易トイレを使うと割り切れない。学校からの善意に見えて厄介極まりないシステムだ。
だが、今回は千秋さんも簡易トイレを使うことに抵抗があるようだし、少しは働きかけてみるか。
俺はトイレを購入するという意見に賛成することにした。
「俺もトイレは設置するべきなんじゃないかと思う」
「やっぱり、上條くんもそう思う!」
突然の俺の言葉に篠原さんが反応する。
「おい、上條なに言ってるんだよ!最初からトイレを買うなんて甘えたこと言ってるんじゃねえよ」
「俺はむしろ、後からトイレを買う方がもったいないと思う。後からやっぱり必要でしたと買ったとして、それまでに蓄積された女子のストレスを考えても、買うなら早い方がいい」
「そんなこと言ってたらキリがないぞ!あれも欲しいこれも欲しいって言い出したらどうするんだよ」
「その時はもちろん反対する。ただ、俺はトイレは最低限1つは必要だと思う。まずは聞いてくれ」
一度、池くんや反対意見を宥めてから話す。
「まずそもそも、40人もいるのにトイレが1つで上手く機能すると思う?」
「いや、それは……順番とか決めて上手く使えば――」
「食後や就寝前なんかは、特に並ぶことになる。食事の時間をそれぞれずらすのも手かもしれないが、それをするとクラスとしての行動が難しくなる。森などで用を足すことはルールからもできないし、ある程度の出費は仕方がないんじゃないかな」
「僕もそう思うよ。女子に過度な心配をさせるのは後々に響いてくる可能性もあるからね」
平田くんの一押しもあって、池くんも幸村くんも折れたようでトイレの設置に賛同してくれた。
「上條くん、ありがとう」
「ううん、俺も少しはクラスのために動く平田くんの力になりたいから」
まあ本心は千秋さんのためなんだけど、一応クラスの力になりたいとも思っているし嘘は言ってないよ。
「トイレのことはしょうがなく諦めるとして、俺はスポットを探しに行くぜ。俺たちが悠長に話してる間にAクラスとBクラスが行っちまったからな。キャンプ地とスポット探しに行く」
「迷うと危ないから、必ず1人にはならないでね」
「わかってるよ。健!春樹!行くぞ!」
先ほどトイレのことを認めてもらったため平田くんも強くは言えず、許可を貰った池くんは須藤くんと山内くんを連れてスポット探しに行ってしまった。
そして俺たちは残りのクラス全員で、あまり急がないペースで島を歩いていく。
少し落ち着いたところにきたところで、平田くんから提案が出される。
「池くんも言ってたけど、次はベースキャンプを決めるためのスポットだね。ベースキャンプを決めるために僕らも探索するべきだと思う」
平田くんの言葉で、何人かで探索をすることが決まる。
櫛田さんが挙手をしたことで数人の生徒が手を挙げて、その後に千秋さんが手を挙げたのを見て俺も静かに手を上げておく。
その後、3人グループを作ることになり、平田くんがメンバーを決めたため残念ながら千秋さんとは別グループになってしまった。
気になるメンバーは、綾小路くん、高円寺くん、そして俺。
なんとも言えないメンバーが揃ってしまった。
綾小路くんとは比較的よく話している(話していた)けど、高円寺くんとは話をしたことがなさすぎて未知である。
クラスでも、いつも手鏡に微笑んでばかりで同じクラスメートに仲のいい友達がいるようにも見えない。
しかし、高円寺コンツェルンの跡取りで、運動神経も良く、テストの点数も高い。
不可解な行動も多いが、スペックは本当に高いという、なんとも言えない人物だ。
少しの不安を抱えながら、この3人で探索を始めた。
3
草の生い茂った森の中を、俺たちはただひたすらに歩いていた。
「高円寺――」
「ああ、美しい。大自然の中に悠然と佇む私は、美しすぎる……!究極の美!」
