※この作品はR-18です。

ようこそ発情スキルの教室へ   作:ソフロス

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約1ヶ月ぶりとなってしまいました。
話の流れは決まっているのに、どうしてこんなにも書くのが遅くなってしまうのでしょうか。
最近は朝から昼まで寝てしまうという完全に駄目学生生活をしています。
寝る、バイト、寝る。
生きてるって感じがしません。

次の話で無人島試験は完結予定です。
半年以上かかってる気がしますが、船上試験はここまで期間が空かないことを祈ります。


第19話 混乱の中(一之瀬帆波、佐藤麻耶&篠原さつき)

 

1

 

俺は、何も考えられなくなっていた。

今、自分の身に起きたこと。

そして、自分の成すべきこと。

俺の頭の中で絡み合って、思考を曇らせる。

 

 

「一之瀬さんは……どこに」

 

気づけば、俺の口から無意識に言葉が漏れていた。

だが、彼女はもうここにはいない。

静かな森の中に、一之瀬さんの温もりの余韻だけが残っていた。

 

なのに、俺は一之瀬さんを恋しく思ってしまった。

もっと、一緒にいたいと、そう思ってしまった。

 

どうして?

俺には千秋さんがいる。

俺が選んだのは、千秋さんのはずだ。

 

でも、俺の中の一之瀬さんを思い出すと、心を揺さぶられる。

 

千秋さん……俺は、どうすればいい?

 

「違う……違う……違う違う違う! 俺は……俺は!」

 

誰もいない森の中で声を荒げ、自分自身に叫ぶように言葉を叩きつける。

 

一之瀬さんじゃない。

俺が選んだのは、千秋さんなんだ。

そして千秋さんも俺を選んでくれた。

それを裏切るなんて、千秋さんだけでなく、俺自身をも裏切ることになる。

 

あの一瞬、一之瀬さんに心を揺らされそうになった。

でも、それは本当の気持ちじゃない。

 

俺が本当に求めているのは、あの熱に浮かされたような感情じゃない。

 

「俺は……千秋さんが好きなんだ」

 

その言葉は、偽りじゃない。

俺は確かに、千秋さんのことを選んだ。

今さら迷う必要なんて、どこにもないはずなんだ。

 

だけど、胸の奥に残る罪悪感と、僅かに燻る感情の残滓が、俺を完全には解放してくれなかった。

 

2

 

私は上條くんから離れた後も、密かに様子を伺っていた。

上條くんがどんな言葉を口にするのか、気になって仕方がなかったから。

 

そして、耳に届いた言葉は

 

「俺は……千秋さんが好きなんだ」

 

苦しげに、絞り出すような声。

その言葉を聞いた瞬間、少し胸の奥が痛んだ。

 

「そっか、まだ上條くんは松下さんのことを……」

 

でも最初から、こんな簡単に上條くんの心を奪えるとは思っていない。

 

少しずつ、少しずつ……私のことを求めてくれたら、それでいい。

 

私は、ずっと我慢してた。

上條くんと松下さんは、お互いを愛し合っている。

だから、私は邪魔しちゃいけないって、必死で自分の気持ちを抑えていた。

 

だけど、この想いも止められない。

だから、私は上條くんの心変わりが起きることを密かに祈っていた。

 

「上條くんが悪いんだからね」

 

今朝、私はいつも通り自分を抑えるためにベースキャンプの外に出た。

この試験中、毎朝続けているルーティン。

誰にも言えないこの気持ちを落ち着かせるために、1人になれる時間が必要だった。

 

でも、その時、星之宮先生と上條くんが、2人で交わっているところを見てしまった。

私は、思わずその場に立ち尽くした。

 

まさか、上條くんが松下さん以外の人とそんなことをしてるなんて思わなかったから。

最初は、信じられなかった。

でも、目の前の光景は間違いなく現実だった。

 

見境なく、上條くんが戯れてるのは、正直、少しショックだった。

それでも、私は上條くんが好きだった。

 

「ああ、遠慮しなくてもいいんだ」

 

そう、感じてしまった。

もし上條くんが松下さんを本当に一途に想っているなら、私は身を引くつもりだった。

だけど、違った。

 

なら私も、もう我慢しなくていいよね?

そう思った瞬間、心の奥で張り詰めていたものが、静かに崩れ落ちるのを感じた。

 

私は、ずっと上條くんを見ていた。

見てるだけで私からは、届かない存在。

でも、それはもう終わり。

 

私も、上條くんに触れていい。

だって、彼はすでに私と同じ罪を背負ったんだから。

 

だから私と一緒に、この罪を共有してもらう。

 

私は、暗い森の中で静かに視線を向ける。

 

「上條くんも、私と一緒に罪を背負ってね」

 

もう、離さないよ?

 

3

 

遥は、大丈夫かな?

軽井沢さんの下着の騒動でベースキャンプを去ってから、もう半日くらい経った。

 

遥なら、大丈夫。

そうやって、自分に言い聞かせる。

 

でも、どこか嫌な胸騒ぎがした。

それは、単なる心配とは違う感覚。

何か、目には見えない不安が、心の奥でじわじわと広がっていく。

 

遥が、私から遠くへ行ってしまったような……

そんな感じがして、不安に襲われる。

もちろん、クラスを離れたのだから、遠くへ行ってしまったのは当然のこと。

 

でも、それだけじゃない。

もっと……何か大切なものが、少しずつすり抜けていくような……

 

……遥、今どこにいるの?

何をしているの?

 

「バカだな、私。まだ半日しか経ってないのに……」

 

思わず、独り言のように呟く。

 

さっきから、何度も頭をよぎる。

遥がいなくなってから、妙に時間が長く感じる。

まるで、何かを失いかけているような、そんな感覚。

 

嫌だな……こんな不安。

 

会いたい。そう思った。

 

私は自分の胸に手を当て、静かに深呼吸した。

 

4

 

時刻は午後8時を回る少し前。

俺は、予定通りDクラスのベースキャンプに戻った。

 

テントの周りでは、数人の生徒たちが夕食を終えた後の後片付けをしていた。

 

そして、俺の存在に、いち早く気づいたのは平田くんだった。

平田くんはすぐに駆け寄ってくると、安心したような笑顔を見せた。

 

「上條くん! 無事で良かった」

 

その言葉には、心からの安堵が感じられた。

 

「何か不便はない? 僕にできることなら協力させて欲しい」

 

平田くんは、俺に協力する姿勢を見せてくれる。

 

「ううん、今のところ不便はないよ。それより、クラスは大丈夫?」

「うん、それなら見ての通り心配はないかな」

 

平田くんは周りの様子を指しながら、穏やかに言った。

確かに、クラスの雰囲気は思ったより落ち着いている。

下着の騒動があったとはいえ、完全に崩壊したわけではないようだ。

 

「そっか。なら、俺はやっぱり立ち去って正解だったかな」

 

しかし、平田くんは即座に首を横に振った。

 

「そんなことないよ。君はやっぱりこのクラスには必要だよ。僕は少なくとも君のことを……」

「平田くんがそう思ってくれてるだけで、俺は充分だよ。だから、平田くんは心配しないで」

 

俺がそう言うと、平田くんは黙るしかなかった。

まだ俺に言いたいことはあったのだろう。

だけど、今は俺に肩入れするべきじゃない。

ここで平田くんが俺を庇うような発言をすれば、周りから批判を受けるかもしれない。

だから、俺もこれ以上、何も言わないことにした。

 

点呼を終えた俺は、すぐに伊吹さんがどこにいるか見渡してみる。

伊吹さんは、誰とも話さず、1人で木にもたれかかっていた。

クラスの生徒とは孤立して、あえて距離を取っているようにも見える。

話しかけるなら今しかないか。

 

