投稿頻度を上げていきたいと思っていたのですが、なかなか週1のペースを維持できず、日曜日の更新には間に合いませんでした。
しばらくは、4月の頭頃まではこのくらいのペースでの更新になると思います。
4月以降は大学が忙しくなるため、不定期更新になる可能性がありますが、引き続きよろしくお願いします。
1
幸村くんの誘いを受けて、俺は彼の部屋を訪れた。
扉を開けると、同室の平田くんがベッドに腰かけたまま携帯を操作している。
どうやら誰かと連絡を取っている最中のようだ。
「平田、悪い。取り込み中だったか?」
綾小路くんが声をかける。
「ううん、大丈夫。気にしなくていいよ。試験のことで、いろんな子からメールが来ててね」
首を軽く振りながら、平田くんは苦笑した。
やっぱりクラスのまとめ役ともなると連絡は絶えないよな。
こういう立ち回りは平田くんだからこそできるんだろうけど、その分負担も大きいはずだ。少し心配になる。
「今からここで、試験に関することを整理したいと考えている。構わないか?」
幸村くんが本題に入る。
「もちろん。むしろ、説明を受ける前に少しでも理解しておきたいと思ってたところだよ。僕も混ぜてもらえるかな?」
こうして、俺たちは4人で話し合うことになった。
「まず、俺たちは卯と呼ばれるグループに振り分けられた。まだ誰が優待者になるのかは分からないが、グループには必ず1人、優待者が存在すると真嶋先生は説明していた」
幸村くんは試験の内容を、平田くんにもわかるよう簡潔にまとめていく。
「なるほど……」
説明を聞いたあと平田くんは腕を組み、静かに考え込む。
「12個のグループに、全学年の生徒が分配される。無人島ではクラスの結束を試すような内容だったけど……今回はずいぶん毛色が違うね」
確かにそうだ。
無人島では、クラス単位で食料やポイントをやりくりして、その運用が結果に直結していた。
だけど今回はグループ別特別試験。紙面にそう明記されていた通り、結果はグループ単位で出る。
つまり、クラス全体の状況を把握するのが極端に難しくなっている。
無人島では綾小路くんが1人で戦況をひっくり返した。
だけど、この形式だと同じことは通用しないかもしれない。
「……この試験、Dクラスには少し不利かもしれないね」
思わず、ぼそっと漏れた。
それを聞いた幸村くんが、眉をひそめる。
「何が言いたいんだ?」
「12グループに分かれるってことは、戦力も分散するでしょ?Dクラスは平田くんや櫛田さん、堀北さんや幸村くんみたいに優秀な人もいるけど……そうじゃない生徒も多い。平均値が低いクラスほど、こういう形式は不利になりやすいと思うんだよね」
俺が言い切ると、幸村くんは少しの間黙り込んだ。
その沈黙を割るように、綾小路くんが独り言みたいに呟く。
「確かに上條の言う通りだな……優待者を簡単に見つける方法でもあればいいんだが」
「そんなものがあったら試験にならないだろ」
幸村くんが即座に切り捨てる。
優待者を簡単に見つける方法。
無人島でリーダーを入れ替えたみたいな裏技が、今回もできるのか?
