いったい何ヶ月ぶりでしょうか。
半年ほど、間が空いてしまって申し訳ございません。
いろいろ理由はあるのですが、建前としては大学の課題と行事が忙しかったからです。
実際は、大学の課題に追われていたのと同時に、裏でペルソナをプレイしていました。
申し訳ありません。
ですが、春休みに入ったので今後は投稿頻度が一時的に上がると思います。(3月後半まで)
とりあえず、無人島試験は終わらせて早く船上試験を書きたいです。
話の想定としては、原作7.5巻くらいまでは構想を考えているのですが、遅筆すぎて追いつきません!!
再来月には遂に3年生編が始まりますし楽しみすぎます!!
3年生編は学年バトルがメインと言っていましたが、新1年生も登場するのかな?
とにかく楽しみぃぃぃぃぃ!
1
無人島での生活も早いもので、今日で4日目となる。
クラスのみんなも折り返しを迎えたことで気持ち的にも前向きな姿勢を見せている。
しかし、全員が全員そうではない。
折り返しを迎えはしたが、それを前向きに捉えるかどうかは人それぞれだ。
本堂くんなど、男子の中にも残りの無人島生活を憂鬱に感じている生徒がいることも確か。
試験とはいえ高校一年生の夏休みに1週間もの間、無人島で娯楽なしは少々酷だよな。
クラスメートにも負担がかかるだろうし、なにかいい案はないかな?
「無理に悩んでも仕方ないか」
時刻は朝の5時をまわったところ。
俺は寝袋から身体を起こし、テントの外に出る。
千秋さんと朝話す約束もしているし、顔を洗っておこう。
テントから出ると辺りはまだ薄暗く、人が起きている気配をはない。
俺は昨日小橋さんといろいろあった滝へと向かい、顔を洗ってからベースキャンプへと戻った。
まだ起きていないかと思っていたが、俺がベースキャンプに戻るとテントの近くの木に寄りかかっている千秋さんの姿を見つけた。
「おはよう」
「おはようございます」
俺と千秋さんの間に僅かな沈黙が流れる。
それから……
「場所、変える?」
「お願いします」
千秋さんの提案で俺たちはベースキャンプから少し離れた森に入った。
ここなら、周りから話を聞かれる心配もないし、お互いにとって都合がいい。
「それで、話ってなにかな?」
早速本題を切り出すように千秋さんから俺に投げかける。
「その……無人島試験が始まってからのことで……」
「どうかしたの?」
「試験が始まってから、あまり話せてないなって思って……」
「そうかな?初日は午後一緒にいたし、2日目は他クラスの詮索、昨日は食料を運ぶグループで一緒だったでしょ?」
そう言われればその通りだ。でも2人だけの時間というのはあまりないし、話している時間というのもかなり限られている。
「言いたいことがあるならハッキリ言って欲しいかな」
「それじゃあ、単刀直入に言います。千秋さん、この試験が始まってから機嫌が悪そうというか……」
「別にいつもと違うつもりはないけど……慣れない環境だからかな?機嫌そんなに悪そうに見えた?」
「それは……はい」
すると千秋さんはゆっくりと口を開く。
「そんなにわかりやすかったかなぁ」
「え?」
「もういいや、ごまかすのも意味なさそうだしね。遥は楽しそうだよね、この試験」
何か嫌味を含めたような言い方だ。
これは素直にはいと言うべきではない気がする。
「そんなことはないですよ、俺だって無人島にくるのは初めてですし不安になることだってあります」
「その割にはいつも楽しそうにいろんな人と話してるみたいだけど?」
「それは……」
確かに俺はこの3日間、千秋さん以外の人とも話す機会が多かった。
特に三宅くんや長谷部さんとは、この試験を通して仲も深まった気がする。
「私も面倒くさい女になったなって思う。遥と付き合うようになって、同じ時間を共有して、それが当たり前になってた。だから、この試験で遥と一緒に過ごす時間が少なくなって寂しかったのかもしれない」
「千秋さん……」
「だけど、遥は私といない時も楽しそうで……それが少し気になってた。意味わかんないよね」
俺は考えるよりも先に千秋さんの手を取っていた。
「ごめんなさい、気づくことができなくて……千秋さんが俺といる時間をこんなに大切に思ってくれてるとは思ってなくて」
「そうじゃなかったら、毎日会いに行ったりしないでしょ?」
「千秋さんへの感情は俺の一方的なものだと思っていたというか、今までも俺が千秋さんにお願いすることが多かったですし……」
「確かに最初は遥に付き合ってた節はあったよ。でも、それが当たり前になっていくうちに私の中で大切なものに変わってた」
毎日、千秋さんと部屋で話したりご飯を食べたり、俺はそれに充足感と幸せを感じていたけど、千秋さんの負担になっているとも感じてもいた。
でも、そうじゃなかった。
「千秋さんの気持ちに気付けなくて、ごめんなさい。でもそれよりも嬉しい気持ちが勝ります。俺だけじゃなかった、千秋さんも同じ風に思ってくれた。それがとても嬉しいんです」
「じゃあさ、もっと私との時間も作ってくれる?」
「それはもちろんですよ!千秋さんさえよければいつでも」
「なら、今日は一緒に行動しよっか」
「はい!でも、いいんですか?俺と2人だとクラスの人にも怪しまれませんか?」
「別に2人きりとは言ってないでしょ?」
「え?」
2
目が覚めた。
昨日はいろいろあってよく眠れなかった。
私にとって初めての出来事で、身体も汚されてしまった。
一晩経って、改めて昨日の私はどうかしてたと思う。
急に上條くんに迫って逆レイプに似たことをしてしまうなんて、どうかしている。
本来の私の目的は上條くんという危険な因子を取り除くことだった。
「本当になにやってるんだろうね」
私は川の水で顔を洗い、水面に映る自分に言葉を落とす。
でも、それでよかったのかもしれない。
上條くんと身体を交えた時に、今までに感じたことのないような快感を感じた。
他人から認められて、頼られて、積み重ねた努力によって獲得した私の地位。
私だけが一番になれる場所。
それを手放すつもりはないけど、それと同じくらい私は満たされた気持ちになった。
上條くんだったからなのか、それとも行為そのものなのかはわからない。
だけど、あの瞬間の私は他のことは何も考えられなかった。
嫌なこともなにもかも、忘れることができた。
もうネットに書き込む必要も、物に当たる必要もない。
あの行為さえあれば、私は私を保つことができる。
堀北と綾小路。後はこの2人を消す。
そして、上條遥を私のモノにする。
私だけのモノに。
3
千秋さんと2人で話し始めてどれくらいが経っただろう。
ただ話すだけのつもりが、お互いの身体は気づけば火照り始め、対面立位で身体を交えていた。