伊吹さんの様子を探るなら、今が最適なタイミングだ。

俺は深く息を吸い、慎重に歩み寄る。

 

伊吹さんも、俺が近づいてくるのに気付いたようで、こちらに視線を向ける。

 

「あんた……そっか、点呼だから戻ってきたのか」

 

俺がここにいる理由を察して、彼女は1人納得したような表情を見せる。

 

「その……ごめんね。龍園くんから離れてきたのに、離れた先でもこんなことになって」

 

伊吹さんに謝罪するという口実で近づけば、あまり警戒はされないはずだ。

 

俺の言葉を聞いた伊吹さんは、少し驚いたような顔をした。

でも、すぐに淡々とした口調で返してくる。

 

「あんたが謝ることじゃないでしょ。私は文句を言える立場じゃないし」

 

伊吹さんはそう淡々とした口調で言い切る。

そして伊吹さんは付け加える。

 

「それに、下着を盗んだのはあんたじゃないんでしょ?」

 

彼女は、まっすぐ俺の目を捉えて、はっきりとそう言った。

 

俺は、その反応に驚いた。

伊吹さんの今の話し方だと、俺を犯人とは疑っていないようだった。

今まで、伊吹さんが軽井沢さんの下着を盗んだ真犯人だと考えていたが、もしかして違うのか?

それとも、ただの演技なのか?

 

「……俺が犯人じゃないって、どうして思うの?」

 

俺の問いに、伊吹さんは何の迷いもなく即答する。

 

「あんたが自分で言ったんでしょ? 自分じゃないって。」

 

それだけ?

俺は一瞬、驚いた。

今朝、確かに俺は盗んでないと主張した。

だが、普通そんな言葉だけで納得するものなのか?

 

俺が疑問を抱いていると、伊吹さんはさらに言葉を続けた。

 

「あんたとは知り合って日も浅いけど、お人好しのあんたが下着を盗むような奴だとは思わない」

 

これが本音なのかはわからない。

だけど、言われて悪い気はしない。

 

「そんな風に思ってくれてたんだ。ありがとう」

 

素直にお礼を言うと、伊吹さんは少しバツが悪そうに視線をそらした。

 

「別に、特別そう思ってるわけじゃない。ただ、あんたはそういうことしそうなタイプじゃないってだけ」

 

伊吹さんは、俺を犯人だと疑っていないということか。

それなら本当の犯人についてはどう考えているんだ?

俺は、もう一歩踏み込んで聞いてみることにした。

 

「じゃあ、伊吹さんは誰が犯人だと思ってる?」

「さあ、それはわからない。でも、どんな理由にしても女子の下着を盗むのは、同じ女として許せない」

 

その言葉には、明確な嫌悪感が滲んでいた。

伊吹さんの言葉を聞き、俺の中で伊吹さんが犯人なのかどうか、それが揺らごうとしていた。

 

「逆にあんたは犯人の目星とかついてるの?」

 

伊吹さんの鋭い視線が、まっすぐ俺に向けられる。

 

俺の鞄に下着を入れた人物。それが誰なのか。

しかし、ここで不用意に名前を挙げてしまえば、余計な誤解を生むかもしれない。

 

「……正直、確証はない。でも、俺を狙った誰かがいるのは確かなんだ」

「あんたは私を疑いはしないの?」

 

伊吹さんの問いに、俺は一瞬言葉を詰まらせた。

ついさっきまで、俺は伊吹さんが犯人なのではないかと疑っていた。

でも、今の俺は伊吹さんが本当に犯人なのかわからなくなっている。

 

「あんたや男子が犯人じゃなかったとしたら、次に疑われるのはよそ者の私。男子が下着を盗んだように見せたのかも……とか思われてても、不思議じゃない」

 

伊吹さんが本当に犯人なのだとしたらこんなにも堂々としているのは不自然だ。

やっぱり伊吹さんは……

 

「少なくとも俺は伊吹さんのことを信じるよ。伊吹さんはそんなことしないと思う」

 

伊吹さんは俺の言葉に驚き、目線が合う。

しばらく、そのままでいると伊吹さんはゆっくりと口を開く。

 

「……ありがと」

 

伊吹さんはその言葉を聞いて満足したのか、その場を立ち去った。

 

俺が伊吹さんについて考えていると、誰かが近づいてくる気配を感じた。

俺は気配を感じ、そっと振り返る。

そこに立っていたのは、綾小路くんだった。

 

「綾小路くん、どうしたの?」

 

俺は少し驚きながら綾小路くんに問いかける。

 

「伊吹と話してるのを見かけてな。気になって見に来たんだ」

 

綾小路くんは相変わらずの冷静な表情で静かに俺を見つめていた。

 

「伊吹とは、何を話してた?」

「軽井沢さんの下着の件だよ」

「なるほどな」

 

綾小路くんは軽く頷き、俺の言葉に興味があるようで続けて聞いた。

 

「で、何か得るものはあったのか?」

「特になかった。今回の下着の件は誰がやったのか見当もつかなくなったよ」

「なるほどな」

 

綾小路くんはそれ以上何も言わなかった。

綾小路くんは何を考えているんだろう。

俺はその沈黙に耐え切れず、逆に尋ねる。

 

「綾小路くんは、どう思う?」

 

俺の問いに、綾小路くんは少し考え込んだ後、静かに言葉を放つ。

 

「上條の言う通り、俺も下着を盗んだのが誰なのかは見当もつかない。最初は伊吹が盗んだんじゃないかと疑っていたけどな」

 

俺は思わず聞き返す。

綾小路くんも、俺と同じように伊吹さんを疑っていたのか。

 

しかし、綾小路くんは淡々と続ける。

 

「だが、伊吹の様子を見ていて、少なくとも今回の件に関与している可能性は低いと判断した」

「そうなの?」

「ああ。今日の伊吹は、下着を盗んだ犯人に対して本気で怒っているようだった。もし自分が犯人なら、あそこまで強い感情を表に出すとは思えない」

「確かにそうだね。でもそうなると犯人は軽井沢さんに恨みを持つ女子か、それとも本当に男子なのか……」

 

俺がそう言うと、綾小路くんは少しだけ表情を変えた。

 

「上條は自分が疑われて心配だろうが、この件は俺に任せてくれないか?」

「え?」

 

俺は思わず聞き返す。

あの綾小路くんが、自らこの件を引き受ける?

 

「実はさっき堀北に頼まれてな。このまま犯人が分からずじまいだと、男女の間に亀裂が入る可能性があるからと言って、仕事を押し付けられた。」

「やっぱり堀北さんも、犯人が誰なのか気になっていたんだね。」

 

でも堀北さんなら当然か。

今回の件で俺を庇ってくれたのも堀北さんだし、このまま犯人が見つからなければ堀北さんが批判の的になる可能性もある。

 

「上條は自分の生活もあることだし、あまり不用意に介入しない方がいい。点呼の時間でしか動けないお前が下手に動くのは危険だからな」

「……でも、俺は」

 

俺はまだ納得できなかった。

だが、綾小路くんは淡々と言葉を続ける。

 

「お前が動くことで、逆に犯人の思惑通りになる可能性もある。今のDクラスの状況を考えれば、これ以上余計な波を立てるのは得策じゃない」

「……」

 

確かに、俺が動くことでさらに疑われるリスクもある。

綾小路くんがこの件を引き受けてくれるのなら、俺は不用意に動かずに、綾小路くんに任せるのが最善かもしれない。

 

「……わかった。でも、何か分かったら俺にも教えてくれない?」

「ああ。犯人がわかったらすぐに伝える」

 

綾小路くんはそう言い残し、すぐにその場を離れた。

俺は彼の背中を見送りながら、今までの考えを整理する。

 

綾小路くんも、伊吹さんは下着を盗んだ犯人ではないと考えていた。

つまり、伊吹さんは白の可能性がますます高くなった。

となると、やはり犯人は別にいる。

 

「これは困ったな……」

 

ぼそっと呟く。

もし伊吹さんが関与していないのなら、本当に男子の誰かか、それとも軽井沢さんに恨みを持つ女子がやったのか?