そうは思えない。
だけど、この学校のことだからゼロとも言い切れない。
ルールの抜け穴がある可能性――
「でも、引っかかる点を洗い出すだけでも意味はあると思うよ」
平田くんが、落ち着いた声で言った。
「引っかかることか……」
幸村くんが顎に手をやる。
「まず、メンバーの選ばれ方だな」
「そうだね。卯グループの他クラスのメンバーを見ると、Aクラスは男子だけだったり、Cクラスは女子だけだったり、偏りがある。学力順ってわけでもなさそうだし。だって、幸村くんと俺が同じグループだよ?」
「上條は別に学力が低いわけじゃない」
幸村くんが淡々と言い返し、続けて刺すように言う。
「ただ、学力順なら軽井沢と同じグループになることは絶対にないがな」
……よほど軽井沢さんのことが嫌いなんだね。
でも、軽井沢さんの彼氏である平田くんはその一言に揺れる様子もなく、ただ静かに聞いていた。
「あとさ。どうして干支なんだろうって思う」
俺は、もうひとつの違和感を口にしてみる。
「グループ1とか2とかでもよかったはずなのに、わざわざ名前をつけてる。しかも12なら、十二星座とか十二天将とか、他にもいくらでもあるのに。干支にしたのって、何か意味があるのかなって」
「確かにね。意味のない名前でも成立するのに、わざわざ意味がありそうなものを選んでる。ただ、クラス以外でグループを組まされたのも初めてだから、深読みしすぎの可能性もあるけど」
平田くんは頷きながら冷静に分析する。
「十二星座だったら、メンバーに何か法則がありそうなのにな」
綾小路くんが、また独り言のように呟く。
「それって誕生日で振り分けるってこと?」
俺が聞き返すと、綾小路くんは肩をすくめた。
「極端な偏りがあれば成立しない。気にしないでくれ」
そう言われても、引っかかりは残る。
確かに、十二星座ならグループ分けの根拠として推測しやすい。
だけど、干支だとそれは難しい。
高校1年生ともなれば、生まれ年はほぼ同じ。
早生まれかそうでないか程度の違いしかない。
生年月日を基準に12のグループへ振り分けるのは現実的じゃない。
「じゃあ、やっぱり干支自体には意味がないのかな?それとも名前に何かヒントがあるとか」
「干支の名前、か」
幸村くんが目を閉じて、兎グループの顔ぶれを思い返しているようだった。
「俺たちは卯。兎も卯も音は“う”だ。だが、“い”のつく一之瀬や伊吹はいても、“う”のつく生徒はいない。下の名前も同様だ」
「そんな上手いことはないか……」
少し肩の力が抜ける。
「クラスの優待者が判明してからの方が、何か見えてくるかもしれないね。法則性があるなら、だけど」
平田くんが一息ついて続ける。
「ただ、ひとつ思ったんだ。12グループあるということは、優待者はクラスごとに均等に3人ずついると考えるのが自然じゃないかな?」
「ああ。それは俺も同意見だ」
幸村くんが即座に頷く。
「この優待者という存在は、この試験においてあまりにも優位だ。自分のクラスに優待者がいるなら、守りにも攻めにも選択肢が生まれる」
「人数が偏っていたら、開始前から勝負が決まってしまうようなものだよね」
平田くんが静かに補足する。
優待者の数が直接勝敗を決めるわけではない。
だが、クラスポイントの変動に直結する以上、学校側が極端に不公平な配置をするとは考えにくい。
「ごめん、ちょっと電話が……」
そのとき、平田くんの携帯が静かに鳴った。
「ある程度、話は整理できたし今日は解散するか」
幸村くんの一言で話し合いは終わりとなった。
「ごめんね、3人とも。僕のせいで」
平田くんが申し訳なさそうに頭を下げる。
「気にするな。平田は忙しいからな。むしろ時間を取らせて悪い」
綾小路くんが淡々と返す。
「じゃあ今日はありがとう。これから同じグループとしてよろしく」
俺もそれに続き、部屋を後にした。
部屋を出て自室に戻る途中、廊下を歩いていると、不意に背後に気配を感じた。
振り返ると、さっきまで一緒にいたはずの綾小路くんが、無音で立っていた。
「う、うわぁっ!」
反射的に声が出かけたが、素早く口を押さえられる。
「静かにしろ」
相変わらず気配を殺すのがうますぎる。
俺は人の気配には敏感なはずなのに、綾小路くんだけは別格だ。
人気のない通路へと引き寄せられる。
「ど、どうしたのかな?」
「お前がこの試験をどう見ているのかが、少し気になった」
それは俺を試しているということか?
