月曜日に投稿するつもりが遅くなってしまいました。
申し訳ございません。
週1~2本と意気込んでいた私はどこへ行ってしまったのでしょうか……
今週はいろいろと官能小説を読んで書き方について学んでいたのですが、少しは文章力が上がってるのか?
自分では、よくわかりませんが少しずつスキルアップしていきたいと考えています。
1
俺の鞄の中には、間違いなく軽井沢さんの下着であろうものが入っていた。
無実を証明するために開いた鞄には、決定的な証拠が収められていた。
これは間違いなく、誰かが俺に罪をなすりつけるために仕込んだものだ。
俺は冷静に状況を分析する。
なぜ、俺の鞄に軽井沢さんの下着を入れた?
いったい何のために?
考えられる理由はいくつかあるが、一番可能性が高いのは俺に恨みを持った誰かが、俺の信用をなくすために仕組んだ可能性だ。
この試験中、俺がクラスの中で妬まれたり、恨みを買ったりする可能性がある人物は限られている。
おそらく、山内春樹くん。
彼くらいだろう。
昨日、佐倉さんの件で山内くんとは揉めたばかりだ。
山内くんの性格を考えれば、そのことで俺に一方的な恨みを抱くことも十分に考えられる。
山内くんは感情的なところがあるし、俺に対して敵対心を持っているなら、このタイミングで俺を嵌めるために動いた可能性は高いと言えるだろう。
だとしたら、この犯行は計画的なものではなく、衝動的なものだ。
しかし、本当に山内くんなのだろうか?
確かに、彼は衝動的に行動するタイプだ。昨日の佐倉さんの件を考えても、俺に対して負の感情を持っていてもおかしくはない。
だが、女子の下着を盗むというのは少し引っかかる。
誰かに見つかれば一発でアウト。
俺に罪をなすりつけるためとはいえ、下着を盗むというのは、リスクが大きすぎる。
しかも、ただ俺を嵌めるだけなら、もっと他に方法があるはずだ。
本当に俺を嵌めたのは、別の人物?
男子が女子の鞄に近づくのは容易ではない。
確かに、綾小路くんが伊吹さんの鞄を開けていた前例はある。
だけど、通常この試験中に男子が女子の鞄を物色するのは、非常にリスクが高い行為だ。
いくら早朝だとしても、異性の荷物を探るというのは警戒されやすい。
特に軽井沢さんのように、男子に対する警戒心が強いタイプの人物なら、不審な動きをしていればすぐに気づくはずだ。
それならどうして、軽井沢さんの下着を盗み、それを俺の鞄に入れることができたのか?
犯人は女子の中にいる。そう考えるのが自然だ。
そして、考えられる可能性は2つ。
軽井沢さんに恨みのある人物が、嫌がらせのために下着を盗んだ。
伊吹さんが、Dクラスを混乱させるために盗んだ。
このどちらかだろう。
しかしこうなれば、答えは1つだ。
犯人は、伊吹さんだ。
いくら軽井沢さんに恨みを持っていたとしても、クラスポイントに影響を及ぼすこの試験で、わざわざ軽井沢さんを陥れるようなことをするだろうか?
Dクラスの一員である以上、試験の最中に内部崩壊を引き起こすような行動は、普通しない。
だが、伊吹さんは違う。
伊吹さんはもともとCクラスから追い出され、Dクラスに身を寄せている立場だ。
そして俺と綾小路くんの見立てでは、伊吹さんはCクラスからスパイとして送り込まれたと考えられる。
もしそうだとすれば、Dクラスに亀裂を入れるために動くことは十分に考えられる。
この下着盗難事件で男子と女子の間で抗争が生まれるのは必然だからな。
伊吹さんなら、それをやる動機がある。
だが、それがわかったところで、俺の今の状況は変わらない。
確かに、伊吹さんが犯人である可能性は極めて高い。
しかし、ここでそれを証明する手段は、俺には持ち合わせていない。
今この場で、犯人が伊吹さんだ。と指摘したところで、証拠がなければただの言い逃れにしかならない。
むしろ、今の状況では下手な言動をすれば、余計に疑われるリスクの方が高い。
ここは一旦、冷静に対処するしかないか。
あとで千秋さんに何か決定的な証拠を探してもらえれば、俺の信用も取り戻せるだろうが……
それまでの間、俺はどう立ち回るべきか。
まずはこれ以上、無駄に言い訳をしないこと。
そして、感情的にならず、状況を冷静に受け入れる態度を見せること。
疑われている状況は変わらないが、それ以上疑いを深める行動は避けるべきだ。
俺はゆっくりと息を整え、目の前のクラスメイトたちを見渡す。
篠原さんが俺の鞄と顔を交互に見やりながら、眉をひそめて言う。
「上條くん……本当に上條くんがやったの? なんとか言ってよ」
俺は心の中でゆっくりと息を整え、できるだけ冷静に答える。
「……俺はやってないよ」
篠原さんは俺の目をじっと見つめている。
「でも……鞄の中に入ってたのは事実だよね?」
「そうだね。でも、俺が入れたわけじゃない」
「じゃあ、誰かが入れたってこと?」
「それしか考えられないよ。俺が軽井沢さんの下着を盗むと思う?」
俺は篠原さんの目をまっすぐに見つめ、訴えかけるように言った。
「それは……上條くんが盗むとは思えないけど……でも――」
言葉を詰まらせたまま、完全には納得していない様子だ。
無理もない。
いくら俺がやっていないと言っても、現実として俺の鞄の中から軽井沢さんの下着が出てきたという事実がある。
それだけで、疑いを完全に晴らすことはできない。
「俺を疑うのは仕方ない。でも、俺はやってない……それは信じてほしい」
俺の言葉に、篠原さんはしばらく沈黙した。
周りの女子たちも、それぞれ複雑な表情を浮かべている。
誰もが混乱し、どう判断すべきか決めかねているのが伝わってきた。
だが、この場で俺を全面的に信用してくれる者は少ないだろう。
「……無理」
小さく、しかし拒絶の意思が込められた言葉が、はっきりと俺の耳に届いた。
「無理むりむりむり……こんな下着泥棒の言ってることなんて信じられない」
その声の主は下着を盗まれた本人、軽井沢さんだった。
テントから出てきた軽井沢さんは、目元にうっすらと涙を滲ませていた。
だが、それ以上に怒りが前面に立っていた。