「はあっ……はあっ…!」
「千秋さん!すごい、締め付けがっ」
「遥の……いつもより大きぃっ!」
「千秋さんとできるのがすごく嬉しくて、興奮します!」
無人島でやっているというのもあるのかもしれないけど、今までよりも千秋さんと心と身体で繋がったような気がして興奮しているんだと思う。
俺も千秋さんも裸で身体を繋げ、野生の本能で動いている。
「あっ、んっ…はっ……!」
「千秋さん、はぁっ…はぁっ…!」
千秋さんは木にもたれながら、俺の首に手を回し口づけをする。
「んっ……はぁっ!千秋さんっ…これっやばっ!」
「もうちょっと我慢して」
さっきよりも少し長めのキス。
千秋さんから積極的に求められてるのがわかる。
すごく嬉しい、でも俺だって。
「えっ…?ちょっ、ちょっと!」
俺は千秋さんの首の辺りに舌を当てて舐めてみる。
すると千秋さんはビクっと身体を震わせ、顔が紅潮する。
「ダメでした?」
「ダメじゃないけど、どうしてそんなとこ舐めるの?」
「千秋さんの汗の味が気になっちゃって」
「そんなの気にならないでよ!恥ずかしいから!」
「でも、いい香りでしたよ?」
「そういうことじゃないから!」
千秋さんの顔は赤くなっているが、それが感じているからなのか恥ずかしいという感情からなのかはわからない。
だけど、今の千秋さんに攻めの姿勢はない。
なら、俺はこのまま千秋さんに攻め続ける。
ピストンの速さを一気に加速させて、俺と千秋さんは絶頂に向かう。
「あっ、だっ、ダメ!今もうっ…」
「俺ももう限界です。千秋さん、中に出しますね!」
「ちょっと待って、試験にピル持ってきてないからな、ナカはダメ!」
「っ、イキます!」
「あっ、んんんっ……はぁぁぁっっ!」
俺は千秋さんの膣内に精液を一斉に放出した。
そして千秋さんの中からは、俺の精液がドロドロと溢れ出している。
「遥、ダメって言ったでしょ?どうして出しちゃったの?」
「すみません、止めようと思ったんですけど我慢できなくて」
「もし私が妊娠しちゃったら、高校中退することになっちゃうんだよ?そうなったら責任。しっかり取ってもらうからね」
あのロリ神の計らいによって得たスキル『不妊射精』のおかげで、射精する時に不妊かそうでないかを選べるようになったため、万が一にも千秋さんが今妊娠することはないのだが千秋さんと一緒に過ごせるならそれも悪くないかもしれない。
「そろそろ戻った方がいいよね。みんなも起き始めてる頃だと思うし」
「そうですね、早く戻りましょう」
俺と千秋さんはジャージを着直して、ベースキャンプに戻るのだった。
4
朝の点呼が終わって、各々釣りや木のみの採取などグループに分かれ始める。
今日の俺は千秋さんに誘ってもらったため、周りから視線を集めないように、それとなく女子のテントの近くに向かう。
だが、そんな俺に近寄ってくる女子が1人。
「ねえ、上條くん。ちょっといいかな?」
クラスのマドンナ櫛田さんだ。
なぜ今このタイミングで?そう思ったが、考えうる理由は考えなくとも明白だ。
昨日のあのこと以外にない。
千秋さんのもとに向かいたいが、ここで断ったら後でどうなるかわからない。
次にベースキャンプに戻った時に昨日のことをすべてバラされてるなんてことがあってもおかしくない。
「大丈夫ですよ、何かありました?」
「う、うん。ちょっと…ここでは話にくいから、場所を変えてもらってもいいかな?」
「わかりました、じゃあどこにします?」
「えっと……」
櫛田さんに誘われて、女子のテントからかなり離れた場所まで連れてこられた。
だが、この2人で歩く間。会話はまったく生まれず、俺は櫛田さんに何を言われるのか心配でならなかった。
心拍数がどんどんと高まる中、櫛田さんは俺に向き合って言った。
「私たち、昨日。ちょっとオトナなこと……しちゃったでしょ?」
それに関わる話題ということは分かっていたが、俺の緊張感が高まっていく。
ここで否定することは許されず、素直に認めるしかない。
「そ、そうですね」
ドクドクと心臓の音が止まらない。
この音が櫛田さんに聞こえているのではないかと、心配しながら言葉を待つ。
「昨日のことは本当にごめんなさい、信じてくれないかもしれないけど、あんなことするつもりは本当になくて……」
「それは俺にだって落ち度がありますし、櫛田さんが謝ることじゃないですよ」
「ううん、私から迫っちゃったんだから、謝るのは当然のことだよ」
櫛田さんの立場だったら、いくらでも俺を追い詰めることはできるはずなのに、自分に非があるという主張を変えようとしない。
櫛田さんがいくら他人思いの優しい人だとしても、あんなことがあってもその姿勢を変えようとしないなんて、そんな人が世界にいるんだな。
一之瀬さんとも似てるけど少し違う。他人に尽くすことに喜びを感じる、櫛田さんはそういう人なのかもしれない。
「だから、そのお詫びというか……もし男の子特有の悩みとかがあったら、私……力になるよ」
「そ、それって……」
櫛田さんは俺の手を握り、上目遣いでこちらを見つめている。
これは考えるまでもなく、そういう行為のことだ。
山内くんや池くんだけじゃない、男子が聞けば全員がその提案に乗りたいと考えるだろう。
それは俺もそうだ。千秋さんという彼女がいながらも、櫛田さんの提案はあまりにも魅力的だった。
しかし、櫛田さんとは昨日身体を交えたため、この試験で櫛田さんとセックスをする必要はない。
魅力的には感じるが、俺には千秋さんがいる。見られていなくても不必要に千秋さんからの信用を落とすような真似はしたくない。
「櫛田さん、気持ちはありがたいですけど遠慮しておきます。もっと自分の身体を大事にしてください」
「上條くん……そっか、わかった。ありがとう」
櫛田さんは何度か頷いて、俺から手を離した。
「上條くんがそんな風に言ってくれるとは思わなかった。心配してくれてありがとう。じゃあ、またね」
櫛田さんは軽く手を振りながら、俺のもとから離れていく。
「早く千秋さんのところに行かないと……」
櫛田さんとの話も終わり、少し心に余裕を持たせながら千秋さんのもとへと向かった。
5
女子のテントの近くに向かうと、すでに千秋さんは準備を済ませていた。
「さっき櫛田さんと一緒にいたでしょ?」
「見えてたんですね」
「結構、長かったけど何を話してたの?」
「昨日のことです、櫛田さんが足を挫いちゃった時に俺が背負ってきたので、その時のお礼を言われました」
「何もないならいいけど、櫛田さんってやっぱり男子からも人気だし……」
千秋さんから少し不安そうにした表情が見える。
もしかして、俺が櫛田さんに浮気するんじゃないかと思っているのだろうか。