「どうって、さっきの話で出た通りだけど……」
「なるほどな。まあ、それでいい」
「それでいいって、なんだかすっごく上からだね。まあ事実だから言い返せないんだけどさぁ」
なんとなく頬を膨らませてすねたふりをしてみる。
「お前がやっても可愛げがないな。お前の彼女とかがやれば様になるんだろうが」
「う、うるさいなぁ」
軽口の裏にある温度差が、まだ慣れない。
綾小路くんは結局なんのために、俺を引き止めたんだ?
「お前には、これから堀北と接触する回数を増やしてもらいたい」
「せ、接触?!それって……もしかして、あの……そういうこと?」
「別に肉体的な意味じゃない。単純に会話する回数でもなんでもいい、お前が堀北と関係のある人物というイメージを植え付ける」
「それって……」
昨日、綾小路くんは学校生活で、目立った行動は極力避けると言っていた。
表向きは堀北さんがクラスを主導して、自分は裏方に徹すると。
「他クラスのリーダーに存在を悟られたくないってこと?」
「そういうことだ」
綾小路くんは静かに頷いた。
堀北さんの交友関係は他の生徒比較にならないほど狭い。
唯一の友人が綾小路くんと気づかれれば、マークされる可能性は高い。
「でもそれって、俺を囮にするってことだよね?」
「端的に言えばな」
「ひっどー」
「なんでもやると言ったのはお前だ」
昨日の言葉が、そのまま突き刺さる。
「わかってる。囮でもなんでもするけど、その代わり。わかってるよね?」
「お前が従っている限り、松下には手を出さない」
「こういう関係では、あっても俺は綾小路くんのことを信用したいと思ってるから……」
一瞬の沈黙。
「その甘い考えは、今のうちに捨てておけ」
言葉はあっさりと切り捨てられた。
そして、次の瞬間には綾小路くんの姿は俺の前から消えていた。
「まったく、俺は本当に面倒な人に目をつけられたんだな」
綾小路くんと話せば話すほど、自分が関わってしまった人間の恐ろしさを思い知らされる。
もし入学式の日に戻れるなら、綾小路清隆には絶対に近づくなと、自分の胸ぐらを掴んででも言い聞かせるだろう。
まあ、そんな妄想に意味はないけど。
とりあえず、一度部屋に戻ろう。
今日は少し疲れた。
堀北さんと接触しろと言われたが、今から会いに行くには理由がなさすぎる。
それに、今は特別試験の説明が行われている時間帯だ。
堀北さんが出席している可能性もあるし今度でいいだろう。
考えをまとめながら廊下を歩いていると、見知った姿が目に入った。
「一之瀬さん?」
「あっ、上條くん!」
ぱっと顔を明るくして、大きく手を振る。
「……今回の試験、同じグループみたいだね」
その言い方に、ほんの少しだけ申し訳なさが滲んでいた。
「そうですね。でも、一之瀬さんが同じで良かったです」
「え?」
意外そうに目を瞬かせる。
「知ってる人がいるっていうのもありますけど……一之瀬さんは、信用できる人なので」
一瞬、一之瀬さんの瞳が柔らかく揺れた。
「そう言ってくれると嬉しいな。上條くんには迷惑かけてばっかりだったけど……今度はちゃんと力になるからね」
優しく微笑む。
その笑顔が、胸に刺さる。
でも。俺はすでに、綾小路くんに弱みを握られている。
この試験中、どこまで自由に動けるかもわからない。
一之瀬さんとの関係も、秘密も、知られないように立ち回らなければならない。
守らなきゃいけないのは、千秋さんだけじゃない。
一之瀬さんも同じだ。
「一之瀬さん。今回の試験、お互い頑張りましょう」
内心を悟られないように、できるだけ自然に微笑む。
「うん。今回は話し合いがメインみたいだし、一緒に協力しようね」
「はい」
明るく返事をしながら、心の奥では別の決意を固めていた。
この試験で、一之瀬さんを綾小路くんには巻き込ませない。
2
部屋に戻ってしばらくすると、携帯が震えた。
差出人は綾小路清隆。
時刻は20時20分頃。
『堀北の特別試験の説明は20時40分からだ』
それだけ。
「……これは様子を見に行けってことか?」
時間以外、何も書かれていない。
だが、綾小路くんがわざわざ送ってくる以上、意図がないはずがない。
まったく人使いが荒いな。
俺は3階の自室を出て2階へと降りる。
20時40分から説明を受ける生徒なら、そろそろ部屋に入っていてもおかしくない時間だ。
それなのに、何人かは廊下の端に座り込み、壁にもたれ、あるいは携帯をいじりながら待っている。
まるで説明を受けに来たというより、何かを待っているように見える。
俺はさりげなく視線を巡らせる。
この人数は偶然なのか?