だが、ここで俺が動くわけにはいかない。

ついさっき、この件は綾小路くんに任せると決めたばかりなのだから。

 

「……今日のところは帰るしかないか」

 

そう決めて、俺は静かにベースキャンプから離れることにした。

だが、そんな俺を止めようと、声を掛けてきた人物がいた。

 

「あ、遥……」

「千秋さん……」

 

俺は、さっきの一之瀬さんとの出来事を思い出し、心の奥にわずかな罪悪感を覚える。

俺の声は、少しだけ揺れていたかもしれない。

 

千秋さんは気づいているのかな?

千秋さんの目は、優しさとともに、どこか切なげだった。

それが、俺に向けられたものなのか、それとも別の感情からくるものなのかはわからない。

 

「ねえ、遥。食料とか寝るところとか、ちゃんと用意できた?」

 

千秋さんの柔らかい声が、夜の静けさの中で響く。

俺は少し驚きながらも答える。

 

「あ、はい。大丈夫ですよ」

 

千秋さんは、ほっとしたように微笑んだ。

 

「そっか、良かった。遥なら大丈夫って思ってはいたんだけど……なんだか心配で」

「千秋さん……」

 

俺が彼女の名前を呼ぶと、千秋さんは小さく笑った。

 

「あはは、私ってばバカだよね。こんな少し離れただけで、こんな……」

 

千秋さんの瞳は、ほんの少し潤んでいた。

胸の奥が、ぎゅっと締めつけられるような感覚がする。

千秋さんはこんなにも、俺のことを……

 

それなのに、俺は一之瀬さんと……

自分の胸の奥で苦しさがこみ上げてくる。

 

俺は何もやっているんだ!

こんなにも千秋さんが俺のことを思ってくれているのに、俺は、千秋さんの心を裏切るようなことを。

 

違う、違う……これは俺のせいじゃない。

一之瀬さんが強引に俺を……俺はそれに……

 

「違う!」

 

思わず、声が漏れてしまった。

 

「遥?」

 

千秋さんが俺の声に驚き、不安そうに顔を覗き込む。

ハッとする。

 

今、俺は何を……?

 

「な、なんでもないよ……」

「本当に? なんか……遥、辛そうな顔してるよ。」

 

俺の内側を、千秋さんに見透かされている気がした。

それを悟られたくない。

そんな一心で、俺は強い口調で言ってしまった。

 

「違うって! なんでもないって……だからもう構わないで……」

 

その瞬間、千秋さんの表情が凍りついた。

俺の言葉が、千秋さんを心を傷つけた。

 

どうして、俺はこんなことを言ってしまったんだ?

俺は千秋さんを守りたいはずなのに、どうして……

どうして、俺は千秋さんを傷つけるようなことを……

 

「千秋さん、ごめん!俺、こんなことを言うつもりは!」

 

俺は、必死だった。

後悔が胸を締めつける。

 

傷つけるつもりなんてなかったのに。

なのに、俺は自分で千秋さんを突き放してしまった。

 

俺はとっさに千秋さんの手を掴んだ。

 

「待って……千秋さん……!」

「ううん、大丈夫。じゃあ、またね」

 

だけど、千秋さんの目は、冷めていた。

 

さっきまでの優しさも、不安げな表情も、もうどこにもなかった。

いや、違う。

目は冷めていた。

でも、千秋さんの手は、震えていた。

 

「待って、千秋さん!」

 

俺は千秋さんの手を握り直そうとした。

でも、

 

「離して」

 

その言葉は、驚くほど冷たく突き刺さった。

千秋さんの声に、俺の手が無意識に力を緩める。

その隙に、千秋さんは俺の手を振りほどいた。

 

言葉が出ない。

俺は、ただ千秋さんの後ろ姿を見つめることしかできなかった。

 

5

 

俺は、何もする気が起きないまま、ベースキャンプを離れた。

 

千秋さんの言葉が、頭の中で何度も蘇る。

 

冷たい目、震えていた手。

そして、離してという千秋さんの言葉。

 

俺は、自分の愚かさを噛み締めながら、誰もいない森の中を歩く。

 

「馬鹿野郎! 何をしてるんだ俺はっ!」

 

下着を盗んだ犯人も見つけられない。

一之瀬さんのことも……

Dクラスに貢献することもできず、千秋さんを安心させることすらも!

結局、俺は何もできていない。

 

「なにをしてるんだよ、俺は……俺はなんのために……」

 

情けなくて、惨めで、悔しくて。

気づけば、俺の頬を何かが伝っていた。

 

思わず、涙が零れ落ちる。

 

バカは俺だよ、千秋さん。

 

俺の声は震えていた。

 

「千秋さん……千秋さん……!」

 

どれだけ彼女の名前を呼んでも、返事はない。

あるのは、夜の静寂だけだった。

 

俺は森の中で泣き続けた。

 

6

 

目が覚めた。

昨日は、よく眠れなかった。

テントもない森の中での寝心地は最悪だった。

それに昨晩は雨も降ったことでジャージも微かに濡れていた。

だが、俺が眠れなかった理由は、そんなことが理由ではない。

 

千秋さんとのこと。

それが、ずっと胸に刺さっていた。

考えれば考えるほど、自分の行動が愚かだったと思い知らされる。

 

完全に俺の自業自得だった。

千秋さんは、ただ俺のことを心配してくれただけだったのに。

 

思い出すたびに、自己嫌悪が押し寄せる。

謝りたい。でも、今さらどんな顔をして会えばいい?

思い出すたびに、自己嫌悪が押し寄せる。

 

だが、こんな状態でも俺のモノは大きくなり始める。

 

「なんなんだよ、治まってくれよ!」

 

『絶倫』が、俺の思考力を削いでいく。

こんな時にまで……!

 

俺は頭を抑えながら、苛立ちをぶつけるように拳を地面に叩きつける。

 

「邪魔しないでくれよ……今は放っておいてくれよ!」

 

俺は今、こんなことをしている場合じゃないんだ!

なのに……この能力が……!

この能力が俺を狂わせる!

 

「こんな能力があるから、こんな能力があるから俺はっ!!」

 

俺は自分に苛立ち、怒りに押しつぶされそうになりながら、ただ悔しさを噛み締めた。

 

いや、違う。

こんなところで、立ち止まるわけにはいかない。

 

「……俺は間違っていない」

 

覚悟は、もう前に決めたはずだろう?