高円寺くんに話しかけようと試みる綾小路くんのことに気づいていないのか、そんなことを言う。
「な、なにを言ってるのかな?」
「さあ?」
高円寺くんの言っていることはよくわからないが、自分にとても自信があるということだけは伝わってくる。
それにしても歩くペースが速い。
高円寺くんはどんどんと森の中を進んでいく。俺たち男2人が歩くペースよりも断然速い。
「高円寺くん、そんなスピードで歩いてたら迷子になっちゃうかも……」
「私は完璧な人間だから、この程度の森で道に迷うほど愚かではないさ。帰り道ならしっかりと頭に入っているのでねぇ」
「そ、それならいいんだけど……」
高円寺くんの言葉に安堵する俺の横で、綾小路くんは少し高円寺くんはのことを警戒しているようだった。
それからも変わらぬ速さで歩いていく高円寺くんに、こちらはついて行くので精一杯だ。
「高円寺くんは無人島に来たのにいつもと変わらないね」
「これははたして、本当の無人島と呼べるのかねぇ?」
「えっと……どういうこと?」
「ここは自然の森とは呼べない。少なくとも日中、彷徨って迷う確率は極めて低い。だからこそ、多少興味もあるがね」
高円寺くんのペースを削ぐために話しかけたのだが、よくわからないことを言いながら高円寺くんはスピードを緩めることなく進んでいく。
「高円寺、もう少しペースを落としたらどうだ?」
「私はこのペースを崩す気はないさ。もし追いつけないなら、その時は諦めたまえ」
そう言うと高円寺くんは更にスピードを速くする。
「ちょ、ちょっと高円寺くん!?」
俺は慌てて走り出す。
高円寺くんは俺が追いかけて走っていることに気づくと余計に加速させた。
森を駆け抜け、ターザンをするように木々を抜けていく。
俺も必死に後を追うが、段々と距離が開いていく。
何よりこれ以上の速さで走っていたら道を記憶できそうにない。
「上條、その辺で止めておけ」
「え、でも……」
「俺たちじゃ高円寺には追いつけない。あのまま追っても高円寺を止めることはできなかっただろうしな」
「それって――」
「今は自分たちが遭難しないことが大切だ。このままだと帰れなくなるぞ」
「でも、高円寺くんはいいの?」
俺が不安を口にすると、少し間を置いてから綾小路くんは答えた。
「高円寺なら大丈夫だ。オレたちは被害を被るかもしれないが」
なにか意味深なことを言って、綾小路くんは歩き出す。
そして高円寺くんとはぐれてから、しばらく歩いていると舗装されてはいないが、踏みならされた道がある。
そこには洞窟があり、学校が用意したもののように見えた。
「ね、ねえ!これってもしかして――」
「スポット、かもな」
「だよね、だよね!」
今すぐ見に行こうと、俺が洞窟の前に行こうとすると綾小路くんにすかさず止められた。
「ん~~~!」
「待て、誰かくるぞ」
綾小路くんに手で口を塞がられ、茂みの中に隠される。
なんかいつもより綾小路くんが積極的!
でもなんか少し照れくさいよぉ。
「この大きさの洞窟があればテントは2つで十分ですね葛城さん」
洞窟からは生徒が2人出てきた。
俺と綾小路くんは耳を澄ませて2人の会話を拝聴する。
どうやら、ここにいる生徒はAクラスの生徒で葛城くんと、弥彦くんと言うらしい。
試験が始まる前の船内から、すでにこの無人島についてよく観察していたらしく、最初からスポットの目星をつけていたらしい。さすがはAクラス。
「行ったか……」
「はわわわ」
「どうした?」
「え?いやっ!な、なんでもないよ!と、というか綾小路くん顔近くない?!」
「え、あ…悪いな」
この数分間、綾小路くんに口を手で塞がれていたため、心臓がバクバクしている。
別に綾小路くんのことが気になってるとか、そんなんじゃないんだからね!