「千秋さんが心配するようなことはないので安心してください。本当に少し話しただけなので」
「わかった、とりあえず納得しとく」
千秋さんは頷くと、俺から離れてテントに入っていく。
そして、それから少しして中から千秋さんと一緒に佐倉さんが出てきた。
先ほど、千秋さんは2人きりではないと言っていたけど、もう1人は佐倉さんだったのか。
千秋さんは学校に入学してすぐの頃は佐藤さんとかとよく一緒にいるイメージがあったけど、あの一件以来佐倉さんとの関わりもかなり増えている。
佐倉さんの方も千秋さんのことを信用しているみたいだし、いい関係を築けている気がする。
「じゃあ、行こうか」
「はい!」
千秋さんと佐倉さんの2人と森の中に入っていく。
一応の目的は食料の調達と、他クラスの偵察。
試験も折り返しになり、他のクラスに動きが出てもおかしくない。
特にCクラスは初日からかなりのポイントを使用していたようだし、変化が起きているはずだ。
「上條くんと松下さんは仲がいいですけど、それっていつ頃からなんですか?」
3人で歩いていると佐倉さんから突然話を振られる。
千秋さんと仲良くなった時期か。
入学してすぐの頃から、席が隣だったから話す機会はあったけど、一緒に行動したりするようになったのはもうちょっと後だったかな。
「うーん、結構最初から話してはいたけど、最初に茶柱先生にクラス分けについて説明された辺り?だから入学して1カ月くらいかな」
「そうなんですね、私はまだその頃は1人も友達いなかったです……」
「でも、今はいるでしょ?私に、上條くん。話してみたらみんな仲良くしてくれると思うよ」
「それはそうかもだけど、やっぱり勇気が出ない……」
「それは俺や松下さんでフォローしますよ!俺もあんまり友達が多い方ではないですけど、頑張ります!」
「あ、ありがとう……」
それから話の話題は佐倉さんの交友関係に移った。
「男子だったら、平田くんはすごく話しやすいと思いますよ。誰にでも優しいし、すぐに受け入れてくれると思う」
「う、うぅん……」
「あれ、反応がイマイチ?」
「いや、平田くんはハードルが高いって」
俺が佐倉さんの反応を見て不思議そうにしていると、千秋さんが横から俺の意見に反応を示す。
「確かに平田くんは、誰にでも優しいし話しやすい雰囲気はある。だけど、平田くんはクラスの女子からも人気が高いでしょ?そんな平田くんに急に話しかけたら、女子から何を言われるかわからないよ」
「な、なるほど……」
「それに彼女はクラスカーストの高い、あの軽井沢さん。佐倉さんが軽井沢さんに目をつけられたら大変なことになるよ?」
千秋さんの言葉に佐倉さんが無言で頷いている。
なるほどな、女子の世界は思っていたよりも闇深い。
「うーん、でもそうなると意外と難しいですね。女子は誰かいないんですか?異性よりも同姓の方がハードルは低いように感じますけど」
「そうだね。女子だと櫛田さんとか
千秋さんの言葉を聞き、佐倉さんは少し納得したような表情を見せたが、同時に不安そうにする様子も覗かせる。
「やっぱり慣れてない人と話すのは緊張しますよね」
「う、うん……」
「でも、そうなると私たちに心を開いてくれたのは本当に奇跡だね」
千秋さんが思ったことを述べると佐倉さんが口を開く。
「松下さんは、最初は目が少し怖いと思ったんです」
「目?」
「私、目を見るとなんとなくわかるんです。職業柄で人の視線には敏感で」
「そんなに怖い目してたかな?」
「あっ、あの……そ、そうじゃなくって……」
千秋さんの言葉に佐倉さんが慌てて訂正をしようとする。
「最初は高圧的というか、厳しそうな目をしてたんです。でも上條くんと一緒にいる時の松下さんはすごく穏やかで優しい目をしてました。だから私も安心して話せたんだと思います」
「ちょ、ちょっと佐倉さん?なに言ってるの?それは勘違いなんじゃないかな?」
「上條くんと一緒だからなのかはわからないけど、でも最近の松下さんは前よりも優しい目をしてる……と思います」
千秋さんは佐倉さんの言葉で少し取り乱した様子だったが、しばらくすると落ち着きを取り戻した。
「そ、そうだとしても、私以外にも優しそうな目をしてる人はたくさんいるでしょ?それこそ櫛田さんとか」
「櫛田さんは……ちょっと怖いんです」
「怖い?」
「はい、その目で見た時の雰囲気というか…何の根拠もないんですけど……」
なぜかはわからないけど、佐倉さんは直感的に櫛田さんとはあまり気が合わないと判断したようだ。
いくら櫛田さんが人気とは言っても、全員が全員櫛田さんのことを好きとは限らないということだ。
「でも、そうなると佐倉さんと気が合いそうなのは
「そうですね、他に佐倉さんと気が合いそうなのは……」
あまり話すタイプではなく、下心のない優しい人。
俺の頭の中に1人の人物が描かれる。
「綾小路くん……」
俺の呟きに2人が反応する。
「佐倉さんと相性が良さそうな人が綾小路くん?」
「うん、綾小路くんなら佐倉さんのことも下心なく見てくれると思うし」
「綾小路くん……」
佐倉さんはほとんど関わったことがないかもしれないけど、きっと綾小路くんとは気が合うんじゃないかな。
「この前、伊吹さんを見つけた時に綾小路くんと一緒だったけど、あんまり怖そうな人じゃなかった。目を見ても何も感じなかったから」
「よかった、綾小路くんも友達を欲しがってたし仲良くなれると思うよ」
「は、はい!」
佐倉さんは頷き、前へ一歩踏み出した。
これが佐倉さんにとって何かいいきっかけになるといいんだけど。
それから俺たちはしばらく道なりに進んでいく。
すると、前方からなにやら人の気配を感じて俺は足を止める。
「松下さん、佐倉さん。止まって。誰かがいます」
「ほんと?何も感じないけど」
「こっちに近づいてくる。一旦その茂みに隠れましょう」
俺は2人の手を引いて茂みの中に入る。
そして近づいてくる存在が通り過ぎるのを待つ。
段々と足音が近くなっていく。
「ねえねえ真澄ちゃん、そんなツンツンしないでさぁ」
「うるさい、黙って歩くこともできないの?」
「こんな何もない無人島で黙って歩くだけとか、つまんないでしょ?」
「だからって私に話しかけるのはやめて」
「はいはい。でもまあ今のところは順調だよな。この試験で葛城の座は揺らぐことになる」
「私は別に興味はないけど」
「でも、葛城が失脚すれば姫さんの独走だろ?そしたら真澄ちゃんも少しは嬉しいんじゃない?」
「さっきから興味ないって言ってるでしょ」
Aクラスの生徒なのか、2人の生徒が話しながら歩いていく。
葛城くんはAクラスではあまり良く思われてないのか?