佐倉さんを犯した、あの時に。

 

俺の中の迷いは、そこで断ち切ったはずだ。

 

だが、俺の中では、未だに葛藤があった。

非情になりきれない自分がいる。

 

それでも、俺はその感情を必死に振り切る。

 

「やってやる……俺は、俺なら!」

 

情緒がどうにかなりそうだった。

 

『絶倫』によって呼び起こされる、俺。

それを、認めたくない俺。受け入れようとする俺。

受け入れたふりをして誤魔化そうとする俺。

 

それらの俺が、せめぎ合いながら、俺自身を中和していく。

 

「俺が迷うことはない。まずはあと3人だ。あの神に言われた通りあと3人を犯す」

 

俺は『絶倫』を受け入れた。

 

だがこれは、ただ受け入れるだけじゃない。

今までの俺は、この能力に翻弄されるばかりだった。

しかし、もう違う。

俺は、この能力を自分のために利用する。

 

「もう、今までの俺じゃない」

 

俺は拳を強く握りしめた。

 

「最後に笑うのは、俺だ」

 

俺は、俺の運命を自分で選び取る。

その決意を胸に、俺は静かに歩き出した。

 

7

 

時刻は朝の5時半を回った頃。

森の中に微かな人の気配を感じる。

俺は慎重に足音を抑えながら、ゆっくりと近づいていく。

そして、ゆっくりと声を掛ける。

 

「やっぱりここにいたんだね」

「んっ?!」

 

俺の声に、一之瀬さんはビクッと身体を震わせた。

一之瀬さんは、俺に声を掛けられ驚いた表情を見せていたが、すぐにその表情は柔らかな微笑みに変わる。

 

「上條くん……まさかこんなに早く、自分から来てくれるなんて……」

 

一之瀬さんは、嬉しそうに微笑んでいた。

 

「どうしたの? こんな朝早くに」

「そんなの決まってるじゃないですか」

 

俺は一之瀬さんを強引に抱き寄せる。

 

「上條くんっ?」

 

俺は一之瀬さんを抱き寄せたまま唇を奪う。

そして、舌を入れ込み、激しく絡め合う。

 

「んっ♡ちゅるっ……れろっ♡」

 

一之瀬さんは一瞬驚いた様子だったがすぐに受け入れてくれた。

 

「昨日はあんなに迷ってたのにどうしたの?」

 

一之瀬さんは俺の首に手を回して抱きつきながら聞いてきた。

 

「それは教えません。ただ、俺は一之瀬さんとのセックスが忘れられなかったんです」

「そっかぁ、ふふ……いいよ。今はそれで納得してあげる」

 

一之瀬さんは妖艶な笑みを浮かべると、俺の手を引いて歩き出した。

そして、そのまま森の中に入っていく。

 

「ここなら誰にも見られないから……」

 

そう言って、一之瀬さんは俺に抱きついてきた。

 

「上條くん、私のここ、もうこんなになってるの」

 

一之瀬さんは俺の手を取って自分の股間へと導く。そこは既に湿っていた。

 

「だから……しよ?」

 

俺は無言で頷くと一之瀬さんを抱き寄せキスをする。

 

「んっ♡ちゅっ♡」

 

舌を絡ませ合い濃厚な口づけを交わす。

そして、そのまま押し倒すようにして一之瀬さんの上に乗ると、ジャージ越しに胸を揉み始める。

 

「あっ♡んんっ……はぁっ、きもちいっ♡」

 

一之瀬さんは甘い声を上げると俺を抱きしめるようにして腕を回してきた。

そして、自ら腰を動かして俺のモノに擦り付けてくる。

 

「一之瀬さん、そんなにヤリたいんですか?朝からこんなところでセックスするなんて……」

 

俺は一之瀬さんを挑発するように耳元で囁く。

 

「んんっ♡だって、上條くんのおちんちん、きもちいんだもん♡」

 

一之瀬さんはそう答えると、俺の股間に手を伸ばしてきた。そしてズボン越しに肉棒を優しく撫でる。

 

「もう待ち切れないの、早く入れて?」

 

一之瀬さんはそう言うとジャージのズボンを脱ぎ去る。

そして下着姿になると、自ら足を広げて秘所を見せつけてきた。

 

「上條くんのおちんちん、ここにちょうだい?」

 

俺は誘われるがまま一之瀬さんの中に挿入する。

 

「あぁっ!きたぁ♡」

 

一之瀬さんは嬉しそうな声を上げると俺のモノを締め付けてくる。「んっ♡んん〜っ♡」

一之瀬さんは快感に打ち震えているのか身体をビクビクと震わせている。

そんな一之瀬さんを見て、俺はさらに興奮する。

 

「上條くん……動いてぇ」

 

俺は言われるままに腰を打ち付ける。

 

「あぁっ!いいっ……もっとぉ♡」

 

一之瀬さんは俺の動きに合わせて自らも腰を動かし始める。

その動きに合わせて大きな胸が上下に激しく揺れる。

 

「こんなに揺らして、誘惑してるんですか?」

「んっ……あっ♡あぁっ!だって、上條くんとのセックス気持ちいいんだもん♡」

 

一之瀬さんはそう言うとさらに激しく動く。

 

「あっ、だめっ!イきそっ♡」

 

一之瀬さんの限界が近いことを悟った俺はラストスパートをかけるべくペースを上げる。

 

「あぁっ!イクッ!イッちゃう!」

「くっ……俺も出ます」

 

そして、俺たちは同時に果てた。

ドクンドクンと脈打ちながら大量の精子を吐き出す。

 

「あはっ♡すごい量♡」

 

一之瀬さんは嬉しそうな表情を浮かべながら自分のお腹をさすっている。

 

「上條くんの精子が私の中に入ってくの、感じる……」

 

一之瀬さんはそのまま俺に抱きつきキスをしてきた。

 

「んっ♡ちゅぱっ♡んんっ♡」

 

一之瀬さんは強引に舌を絡ませてくる。

俺もそれに応えるように舌を絡める。

 

「はぁ……んっ♡上條くん♡」

 

一之瀬さんは蕩けた表情で見つめてくる。

だが、俺はここで一之瀬さんと距離を取る。

 

「えっ?上條くん?」

 

一之瀬さんは驚いた表情で俺を見る。

 

「上條くんもまだ満足してないでしょ?もっとしよ?ね?」

 

一之瀬さんは俺に抱きついてくる。

 

「どうして?私じゃダメなの?」

 

一之瀬さんは困惑した様子で俺を見つめてくる。

 

「次はもっとすごいことしてあげるって昨日言ったでしょ?だから……ね?」

 

一之瀬さんは必死に俺を誘惑してくる。

 

「それは、またの機会にお願いします。今日は他にやることがあるので」

 

俺はそれだけ言うと一之瀬さんから離れる。

一之瀬さんは呆然とした表情で俺を見つめていた。

 

「じゃあ、また試験後に会いましょう」

 

それだけ言うと、俺はその場を後にした。

 

「上條くん……」

 

一之瀬さんの寂しそうな呟きを聞きながら。

 

8

 

一之瀬さんと別れ、朝の8時前。

俺は点呼のため、Dクラスのベースキャンプへと戻ってきた。

 

千秋さんの姿を探すと、一瞬、俺と視線が合う。

だが、それはすぐに逸らされてしまった。

 

すぐにでも謝りに行きたい。

だけど、今はその気持ちを堪える。

この試験が終わり、全ての問題が片付いた時に。

 

俺が千秋さんのことで考え込んでいると、爽やかな声が俺を呼んだ。

 

「おはよう、上條くん。昨日はよく眠れたかな? そんなわけないよね。昨日は雨も降っていたし」

 

平田くんは、俺のジャージが泥と雨で汚れているのを見て、心配そうな表情を浮かべる。

 

「ううん、全然平気だよ。試験は残り1日だし、気合で乗り切るよ」

 

俺がなるべく元気よく答えると、平田くんは少し考えるように視線を落とした。

そして、ゆっくりと口を開く。

 

「そのことなんだけど――今日の朝、軽井沢さんや他の子とも話し合ってね」

 

平田くんは一度呼吸を整え、真剣な表情で言った。

 

「上條くんには、Dクラスに戻ってきて欲しいんだ」

「それは平田くんの言葉じゃなくて、女子の総意なのかな?」

「総意……そうだね。内心では、まだ上條くんのことを疑っている子もいると思う」

 

平田くんは続けた。

 

「でも、櫛田さんや軽井沢さんが他の子に呼びかけてくれてね。いちおう全員の同意は得られたよ」

「軽井沢さんが?」

 

軽井沢さんは、下着を盗まれた当事者だ。

昨日、俺にベースキャンプから出ていくように言ったのも軽井沢さんだった。

 

なのに、どうして?