でも、いつもより綾小路くんの距離感が近くてドキドキする。
「洞窟の中を少し見てみるか」
「う、うん」
洞窟から葛城くんたちAクラスの2人が出てしばらくして、俺たちは様子を見るために洞窟の中に入った。
洞窟に入ると、そこにはモニター付きの装置があり7時間55分の文字が書かれていた。
これはつまり、先ほどの2人がこの場所を占有した証拠だ。
そして、さっきの2人のうちの1人。葛城くんという生徒はカードを持っていた。
もしもあれがスポットを占有するためのキーカードならば、とんでもないことを知ってしまったことになる。
「これって葛城くんがリーダーってことだよね。もしかして俺たちすごいことを知ってしまったんじゃ」
「そうみたいだな。後でオレから平田に伝えておく」
綾小路くんにそう言われ、俺はこのことは綾小路くんに任せることにした。
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俺たちが探索から戻ると、池くんたちが平田くんに熱心に何かを伝えていた。
どうやら川が見つかったようで、そこには装置があったらしい。おそらく、それはスポットの占有装置だろう。
平田くんは池くんの話を聞いて、探索から帰ってきていない残りのチームが帰ってきたら向かうことを決める。
「悪い平田、高円寺と途中ではぐれた」
「ああ、高円寺くんならさっき一人で戻ってきて海に泳ぎに行ったよ」
「え、えぇ……」
綾小路くんが平田くんに説明すると思わぬ答えが返ってきた。
高円寺くんの行動が読めなさすぎて怖い。
「はぐれるなんて、あなたたち統率が取れていなかったんじゃない?」
「アレはオレたちが制御できるような人間じゃないぞ……分かってるだろ」
綾小路くんは高円寺くんがとてつもないペースでどこかへ行ってしまったことを堀北さんに伝えた。
「なるほど。性格以外文句の付けようがない能力の持ち主ね、彼は」
「お前と一緒だな」
「何か言った?」
「い、言ってません」
そんなやり取りがどこかおかしくて、俺は笑ってしまった。
「あははは」
「なに?」
「い、いや……なんか久しぶりに見たなと思って」
「なにが?」
「え、なにがって……それは――」
俺が言い淀んでいると、堀北さんが急に饒舌に話し始めた。
「あなたは何か誤解をしているようだから言っておくけれど、私は友達のいない綾小路くんが憐れだから話してあげているだけよ」
「それ酷くね?」
「だって事実だもの」
堀北さんの心ない一言が綾小路くんの心にクリティカルヒット。
どうして堀北さんはこんなに言葉のナイフで突き刺してくるんだろう。
「でもなんだかんだ綾小路くんのこと気にかけてるでしょ?」
「してないわ」
「とか言いつつ……」
「あなたといると疲れるわ。私は疲れたから休むわ」
「お前なにもしてないだろ」
綾小路くんは静かにそう突っ込みだが、特にそれ以上の追及はしなかった。
「ここだ!俺たちが見つけたスポット!凄いだろ!」
クラスメート全員(高円寺くんを除く)が集まり、池くんたちが見つけたスポットにやってきた。
そこには綺麗な水や、日光を遮ることのできる日陰、地ならしした地面。ベースキャンプにするには理想的な場所だった。
その後、ここをベースキャンプにすることが決まり、リーダーを選ぶことになった。
「じゃあ、誰がリーダーをするかだね」
「私、色々考えてみたんだけど、平田くんや軽井沢さんは嫌でも目立っちゃう。でも、リーダーを任せるなら責任感のある人じゃなきゃダメでしょ?その両方を満たしているのは堀北さんだと思ったんだけど、どうかな……?」
平田くんがリーダーを決めようとしたタイミングで、櫛田さんからの堀北さんを推薦する声が上がる。