そして、姫さんって言うのは誰のことなのか?
話の内容は気になるが、2人は段々とその場から離れていく。
男の方は姫さんと呼び続けるし、真澄と呼ばれる生徒は一向に話をする気配がない。
これは耳を澄ましていても無駄なことかもしれないな。
俺は2人が立ち去ったのを確認して、その場から離れることにした。
「さっきの人たち、誰だったんだろうね」
「橋本くんと神室さんだったかな」
佐倉さんが気になって言葉を漏らしたが、それに千秋さんはさらりと返し佐倉さんはびっくりした様子だ。
俺も千秋さんが2人の名前を知っているとは思わず、驚いてしまう。
「千秋さん、2人の名前どこで知ったんですか?」
「Aクラスの坂柳さんとよく一緒にいるって噂で聞いたことあって」
「なるほど、坂柳さんっていうのは?」
「え、上條くん知らないの?」
千秋さんがそんなことも知らないのと呆れた表情をしている。
そんなに坂柳さんの存在って認知されてるの?
「坂柳さんといえば葛城くんと対を成すAクラスのリーダーだよ?」
「そうだったんですか。今までは自分のクラスばっかりで周りに目を向けられてませんでした」
「上條くんはもうちょっと他クラスとも交友関係を増やさないと」
「は、はい……」
千秋さんから優しい注意を受けた後、再び探索を再開する。
近くから作物の匂いがしたら場所のメモをして、いくつか回収して立ち去る。
それの繰り返しだ。
しかし、その途中、佐倉さんが俺と千秋さんに対して疑問をぶつけたことで状況は一転する。
「あの、前から気になってたんですけど松下さんと上條くんは付き合ってるんですか?」
一瞬訪れる静寂。
時が止まったのかと疑われる程、俺と千秋さんは足も思考も停止していた。
「えっと、それはどういうこと?」
千秋さんはとぼけたような反応をするが、もはや軌道修正は不可能だった。
会話の流れもなにもないところからの、急な言葉。
流れのある会話ならば、千秋さんも容易に対応したのだろうが不意打ちに即座に対応するのは至難の業だ。
「やっぱりそうなんですね」
佐倉さんは納得したような表情で俺と千秋さんの顔を交互に見る。
俺と千秋さんは佐倉さんの言葉にすぐに返事をすることができないでいる。
「前から少し思ってました。2人とも距離が近いなって。最初は私が知らないだけで、男女の友達もそういうものなのかなって。でも松下さんと上條くんのは、きっとそういうのじゃない」
続く言葉を聞きたくない。
なぜ?どうして?冷や汗が止まらなかった。
だが、佐倉さんの言葉は止まらない。
「松下さんと上條くんのお互いを見る目は、他の人とは違うんだって。私、友達を作ろうって考えました。今のままじゃダメだってわかってるから。だから、松下さんと上條くんを参考にしようとしたんです」
それで俺と千秋さんの関係に疑問を持ち始めたのか?
佐倉さんは成長しようとしていた。
でも、俺と千秋さんを参考にしたことで友達の定義が狂ってしまったということか。
「松下さんたちを見ているうちに、距離感というか雰囲気が違うって気づきました。お互いを信頼しているというか、何か特別なものを感じました。でも、私はそんな松下さんと上條くんの関係を見ていいなって感じたんです」
「それは……」
「でも、私は友達すら作れない。そんな私に松下さんと上條くんのような関係を作ることはできない。自分が何を目指せばいいのかわからないんです」
佐倉さんの洞察力を侮っていた。
他のクラスメイトは俺と千秋さんの関係に違和感を感じていないようだった。
俺たちと親しくはしていたものの、怪しまれるようなことはしていなかったはずだ。
会話の些細な様子や表情の変化で、俺たちの関係に疑問を持ったということか。
「そうだね、佐倉さんの言う通り。私と上條くんは付き合ってる。佐倉さんに隠してたのはごめん。でも別に悪意があったわけじゃない。ただ、クラスに付き合ってる人とかあんまりいないでしょ?今も軽井沢さんと平田くんのカップルくらい。だから、あんまり目立ちたくなかったというか、それだけの理由」
「そんな悪意があったなんて思ってません。ただ、私はどうすればいいのかわからなくて」
「要するに、佐倉さんはカップルっていうのに憧れてるんでしょ?」
「なっ!」
佐倉さんは動揺した様子で手をブンブンと振っているが、その否定が否定になっていないのは見れば明らかだった。
「それは私と上條くんだって、最初はただのクラスメイトだったんだよ。でも、中間テストとかでお互いに協力することも増えて成り行きで……みたいな?」
「成り行きって……」
「それはまあ……いろいろとね」
「いろいろ……」
俺と千秋さんに関しては恋人になる前に行為をしていたりと、一般的な付き合う手順としては誤っているだろう。
そこを丁寧に説明すると佐倉さんが奇行に走ってしまう可能性がある。
それだけは、俺たちが止めないといけないな。
「佐倉さんも好きな人ができればわかりますよ。恋人の作り方は千差万別です。手段っていうのは人によってアプローチとかも違うと思いますし、まずは相手を見つけることからだと思いますよ?」
「相手を、見つける……私にできるかな?」
「できますよ、きっと。この学校にはこういう特別試験もあるんです。機会はいくらでもありますよ」
「そう……ですよね。私、頑張ってみます!」
こうして、佐倉さんは交友関係を広げるという決意を再び固めるのだった。
その後は道中にあった果物をいくつか回収してベースキャンプに戻ることにした。
歩いている間に見つけた、作物の場所はマニュアルの白紙の部分に地図を描いて記し、いつでも取りに行けるようにした。
まだ日が沈むには時間もあるし、他の人の様子でも見に行ってみるか。
さっき、自分で佐倉さんに言ったことではあるけど、この特別試験は普段関わることのない人とも話すチャンスだ。
「さて、どうしようか……」
「さっきはびっくりしたね」
「うわっ!?」
俺がどうしようか考えていると後ろから、突然声をかけられ思わず肩をすくめた。
振り返ると千秋さんが俺の反応を面白そうに見ていた。
「きゅ、急に話しかけないでくださいよぉ」
「ふふっ、やっぱり遥は遥だね」
「え?それってどういう?」
「さっきは佐倉さんに妙な先輩風吹かせてたから、調子に乗ってるのかと思ったよ」
調子に乗っているだなんて失礼な。
千秋さんには俺の言葉がそう聞こえたのだろうか。
いや、確かに俺らしくないと言えばそうだったのかも?