何か、心変わりがあったのか?

 

俺の疑問に、平田くんは答えた。

 

「昨日、松下さんと話している時に気づいたみたいだよ」

 

千秋さんが?

俺がいない間にも、千秋さんは俺のために動いてくれていたのか。

 

それなのに、俺は千秋さんを……

本当に、バカだな。

 

俺は、目の前の平田くんを見据える。

 

「……平田くん。ありがとう」

「うん。残りの試験も一緒に頑張ろうね」

 

平田くんは、優しく微笑んだ。

俺は静かに頷く。

 

俺が平田くんから視線を外すと、ある女子がこちらをちらちらと窺っているのが見えた。

軽井沢さんか。

 

軽井沢さんは、俺をベースキャンプから遠ざけた張本人だ。

それでも、今の俺がここに戻ってこられたのは、軽井沢さんが動いてくれたからだ。

 

しっかりとお礼は言わないとな。

俺は軽井沢さんに視線を向け、ゆっくりと近づく。

 

「軽井沢さん……その、平田くんから話を聞いたんだけど、その……ありがとう」

 

俺の言葉に、軽井沢さんは一瞬戸惑ったように口ごもる。

 

「う、うん……別に、お礼を言われるようなことはしてないし」

「いや、軽井沢さんが言ってくれなかったら、俺はここに戻っては来れなかったよ」

 

俺が真っ直ぐにそう伝えると、軽井沢さんは少し表情を曇らせ、視線を逸らした。

 

「元はと言えば、あたしがしたことだし……上條くんには、悪いことしたと思ってる」

 

軽井沢さんは、珍しく素直にそう言った。

彼女の指先はぎゅっと握り締められ、少しだけ震えていた。

 

「……それだけ、それだけだから!」

 

軽井沢さんは、早口でそう言い放つと、忙しなく背を向けて走り去っていった。

 

軽井沢さんと話し終えた後、俺たちは点呼を済ませ、今日1日の食料を集めるために班を作ることになった。

平田くんが挙手制でメンバーを決めていった。

俺の配属された班のメンバーは佐藤さん、篠原さん、市橋さん、東さん。

見事に女子しかいないグループになってしまった。

 

まあいい、ここでの接触は今後のためにも悪くない。

 

俺は、女子4人と共に森の中へと進んでいく。

そんな中、ふと篠原さんが恐る恐る俺に問いかけてきた。

 

「上條くん、本当に……上條くんは盗ってないんだよね?」

 

俺は足を止めることなく、できるだけ穏やかに答える。

 

「もちろん。それは信じてほしい」

「私は上條くんのこと、信じてたよ!」

 

すると佐藤さんが、ちらっと俺の方を見て、勢いよくアピールしてきた。

 

「ありがとう、佐藤さん。そう言ってもらえると嬉しいよ」

 

俺がそう返すと、佐藤さんは照れたように頬をかきながら笑う。

 

「えへへっ、だって上條くんは、そんなことする人じゃないってわかってるから」

 

市橋さんと東さんは、まだ俺のことを疑っているのかもしれない。

今は目立つようなことは避けて、信頼の回復に努めるべきだな。

 

俺は、いつも通り食料の場所を探りながら、それほど時間はかからずに必要な分を確保していった。

集めた食料を手に戻る途中、佐藤さんは唐突に俺を褒め始めた。

 

「上條くんって、本当にすごいよね!昨日も、上條くんがたくさん食料を採っておいてくれたから、私たちは採りに行かなくてよかったんだよ!」

 

佐藤さんの言葉に、市橋さんも少しだけ柔らかい表情を見せた。

 

「そうだね。上條くんのおかげで、私たちが楽できたのは事実だね。そこはちゃんと感謝してます。」

 

市橋さんの言葉に、東さんも無言ながら小さく頷いた。

 

俺は昨日のことで、かなり信用を落としたと思っていた。

だけど、平田くんや軽井沢さんのおかげで、ある程度は改善されているようだった。

 

「ありがとう。でも、そんな大したことじゃないよ」

「素直に褒められたら喜べばいいのに。結構クールだよね、上條くんって」

 

そう言いながら、彼女は俺の肩に軽く寄りかかるような仕草を見せた。

 

『発情』を使用していないのに、距離が近い。

俺がどう反応すべきか考えていると、篠原さんが呆れたように口を挟む。

 

「ちょっと距離近すぎない?上條くんが困ってるじゃん」

 

篠原さんの言葉に、佐藤さんは唇を尖らせながらも、少しだけ距離を取る。

 

「別にいいじゃん。上條くんだって嫌がってるわけじゃないでしょ?」

 

佐藤さんは俺の顔を覗き込むようにして、軽く微笑んだ。

 

「別に嫌じゃないですけど、こんなことしたら勘違いされるかもしれませんよ?」

「私は別にそれでもいいけどねー」

 

佐藤さんの発言に篠原さんは驚きを見せる。

 

「ちょっと正気?」

 

千秋さんのこともあるし、あんまり大事にはしたくないんだけどな。

 

「……そういうこと言って、あとで困るのは佐藤さんだからね?」

「うーん……だってぇ」

 

篠原さんの言葉に佐藤さんは軽く肩をすくめたが、その目はまだ俺をじっと見ていた。

 

ベースキャンプに戻ると、女子たちはシャワー室に向かおうとしていた。

今日の天気は曇りで森の湿気も相まって、蒸し暑さが肌にまとわりつく。

俺も額の汗を拭い、シャワー室の前に目を向けた。

 

「結構並んでるね……」

 

軽井沢さん、園田さん、石倉さんの3人が、すでにシャワー待ちの列を作っていた。

俺たちがその様子を眺めていると、綾小路くん、堀北さん、櫛田さん、伊吹さん、山内くんの5人グループが帰ってきた。

 

「え? 堀北さん、どうしたの……?」

 

俺は、思わず目を見開いた。

頭から泥を被った堀北さんがそこにいたからだ。

 

「あまりジロジロ見ないで欲しいのだけれど……」

 

堀北さんは、わずかに顔をしかめる。

 

「ご、ごめん……」

 

俺は軽く謝罪を入れると、こっそりと綾小路くんに耳打ちした。

 

「何があったの?」

「山内が、堀北の頭に泥を塗りたくった」

「え、ええええええ?!」

 

俺は、思わず山内くんの方をちらっと見やる。

それを察したのか、山内くんは眉を吊り上げ、俺を睨みつけてきた。

 

「お、おい!なんだよ上條!そんな目で見んじゃねえ!それに綾小路、お前っ!」

 

ものすごく怒っている様子だった。

俺には理解できないが、何か綾小路くんに対して腹を立てているのだろうか?