「……最低。人の下着を盗んでおいてよくそんなこと言えるよね」
俺を睨みつける軽井沢さんの目には、純粋な嫌悪と軽蔑が浮かんでいる。
俺を殺してやる。そんな目をしていた。
「……俺はやってない」
それでも、俺は冷静に否定するしかなかった。
だが、軽井沢さんはそれを聞く耳を持たない。
「ふざけないでよ!だったら誰がやったっていうの!どうしてあんたの鞄から出てくるの!?ねぇ、答えて!」
怒りに震える声。
俺が何を言おうと、軽井沢さんは聞き入れないだろう。
周囲の空気が張り詰める。
女子たちは軽井沢さんに同情し、男子たちもどう反応すべきかわからないまま沈黙している。
そんな沈黙を、1人の女子が破った。
「下着が一枚盗まれたくらいで、見苦しいわね」
「は、はぁ?!」
軽井沢さんが怒りに満ちた表情で振り返る。
その視線の先には、黒い髪をなびかせる堀北さんの姿があった。
堀北さんは相変わらず冷静な表情で、腕を組みながらこちらを見つめている。
「さっきから感情に任せすぎよ。もっと視野を広く状況を見れないの?」
「なっ……!?」
軽井沢さんの顔が怒りで赤くなる。
「なにそれ!? 私の下着が盗まれたのに、なんでそんなこと言われなきゃいけないのよ!?」
「あなたの、その被害者意識が、問題の本質を見えなくしているのよ」
堀北さんは淡々と言い放つ。
「そもそも、上條くんが本当に下着を盗んだ犯人なら、あまりにも間抜けすぎるわ」
堀北さんは俺の鞄に視線を落としながら、静かに続ける。
「もし彼が犯人なら、証拠の入った鞄を自ら最初に開けるような真似をするかしら?」
その指摘に、軽井沢さんは言葉を詰まらせた。
「そ、それは……あんたが言ったみたいな言い訳をするためじゃないの?」
「違うわね」
堀北さんは即座に否定する。
「もし彼がそんな愚か者なら、もっと前に自分から言い出すべきだもの」
場の空気が変わる。
俺が本当に犯人なら、こんなに堂々と自ら進んで鞄を開けるなんてリスクのある行動をするはずがない。
むしろ、犯人ならできるだけ疑いを避けるために、荷物検査の流れに抵抗するはずだ。
堀北さんは、そこを突いた。
「それに、上條くんは何も盗んでいないのなら、鞄の中にそんなものが入っているなんて知るはずがないわ。つまり、彼が最初に名乗り出たのは潔白を証明するため。これに嘘偽りはないはずよ」
「……っ!」
周囲の女子たちも、それまでの明確な敵意が少しずつ薄れていくのが感じられる。
堀北さんの言葉は、俺を直接的に擁護するものではない。
だが、俺が犯人である可能性は低いという事実を論理的に示してくれた。
これは俺が言っても意味がなかった。
自分でこんなの間抜けすぎる。と言っても、言い訳としか受け取られなかっただろう。
堀北さんが、女子が言ってくれたからこそ意味があった。
男子が言えば自己弁護にしかならないが、女子が冷静に指摘することで、クラスの女子たちにも納得感を与えることができる。
堀北さんには感謝しないとな。
堀北さんの冷静さと分析力がなければ、俺の立場はさらに悪化していたかもしれない。
「じゃ、じゃあ誰が犯人なのよ?」
軽井沢さんが苛立ちを隠せないまま、声を上げる。
軽井沢さんにとって今、最も重要なのは、下着を盗んだ犯人を突き止めることだ。
だが――
「それは、今あるものだけでは判断できないわね」
堀北さんが冷静に答える。
軽井沢さんは不満げな表情を浮かべるが、確かに今の時点では決定的な証拠がない。
ここで無理に誰かを犯人に仕立て上げても、確証がない限り、ただの言いがかりになってしまう。
それはあってはならないことだ。
伊吹さんが真犯人であることは解っているが、何か証拠がなければ……
「軽井沢さん、このまま話を続けても犯人は見つからないんじゃないかな。僕も上條くんが犯人とは思えない。だけど、軽井沢さんの下着を盗んだ犯人は僕が絶対に見つけるよ。いちおう、彼氏だからね」
「……平田くん」
軽井沢さんはその言葉に、ゆっくりと怒りを沈ませていく。
彼氏である平田くんにそう言われたことで、少しずつ落ち着きを取り戻し始めたのだろう。
クラス全体の張り詰めていた空気も、徐々に和らいでいくのを感じる。
だが――
「でも、上條くんは盗んでないのかもしれないけど……やっぱり怖い。 下着を盗んだ犯人かもしれない人と同じ空間で生活するなんて耐えられない」
静かになりかけていた空気が、再び緊張感を帯びる。
「そんな……じゃあ上條くんはどこで生活すればいいんだい?」
平田くんが困惑しながら、軽井沢さんの言葉を止めようとする。
「だから、上條くんには離れて生活して欲しいの」
軽井沢さんはきっぱりと言い切った。
「それは駄目だよ、軽井沢さん!」
平田くんの声が、さっきよりも強くなる。
「それは駄目だよ軽井沢さん!点呼もあるし、それに犯人と決まっていない上條くんに、こんなことを強いるのは間違ってる!」
「でも……でも……!」
軽井沢さんは言葉を詰まらせながら、唇を噛みしめる。
「平田くんは、私の彼氏でしょ?」
軽井沢さんの声が、小さく震える。
「どうして……味方してくれないの?」
軽井沢さんは平田くんをじっと見つめている。
その瞳には、期待と不安が入り混じっていた。
「……でも、僕は……軽井沢さんの彼氏である前に、クラスのみんなを――」
軽井沢さんの表情が一瞬、揺らぐ。
彼女の目が大きく見開かれた。
駄目だ。このままだと軽井沢さんと平田くんの関係に亀裂が入ってしまう。
今は、平田くんが男子と女子との関係を取り持っている。
もし、ここで二人の間に決定的な溝ができてしまえば、この試験でクラス全体が協力し合うことは不可能になってしまうだろう。
ここは、腹をくくるしかない。
「平田くん、それ以上は駄目だよ」
俺は静かに平田くんの言葉を遮った。
「今の軽井沢さんは不安定な状態だと思う。だからこそ、彼氏の平田くんが支えてあげないといけない」
「……上條くん……でも、それだと上條くんが!」
「俺のことは気にしないで。 軽井沢さんの気持ちもわかるから。俺一人が我慢すれば済む話だよ。それに、試験も残り2日と少し。これくらい、大したことないよ」