それとも、誰かが意図的に集まっている?
綾小路くんは、何を見ろと言いたかったんだ……?
と、そのとき。
見慣れた姿が視界に入った。
平田くんと綾小路くん。
結局、綾小路くんも来ているのか。
「あれ、上條くん。君も様子を見に来たのかい?」
平田くんが穏やかに声をかけてくる。
「実はそうなんだよね。俺は他のクラスの生徒のこととかあんまりよく知らないからさ。今のうちに顔を少しでも覚えておこうと思ってね」
本当は綾小路くんのメールを受けて急いできただけなのだが。
でも、それを平田くんに話すわけにはいかない。
無難な理由を口にしておく。
「それにしても平田は顔が広いな。今すれ違ったのは?」
綾小路くんが、さりげなく尋ねる。
さっき俺たちの方をちらちらと見ながら通り過ぎた生徒のことだ。
「ああ、Aクラスの森宮くん。それと、エレベーター近くにいるのはCクラスの時任くんだね」
即答だった。
「すごいね平田くん。どうやってそんなに把握してるの?」
「大したことはしてないよ。部活をやってると関わる機会も増えるし、人づてに名前を聞くことも多いからね」
部活動か。
前世の頃から勉学と同じくらい大事だとは言われていたけど、俺は結局やらなかった。
だが、この学校にいる以上、顔が広いに越したことはない。
俺も、今からでも何か始めるべきだろうか。
そんなことを考えながら、俺たちは平田くんが説明を受ける部屋の前へと近づく。
すると1人の屈強な男子生徒が、女子生徒に話しかけているのが目に入った。
体格は大きいが、どこか余裕のある立ち姿。
「もし俺の勘違いでなければ、20時40分組なんじゃないか?」
低く、落ち着いた声。
その生徒はAクラスの葛城くんだった。
がっしりとした体格に、揺るがない立ち姿。
無駄な動きがなく、視線もぶれない。
無人島で千秋さんと洞窟の前で話した時。
それに、綾小路くんととうもろこしを見つけた時にも顔を合わせた。
あのときも感じたが冷静で、芯が通っている。
Aクラスの中でも、中心にいる人間だと一目で分かる存在感がある。
「そうだとしたら……あなたに何か関係があるのかしら?」
向き合っていたのは堀北さん。
まっすぐに葛城くんを見据え、一歩も引かない。
「やはりな。君とは一度改めて話したいと思っていたところで朗報だな。俺も20時40分組だ。明日からは同じグループとして協力し合うことになる」
淡々とした口調。
だが、その言葉には確かな重みがあった。
つまり、葛城くん、堀北さん、そして平田くん。
この3人が同じグループということか。
説明する部屋の前で顔を合わせているのも納得だ。
「Aクラスの生徒にそう言ってもらえるのは光栄な話ね。あなたはDクラスの生徒に興味なんて持っていないと思っていたから」
堀北さんの声音は冷静だが、わずかに棘がある。
無人島で俺と千秋さんが葛城くんと話したときのことを思い出す。
あの時は、正直まともに取り合ってもらえなかった。
俺の話し方が拙かったのもあるが、
クラスの格差をはっきりと感じた瞬間だった。
だが今回は違う。
Aクラスの葛城くんの方から、Dクラスの堀北さんに接触している。
立場が、わずかに逆転しているとも言える。
「確かに、正直俺は今までDクラスの存在は眼中に入れていなかった」
葛城くんは隠すことなく言い切った。
「しかし前の試験の驚異的な結果を見れば、注目しないわけにはいかないだろう。何より勝つための布石を打っていたのが君だと分かれば尚更だ」
その視線はまっすぐ堀北さんへ向けられている。
無人島試験でDクラスが大金星を挙げたこと。
それが堀北さんの策略によるものだという噂は、すでに学年中に広まっていた。