だが、それよりも今は堀北さんが心配だ。

 

「シャワー室はしばらく時間が掛かりそうだよ。堀北さん、本当に大丈夫?」

「え、ええ……」

 

堀北さんは、どこか元気がない。

泥を被ったことだけが原因ではない。

そんな気がした。

 

綾小路くんも、そんな堀北さんを静かに見つめていた。

 

「なら、川を使ったらどうだ? それなら手っ取り早いだろ」

「そうね。それ以外に方法はなさそう」

 

堀北さんは、少し考えた後に頷いた。

すると、佐藤さんが興味深そうに口を挟む。

 

「川かぁ、いいね!私もそうしようかな?上條くんも一緒にどうかな?」

「え、俺も?それはちょっと……」

 

思わず言葉を詰まらせる。

 

「水着だから大丈夫だって」

 

佐藤さんはそう言って、俺を無理やり川へと連れて行こうとする。

伊吹さん、市橋さん、東さんの3人は、シャワーを待つと言って川には来なかった。

 

俺は佐藤さんに手を引かれながら、ゆっくりと水に浸かる。

少し想定外の展開だったが、まあいい。

市橋さんと東さんと別れたことで、人数が減り、俺も動きやすくなった。

 

少し周囲を見渡す。

堀北さんと櫛田さんは、少し離れた場所にいる。

 

俺は、周囲の状況を確認しながら、さりげなく佐藤さんに声をかけた。

 

「もう少し奥に行ってみませんか?」

 

佐藤さんは、一瞬首をかしげる。

 

「え、いいけど……どうして?」

 

俺は落ち着いた声で答えた。

 

「少し暑いので、もう少し冷たい水に当たりたいなと思って」

 

俺の言葉に、佐藤さんは納得したのか、軽く頷く。

 

「なるほどね、いいよ。じゃあ、行こっか」

 

篠原さんは、この場所がちょうどいいらしく、ここで待っていると言った。

 

「じゃあ、すぐに戻ってきますね」

「うん、佐藤さんは上條くんにちょっかい出しちゃダメだからね」

 

篠原さんは軽く釘を刺すように言う。

 

「はーい、わかってまーす」

 

佐藤さんは気の抜けた返事をしながらも、楽しそうに笑う。

篠原さんは呆れながらも、俺たちを送り出した。

 

篠原さんが俺たちの視界から外れた頃。

そろそろか。

 

俺は、自分のために能力を使う。

決意を固め、佐藤さんに対して俺の意識を傾ける。

 

「んっ……」

 

途端に佐藤さんの顔が紅潮し、身体がビクッと震えた。

 

「佐藤さん?」

 

俺が声をかけると、彼女はハッとしたように顔を上げる。

そして、どこか熱っぽい瞳で俺のことを見つめた。

 

「な、なに?上條くん……」

 

俺は彼女の変化を見逃さない。

 

「もしかして、体調悪いですか?少し顔色が赤いような気がします」

「う、うん……大丈夫?」

「本当に大丈夫ですか?ちょっと休んだ方がいいですよ」

 

俺は佐藤さんを心配するふりをして、佐藤さんを川から上げる。

 

「か、上條くんっ……わたしっ」

「どうしたんですか?」

「私の身体、すごく熱くなっちゃってっ……」

「待っててください。すぐに人を呼んできます」

 

俺は佐藤さんを川のすぐ近くの木にもたれかからせる。

俺はすぐに立ち上がり、先ほどいた場所へと急ぐ。

 

「篠原さん!佐藤さんの様子がおかしいんです!」

 

俺は篠原さんに呼びかける。

 

「え?」

「ちょっと来てくれませんか」

 

俺の言葉に篠原さんはすぐに駆け寄ってくる。

思い通り、すべて上手くいった。

これでいい。

 

篠原さんと俺は今2人きりだ。

この状態なら発動できる。

 

俺は、篠原さんに能力を使う。

 

「え……あっ」

 

能力を受けた瞬間、篠原さんは声を漏らした。

 

「篠原さんまで、どうしたんですか?」

 

ここはまだ心配したふりを続ける。

俺からやったという事実を残さないために。

 

俺は篠原さんを担いで、佐藤さんのいる場所まで連れて行く。

 

「あっ……んっ……」

 

篠原さんの甘い声を聞きながら、佐藤さんの隣に座らせる。

 

「上條くんっ……私、なんだか変なの……んっ♡」

「大丈夫ですよ。すぐに良くなりますから」

 

俺は2人にそう声をかける。

 

「上條くんっ♡私、もう我慢できないかもっ♡」

 

篠原さんはそう言って俺に抱き着いてくる。

そして、俺の唇に自分の唇を強く押し付けてきた。

 

「んちゅっ♡あっ……んんっ♡」

 

俺はそれを受け入れつつも動揺したふりをする。

 

「んんっ……!し、篠原さん?」

「はぁっ……好きっ♡大好きっ♡」

 

そう言って、篠原さんは俺を離そうとしない。

それを見た佐藤さんが、頬を膨らませながら迫る。

佐藤さんは俺に対して抱き着きながらキスをせがんでくる。

 

「もうっ、篠原さんずるいよぉ……私が最初に上條くんとキスしたかったのに!」

 

俺は、2人に求められるがままにキスをした。

やがて、佐藤さんと篠原さんは俺に身体を押し付けながら、甘い吐息を漏らし始めた。

 

「はぁっ……んっ♡上條くん♡」

「んんっ……♡上條くぅん♡」

 

そして、2人同時に俺の股間に手を伸ばしてきた。

 

「上條くんもここ、大きくなってるよ?」

 

佐藤さんが意地悪そうに言う。

 

「いや、それは……」

 

俺は言葉を詰まらせる。

すると2人は、お互いに目配せをした。

そして、同時に俺の服を脱がす。

2人はいやらしい手つきでズボンを下ろし水着に手をかけると一気に下ろした。

 

「きゃっ♡」

 

2人の声が重なる。

俺の勃起した肉棒を見て声を漏らす。

 

「これが上條くんの……♡」

 

篠原さんが物欲しそうに見つめる。

そんな様子を見て、佐藤さんは少しムッとした表情を見せた。

 

「上條くん、私のおまんこに挿れて欲しいな……」

 

佐藤さんは我先に、と自分の秘部を広げて見せてきた。

それを見た篠原さんも、俺の肉棒に優しく触れてくる。

 

「私……上條くんと1つになりたい」

 

2人は俺を挟むようにして誘惑してくる。

俺も理性が切れてしまいそうだ。

 

「上條くん、最初は私に挿れて♡」

 

佐藤さんの言葉を合図に、俺は佐藤さんに覆い被さるようにして挿入した。

 

「ああっ、いっ……痛いっ!だけど……気持ちいいっ♡」

 

佐藤さんは痛みに耐えながらも、幸せそうな表情を浮かべる。

 

「上條くん♡私のこともちゃんと見てよ」

 

篠原さんが甘い声で囁くと、俺の乳首を口に含んだ。

 

「うっ……!そこはっ……」

 

思わず声が出てしまう。

佐藤さんも、俺のモノをきつく締め付けてきた。

2人の激しい攻めに、俺はすぐに果ててしまいそうになる。

だが、2人はそれを許さない。

 

「まだダメ♡もっと楽しませてよ♡」

「そうだよ上條くん♡一緒にイこうね♡」

 

2人が俺を求めるように動く。

佐藤さんの中は温かくぬるぬるしていた。

俺の肉棒に絡みつき射精を促すように締め付けてくる。

だがその快感に俺は耐えられず、俺はついに限界を迎えた。

 

「っ、やばいですっ!」

 

俺の肉棒から勢いよく精液が出る。

その反動で、膣内が強く締め付けられた。

 

「ああっ!すごいっ♡出てるっ……熱いのいっぱい出されてるっ♡」

 

佐藤さんは激しく身体を震わせ絶頂に達した。

 

「上條くんのせーえき……いっぱい出てるっ♡」

 

佐藤さんの秘部からは俺から出されたドロっとした液体が流れ出ていた。

 

「はぁ……はぁ……」

 

俺が一息つくと、佐藤さんは蕩けた表情で俺にキスをした。

 

「上條くん♡大好きだよ♡」

 

「んっ……」

 

佐藤さんのぎこちないキスを受け入れる。

優しく触れる唇、千秋さんや一之瀬さんとも違うキス。

 