「駄目だよ、そんなこと……」
平田くんの声には、俺を庇いたいという気持ちがはっきりと込められていた。
でも、俺は続ける。
「それに、俺は軽井沢さんのためだけに言ってるんじゃないよ」
俺はクラス全体を見渡しながら、言葉を紡ぐ。
「軽井沢さん以外の女子も、口に出さないだけで俺に疑問を持っている生徒は多いと思う」
静かな沈黙が流れた。
誰も、肯定も否定もしない。
だが、それこそが答えだ。
少なからずこの場で俺は完全な白ではない。
「だから、俺は自分のために、誠意を示すつもりだよ」
俺がこのまま無理に居座っても、女子たちの不信感は消えない。
そのせいで試験全体に悪影響が出るのなら、俺が譲歩するべきだ。
何よりも俺は、自分の無実を証明するために動かなくてはいけない。
このまま無理に残って、女子たちの不信感の中で生活するよりも、自由に動ける状況を作る方がはるかに合理的だ。
これは、俺の意思で選んだことだ。
俺は静かに、平田くんと軽井沢さんを見つめ、覚悟を決めた。
「点呼の時だけ、ここに戻ってくるよ。体調や衛生面には気をつけるし、リタイアはしないと約束する。クラスの足は引っ張らないよ」
俺は静かに、しかしはっきりとした口調で言い切った。
「上條くん、待って!」
平田くんの声が背後から響く。
だが、俺は振り返らない。
「平田くん。君にしかできないことがあるはずだよ。俺を追うことじゃない、わかるでしょ?」
俺の言葉に、平田くんは黙り込む。
今のDクラスには、平田くんが必要だ。
平田くんがここで俺を追ってしまえば、クラス全体のバランスが崩れる。
だからこそ、俺は1人で動く。
俺は背後の視線を感じながら、一歩、また一歩と森の中へ足を踏み入れていった。
そして、静かにDクラスのベースキャンプを後にした。
2
ベースキャンプを離れて、どれくらい経っただろうか。
おそらく、まだ半日も経っていない頃だろう。
太陽の位置はまだ高く、森の中に差し込む光が俺の影を長く伸ばしている。
俺は無人島を駆け回り、なんとかここ2日は食べていけるだけの食料を手に入れた。
学校側が育てたであろう果実や食べられそうな草、決して豪華とは言えないが、飢えをしのぐには十分だろう。
水はクラスのベースキャンプの下流部分のものをこっそり使わせてもらった。
下流部分はあまり衛生上よくはないかもしれないが、スキルのおかげで俺の身体は普通よりも頑丈になっているし、問題はないだろう。
ここまではいい。
食料も確保できたし、水も問題ない。
だが、今俺がやるべきことは真犯人の正体を暴くこと。
伊吹さんの決定的な証拠を抑える。これが先決だ。
さて、どうする?
まずは伊吹さんの様子を窺うことからだ。
伊吹さんが、いつどう動いているのか。
その行動を追えば、何かしらの手がかりが掴めるかもしれない。
なら、千秋さんと一度接触をするか?
千秋さんなら、俺がクラスにいない間でも伊吹さんの様子を探ることはできる。
だが、せっかく俺は1人で動けるんだ。
ここは、俺1人で行こう。
千秋さんを巻き込めば、余計なリスクを負わせることになるし、俺は1人だからこそ、誰にも邪魔されずに証拠を掴むことができる。
伊吹さんはCクラスから来たこと、そしてもともとの性格からして、Dクラスの中で少し浮いている存在だ。
確かに櫛田さんが積極的に伊吹さんのことを誘ってはいるが、それでも伊吹さんが心を開いてはいないだろう。
そのため基本的に1人でいることが多いだろう。
それなら、いくらでも付け入る隙はありそうだ。
ただし、問題もある。
俺が今、伊吹さんに会う理由がない。
しかも、俺は今クラスを離れている身だ。
もし俺がここで突然伊吹さんに会いに行けば、不自然に思われ、警戒されてしまう可能性が高い。
自然な形で、伊吹さんと接触する方法を考えなければならない。
伊吹さんはベースキャンプの中では1人でいることが多いが、1人でベースキャンプの外に出ることは少ない。
あるとしてもCクラスのスパイとして暗躍している時だけだろう。
そうなると、俺が伊吹さんと1対1で接触するのは難しいかもしれない。
ベースキャンプの外で1人行動しているのなら、水場や食料調達の際に偶然を装って接触することも可能だった。
しかし、伊吹さんはほとんどベースキャンプから離れないため、その方法は使えない。
無理に外へ誘い出そうとすれば、逆に警戒されるだけだ。
なら、点呼の時にクラスに戻る。
そのタイミングしかない。
俺は点呼のために必ずDクラスのベースキャンプに戻る。
その時に自然な形で接触すれば、不審がられることもないだろう。
そこで、伊吹さんの反応を見る。
俺は次の点呼のタイミングを狙うことにした。
3
上條くんがいなくなった後のベースキャンプは前より少し静かになっていた。
軽井沢さんの下着騒動で、男子と女子の間で口論があった反動なのかもしれない。
少なくとも、あの一件以来、クラスの雰囲気はどこかぎこちなくなっていた。
私は、そっと呟く。
「……上條くん」
私は、上條くんが軽井沢さんの下着を盗んだとは思っていない。
だけど、あの場で私が上條くんを庇う発言をするのは、よくないと判断した。
私が上條くんを庇えば、女子から余計な疑念が生まれてしまう。
上條くんが自分で盗んでいないのなら他に軽井沢さんの下着を盗んだ犯人がいる。
それが男子であれ、女子であれ上條くんを庇えば、犯人からは警戒されてしまうだろう。
そうなれば、余計に面倒なことになる。
だから、私はあの場で何もできなかった。
上條くんは、私の考えをわかってくれていたかな?
それとも、私の沈黙に落胆したのかな?
答えはわからない。
でも、今の私はやらなきゃいけない。
上條くんの疑いを晴らすために、私にできることを探す。
クラスを観察してみる。
騒動があってから、特に怪しい行動をしている人は見当たらない。
男子たちはまだぎこちなさを残しているけど、普段通りの会話をしている。
女子たちは、表面上は普通に見えるけど、完全に気を許しているわけではなさそうだった。
犯人は誰?