もちろん、裏で糸を引いていたのは綾小路くんだが。
「だが、もしこれから先いつかは分からないが……DクラスからCクラスに上がってくるようであれば、Aクラスは容赦なく君を叩くだろう」
淡々と告げられた言葉。
脅しのようで、事実の宣告でもある。
「随分勝手な物言いね。Aにしてみれば大したことでもないでしょう? A以下のクラスは大きくポイントで差を開けられてしまっているもの」
堀北さんも一歩も退かない。
「確かに現状はな。しかし、一度ついた優劣が崩れる兆しを見せれば話は別だ。下位が牙を剥いた瞬間、上位は警戒する。それは自然な摂理だ。それはBクラスやCクラスも同じだろう」
葛城くんの声に感情はない。
Dクラスを狙い撃ちするというより当然の力学を語っているように感じる。
だが、その空気を横切るように声が割り込んだ。
「他クラスの意向まで、勝手に決めつけるのは感心しないな」
静かだが芯のある声音。
無人島で俺を星之宮先生のもとへ案内してくれた時も、落ち着いていた。
それに、龍園くんが0ポイントで終える可能性を見抜いていたことからも、頭の回転は相当速いと考えられる。
「無理して葛城に話を合わせる必要はないぞ。状況が状況だ」
堀北さんを庇うように、葛城に注意した。
「心配無用よ。Dクラスが下に見られていた、その話を払拭できるなら歓迎するわ」
堀北さんは一切視線を逸らさずに言い切った。
「なるほど。Dクラスに所属する君からしてみれば、ぞんざいな扱いをされていたことに納得がいっていなかったようだな」
葛城くんは淡々と返す。
「確かに俺のクラスではDクラスを蔑ろに扱う者は少なくない」
そう言いながら、彼は袖口についた見えない埃を軽く払った。
その仕草は無意識なものではなく意図的なものであると見てわかった。
「しかし一度偶然に成功したくらいで、立場が並ぶとは思って欲しくないな」
「……どういう意味かしら」
堀北さんの声がわずかに低くなる。
「誰にでも一度は会心の出来というものはあるものだ。たまたま自らの戦略が一度成功したくらいで調子には乗らないほうが良い。クラスポイントの差が今も歴然であることは忘れないでもらいたい」
冷静に現実を提示する。
挑発ではなく、事実の確認という体裁で。
「私たちはまだ入学して間もない。あなたと私にそれほどの差があるとは思えないわ。学校側が勝手にジャッジしてクラスを振り分けただけ。それを忘れないで」
堀北さんも理屈で返す。
クラスの格ではなく、個人の能力に焦点を移した。
単なる強がりなのか。
それとも、背後にいる綾小路くんの存在を悟らせないためか。
おそらく、両方だろう。
一瞬、空気が張り詰める。
「平田、もしかしたら大変なグループに巻き込まれたのかも知れないな」
横で綾小路くんが、感情のこもらない声で呟く。
「そうだね。葛城くんや神崎くんと同じなら苦戦は必至だと思う」
平田くんも静かに頷いた。
表情は穏やかだが、状況の重さは理解している。
「いや、それだけじゃない」
綾小路くんが低く呟く。
「え?」
俺と平田くんは同時にその視線の先を追う。
――ドンッ。
床を踏み鳴らす音。
自分の存在を誇示するかのように、足音を響かせながら一人の男子生徒が近づいてくる。
「クク。随分と雑魚が群れてるじゃねえか。俺も見学させてくれよ」
「……龍園か」
葛城くんの声が、わずかに低く沈んだ。
さっきまで理知的に話していた彼の声色が、はっきりと変わった。
神崎くんも同様だ。
一瞬で空気が引き締まる。
龍園くんの背後には数名の生徒。
ただ並んでいるだけではない。
明確な主従関係があるのが一目見ただけでわかる。
「おまえもこの時間に招集されたのか?それとも、偶然ここを歩いているだけか?」