「でも、あんなに佐倉さんが鋭いなんて思わなかったな」
「俺も人見知りが強い佐倉さんが、人との距離感だったり細かいところを分析できているとは思ってもいませんでした」
「本人はそういう自覚はないのかもしれないけどね」
「でもこれは、佐倉さんの武器になる要素だと思います。今は佐倉さんの魅力に気づいてない人は少ないかもしれません。でもこれから佐倉さんの魅力に気づく人は増えてくると思います」
「それはいいけど、遥は佐倉さんに浮気とかしないでね?」
「わ、わかってますよ!何を言ってるんですか!」
「冗談冗談、遥がそんなことしないって、信じてるから」
当たり前なことではあるんだけど、『絶倫』のせいでその期待を裏切ってしまっているのが心苦しい。
いつかこの『絶倫』を乗り越えて千秋さんの期待に応えます。絶対に。
「もう佐倉さんにはバレちゃったし、隠す意味は本当になくなったかな」
「そうですね。今もこうやって普通に話してますし、周りが認知するのも時間の問題だと思います」
「これからは自然に私たちの関係に気づいていく人も多いと思う」
「そうですね」
そしたら、休みの日とかでもお互いの部屋に行きやすくなりそうだな。
千秋さんと今よりももっと長い間一緒にいられる。楽しみだな。
俺たちの関係が明るみになったら俺がすでに行為をしてしまった人たちは、俺に対して今まで以上に嫌悪感を抱くことになってしまうだろう。
それは好ましいことではないが、仕方のないことだ。『絶倫』は星之宮先生を使えばなんとか治めることはできるだろうし問題はないか。
しかし、この試験であのクソ神に課されたこの課題だけはなんとかしなくてはならない。
課題をクリアできなかった時のペナルティがどんなものなのか、わからない以上なんとしても避けなければならない。
あのクソ神のことだから、まともなものでないことは確実だ。
この試験で俺が犯したのは、千秋さんと星之宮先生、園田さん、小橋さん、櫛田さんの5人だ。
あと5人、申し訳ないとは思うが、何もしなくても社会的に死んでしまうんだ。
俺のために犠牲になってもらう。
「遥、どうしたの?」
「あ、ううん!なんでもないです!」
「そう?ならいいけど。じゃあ、また後で」
千秋さんは手を振ってその場から引く。
俺も千秋さんに合わせて軽く手を振る。
あぁ、千秋さんの笑顔が眩しい。
「おいおい、なにやってんだよ上條っ」
「どうわっ!」
千秋さんに見惚れながら手を振っていると、後ろから首に手を回されて絡まれた。
振り向くと、そこには見慣れた男子生徒の顔があり、思わず表情が曇る。
「なんだ山内くんか」
「なんだとはなんだ!なんだとはぁ!」
「なんでもないよ」
千秋さんとのいい雰囲気が台無しだ。
まったく、山内くんはなんのために俺に話しかけてきたのか。
「今、誰かに手を振ってたよなぁ?いったい誰なんだ?えぇぇん?!」
山内くんはよくわからないが、威圧をしてくる。
どうやら、俺と千秋さんが会話していたところは全く見ていないようだな。
「いや、別に?」
「別にってことはないだろ?女だよな?手を振るなんて、お前女がいるのか?あぁぁっ!?」
うわぁ、めんどうなタイプだ。
山内くんってこんな熱籠もったキャラだったかな?
「いや、高校一年生なんだし……気になる女子がいても不思議じゃないでしょ?」
「やっぱり女か。お前この特別試験で1人で抜け駆けとか考えてないよなぁ?」
「考えてない考えてない」
「そうだよなぁ?俺たち友達だもんな?」
山内くんは自分より先に誰かが彼女を作ることを嫌がっているみたいだ。
池くんとかも、そういう雰囲気を出してたけどみんな躍起だな。
「それで、誰なんだよ。上條?」
「誰って、言う必要ある?」
「はぁ?あるに決まってんだろ!俺のライバルになるかもしれないからな!」
なるほどね。
ここで、山内くんの狙いの子の名前を言ったらここで殺されるな。
千秋さんと山内くんは接点は特にないし、言っても問題はないがどうする?