俺もその意見には賛成だった。平田くんや軽井沢さん、櫛田さんは他クラスにも顔が広いため認知度もあってクラスのリーダーとして考える生徒も多いだろう。
そのため、リーダーを堀北さんにするということには俺も賛成だった。
「櫛田さんの意見に賛成だよ。というより、僕もリーダーは堀北さんが良いと思っていたから」
平田くんからの賛同も得たことで、クラスのほぼ全員が認めて堀北さんがリーダーになることが決まった。
「よーし、これで風呂と飲み水の問題は解決したよな!な!」
クラスのリーダーが決まってしばらくして、池くんが川の水を見ながら言った。
「はあ?川の水飲むとか、あんた正気?」
「なんだよ、全然いいじゃんか。綺麗な水だろ」
篠原さんは川の水を飲むことに抵抗があるのか、嫌そうな素振りを見せる。
「何が不満なんだよ。折角見つけた川を有効活用しない手はないだろ」
「じゃああんたが試しに飲んでみてよ」
「は?……別にいいけどさ……」
そう言って、池くんは川の水をすくい上げて一気に飲み干す。
「かー!キンキンに冷えてて気持ちいいぜ!うめぇ!」
「うわマジドン引き。無理無理、そんなの飲むなんて。気持ち悪い」
「はあ!?お前が飲めって言ったんだろ篠原!」
「やだやだ。私が一番嫌いなタイプね、あんたみたいな野蛮人」
池くんと篠原さんのいがみ合いが加速する。
このまま調子じゃ、とてもじゃないが一週間生活するなんて不可能だ。
「うわぁ、美味しい!この水すごく美味しいよ!」
俺も池くん同様に川の水をすくい上げて喉に流し込む。
「ちょ、ちょっと上條くん正気?!そんな水飲んで大丈夫なわけ?」
「うん、全然大丈夫だよ。みんなも飲んでみればわかるって。沸騰とかさせれば、ある程度は殺菌もできるだろうし」
「か、上條くんが言うなら……」
篠原さんの近くにいた佐藤さんが川に近づいて水をすくって飲む。
「た、たしかに……ちょっと美味しいかも」
「ほ、ほんとに?」
疑心暗鬼だった生徒たちも、女子である佐藤さんが飲んだことで続々と飲料として使えるのではないかと考えを改め始める。
そのことで疑われていた池くんの感性も認められるようになる。
これで池くんへの辛辣な評価が変わるといいのだけど。
5
午後になって、段々と俺の身体に異変が起こり始める。
身体の異変とはもちろん『絶倫』のことだ。
今日はまだ一回もセックスしていないんだ。
当然と言えば当然なのだが、これは由々しき事態だ。
無人島という開放感ある空間で毎日2人とセックスをしなければならない。
こんなにハードルの高い条件あってたまるか。
午前中は動き回っていたおかげで、なんとか気を紛らわせていたが午後になってとうとうごまかせなくなってきた。
どこかで千秋さんと……
「……上條」
そんなことを考えていると目の前から声をかけられる。
俺に声をかけたのは綾小路くんだった。
どうやら火を着けるための枝を探しに行くらしく、それで俺を誘ってくれたらしい。
性欲のことは今はどうしようもないため、俺は立ち上がり、綾小路くんと枝拾いに行くことにした。
俺と綾小路くんが森へと進もうとした時、2人の女子が俺たちに近づいてきた。
「上條くん……私も、行ってもいいかな?」
追いかけてきたのは佐倉さんと千秋さんだった。
俺が頷くと2人は歩幅を合わせてついてきた。
「上條はこの2人と仲はいいのか?」
「え?」
枝を集めている途中、横から綾小路くんがそんなことを聞いてきた。
「そうだね、松下さんとは席が隣なこともあって比較的よく話すかな。佐倉さんとはこの前いろいろあってね」
「そうだったのか」