少しでも手がかりを掴むためにも、まずは軽井沢さんに話を聞いてみるべきかな。
彼女自身、盗んだ人の心当たりを持っている可能性もある。
軽井沢さんは、上條くんがベースキャンプから立ち去った後も、不機嫌そうではあった。
だけど、平田くんがなんとか抑えてくれたおかげで、大事には至らずに済んでいる。
そんな軽井沢さんの近くに行き、話を聞いてみることにした。
「軽井沢さん、ちょっといいかな?」
私が声をかけると、軽井沢さんは顔を上げて目を向ける。
「なに、松下さん?」
「朝のこと。軽井沢さんの下着を盗んだ人、私も許せなくて……」
私は、単に同情するのではなく、自分も同じような怒りを持っていると伝えた。
そうすることで、彼女に共感を持たせることができると考えたからだ。
「私にこんな辱めを受けさせて……本当に許せない」
軽井沢さんの強い怒りの声を聞いて、私は静かに頷いた。
「そうだよね、私も許せなくて、犯人のこと調べようと思ってるの。」
少しずつ、軽井沢さんの心を開かせる。
「それで、軽井沢さんに犯人の心当たりとかないかなって思って」
私は軽井沢さんの表情を観察しながら、できるだけ自然な口調で尋ねる。
「そっか、それで……」
軽井沢さんは少し考え込むような仕草を見せた。
私はさらに探りを入れるために、試しに聞いてみる。
「やっぱり、下着が鞄から出てきた上條くん?」
私が尋ねると軽井沢さんは、さっきよりも迷うような表情を見せた。
「上條くんも怪しかったけど、今は違うんじゃないかなって思ってる」
その答えに、私は少し驚く。
「どうして?」
上條くんにベースキャンプから去るように言ったのは、軽井沢さん自身だった。
それなのに、ここにきて違うかもと思い始めた理由はなんだろう?
心変わりでもあったのかな?
「上條くんのことは正直信用してなかった」
軽井沢さんは、うつむきながら静かに言う。
「でも、私が上條くんを拒絶したら、上條くんはあっさりクラスから出ていっちゃった」
その言葉に、私は少し意外な気持ちを抱いた。
「本当はそこまでするつもりはなかったの」
軽井沢さんの声には、少し戸惑いが混じっていた。
「ただちょっと脅すつもりだった。他の男子を牽制するために……」
軽井沢さんは本気で上條くんを追い出すつもりはなかった。
ただ、男子への影響も考えて強い態度を取っただけ。
だけど、そこで上條くんが思った以上にあっさりと去ってしまったことで、軽井沢さんの中で違和感が生まれた。
軽井沢さんの中で上條くんが犯人の候補にないなら、少しは正確な答えが聞けるかもしれない。
「そうなんだ。じゃあ、上條くん以外だとどうかな?心当たりとかある?」
私は軽井沢さんの様子をじっと伺う。
「心当たり……ううん、全然」
軽井沢さんは首を横に振る。
「正直、男子の誰かなんて見当もつかない。男子って変態ばっかだし」
少し苛立ちを込めた口調だけど、表情を見る限り、特定の誰かを疑っている様子はない。
でも、最初から犯人を男子と決めつけていることを考えると、やっぱり感情で動いている面が強い。
確かに、池くんや山内くんあたりなら、一時的な感情で下着を盗む可能性はゼロじゃないけど、最初から女子を犯人の候補から除外しているのは、視野が狭いと言わざるを得ない。
「女子が盗んだ可能性はないのかな?」
私はできるだけ自然に、意外そうな口調を交えて問いかけた。
軽井沢さんは、一瞬驚いたように私を見た後、戸惑ったような表情を浮かべる。
「女子が?どうして……」
彼女の反応を見る限り、本気でそんな可能性は考えていなかったようだ。
私は、ここで一気に女子への疑念を抱かせるのは避けることにした。
不自然に女子だと決めつけるような発言をすれば、逆に警戒される。
だから、あくまで軽く探りを入れる形で続ける。
「もし男子が犯人なら、それなりにリスクが高いと思うんだよね」
私は冷静な口調で言った。
「男子が女子の鞄を物色するのって、普通ならすぐにバレるリスクがあるよね?もし誰かに見られたら、一発でアウトだし……」
軽井沢さんは、まだ納得していない様子だったが、少し考えるような表情を見せる。
「……でも、男子ってそういうの気にしないでやるんじゃないの?」
それでも軽井沢さんはまだ女子を疑おうとはしない。
男子への偏見を拭えてはいない。
「逆に、女子ならどう?」
「えっ?」
「もし女子が犯人なら、荷物を触るのも自然だし、盗むチャンスも多いよね?」
「もちろん、私は女子を疑いたいわけじゃないよ。でも、もし本当に犯人を見つけたいなら、いろんな可能性を考えてみてもいいんじゃない?」
軽井沢さんの目が、一瞬揺れた。
少しずつ、彼女の思考に女子が犯人の可能性も入り始めている。
「昨日の夜のこととか覚えてないかな?誰の近くで寝てたかとか、あとは軽井沢さんのテントで入口に近かった人とか」
「え?う、うーん……誰だったかな?」
軽井沢さんは、あまり意識していなかったのか、少し考える素振りを見せる。
やっぱり、テントの配置や誰がどこで寝ていたかなんて、そこまで気にしていないのかもしれない。
しばらくして、彼女は口を開いた。
「昨日近くで寝てたのは……園田さんと石倉さん?あとは、櫛田さんと
私は小さく頷く。
「そっか。でも、軽井沢さんと仲のいい友達が盗るわけないし、他に思い当たることとかある?」
軽井沢さんは、少し考えた後、小さく首を振る。
「ううん……特に変なことはなかったと思うけど」
やっぱり、軽井沢さんからは期待できるような情報は出てこないか。
今回のことからも、軽井沢さんが冷静に分析できるような性格ではないのは明らかだ。
これ以上聞いても無駄かな。