山内くんに話したら、次の日には男子の中で話題になってしまう可能性がある。
徐々に俺と千秋さんの関係を広めるのはいいが、山内くんに話したらそうはいかない。
「じゃあ、俺と山内くんで勝負をしよう」
「勝負?」
「勝負で負けたほうが好きな人を言う。これでどう?」
「お、おう!いいぜ?手加減しないからな?今のうちに降参してもいいんだぞ!」
「まだ、勝負の内容を言ってないんだけど……」
でも、これで少しはいい方向に前進した。
これなら有耶無耶にできるかも。
「お、なんだなんだ?春樹と上條、なにやってるんだ?」
そこへ都合よく池くんと須藤くんがやってきた。
釣りをしていたのか、バケツの中に何匹か魚が動いているのが見える。
「おう、寛治。今こいつと今勝負して好きな奴聞き出そうとしてんのよ!」
俺が、勝負のことを話すと池くんと須藤くんは面白そうに顔を見合わせた。
そして、池くんは俺たちから少し離れ、数分後男子数人を集めて戻ってきた。
「よし!じゃあ今からここにいるメンバーで魚捕り大会を始める!」
「魚捕り大会?」
池くんは集まったメンバーに対し、ルールを説明した。
大まかなルールとしては、このベースキャンプのスポットの中で制限時間内に魚を捕るというもの。
魚を捕る方法としては、素手、網、釣り竿などあるものは全て使用可能。(ただし、個数に限りあり)
そして、魚を捕った数が1番少なかった者は好きな人を発表しなくてはならない。
また最下位が複数人いた場合は、全員が発表することになる。
そして、気になる参加者は須藤くん、池くん、山内くん、俺、本堂くん、宮本くん、伊集院くん、沖谷くんの8人だ。
正直、このメンバーの好きな人にあまり興味がない。
須藤くんは堀北さんだし、池くんは櫛田さん、山内くんもおそらく櫛田さんだし、半分は知っている状況だ。
まあ、最下位にならない程度に頑張るか。
「制限時間は20分!よーーい!スタート!!」
「うおおおおおおおお!」
須藤くんは勢いよく川に飛び込み、魚目掛けて突撃する。
池くんはそこから少し離れた上流部で虫を針に通して釣り竿を準備している。
他の男子も各々最下位になるまいと魚を捕ろうと躍起になっている。
「くぅー、なかなか捕れねえ。どうしてだ、クソっ!」
山内くんは素手で捕ろうとしているようだが、魚にさっきから逃げられているようだ。
一方の須藤くんはと言うと、魚を上手く追い詰めいとも容易く魚を捕まえている。
「おらぁっ!どうだ!これで2匹目だっ!!」
「す、すげぇ……」
須藤くんの手際の良さに他の男子が言葉を失っている。
宮本くんと本堂くんは山内くんと同じく、苦戦しているようだ。
少しは手伝ってあげるべきだろうか?
「魚は警戒心が強いから、水面での動きをできるだけ控えめにして、音を立てないようにするといいよ」
「え?」
本堂くんは俺から急に話しかけられて驚いているようだ。
「急に動くと魚が驚いちゃうから、そーっとね?ゆっくり近づいて魚を誘導するんだ」
「ゆ、誘導ってどこに?」
「上流の方に誘導して。上流に誘導すれば川の流れに逆らうことになって、下流側から捕まえやすくなるはずだよ」
「な、なるほど」
本堂くんは頷いて、ゆっくりと魚に近づいていく。
ゆっくり、しかし確実に魚との距離を詰めていく。
だが、魚も近づいてくる気配を察知する。
「今だっ!」
「う、うわっ!」
「大丈夫、魚の進行方向は上流側だよ!落ち着いて、手をカップ状にして捕まえるんだ!」
「う、うわぁぁぁぁ!」
本堂くんは、魚を手で掴んだ。
しかし力が足りなかったのか、滑って魚を放してしまった。
「ご、ごめん。せっかく教えてもらったのに」
「そんな最初からはできないよ。でもこの調子なら捕まえられるんじゃないかな?」
「ありがとう、頑張ってみるよ」
「うん、頑張って」
少しは役に立てただろうか。
もとはと言えば、俺と山内くんの問題だし、巻き込んでしまった人はできるだけ助けたいとは思う。
魚の捕り方に詳しいわけではないけど、なんとなくは知識として知っていて良かった。
こういうところで役立つとはな。
「なにあれ、また男子たちバカなことやってない?」
「ウケる、子どもじゃないんだから」
俺たちの様子を遠くから見た軽井沢さん率いる女子に嘲笑されているようだ。
まあ、この光景を見たらそう思うのも無理はないか。
男子たちが集まって魚の捕り合っている様子は格好のいいものではないし、当然のことだ。
しかし、俺としては悪く思わない。
本堂くんや宮本くんはこの試験が折り返しを迎えても、前向きな様子は見えなかった。
でも、今の本堂くんたちは、この試験に微かな楽しさを見出しているように見えた。
軽井沢さんにはバカに見えるかもしれないけど、この魚捕りには意味があった。
俺はそう確信した。
「よっっしゃああああああ!」
結果は須藤くんが1位で20分で7匹の魚を捕まえた。
2位は池くんで、5匹とかなり善戦していた。
3位は俺で3匹、4位が本堂くんの2匹だった。
そして、最下位は0匹の山内くんだった。
山内くん以外の0匹だった子には俺がこっそり魚を譲渡した。
これは巻き込まれた男子への俺なりの配慮であり、山内くんの対策だ。
ここで一度負けを見ておけば、しばらくは不用意に好きな女子について探ってこないだろう。
「く、くそぉ…どうして捕れないんだよっ!この川おかしいんじゃねえの?!」
「そんなわけないだろ、春樹」
「調子が悪かったんだよ今日はっ!無効だ無効!」
「おいおい、負けたからってみっともないぞ」
山内くんの苦しい言い訳に須藤くんも呆れている。
だが、正直この後の展開は俺としてはどうでもいい。
あとは、男子たちで好きにやってもらおう。
「なあ、春樹。言えよぉ、いちおうルールなんだしよ。お前も同意しただろ?」
「んだよ、言えばいいんだろ言えば……長谷部だよ長谷部」
「え?」
山内くんの口から意外な名前が出てきたため、思わず足が止まった。
長谷部さん?どうして、山内くんと長谷部さんは接点があったのか?