それを見た篠原さんは、少し不満そうにしながらも俺に言った。

 

「佐藤さん……今度は私の番だからね」

 

そう言って、今度は篠原さんが俺に抱き着き、優しくキスをする。

 

「んん……っ」

 

篠原さんのキスは佐藤さんとも違い、ぎこちなさはあるが強気なキスだった。

 

「上條くん♡もっとキスしたい♡」

 

そう言って、篠原さんは俺の腰に手を回し、舌を絡ませてきた。

篠原さんの舌が口内に侵入してくる。

最初からディープキスなんて……

 

「んんっ♡上條くんとのキス……気持ちいい♡」

 

篠原さんは夢中で俺の舌に自分の舌を絡ませてくる。

そして、やがて満足したのか、ゆっくりと唇を離した。

篠原さんは頬を赤く染めながら、俺を見つめる。

 

「じゃあ、そろそろここにも挿れて♡」

 

篠原さんが甘い声で囁く。

 

「はい……」

 

俺がゆっくりと肉棒を挿入すると、篠原さんは身体を仰け反らせた。

 

「んんっ♡上條くんのっ……私のナカにもきたっ♡」

 

篠原さんも初めてで痛みはあるはずだが、それ以上に快感の方が強いのか、あまり苦しそうな様子は見られない。

 

「篠原さんっ……動きますよっ……」

 

俺はゆっくりと腰を動かし始める。

すると、篠原さんは甘い吐息を漏らした。

 

「あんっ♡すごいっ……これが上條くんの……」

 

俺は少しずつ動きを早めていく。

すると、次第に篠原さんの声も大きくなってきた。

 

「ああっ!いいっ♡もっと強くしてぇっ♡」

 

篠原さんの望み通り、俺はさらに強く打ち付ける。

 

「はぁっ……んんっ!なにこれっ、おかしくなっちゃいそうっ♡」

 

篠原さんは身体を痙攣させるように震える。

どうやら軽く絶頂に達したようだ。

俺も射精するためにラストスパートをかける。

 

「あぅっ……上條くんのおちんちん、ナカで暴れてるっ♡ダメッ……イっちゃうっ♡」

 

篠原さんは大きく仰け反り、2度目の絶頂に達した。

 

「ああっ!♡イクっ!ああぁっっっ!」

 

2度目の絶頂で、篠原さんの秘部から潮が吹き出す。

それと同時に俺のモノから再び大量の精液が放出された。

 

「はぁっ、んっ♡上條くんの……あったかい♡」

 

篠原さんは満足そうな表情を浮かべた後、疲れたのか意識を失ってしまった。

俺が篠原さんから引き抜くと、佐藤さんがすぐに声を上げた。

 

「上條くん……私とも、もっとして♡」

 

佐藤さんに俺のモノを優しく握られ俺のモノは再び勃起してしまう。

 

「佐藤さんっ……」

「上條くん♡早くっ♡」

 

俺は佐藤さんに誘われるまま、再び挿入する。

 

「ああっ♡きたぁっ♡上條くんのおちんちんっ♡」

 

佐藤さんは激しく腰を動かし始めた。

2度目のセックスは、佐藤さんも痛みをあまり感じていないようだった。

 

「ああんっ♡上條くんっ!あっ……はうっ♡」

 

佐藤さんは快感に悶えながら、自ら腰を振る。

 

「あっ♡あんっ!はぁんっ♡」

 

俺もそれに応えるように強く打ち付ける。

 

「ああっ!上條くんのおちんちんっ……奥まできてるぅっ♡」

 

佐藤さんは身体を仰け反らせ、快感に悶える。

 

「ああっ!ダメっ♡もうイきそうっ♡」

「くっ、佐藤さんの締りがっ!」

 

佐藤さんのナカがきつく締まる。

 

「ああっ!イくっ♡上條くんっ♡私もう……ダメェッ♡」

「佐藤さんっ!俺ももうっ!」

 

俺は、佐藤さんがイったのと同時に膣内に射精した

 

「はぁっ……はぁ……」

 

俺は息を整えながら、ゆっくりと肉棒を引き抜いた。

佐藤さんも篠原さんも最初のセックスで疲れたのか気を失っていた。

 

これで9人。

俺はこんなところで止まるわけにはいかない。

佐藤さんと篠原さんには悪いが、もう俺の眼中に2人の姿はなかった。

 

9

 

佐藤さんと篠原さんは、ぐったりとした様子で静かに眠っていた。

俺はそんな2人を見下ろし、軽く息をつく。

 

「初めてにしては、少しハードだったかな」

 

この2人は今までこういった行為はしてきていないだろうし、思った以上に体力を使わせてしまったかもしれない。

 

俺は、ゆっくりと立ち上がった。

この場に長く留まるのは得策じゃない。

もし今の2人の様子を誰かに見られたら、面倒なことになる。

 

俺は2人をこの場に寝かしつけ、堀北さんや櫛田さんの様子を窺うことにした。

 

2人の様子を窺うために川を下ってみたが、すでにその姿はなかった。

10分以上経過しているし、こんな寒い川に長居するはずもないか。

 

周囲を見渡しながら考えていると、ふとベースキャンプのテント付近に目が留まる。

そこには、綾小路くんと堀北さんが一緒にいた。

 

「ここからじゃ、さすがに話の内容はわからないか」

 

距離があるため、俺の耳を持ってしても声までは聞こえない。

少し近づいてみるか?

さっきの堀北さんの反応も気になるし……

 

俺は、2人に気づかれないよう慎重に足を進めた。

 

しかし、その途中で綾小路くんと堀北さんは森の奥へ歩き出してしまった。

このまま追えば、俺の存在がバレる可能性が高い。

ここは、少し距離をとりながら様子を伺うしかなさそうだな。

俺は身を潜め、慎重に2人の動向を探る。

 

そのとき、堀北さんの声がはっきりと聞こえた。

 

「……これは私の油断。ミスだと自覚したうえで話すこと。いい?」

 

堀北さんが、自分のミスを認める?

あの堀北さんが、自ら非を認めて話すなんて……

 

「……盗まれたの」

「まさかお前の下着が盗まれた、とか言わないよな?」

「違うわ。もっと最悪ね。盗まれたのは……キーカードよ。完全に不覚だったわ」

 

俺はその言葉に、思わず声を上げてしまった。

 

「キーカード?!」

「……誰?」

 

堀北さんが驚き周囲を見回す。

 

しまった、つい口に出してしまった。

驚くと声を出してしまうのは俺の悪い癖だ。

 

だが、ここで無理に隠れるのは、お互いのためにならないな。

素直に顔を出すしかないか……

 

そう思った矢先。

 

「上條だろ?」

 

綾小路くんが、俺の名前を呼んだ。

 

「え、どうして……?」

 

俺は、驚きつつも素直に2人の前へ姿を現す。

 

「さっきから後をつけていただろ?」

「え?」

 

最初からバレてたのか?

堀北さんは、綾小路くんを睨む。

 

「あなた、上條くんが後を追ってきているのを知っていて、私に言わなかったの?」

「ここでは話せないとは言われたが、別に他に人がいてはいけないとは言われてないからな」

「そんなの屁理屈よ。でも、聞かれてしまったなら仕方ないわ。上條くんにも話しておくわ」

 

そう言って、堀北さんは静かに口を開いた。

 

「私が川で泥を落としている間に、キーカードを盗まれたの。本当に情けない話ね。ごめんなさい、これは私の責任問題よ」

「いや、悪いのは盗んだヤツだ。そうだろ?」

「そうだよ。堀北さんはクラスのリーダーとして精一杯やってたし、責められるべきはキーカードを盗んだ犯人に決まってる」

 

俺と綾小路くんの言葉に、堀北さんは苦笑する。

 

「あなたは下着を盗んだ犯人に仕立てられていたものね。私もあなたもしてやられたというわけね」

「そうだね……」

 

軽井沢さんの下着盗難事件。堀北さんのキーカード盗難事件。

これは本当に偶然か?