綾小路くんが俺について聞いてくるなんて少し珍しいな。
そんな風に思いながらも黙々と枝を拾っていく。
それからしばらくして十分に枝を集めてベースキャンプに戻る途中に、大木に肩を預ける1人の少女を見つける。
「あれ、どうかしたの?大丈夫……」
「……ほっといてよ。何でもないから」
少女の頬は赤くなっていて、これは決して恥ずかしがってなったものではない。
誰かにぶたてれてできたものだった。
「ケガしてるみたいだけど、どうかしたの?もし痛むなら先生呼んでくるよ?」
千秋さんも心配している様子で少女のもとに駆け寄る。
「何でもないって、クラスの中で揉めただけだし。気にしないで」
「クラスの中で揉めたって、なにがあったの?」
「いいだろ……なんでも――」
「良くないよ、何か手伝えることがあるかもしれないし」
この腫れ方は、あまり普通じゃない。
俺は心配だったので手を差し伸べることにした。
「まったく、なんなの?私のことなんて放っておけばいいでしょ」
「そういうわけにもいかないよ。こんなところにいつまでもいたら冷えちゃうし……」
俺が手を差し伸べてもまったく手を取ろうとしない。
「どうするつもりなの?」
千秋さんが隣から心配そうに声をかけてくる。
「とりあえず、ベースキャンプに連れて行って見たほうがいいんじゃないかな?」
「でも、この子は他のクラスの子だよ?リーダーのこともあるし、ちょっとリスクが高いんじゃない?」
「そうかもしれないけど、やっぱり放っておけないよ。ここに夜までいたら危険だし」
「それはそうだけど……」
千秋さんはこの少女になにかクラスの事情を流されてしまうのではないかと心配しているようだ。
「まあいいんじゃないか?きっと平田なら迷わず助けるだろうしな」
「私はいいっって言ってるでしょ」
「オレたちはお前がくると言うまで、ここに居続けることにした。気が変わったら声をかけてくれ」
綾小路くんはやや強引な手法を用いて少女が折れるのを待った。
「……バカだなおまえら。うちのクラスじゃ考えられない」
「あんまり気にしなくてもいいんじゃない。どうせあなたからしたら別のクラスなんだし。ここは素直に助けてもらいなよ」
千秋さんの言葉を聞いて不服そうに感じながらも、俺たちについてくることを決めて立ち上がった。
「でもいいわけ?おまえらのキャンプ場所を教えても。しかも案内までするなんて」
「リスクを考えて危険だからと言って、放置するのは違うんじゃないかな」
「ホントにお人好しなんだな。Cクラスじゃあり得ない」
「Cクラスだったんですね」
佐倉さんが小声でつぶやいた。
以前Cクラスとは須藤くんの件で一悶着あった。
その時に佐倉さんには力を借りたので、Cクラスに関してあまりいいイメージをもっていないのかもしれない。
「Cクラスって、どんなクラスなの?」
「うちのクラスは龍園ってやつが掌握してる。誰もあいつには逆らえないんだよ」
龍園くんか。
前も一之瀬さんには聞かされてたけど、クラス内からもこんな風に言われてるなんて、どれだけやばい人なんだ。
「そういえば、名前を言ってなかったね。俺は上條遥。こっちは綾小路清隆くんで――」
「私は松下千秋。この子は佐倉愛里」
「よ、よろしく……」
千秋さんが紹介すると、佐倉さんが弱々しく挨拶する。
「私は伊吹」
短くそう言ってまた口を閉ざしてしまった。
あまり口数は多くないようで、ベースキャンプに戻る間もあまり会話は起こらなかった。
ベースキャンプに戻って、まずは伊吹さんのことを平田くんに説明しようと思ったのだが、あいにく平田くんはまだ戻ってきていないようだった。
そのため、伊吹さんのことは一旦伝えるのを諦め、まずは火を起こすことにした。