「ありがとう、話すのも辛かったと思うのに、話してくれてありがとう。」
私は軽井沢さんにお礼を言って、自然に話を切り上げる。
すると軽井沢さんは、少しほっとしたような表情を見せた。
「ううん、私も松下さんに話せて、少しすっきりした。」
そう言って微笑む彼女を見て思った。
軽井沢さんは扱いやすいけど、上手く使うのは難しそうだね。
次は、軽井沢さんの近くで寝ていた櫛田さんに話を聞いてみようかな。
櫛田さんなら、もう少し具体的な情報を持っているかもしれない。
私は軽井沢さんと別れ、櫛田さんのもとに向かうことにした。
櫛田さんは王さんたちとお昼の準備をしていた。
私は、彼女の手が空いたタイミングを見計らって、さりげなく話しかける。
「櫛田さん、ごめん。ちょっと聞きたいことがあって……」
櫛田さんは手を止め、にこやかに振り向いた。
「松下さん、どうしたの?」
さて、どう切り出すか。
「軽井沢さんと話しててちょっと気になったんだけど、昨日テントの入口の近くって誰が寝てたのかな?」
私はできるだけ自然な口調を装って、さりげなく問いかける。
「テントの入口? うーん……」
櫛田さんは少し考えた後、ぽんと手を打った。
「確か伊吹さんが一番近かったと思うけど……そうだったよね、王さん?」
隣にいた王さんも静かに頷く。
伊吹さんが最も疑わしい位置にいた。
以前、上條くんとも伊吹さんは怪しいと話したことがある。
もしこの事件の犯人も伊吹さんだとしたら、それは彼女がCクラスのスパイである証拠にもなる。
つまり、Dクラスの内部崩壊を狙った計画的な行動だったということ。
もしそうなら、できるだけ早い対処が必要になりそうだね。
「そうなんだ」
私は軽く相槌を打ちながら、冷静に次の手を考える。
今、この場で伊吹さんを問い詰めるのは得策ではない。
彼女は自分が疑われていると察すれば、証拠を隠すか、言い逃れをするだろう。
むしろ、今の情報を持って上條くんと共有して、慎重に動くべきかな。
点呼の時に、上條くんはベースキャンプに戻ると言ってたから、次の点呼で、上條くんと話す機会を作る。
その時に、このことを伝えて、どう動くかを決める。
それが良さそうかな。
4
上條遥。
この試験で仲良くなった男子。
優しくて、少し変わったところもあるけど、頼りになるなって思ってた。
でも今朝、上條くんの鞄から軽井沢さんの下着が出てきた。
それを見た瞬間、私の中には嫌悪感と失望という感情が真っ先に湧いてきた。
今までの上條くんの姿は偽りだったの?
結局、上條くんもただの欲望の塊だったの?
そんな疑念が一気に膨れ上がり、その時、私は本気で上條くんに敵意を向けていた。
だけど、堀北さんの話を聞いて、確かにおかしいとも感じた。
軽井沢さんの言うように、わざと最初に自分の鞄を開けることで、「犯人ならこんなことしない」と言い訳をしたかったのかもしれない。
でも、そうだとしたら、堀北さんの言ったように、本当に犯人なら、もっと早く自分で言い訳をしていたはず。
だとしたら上條くんは犯人じゃない?
でも、それでも私は簡単に上條くんのことを、「白」だと決めることはできなかった。
一度悪いイメージを持ってしまうと、なかなか印象を戻すことができない。
私の悪い癖。
昨日まで、あんなに楽しく話せていたのに。
昨日までは、上條くんを信用できる人と思っていたのに。
今は、どうしてこんなに疑ってしまうんだろう?
もう、何を信じたらいいのかな。
「長谷部、そんな暗い顔してどうしたんだ?」
みやっち。
三宅くんが、私のことを心配してか声を掛けてきた。
正直、今は男子と話す気分じゃなかった。
「放っておいて」
だから私は冷たく言い放つ。
でも、みやっちは引かなかった。
むしろ、私にさらに近づいてきた。
「放っておけるかよ。」
私の隣に座ると、勝手に話し始める。
「上條のことか?」
「……うん」
私は、みやっちの強引さに押される形で、話し始めていた。
「長谷部は、本気で上條がやったって思ってるのか?」
「……」
私は、言葉を詰まらせる。
わからなかった。
男子の感情なんて、正直よくわからない。
上條くんにやましいことがあったのか、それとも本当に何もしていないのか。
私が、信じたいのか、それとも信じたくないのか。
それすらもわからなくなっていた。
「わかんないよ!」
私は少し大きな声を出してしまった。
みやっちは驚いたように私を見た。
「自分の中で、考えがまとまらない。はるるんのことは信じたいけど、でも……」
声が震える。
昨日まで、私は上條くんと普通に笑って話していた。
でも今は、彼を疑う気持ちが完全に消えない。
私は、どうしたいんだろう?
「俺も長谷部と同じで、上條とは付き合いは短い。でも、上條はこんなことをするような奴じゃない。それだけはわかる」
みやっちは、力強く言った。
その言葉は、根拠のあるものじゃない。
でも、みやっちは信じていた。
上條くんはそんなことをする人間じゃないと。
「本当にわからないのか?」
みやっちは、まっすぐ私を見つめた。
「この試験中、短い期間だが、上條と過ごした。その時間は嘘じゃない。お前の中の上條は、こんなことをする奴なのか?」
私の目が揺らいだ。
確かに、私は上條くんと多くの時間を過ごしたわけじゃない。
でも、短い時間でも彼の人となりを知る機会はあった。
上條くんは、そんなことをするような人だった?
「目を背けようとするな。上條のことをちゃんと見ろ。でも、最後にそれを決めるのは長谷部だ」
みやっちの言葉は、私の胸に深く突き刺さった。
私の中の上條くん。
はるるんは、本当にそんな人なの?