葛城くんが問いかける。
「残念なことに、おまえらと同じ時間のようだな」
龍園くんは肩をすくめる。
「これから見世物でもしてくれんのか?美女と野獣ってタイトルでどうだよ」
堀北さんと葛城くんを交互に見て挑発するように笑う。
空気が一気に刺々しくなる。
「ひとつだけ分かったことがある。この組は学力の高い生徒が集められていると思っていたが、おまえとそのクラスメイトを見る限りそうではないかも知れないな」
葛城くんの言葉は静かだが、確実に刺す。
「学力だ?くだらねーな。そんなものには何の価値もない」
龍園くんは鼻で笑う。
「それこそ残念な発言だ。学業の出来不出来は将来を左右する最も大切な要素だ。日本が学歴社会と言われていることは知っているはずだが?」
「俺はおまえの非道さを許すつもりはない」
「あ? 非道さ? 一体何のことだよ。身に覚えがねーなあ。具体的に教えてくれよ」
一瞬、空気が冷えた。
「……まあいい。今回同じグループになったとしたら、ゆっくり話す時間もあるだろう」
葛城くんはそれ以上踏み込まない。
挑発する龍園くんと、静かな敵意を向ける葛城くん。
2人の間に流れる緊張から目が離せない。
そのとき。
「あれ上條くん?それに平田くんと綾小路くんまで。大勢で集まってどうしたの?」
ぴょこっと顔を出したのは櫛田さんだった。
この張り詰めた空気を知らない無垢な声。
「櫛田さん?もしかして20時40分集合?」
「うん、そうだよ。学校からその時間に来るようにってメールが……って、なんか凄い人たちが集まってるね」
周囲を見渡し、櫛田さんもさすがに異様さを感じ取ったらしい。
「大丈夫か平田。相当厳しい戦いになると思うぞ」
「気にしないことだよ。どんな人たちであれ、僕に出来ることをするだけだし」
「えーとつまり、これから色々大変なことが始まっちゃう感じ?」
櫛田さんが首を傾げる。
「ざっくりと言えばそうだな。心の準備はしておいた方がいいぞ」
綾小路くんが淡々と答える。
「あはは。大丈夫だよ。平田くんが言ったことだけど、私も私で自分に出来ることをするだけだから。うん、葛城くんや龍園くんとはあまりお話したこともなかったし、いつも通りやって仲良くなりたいな」
この空気の中でそれを言えるはやっぱり櫛田さんはすごいというか異質だな。
「くだらない話が続くようなら、私は先に失礼させてもらうわ。そろそろ時間だから」
堀北さんは龍園と葛城に冷たい視線を投げ、背を向ける。
長い髪がふわりと揺れた。
「どうやらオレが気にかけるまでもなさそうだな」
綾小路くんが小さく呟く。
「じゃあ頑張ってくれ」
平田くんと櫛田さんにだけ声をかけ、何事もなかったかのように部屋へ戻っていった。
まるで、この場に何の興味もないかのように。
いや、興味がないわけがない。
むしろ、全てを観察し終えたからこその撤退。
俺は綾小路くんのその背中を見て、無意識にそう感じた。
正直、葛城くんと向き合う堀北さんのもとへ割って入ろうかとも思った。
だが、無理だった。
神崎くんが加わったことで、あの場は完全に三つ巴の均衡が成立している。
それに何より。
あまりにも堂々とした堀北さんの姿。
一歩も引かず、AクラスにもCクラスにも対等に立つその姿を見て、
俺が口を挟む余地はないと悟った。
綾小路くんには堀北さんとの接触を増やすように言われたが、ここは俺が出る幕じゃない。
そう自分に言い聞かせた。
そんなことを考えていると、不意に横から声がかかる。
「ねえねえ、上條くん。このあと少し話せる?時間あるかな?」
「え?」
櫛田さんだった。
唐突な申し出に、俺は一瞬思考が止まる。
櫛田さんから個別に話?