集めてきた枝を並べて、クラスに支給されたマッチを使って火を起こそうとする。
「よっと……」
マッチに火を着けることに成功し、枝に静かに近づける。
「あ、ごめんやっちゃったかも……」
マッチの火を枝に近づけるもうまく火がつかない。
どうやら枝が湿っていたようで、燃え広がらなかったようだ。
そういえば、博士がオススメしてた『ゆるキャン△』ってアニメだと松ぼっくりを使って火を起こしてたっけ。
でも、今は夏だし近くの葉っぱとかを採って着火できるものを探したほうがいいのかも。
「ごめん、マッチを一本無駄にしちゃったみたい」
「まあ、初めてだし仕方ないんじゃないかな。でも小さい枝から大きい枝みたいにしたら火も広がりやすいんじゃない?」
「た、たしかに……」
綾小路くんもそれに同意してくれて、俺と千秋さんで小さい枝と葉っぱを集めに行くことにした。
佐倉さんと綾小路くんは伊吹さんを見ていてくれるらしい。
千秋さんは人見知りな佐倉さんを心配していたが、佐倉さんは綾小路くんのことはあまり警戒していないようだった。
「じゃあ、行きましょうか」
「うん、そうだね」
俺と千秋さんはゆっくりと森の中を進んでいく。
夏とはいえ段々と日も下がってきている。
あと1時間ほどで日没のため、早く火を起こして暖を取りたいところだ。
「まさか無人島で生活するなんて思いもしなかったな」
「そうですね、こんなこと初めてでなにをしていいのか正直戸惑ってます」
「その割に今日はいろいろ動いてたみたいだけど?」
「それは、俺だってクラスの役に立ちたいとは思ってるんですよ?」
「でも、あんまり無理はしちゃダメだよ?」
「え?」
ゆっくりと千秋さんは俺に近づき、額に手を当てる。
「熱、あるんじゃないの?」
「な、ないですよ!」
「嘘つかないで。さっきから顔も少し赤いし、おでこもすごい熱いじゃない」
「こ、これは」
間違いなくこれは『絶倫』によって俺が発情している影響だ。
さっきから身体の火照りが止まらないのだ。
それをごまかすために、身体を動かしていたのだが千秋さんにはバレていたらしい。
「もし体調が悪いなら先生に言った方がいいんじゃない?」
「そんなことしたら、ポイントが減っちゃいます」
「だからって無理していい理由にはならないよ」
「それにこれは……」
この火照りはセックスをすれば治るものだ。
だから俺はリタイアはしない。
今にも『絶倫』で千秋さんのことを襲ってしまいそうだった。
「遥から言えないなら、私から言うよ」
「千秋さん、すみません」
俺は千秋さんの手を引いて茂みに隠れる。
「え?ちょ、ちょっと待って!急にどうしたの!」
「ごめんなさい、治すにはこれしかなくて……」
俺はジャージを脱いで大きくなった肉棒を千秋さんの眼前に見せる。
「こ、ここでするつもりなの?」
「ごめんなさい、すぐ終わらせるので我慢してください」
「が、我慢ってちょっ――」
俺は千秋さんのジャージを少し降ろしてパンツの上から秘部を愛撫する。
「あっ……んっ!」
声を押し殺しながら身体を小さく跳ねる。
俺が手のひらで優しく撫でると、指先の方に湿った液体が滲んでくる。
「んっ……あふぅっ!だ、だめっ…こんなところでっ」
「パンツも降ろしますね」
千秋さんの秘部も湿ってきたため、挿入する準備はできた。
俺はゆっくりと千秋さんの穴に肉棒を沈めていく。
「んっ…くあっ…ふぅっ♡」
「あっ、千秋さんっ!刺激がっ!」
野外でのセックスというのも作用してか、背徳感が強くいつもより興奮してしまう。
俺が突くたびに千秋さんの胸が小さく揺れる。
「あっ…あっ…あっ♡だめっ、こえがでちゃうっ!」