「長谷部ぇ?どうして長谷部なんだよ?」
池くんも不思議に思ったのか山内くんに耳打ちする。
「いや、櫛田ちゃんはかわいいけどよ、レベル高いだろ?コミュ力も高いし。だから高い目標は捨てようと思うんだよ。その点長谷部って人付き合いとか苦手そうだろ?あれは少し押せばイケると思うんだよなぁ」
「長谷部かぁ、わかんねえなぁ」
須藤くんは首を傾げながら長谷部さんが彼女になった想像でもしているのだろうか。
「あーダメだ。俺にはやっぱ鈴音しかいねえわ。長谷部じゃないな」
「いーや、わかってねえな?水泳の時は拝めなかったがあれはなかなかだぜ。ボインボインだぜ」
「た、たしかに……」
池くんは山内くんの言葉に納得したように頷き始めた。
これを長谷部さんが聞いてしまったらとんでもないことになりそうだ。
幸い、軽井沢さんたちも興味を失っていたようで随分前に姿を消していたようだ。
これを女子の誰かにでも聞かれていたら、男子と女子に大きな亀裂が生まれていたことだろう。
長谷部さんはこういう男子は嫌っていそうだから、山内くんとはなるべく遠ざけるようにしないとな。
まあ、千秋さんとのことは山内くんにごまかせたので、とりあえずは良しとしよう。
しかし、そろそろ時間的にきついな。
千秋さんと朝にセックスをしたとは言え段々と『絶倫』の効果が出始めている。
どこかで、誰かと行為をしないと。
星之宮先生のもとに向かうか?いや、しかし試験の日数も残り3日ほどだ。
ここは誰か新しいターゲットを……
俺は頭の中で候補を立てる。
第一の候補として、一之瀬さん。
Bクラスのリーダーで社交的なため面会すること自体は難しくない。
しかし、あまり長時間の間一之瀬さんが不在になるとクラスによからぬ疑いを持たれる可能性がある。
今、無策で会いに行くことは得策ではないだろう。
それに、いくら一度行為をしたことがあるとはいえ、もう一度してくれるとも限らない。
とにかく、今は一之瀬さんを候補に入れないようにしよう。
第二の候補としては、長谷部さんか。
長谷部さんとはこの試験では話す機会も少なくないため、チャンスはある。
しかし、基本的に三宅くんといるため2人きりになるには少しハードルが高い。
それに、山内くんの話を聞いた後でこのようなことをするのは少し抵抗がある。
第三の候補としては……佐倉さんか。
いや、駄目だな。
佐倉さんは俺と千秋さんの関係を知っているし、それに佐倉さんの期待を裏切るような行為はしたくない。
論外だ。
しかし、そうなってくると新しいターゲットはなかなか候補がいない。
どうしたものかな。
「少しベースキャンプを離れるか」
ここにいても考えがまとまらないため、散歩をすることにした。
「今日で4日目。あと3日しかない。どうする?本当に間に合うのか?」
今までは千秋さんや園田さんに星之宮先生など、すでに肉体関係のある人がいたからここまで順調に進んできた。
しかし、この先はそうはいかない。
今までの調子では、試験中に10人は達成できないだろう。
「特別試験か。俺自身、変わらないといけないってことなのか」
今までの俺から……
「上條くんっ!」
考え事をしながら歩いていると、不意に背後から声をかけられた。
振り返ると、風に揺れるピンク色の髪が目に入る。
視線の先には、こちらを見つめる少女の姿があった。
「佐倉さん……」
「上條くんは何してるの?」
俺が1人で歩いているのを不思議に思ったのだろうか。どうやら、後を追ってきたらしい。
佐倉さんは足を止め、どこか不安げな表情で俺を見つめている。
「ちょっとした散歩ですよ」
「……そうなんですね」
佐倉さんは、何か言いたげな表情を浮かべている。
それでも、俺はあえて問いかけない。
問いかけてしまったら、俺の考えなど見透かされてしまうと思ったからかもしれない。
「私も……散歩、一緒にしてもいいですか?」
「……いいですよ」
駄目だ。歩幅を合わせてはいけない。
ここで寄り添うことは、きっと佐倉さんのためにならない。
それなのに、俺は期待を裏切るつもりなのか?そんなことを本当にしていいのか?
――いや、それでいい。
俺は、これまでの甘い考えを捨てる。
「佐倉さん……」
俺は足を止め、佐倉さんの隣に並ぶ。
そして、一歩一歩、歩幅を合わせるようにゆっくりと歩き出した。
時計の針に視線を落とす。
5分……4、3、2、1……
その瞬間、佐倉さんの身体に異変が訪れた。
佐倉さんの身体は火照るように熱を帯び、頬は紅潮して染まっていく。
そして、呼吸は荒くなり、自分の足で立つのがやっとの状態だった。
「佐倉さん、大丈夫?」
「あぅ……っ!」
佐倉さんはふらついて、バランスを崩した。
俺は慌てて肩に手を伸ばし、佐倉さんを支えた。
触れた瞬間、佐倉さんの身体から熱が伝わってくる。
だいぶ『発情』が回っているようだ。
佐倉さんはもともと、気が強いタイプではないから積極的に迫ってくることはないが、時間の問題だろう。
「上條くん……わたしっ!」
俺が佐倉さんを支えているのをいいことに、彼女はそっと顔を近づけ、俺の唇に自分の唇を重ねた。
最初は優しく触れるだけかと思ったが、次の瞬間、思いのほか積極的に唇を求めてきた。
「はぁっ……」
唇を離した佐倉さんの瞳からは、なにか決意のようなものが感じられた。
そして次の瞬間、佐倉さんは支えていた俺をそのまま地面に押し倒した。
眼鏡を外し、俺の顔を見つめると、ためらうことなく唇を近づけてくる。
次は短いキスでは終わらない。唇が触れたまま交わり、数十秒にも及ぶ長い口づけへと変わっていく。
お互いの味を確かめるように舌が絡み合い、唾液が混じり合う。
「あぁっ……ふふっ」
「んっ…佐倉……さんっ!」
佐倉さんはキスだけでは物足りなかったのか、さらに手を伸ばす。
その手は迷うことなく、俺の欲望へと触れ、静かにチャックを下ろし始める。
ここから俺と佐倉さんは、お互いの身体を貪り合っていく。
補足
松下千秋
好感度 99→99
評価 とうとう佐倉に寝取られてしまったな。
発情条件進捗
条件1 達成
条件2 達成
条件3 今回の発動回数1
綾小路清隆
好感度 57→57
評価 今回は一度も出番がなかったのう。
発情条件進捗
条件1 達成
条件2 達成
条件3 今回の発動回数0
堀北鈴音
好感度 27→27
評価 今回も出番なしじゃな。
発情条件進捗
条件1 未達成
条件2 未達成
条件3 未達成
櫛田桔梗
好感度 50→50
評価 今回はあまり出番はなかったな。
発情条件進捗
条件1 達成
条件2 達成
条件3 今回の発動回数0
佐倉愛里
好感度 63→82
評価 今回でついに関係が進んだようじゃのう。
発情条件進捗
条件1 達成
条件2 達成
条件3 未達成
特別条件 今回の達成回数1
三宅明人
好感度 35→35
評価 まあ、今後に期待じゃな。
発情条件進捗
条件1 未達成
条件2 未達成
条件3 未達成
長谷部波瑠加
好感度 27→27
評価 今回は酷い言われようじゃったな。
発情条件進捗
条件1 未達成
条件2 未達成
条件3 未達成
高円寺六助
好感度 0→0
評価 絶賛バカンス満喫中じゃ。(前回と同文)
発情条件進捗
条件1 未達成
条件2 未達成
条件3 未達成
須藤健
好感度 55→58
評価 微かに好感度アップじゃ。
発情条件進捗
条件1 達成
条件2 達成
条件3 未達成
池寛治
好感度 35→40
評価 今回はなかなかファインプレーじゃったな。
発情条件進捗
条件1 達成
条件2 未達成
条件3 未達成
山内春樹
好感度 15→10
評価 好感度が下がったようじゃ。
発情条件進捗
条件1 達成
条件2 未達成
条件3 未達成
外村秀雄
好感度 42→42
評価 なにもなかったのう。
発情条件進捗
条件1 達成
条件2 達成
条件3 未達成
平田洋介
好感度 99→99
評価 今回も出番なしじゃな。
発情条件進捗
条件1 達成
条件2 達成
条件3 未達成
軽井沢恵
好感度 8→8
評価 軽井沢にはその他大勢にしか見えとらんな。
発情条件進捗
条件1 未達成
条件2 未達成
条件3 未達成
佐藤麻耶
好感度 63→63
評価 なにもなくてつまらないのう。
発情条件進捗
条件1 達成
条件2 達成
条件3 未達成
篠原さつき
好感度 60→60
評価 もう少しくらい関わりを持った方がいいのではないか?