いったい何の話だろう。
試験のことなのか。
それとも別の何かか。
だが、ここで断る理由もない。
「うん、いいよ」
そう答えると、櫛田さんはにこっと笑った。
「説明が終わったら連絡するね」
それだけ言って、櫛田さんは説明室へと向かっていく。
俺はその背中を見送った後、ひとまず俺は部屋に戻ることにした。
説明が終わるまでは時間がある。
少しでも休んでおくか。
だが、櫛田さんが俺に個別で話したいこと。
それが、なぜか妙に気になっていた。
3
新しい特別試験の説明を聞き終えたあと、私はすぐに上條くんへ連絡を入れた。
内容はシンプル。
「このあと、レストランで一緒に食事しない?」
ちゃんとアポも取っていたから、返信はすぐに来た。
予定通り、レストランで合流。
「上條くん、ごめんね。急に呼んじゃって。夕飯、もう食べちゃってたかな?」
「俺もいろいろあって、まだ食べれていなかったのでちょうどよかったです」
「本当?それなら良かった!」
私は少しだけ大げさに、明るく笑う。
いつもの私。
「それにしても、櫛田さんから食事を誘ってもらえるなんて思ってなかったです。どうして誘ってくれたんですか?」
「上條くんとは、ずっと話したいと思ってたんだよ?でも船内は広いし、なかなか会えなくて」
嘘じゃない。
ただ、理由は別にある。
私の目的は主に2つ。
1つ目。
最近、上條くんは綾小路くんと一緒にいる時間が増えた。
特に無人島での試験の終盤。
あの2人は頻繁に接触していた。
綾小路くんは堀北と同じ。
私の裏を知っている数少ない存在。
もし上條くんがあの2人に近づきすぎれば、いずれ、私の本性に辿り着くかもしれない。
それだけは、絶対に避けなければならない。
だから綾小路くんと堀北は、できるだけ早くこの学校から排除する。
そのために、2人の弱点になりうる情報を、上條くんから引き出す。
そしてもう1つ。
松下さんのことだ。
今日の午前中、プールで2人きりでいるのを見かけた。
あれはどう見ても、ただのクラスメートじゃない。
私の目には、はっきりと恋人同士に見えた。
でも、上條くんは、私のものだ。
無人島で上條くんと身体を交えたあの瞬間。
彼と繋がった感覚。
あの熱を、私はまだ覚えている。
だから、もし本当に松下さんと付き合っているのなら――別れさせる。
上條くんは、誰にも渡さない。
私は食事を口に運んでいる上條くんに優しく問いかける。
「上條くんって最近、綾小路くんと一緒にいること多いよね?それって偶然なのかな?」
軽い世間話のように。
でも、目は逸らさない。
すると、ほんの少しだけ、ほんの一拍だが間があった。
「そうですね。確かに試験を通して、前より距離が縮まった気はします」
……縮まった。
その言葉を、頭の中で繰り返す。
「綾小路くんって堀北さんとも仲良いでしょ? 上條くんは堀北さんとも仲良いのかな?」
「それは……なんとも言えないですね。堀北さんはなかなか心を開いてくれないというか。この試験でも距離が縮まったのかは分からないです」
そこまでは想定内、見ていれば分かること。
問題は、その先。
「上條くんって、綾小路くんとはどんな話をするのかな?」
私は可愛らしく少し首を傾げてみる。
すると、また間があった。
悩む仕草。
「どんな話って言われると難しいですね。綾小路くんの趣味とかは俺も知らないので……試験のこととか。どちらかと言うと、俺がどう思ったのかの感想を聞かれることが多いです」
自分の話はしない。
「ふーん。じゃあ、綾小路くんは自分の話はあんまりしないってこと?」
「そうですね。自分から色々話そうとはしないですね」
「私とか、クラスメートの話とかは?」
「クラスメートですか?そういう話はしないですね」
即答。
その言葉には迷いがなかった。
わかってはいたけど、綾小路くんは不用意に情報を漏らすタイプじゃない。
そして、上條くんも、まだ何も知らない。
少なくとも、私の裏には気づいていない。
上條くんは分かりやすい。
もし私の本性を知っていたら、視線や間合いに違和感が出るはず。
でも、今の上條くんはいつも通り。
でも、ほんのわずかに引っかかる。
さっきの間、あれはただ考えていただけ?