「はぁっ、はぁっ!」
「んんっ、あぁぁっ♡んっ、んっ♡んんんっ♡」
必死に声を押し殺すが、僅かに声が漏れ出る。
俺も亀頭が子宮に擦れて今にも射精してしまいそうだった。
「あっ…もうでちゃうっ!だ、だめっ…あっ、あっ…んんっっ♡あぁぁぁぁっ♡」
「俺も出ますっ!」
俺も千秋さんも同時に限界を迎えて欲望を解き放った。
ドロドロと精液が千秋さんの膣内を満たしていく。
肉棒をゆっくりと引き抜くとそこから白く濁った液体が溢れ出る。
「もう、急にこんなことするなんてどういうつもりなの?」
「我慢できなくてつい……」
「もしこれがクラスのみんなにバレたらどうするつもりなの?」
「いや、それは……」
これに関してはバレないように、という酷い解答しか用意できない。
男女が試験中に無人島で青姦なんてバレたら社会的に抹消されること間違いなし。
『絶倫』さえなければ、こんなことにはならないのに。
「じゃあ、もう少し集めて戻りましょうか」
「もう少し、ゆっくりしよ?」
「あ……」
どうやら2人きりになってから5分が経ってしまったようだ。
これから更に10分間、千秋さんの発情が治まるまでセックスを続けるのだった。
補足
松下千秋
好感度 99→99
評価 今回は松下だけか。
発情条件進捗
条件1 達成
条件2 達成
条件3 今回の発動回数???
綾小路清隆
好感度 50→52
評価 2人きりの時、発動していたようじゃがさすがは訓練された生徒じゃ。
発情条件進捗
条件1 達成
条件2 達成
条件3 今回の発動回数1
堀北鈴音
好感度 25→20
評価 好感度が逆に下がってしまったみたいじゃのう。ドンマイじゃ。
発情条件進捗
条件1 未達成
条件2 未達成
条件3 未達成
櫛田桔梗
好感度 38→38
評価 最近はめっきり交流がないのう。
発情条件進捗
条件1 達成
条件2 未達成
条件3 未達成
佐倉愛里
好感度 50→60
評価 順調に進展しているようじゃが、なかなか起きないのう。
発情条件進捗
条件1 未達成
条件2 未達成
条件3 未達成
高円寺六助(NEW)
好感度 0→0
評価 まあお前のことなど眼中にないようじゃな。
発情条件進捗
条件1 未達成
条件2 未達成
条件3 未達成
須藤健
好感度 55→55
評価 今回は残念じゃったな。
発情条件進捗
条件1 達成
条件2 達成
条件3 未達成
池寛治
好感度 25→35
評価 池からの評価も少しは上がったみたいじゃな。
発情条件進捗
条件1 達成
条件2 未達成
条件3 未達成
山内春樹
好感度 15→15
評価 こやつは本当に出番がないのう。
発情条件進捗
条件1 達成
条件2 未達成
条件3 未達成
平田洋介
好感度 90→95
評価 なかなか好感度が高くなってるのう。
発情条件進捗
条件1 達成
条件2 達成
条件3 未達成
軽井沢恵
好感度 8→8
評価 まあ仕方ないのう。
発情条件進捗
条件1 未達成
条件2 未達成
条件3 未達成
佐藤麻耶
好感度 60→63
評価 若干と言ったところか。
発情条件進捗
条件1 達成
条件2 達成
条件3 未達成
篠原さつき
好感度 45→60
評価 篠原も佐藤に並んできたのう。
発情条件進捗
条件1 達成
条件2 達成
条件3 未達成
森寧々
好感度 15→15
評価 こやつは松下のおまけじゃな。
発情条件進捗
条件1 未達成
条件2 未達成
条件3 未達成
園田千代
好感度 55→55
評価 最近はめっきり見なくなったのう。
発情条件進捗
条件1 達成
条件2 達成
条件3 今回の発動回数0
石倉賀代子
好感度 20→20