 

それとも……

 

「やっぱり犯人は……」

 

俺の中で、一度捨てようとした可能性が再び浮かび上がる。

 

「私が疑う人物は2人。軽井沢さんか、伊吹さんのどちらか――」

 

堀北さんの言葉を遮り、俺は即答した。

 

「犯人は伊吹さんだよ」

 

堀北さんが少し驚いた表情を浮かべる。

 

「随分と即答するのね。何か根拠はあるの?」

「犯人が伊吹さんだと、いろいろと都合がいいんだよ」

「都合がいい?」

「うん。軽井沢さんの下着を盗んだのは、多分クラスの足並みを乱すため。男子と女子を分断することで、クラス内の目を伊吹さんに向けにくくしたんだ。そして、本当の目的は最初から堀北さんのキーカードだったんだよ」

 

キーカードは、クラスのリーダーを証明するもの。

他クラスのリーダーを特定すれば、大きなポイントを獲得できる。

Cクラスの伊吹さんには、それをやる理由がある。

いや、それしかありえない。

俺の中で、すべての線が繋がった。

 

「そうだな。理由はどうあれ、軽井沢は今回の犯人ではないだろう。軽井沢はさっきまでシャワー室の前にいたし、彼女の指示を受けそうな女子2人も同じだった」

 

綾小路くんが冷静に推測を述べる。

俺の知る限り、園田さんも石倉さんも、こんなことに加担するタイプとは思えないし、軽井沢さんが犯人である可能性は低いだろう。

 

それに、昨日まで綾小路くんも俺と同じく、伊吹さんが犯人ではないと考えていた。

だが、今の状況を踏まえると、伊吹さんが犯人であるというのは満場一致だろう。

 

「でも、キーカードにはリーダーの名前が刻まれているんだから、盗み出すのは危険な賭けだと思わない?」

 

堀北さんが疑問を投げかける。

 

「え、それは堀北さんの指示で綾小路くんがデジカメを破壊したからじゃないの?」

 

俺がそう言うと、堀北さんは首を傾げた。

 

「デジカメを破壊?あなた、何を言っているの?」

「え……?」

 

俺は思わず言葉を失った。

以前、Cクラスのベースキャンプを偵察しに行ったとき、綾小路くんは堀北さんの指示でデジカメを破壊したと言っていた。

だが、今の堀北さんの反応を見る限りそれは……

 

「い、いや……なんでもないよ。ちょっと勘違いだったかも……」

 

だが、ここで綾小路くんを問い詰めたところで、事態が進展するわけじゃない。

今は、この状況をなんとかしなければならない。

 

「とにかく、今は伊吹さんからキーカードを取り返さないと」

 

俺がそう言うと、堀北さんは静かに頷く。

 

「堀北は、伊吹から目を離さない方がいい。持ち逃げされるのが最悪のシナリオだからな」

「ええ、わかってるわ。でも、ごめんなさい。先に戻ってもらえるかしら? すぐに追いかけるから」

「わかった。先に戻って、伊吹を見張ってる」

 

そう言って、綾小路くんはベースキャンプへと戻っていった。

俺は、すぐにでも綾小路くんを追いかけて話を聞きたかった。

だが、向こうにはまだ佐藤さんと篠原さんを放置したままだ。

今は諦めるしかない。

 

10

 

佐藤さんと篠原さんのいた場所に戻ると、ちょうど佐藤さんが目を覚ましたところだった。

 

「ふわぁ……私は……って、上條くん?!」

 

俺の姿を見て、佐藤さんは驚いたように目を見開いた。

その声に反応して篠原さんも目を覚まし、2人は顔を見合わせる。

 

「あ……あ!さっきのは夢じゃ……ない!」

 

篠原さんは状況が呑み込めず、愕然とした表情を浮かべた。

 

「2人とも、もう大丈夫ですか?」

 

俺がそう尋ねると、佐藤さんはまだぼんやりした様子で答える。

 

「う、うん……目は覚めたけど、私……上條くんとさっき――」

 

その言葉を遮るように、篠原さんが慌てて口を挟んだ。

 

「あー!待って待って!状況が理解できない!さっきのって、本当に?夢じゃないの?」

「夢じゃないみたいだよ」

 

佐藤さんは自分の頬を軽くつねり、小さく唸った。

 

「私、本当に……しちゃったんだ……」

「篠原さん、すごかったもんね」

「ち、ちがっ!あれはっ!」

 

篠原さんが顔を真っ赤にして、必死に否定しようとする。

 

「でも、おかしいんだよね。私も、そんなつもりじゃなかったのに……」

 

佐藤さんは眉をひそめながら呟いた。

 

「上條くんといたら、急にそんな気分になっちゃって……気づいたらもう……」

「佐藤さんも?なんだか……私も似たような感じだった」

「俺もびっくりしました。急に2人の様子がおかしくなって……」

 

俺の言葉に、篠原さんは気まずそうに視線を落とした。

 

「ごめん、上條くんに無理やり迫るようなことしちゃって……」

「私もごめんね。本当に信じてもらえるかわからないけど、あんなことするつもりはなかったの!」

 

佐藤さんが必死に弁解する。

 

「わかってます。佐藤さんも篠原さんも、何かがあったんですよね。この無人島試験はストレスも溜まりますし、仕方ないですよ」

 

俺は2人を擁護した後、自分も謝罪する。

 

「それに、俺にも非があります。いくら2人掛かりだったとはいえ、無理にでもその場から逃げるべきでした。そのせいで、2人の初めてを……」

「うっ……上條くんは悪くないよ。自分で言うのも恥ずかしいけど、本当にさっきの私はどうかしてた」

 

佐藤さんは俺を庇うように言い、篠原さんも小さく頷く。

 

「でも、これは3人の秘密にしておいた方が良さそうですね。もしクラスのみんなに知られたら……色々と困りますし」

「そ、そうだね……」

「うん、私も周りには知られたくない」

 

3人の意見はまとまった。

今回のことは、俺たち当事者だけの秘密として口外しないと。

 

「じゃあ、そろそろベースキャンプに戻った方がいいですね」

 

俺たちが森を抜け、ベースキャンプへ戻ろうとしたその時。

 

「な、なんだあれは……」

 

俺は息を呑む。

 

俺たちの視線の先、Dクラスのベースキャンプの方角から黒い煙が立ち昇っていた。

 

「あれは……まさか、火事……?」

 

一瞬、思考が止まる。

何が起きている? 何がどうなっている?

 

向こうではいったい……何が起きているんだ。




佐藤と篠原のシーンに関しては書いてるうちに、うちの息子が暴走して上手く書けなかったので少し訂正するかもしれません。
では、次は来週になることを祈って……

単純に出番を増やして欲しいキャラクター候補(すぐには反映できない可能性高いです)

  • 綾小路清隆
  • 堀北鈴音
  • 櫛田桔梗
  • 松下千秋
  • 森寧々
  • 佐倉愛里
  • 長谷部波瑠加
  • 平田洋介
  • 龍園翔
  • 石崎大地
  • 山田アルベルト
  • 伊吹澪
  • 椎名ひより
  • 一之瀬帆波
  • 白波千尋
  • 神崎隆二
  • 葛城康平
  • 坂柳有栖
  • 橋本正義
  • ブラックルーム最高傑作山内春樹
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