発情条件進捗
条件1 達成
条件2 達成
条件3 未達成
森寧々
好感度 15→15
評価 言うことがないのう。
発情条件進捗
条件1 未達成
条件2 未達成
条件3 未達成
園田千代
好感度 88→88
評価 ただの都合のいい女に成り下がってそうじゃな。
発情条件進捗
条件1 達成
条件2 達成
条件3 今回の発動回数0
石倉賀代子
好感度 20→20
評価 園田がいなければ出番もなしじゃな。
発情条件進捗
条件1 達成
条件2 未達成
条件3 未達成
茶柱佐枝
好感度 15→15
評価 担任よりも星之宮の方が出てるようじゃな。
発情条件進捗
条件1 未達成
条件2 未達成
条件3 未達成
一之瀬帆波
好感度 99→99
評価 そろそろ出番が欲しいところじゃな。
発情条件進捗
条件1 達成
条件2 達成
条件3 今回の発動回数0
白波千尋
好感度 10→10
評価 今回もBクラスは出番がなかったのう。
発情条件進捗
条件1 未達成
条件2 未達成
条件3 未達成
小橋夢
好感度 55→55
評価 そう頻繁に出番がくるものではないぞ。
発情条件進捗
条件1 未達成
条件2 未達成
条件3 未達成
特別条件 今回の達成回数1
星之宮知恵
好感度 60→60
評価 都合のいい女Part2じゃな。
発情条件進捗
条件1 未達成
条件2 達成
条件3 未達成
特別条件 今回の達成回数0
葛城康平
好感度 20→20
評価 陰口を言われていたようじゃな。
発情条件進捗
条件1 未達成
条件2 未達成
条件3 未達成
戸塚弥彦
好感度 5→5
評価 戸塚はかつらを被っているのか?
発情条件進捗
条件1 未達成
条件2 未達成
条件3 未達成
スキル『発情』発動条件
条件1 対象と連絡先を交換している
条件2 対象に触れられた回数と触れた回数の合計が5回以上
条件3 対象の好感度が50を超えている
条件4 対象と室内で2人きりになる
条件5 対象の手を握る
条件1から条件4を満たしたうえで条件5を行うことでスキル『発情』が発動する
スキル『発情』で発情した相手は30分間の間発情し続ける。
→
スキル『発情』発動条件(熟練度2)
条件1 対象と連絡先を交換している
条件2 対象に1度触れるかつ触れられている
条件3 対象の好感度が40を超えている
条件4 対象の両者が意識のある状態で10分以上2人きりになる
条件1から条件3を満たしたうえで条件4のシチュエーションが発生することでスキル『発情』が発動する
スキル『発情』で発情した相手は30分間の間発情し続け、自分の意思に反して相手に行為を迫るようになる。
→
スキル『発情』発動条件(熟練度3)
条件1 対象と連絡先を交換している
条件2 対象の好感度が40を超えている
条件3 対象の両者が意識のある状態で5分以上2人きりになる
条件1から条件2を満たしたうえで条件3のシチュエーションが発生することでスキル『発情』が発動する
スキル『発情』で発情した相手は10分間の間発情し続け、自分の意思に反して相手に行為を迫るようになる。以降対象が使用者に対して性的興奮を感じやすくなる。
→
スキル『発情』発動条件(熟練度4)
条件1 対象と連絡先を交換している
条件2 対象の好感度が40を超えている
条件3 対象の両者が意識のある状態で5分以上2人きりになる
特別条件
スキル保持者が対象にセックスをしたいという感情を2人きりの状態で抱いた場合、条件1、2、3を無視して発動させることができる。
条件1から条件2を満たしたうえで条件3のシチュエーションが発生する、または特別条件を満たすことでスキル『発情』が発動する
スキル『発情』で発情した相手は10分間の間発情し続け、自分の意思に反して相手に行為を迫るようになる。以降対象が使用者に対して性的興奮を感じやすくなる。
スキル『絶倫』
スキル保有者の性欲が極大的に上昇する。
スキル『絶倫』(熟練度2)
スキル保有者の性欲が極大的に上昇する。
一日に二回以上セックスしなければ自分に『発情』の効果が付与される。
スキル『絶倫』(熟練度3)
スキル保有者の性欲が極大的に上昇する。
一日に二回以上セックスしなければ自分に『発情』の効果が付与される。(二回はそれぞれ別人である必要がある)
今回は佐倉の回でした。
原作では、なかなか不遇な扱いを受けていたので、救済したいとは思ってます。
いちおう。
17話は来週には投稿したいと思っています。
これからは投稿頻度上げていくのでよろしくお願いします!
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