私は、胸の奥で自分自身に問いかけた。
そして――
「そうだね。私たちがはるるんを信じないとね」
私は、自然と口にしていた。
「私の中のはるるんは、もっと誠実だよ。」
「ああ、そうだな」
みやっちは、私の言葉に頷く。
その瞬間、私はようやく前を向くことができた。
そして、私の中で、自分を乗り越えられた気がした。
私は、もう一度ちゃんと、はるるんのことを信じてみよう。
5
次の点呼は午後8時。
それまで、まだ少し時間がある。
だが問題は、『絶倫』だ。
このスキルのペナルティを避けるためにも、誰かとセックスをしなければならない。
だが、俺は今Dクラスから離れているし、クラスの人間とは接触できない。
となると、やはりBクラスに行くのが無難か。
Bクラスは、比較的平和で安定しているクラスだ。
特に一之瀬さんとは面識もあるし、他クラスの金田くんを受け入れていることから、そこまで警戒されることはないだろう。
俺は軽く息を整え、Bクラスのベースキャンプへと足を向けることにした。
Bクラスのベースキャンプに向かっている途中、俺はいくつか果物を採取した。
それを手土産にすれば、訪問の理由としても少しは自然になるだろう。
ベースキャンプに着くと、ちょうどBクラスの小橋さんと白波さんにばったり会った。
「あれ、上條くん!?」
小橋さんは俺の姿を見て、少し驚いたような声を上げる。
だが、それと同時に少し頬を赤らめる。
この前のことを思い出したのかもしれない。
しかし、その表情はすぐに落ち着きを取り戻し、彼女は俺に近づいてきた。
「Bクラスのベースキャンプに来てどうかしたの?」
俺は、手に抱えた果物を見せながら答える。
「果物がたくさん採れたので、少しお裾分けしに来たんです」
俺の言葉を聞き、小橋さんは関心したように声を上げた。
「これは、なかなかすごいね。みんなも喜ぶと思うよ。」
一方で、白波さんは少し不満げな顔をしていた。
理由はおそらく一之瀬さんだろう、俺が一之瀬さんと接点があることに、いい印象を持っていないだろうしな。
だが、小橋さんは快く俺をベースキャンプへ案内してくれたので、Bクラスの拠点へと向かう。
Bクラスのベースキャンプに着くと、各々の生徒が自分の仕事をこなし、一丸となっていた。
この統率の取れた雰囲気は、やはりBクラスならではだろう。
Cクラスから送り込まれたであろうスパイ、金田くんも特に目立ったことをするわけでもなく、Bクラスの生徒とともに作業をしている。
伊吹さんのように孤立することもなく、むしろ積極的にBクラスのために働いているように見えた。
それにしても一之瀬さんたちは、彼がスパイであることに気づいているのだろうか?
もしかしたらすでに気づいていながら泳がせている可能性もあるけど、いちおう忠告はしておくべきだろうか?
俺がそんなことを考えていると、後ろから聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「か、上條くん……私たちのベースキャンプに来るなんてどうしたの?」
声の主は一之瀬さん。
だが、その声はどこか強張っていた。
一昨日や昨日会った時の明るい雰囲気とは違う。
何かあったのか?
小橋さんが、俺の持ってきた果物について説明する。
「果物がたくさん採れたから、お裾分けしてくれるみたい。」
一之瀬さんは、一瞬驚いたような顔をしたが、それを受け取ると、すぐに笑顔を見せた。
「ありがとう。でもいいのかな?貰っちゃっても……上條くんのクラスは大丈夫?」
「はい、Dクラスは結構食料が充実してるので問題ないですよ」
「じゃあ、ありがたくいただこうかな。後でみんなで食べさせてもらうね」
一之瀬さんは微笑みながら言った。
だが、その笑顔はほんの少しだけ、いつもよりぎこちなく見えた。
一之瀬さんの様子が気になり、俺からそれとなく聞いてみようと思っていた。
だが、予想に反して、一之瀬さんから俺に声を掛けてきた。
「上條くん、この前の龍園くんのことでちょっと話しておきたいことがあるんだけど……」
龍園くん?何のことだ?
前にカラオケボックスの帰りに龍園くんの話を聞いたことはあったが、それから龍園くん個人の話はしていない。
それとも昨日のCクラスのベースキャンプのことか?
いや、それなら昨日のことって言うはずだ。
俺が思考を巡らせていると、一之瀬さんは俺の腕を掴み、いきなり俺を連れ出した。
「帆波ちゃん待って!」
突然の行動に驚いたのか、白波さんが焦った様子で声を上げる。
俺の腕を掴んで強引に連れて行く一之瀬さんに、白波さんが食い下がる。
「千尋ちゃんごめんね、これはDクラスと私の話だから。また後でね」
「帆波ちゃん……」
白波さんは、言いたいことがありそうだったが、一之瀬さんにそう言われると、無理には引き止めなかった。
だが、俺の頭の中には疑問が残る。
Dクラスと一之瀬さんの問題?
クラス間の話を、俺一人にするのか?
これは単なる世間話じゃない。
一之瀬さんは、俺に何を話そうとしているんだ?
「はぁっ、はぁっ……ここまで来ればいいかな……」
一之瀬さんに連れられ、約5分ほど走らされた。
距離にして1キロは行かないが、その半分くらいは離れた気がする?
こんなに離れてまでしたい話とは、一体何なんだ。
俺は息を整えながら、一之瀬さんの表情をじっと見た。
一之瀬さんの表情にはどこか、焦りと迷いを滲ませていた。
俺は静かに息をつき、慎重に言葉を選びながら問いかける。
「一之瀬さん……何の話ですか?」
俺が問いかけると、一之瀬さんは静かに口を開いた。
「上條くんはずるいよ……私、上條くんのこと信じてたんだよ?」
俺が一之瀬さんの言葉の意味を考える暇もなく。
一之瀬さんは俺の肩を掴み、自分の身体を俺に寄せた。
「んっ……ちゅっ……」
唇が触れ合う。
何が起こっている?
突然のことに、俺の思考は真っ白になった。
なぜ? どうして?
まだ、5分は経っていない。
それなのに、どうして……
「私、上條くんには松下さんがいるから我慢してたんだよ……」
一之瀬さんの言葉に、俺の心臓が跳ね上がる。
まさか一之瀬さんは俺のことを……
一之瀬さんは俺を見つめながら、もう一度口づけをする。
「……ど、どうして!」
俺は戸惑いながら問い返す。
すると、一之瀬さんは俺の目をじっと見つめ、微笑んだ。
「そんなの、上條くんが一番よくわかってるでしょ?」
「俺が一番?な、何のこと……?」
俺が困惑していると、一之瀬さんは複雑な表情を見せた。
「今日の朝、私見ちゃったの。星之宮先生と上條くんが……してるところ。」
「なっ?!」
全身が凍りつく。
一之瀬さんの言葉が、信じられなかった。
見られていた?朝のあの光景を?