評価 まあ仕方ないと割り切るしかあるまい。
発情条件進捗
条件1 達成
条件2 未達成
条件3 未達成
茶柱佐枝
好感度 15→15
評価 先生が空気すぎて泣いてるぞ。
発情条件進捗
条件1 未達成
条件2 未達成
条件3 未達成
一之瀬帆波
好感度 90→90
評価 Bクラスが出番なかったからのう。
発情条件進捗
条件1 達成
条件2 達成
条件3 今回の発動回数0
星之宮知恵
好感度 50→55
評価 次はなにかあるのかのう。
発情条件進捗
条件1 未達成
条件2 達成
条件3 未達成
特別条件 今回の達成回数0
スキル『発情』発動条件
条件1 対象と連絡先を交換している
条件2 対象に触れられた回数と触れた回数の合計が5回以上
条件3 対象の好感度が50を超えている
条件4 対象と室内で2人きりになる
条件5 対象の手を握る
条件1から条件4を満たしたうえで条件5を行うことでスキル『発情』が発動する
スキル『発情』で発情した相手は30分間の間発情し続ける。
→
スキル『発情』発動条件(熟練度2)
条件1 対象と連絡先を交換している
条件2 対象に1度触れるかつ触れられている
条件3 対象の好感度が40を超えている
条件4 対象の両者が意識のある状態で10分以上2人きりになる
条件1から条件3を満たしたうえで条件4のシチュエーションが発生することでスキル『発情』が発動する
スキル『発情』で発情した相手は30分間の間発情し続け、自分の意思に反して相手に行為を迫るようになる。
→
スキル『発情』発動条件(熟練度3)
条件1 対象と連絡先を交換している
条件2 対象の好感度が40を超えている
条件3 対象の両者が意識のある状態で5分以上2人きりになる
条件1から条件2を満たしたうえで条件3のシチュエーションが発生することでスキル『発情』が発動する
スキル『発情』で発情した相手は10分間の間発情し続け、自分の意思に反して相手に行為を迫るようになる。以降対象が使用者に対して性的興奮を感じやすくなる。
→
スキル『発情』発動条件(熟練度4)
条件1 対象と連絡先を交換している
条件2 対象の好感度が40を超えている
条件3 対象の両者が意識のある状態で5分以上2人きりになる
特別条件
スキル保持者が対象にセックスをしたいという感情を2人きりの状態で抱いた場合、条件1、2、3を無視して発動させることができる。
条件1から条件2を満たしたうえで条件3のシチュエーションが発生する、または特別条件を満たすことでスキル『発情』が発動する
スキル『発情』で発情した相手は10分間の間発情し続け、自分の意思に反して相手に行為を迫るようになる。以降対象が使用者に対して性的興奮を感じやすくなる。
スキル『絶倫』
スキル保有者の性欲が極大的に上昇する。
スキル『絶倫』(熟練度2)
スキル保有者の性欲が極大的に上昇する。
一日に二回以上セックスしなければ自分に『発情』の効果が付与される。
スキル『絶倫』(熟練度3)
スキル保有者の性欲が極大的に上昇する。
一日に二回以上セックスしなければ自分に『発情』の効果が付与される。(二回はそれぞれ別人である必要がある)
無人島試験では、集団行動になるので自然と交流を持ちます。
→つまり(以下略)
単純に出番を増やして欲しいキャラクター候補
-
綾小路清隆
-
須藤健
-
堀北鈴音
-
松下千秋
-
櫛田桔梗
-
長谷部波瑠加
-
高円寺六助
-
平田洋介
-
龍園翔
-
山田アルベルト
-
石崎大地
-
伊吹澪
-
一之瀬帆波
-
神崎隆二
-
葛城康平
-
坂柳有栖
-
堀北学
-
山内春樹
-
山内春樹
-
山内春樹