俺は何も言えず、ただ一之瀬さんを見つめることしかできなかった。
騙された。
俺を連れ出すために言った「龍園くんのこと」や「Dクラスの話」なんて言葉は、全部嘘だった。
本当の目的は、俺と二人きりになること。
でも、それに気づいたときには、もう手遅れだった。
目の前の一之瀬さんは、普段の彼女とは違う雰囲気を纏っていた。
いつもの優しくて朗らかな笑顔ではない。
「上條くん、ずるいよね」
一之瀬さんは静かに、でも確実に俺を追い詰めるように言葉を紡ぐ。
「私にはいろいろ我慢させたのに、自分は星之宮先生とセックスしてたんでしょ?松下さんっていう彼女がいるのに」
「ち、違う……あれは仕方なく!」
俺はなんとか否定しようとする。
でも、一之瀬さんは首を横に振り、俺の言葉を遮った。
「仕方なく? 違うよね」
一之瀬さんの目が俺を射抜くように見つめる。
「私、見ちゃったからわかるよ。上條くんも星之宮先生のことを求めてた」
「なっ……!?」
一之瀬さんは、一歩、俺に近づく。
「ねえ、上條くん」
一之瀬さんは、俺の耳元に口を寄せ、囁く。
「私も上條くんを満足させてあげられるよ?」
一之瀬さんはそう言うと、俺の手を自分の胸に押し当てた。
ジャージ越しでもわかる、柔らかい感触。
その感触は、千秋さんのものよりも柔らかくて包容力があった。
「や、やめて……ください!」
俺は必死に抵抗しようとするが、身体に力が入らない。
「ねえ上條くん……どうして?」
一之瀬さんの手が、俺の下半身に伸びる。
「だ、駄目ですっ!俺には……千秋さんがいるのに……」
俺は必死に一之瀬さんに呼びかける。
だが一之瀬さんは手を止めることなく、俺を追い詰めていく。
「でも上條くんは星之宮先生ともしたんだよ?私はダメなの?」
「それは……だけど」
俺の言葉を聞いても、一之瀬さんの動きは止まらない。
ズボン越しに俺の股間を揉みほぐしていく。
その手つきに、俺は声を漏らしてしまう。
「……っ!」
一之瀬さんの手が、俺のズボンを脱がそうとする。
俺自身、我慢の限界だった。
観念して、一之瀬さんを受け入れる。
「やっと、私のことを見てくれたね」
千秋さん、ごめん。
俺は……
この場には俺と一之瀬さん以外誰もいない。
誰も見ていない。
「一之瀬さん……」
「いいよ……上條くん」
2人の距離が縮まっていく。
一之瀬さんは俺にキスをすると、俺のズボンを脱がす。
そして、下着の上から優しく俺に触れてきた。
「あっ……!」
思わず声が出てしまう。
一之瀬さんはそんな俺を見て微笑むと、今度は直接触れてきた。
その手つきに、俺は無意識のうちに腰を動かしてしまう。
「上條くん、気持ちいい?」
「は、はい……」
俺の問いに、一之瀬さんは微笑み、再び俺への愛撫を始める。
直接触れられる感触に、俺はさらに強い快感を感じた。
「あ……ああっ!」
そんな俺の反応を楽しむように一之瀬さんは俺の肉棒に触れる。
「ねぇ、今度は胸でしてみる?松下さんじゃできないようなこと、私ならしてあげられるよ?」
「えっ?」
俺は一之瀬さんの提案に乗ってしまった。
「じゃあ、上條くん横になってくれるかな?」
俺が寝転がると、一之瀬さんは俺の上に馬乗りになった。
そして俺の肉棒を一之瀬さんは見つめていた。
そこには限界まで勃起した肉棒があった。
一之瀬さんはそれを愛おしそうに見つめると、ゆっくりと口に含んだ。そして舌で転がすように舐め始める。
「んっ……ちゅっ……」
一之瀬さんの唾液と俺の我慢汁が混ざり合ってクチュクチュという音が響いた。
今度は胸で優しく挟み上下に動かし始め、柔らかい感触に、思わず声が出てしまう。
「んっ……どう?気持ちいい?」
「はい、すごく……」
俺の反応に満足したのか一之瀬さんはさらに強く挟み込むと激しく動かし始めた。
「あっ!それヤバい!」
あまりの快感に腰が浮きそうになる。
そんな俺を見て一之瀬さんは嬉しそうに微笑んだ。
「まだ出しちゃだめだよ」
そう言うと今度は先端部分をチロチロと舐めたり、口に含んで吸い上げたりしてきた。
その間もずっと胸は上下に動かされているため、快感の波に襲われる。
「一之瀬さん……もう出そうです」
俺は限界を訴えたが、一之瀬さんはいじらしく笑った。
「ダメだよ、んっ……」
「そ、そんな……」
一之瀬さんは俺の肉棒を離そうとせず、それどころかさらに激しく動かし始める。
「ああっ!」
もう限界だった。俺はそのまま一之瀬さんの胸に射精する。
俺の欲望で満ちた白い液体が、一之瀬さんの顔を汚していく。
「はぁ……すごい量」
一之瀬さんは顔についた精液を手で拭き取ると、口に含みそれを飲み込む。
そんな光景を見て、俺の肉棒は再び元気を取り戻す。
「まだ元気だね」
「一之瀬さん……」
俺も我慢の限界だった。
一之瀬さんに近づいてゆっくりと唇を奪う。最初は軽いキスだったが、次第に舌を入れる濃厚なものへと変わっていく。
そして、一之瀬さんは俺に応えるように舌を絡めてくる。
お互いの唾液を交換し合う。
「はぁ……はぁ……」
「上條くんからきてくれて嬉しい。でも、今日は私がリードするから。私だけを見て」
一之瀬さんは俺に抱きつき耳元で囁く。
「上條くんのここまた大きくなってる♡」
「こ、これは……」
一之瀬さんはそれを見て嬉しそうに笑った。
「上條くんのちんちん、ビクビクしてて可愛い♡」
「一之瀬さん……」
一之瀬さんは生まれたままの姿で俺を押し倒す。
「上條くん、入れてみる?」
俺は一之瀬さんに導かれるように俺の肉棒を挿入した。
一之瀬さんの膣内はとても狭く、それでいて柔らかく俺のモノを受け入れる。
そのまま奥まで入れると子宮口に当たった感触が伝わってくる。
「あっ♡すごいっ♡奥に当たってる♡」
一之瀬さんは身体を反らせながら喘いだ。
そんな姿を見てさらに興奮が高まるのを感じた。
「動きたいの?」
「……はい」
俺が答えると一之瀬さんは妖艶な笑みを浮かべた。
「いいよ♡好きなようにして♡」
その言葉を聞いて俺の理性は千切れ、激しく腰を動かし始める。
そしてパンパンと肌同士がぶつかり合う音が響く。
「あっ♡んんっ!っはぁ……っ!」
一之瀬さんは快楽に飲まれたような表情で喘ぐ。
俺は一之瀬さんの淫らな姿にさらに興奮し、欲望のままにピストンを繰り返した。
「はぁっ、くっ!あっ……あぁっ!」
「き、きもちいい?かみじょうくん?」
「はい……すごくっ!」
一之瀬さんの中はとても温かくヌルッとしていた。その刺激がたまらなく気持ちいい。
俺は夢中になって腰を打ち付ける。
「んっ、あぁっ♡かみじょうくんのちんちん、ナカであばれてるっ♡」
一之瀬さんは俺の首の後ろに手を回すと、引き寄せてキスをしてきた。
舌を絡ませ合い唾液を交換するような濃厚な口づけをする。
「あっ、んぷぅ……はぁっ♡んんっ!」
一之瀬さんの吐息を感じながら、俺は限界を迎えようとしていた。
「一之瀬さん……もうっ!」
「いいよ♡わたしのナカにいっぱい出して♡わたしだけに!」
「あっ!っあぁ……出るっ!」
俺は一之瀬さんを強く抱きしめながら射精した。
一之瀬さんの膣内にドクドクと勢いよく大量の精液が流し込まれる。
「あぁっ!あついのがいっぱいっ♡んっ♡あぁっ!」
一之瀬さんも身体を痙攣させながら絶頂を迎える。
俺は最後の一滴まで絞り出すように腰を動かした。
やがて全てを出し終えるとゆっくりと引き抜く。
「はぁ……はぁっ」
「かみじょうくん……気持ちよかった?」
「は、はい……すごく、気持ちよかったです……」
俺は素直に答えてしまった。
俺の答えに一之瀬さんは嬉しそうに微笑むと抜いたばかりの俺の肉棒を優しく包み込む。
「まだ……時間あるよね?」
そう言って一之瀬さんはゆっくりと舌を這わせ始めた。
「さ、さっき出したばかりなので……」
俺は慌ててそう言ったが一之瀬さんは止まらなかった。
そして再び大きくなった俺の肉棒を口に含むと舌で刺激し始めた。
「んちゅっ……んっ」
一之瀬さんの舌使いは俺の興奮を煽りすぐにまた勃起してしまった。
そんな俺の反応を楽しむように一之瀬さんはさらに激しく攻め立てる。
亀頭を舐め回したり、裏筋をなぞったりして刺激を与えてきた。
「くっ……一之瀬さんっ」
一之瀬さんの舌使いで俺はすぐに限界を迎えようとしていた。
しかし、そこで一之瀬さんは口を離してしまった。
「上條くん、もう出ちゃいそう?」
「は、はい」
もうすでに俺のモノは限界まで張り詰めていた。
「そっか、でもまだ出しちゃダメだよ」
「そ、そんな……どうして」
俺のモノはすでに限界を迎えていた。
でも、一之瀬さんは認めてくれない。
「ダメだよ、上條くんが私を欲してくれるまでは出させてあげない」
「俺は、一之瀬さんを……」
俺には千秋さんという彼女がいる。
でも、一之瀬さんの誘惑に抗えなかった。
こんな命を握られた状況で俺は自分を保てない。
仕方ない……これは仕方のないことなんだ。
「一之瀬さん、出させてください!」
「これからは松下さんじゃなくて、私を見てくれる?」
一之瀬さんの言葉に俺の思考が揺れる。
「そ、それは……」
「私なら上條くんを幸せにできる。私に身を委ねて……」
一之瀬さんはそう言うと優しく亀頭にキスをしてきた。
そしてそのまま口に含むと、今度は深くまで飲み込むようにして奉仕してくる。
「んぷっ……んんっ……」
一之瀬さんは俺のモノを喉奥まで使って締め付けてくる。
その感覚に思わず腰が浮いてしまう。
「んっ♡んぷっ……はぁっ♡」
「あっ……っあ!くぁ、あぁっ!」
イキたい。一之瀬さんに出したい。
「上條くん、私を認めて♡」
「あぁっ!一之瀬さん!」
俺はついに限界を迎えてしまった。
「んっ♡んんっ♡」
ドクドクと脈打つ精子を一之瀬さんは全て受け止めた。
「んぷぅっ♡……はぁ、いっぱい出したね」
一之瀬さんは俺の肉棒から口を離すと、見せつけるように口を開いた。
そこには俺が出したばかりの白い液体が大量に溜まっているのが見えた。
「これで上條くんも私を選んでくれるよね?」
「……俺は……」
俺は言葉に詰まる。
そんな俺を一之瀬さんは黙って見ていたが、やがて口を開いた。
「……今日はここまでにしておこうか。でも次はもっとすごいことしようね?」
それだけ言うと一之瀬さんは服を着直して森を出て行った。
残された俺は呆然としながら自分のモノを見つめる。
しばらく俺は、何も考えられなかった。
一之瀬さんが森の中へ消えていくのを、ただ呆然と見送ることしかできなかった。
俺は、一体何をしてしまったんだ?
「……俺は……どうすれば……」
呟いても、答えは出なかった。
今の一之瀬さんとの出来事、そして千秋さんとのこと、全てが俺の中で混乱を生んでいた。
自分の中の感情が整理できないまま、俺はしばらくその場に立ち尽くしていた。
――――
今後、俺と千秋さん、一之瀬さんとの関係は少しずつ変化していく。
今はまだ、表面上は何も変わっていない。
だが、確実に何かが歪み始めている。
一之瀬さんと関係が深まり、俺の中には消し去ることのできない感情が残っていた。
千秋さんを想う気持ちは本物だ。
それなのに、俺は一之瀬さんの気持ちを拒みきれなかった。
これは時間をかけて、亀裂となる。
そして、やがて俺の大切なものは壊れていく。
来週は、月曜日は無理でも火曜日には投稿をしたい……
個人的には長谷部とのシーンを書きたいんだけど、長谷部を雑に扱いたくはないという葛藤があるんです
そんなことはどうでもよくて、よう実3年生編が楽しみすぎる。
あの女子2人は誰なんだ!うおっ!うおっ!うおおおおおおあああああ!
単純に出番を増やして欲しいキャラクター候補(すぐには反映できない可能性高いです)
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綾小路清隆
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堀北鈴音
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櫛田桔梗
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松下千秋
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森寧々
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佐倉愛里
-
長谷部波瑠加
-
平田洋介
-
龍園翔
-
石崎大地
-
山田アルベルト
-
伊吹澪
-
椎名ひより
-
一之瀬帆波
-
白波千尋
-
神崎隆二
-
葛城康平
-
坂柳有栖
-
橋本正義
-
ブラックルーム最高傑作山内春樹