「それと……少し気になってたんだけど、松下さんとはどういう関係なのかな?」
できるだけ自然に、何気なく尋ねる。
その瞬間、少しだけ表情が強張った。
ほんの一瞬だけど、私は見逃さない。
「松下さんとの関係性ですか?仲のいい友達ですかね……クラスだと一番親しくさせてもらってると思います」
一番親しい、か。
恋人とは言わないんだね。
それとも、言えない?
この前の無人島で、私と身体を交えたばかりだから?
……でも、まだ確定はしていない。
「そうなんだ……一番親しく、かぁ」
少しだけ声を落とす。
「なんだか松下さんが羨ましいなぁ」
「羨ましい?どうしてですか?」
不思議そうな顔をする上條くんを少し可愛いと思ってしまう。
「上條くんって、クラスだと結構人気あるんだよ?そんな上條くんと一番親しいなんて、松下さんはやっぱりすごいなぁって」
私の言葉に、本気で驚いた顔をする。
「なんの冗談ですか?この前の試験では下着を盗んだ犯人だと疑われたばかりですよ」
この前の試験で軽井沢さんの下着を盗んだこと。
あれはCクラスの伊吹さんによる冤罪だった。
でもあの件で、逆に評価は上がった。
疑われながらも上條くんはクラスのために動いた。
それは、クラスメートの心に残って、失った信頼はむしろプラスになった。
堀北が一番評価を上げたのは間違いない。
でも、その次に評価を上げたのは上條くんだ。
「そんなことないよ。上條くんのこと、気になってる子結構いるんだよ?」
「そんな……」
上條くんは半信半疑な様子だった。
ここだと確信する。
私は少しだけ身を乗り出す。
テーブル越しの距離を、ほんの数センチ詰める。
「例えば、私とか」
一瞬の静寂。
上條くんには冗談に聞こえただろうか?
それとも?
私はにこっと笑った。
でも目は笑っていない。
「無人島のこと……忘れてないよね?」
その瞬間、上條くんの顔から血の気が引いていくのが分かった。
私は忘れられなかった。
あの夜、森の奥で感じた、身を焦がすような熱。
理性がほどけていく感覚。
本能のままに貪り合った、初めての快感。
私の中に眠っていた知らない私を、上條くんは無理やり引きずり出した。
だから、今度は私が引き寄せる番。
「ごめんね、意地悪なこと聞いちゃって。でも、私、あの時のことが忘れられなくて……」
上目遣いで様子を窺う。
けれど、上條くんは視線を彷徨わせるばかりだった。
迷い、罪悪感。そして動揺。
全部、顔に出てる。
私は少しだけ、声の温度を下げた。
「上條くんは……どうなの?」
答えは沈黙。
でも、それで十分だった。
動揺は隠せない。効いてるならそれでいい。
「……じゃあ、この話はもうおしまい!」
私はぱっと笑顔に戻る。
「それより今日の試験の話、聞いてもいいかな?」
空気を切り替える。
一度揺らして、安心させる。
そうすれば、上條くんは自分から私のほうへ戻ってくる。
案の定、上條くんは戸惑いながらも、どこかほっとしたような表情を浮かべた。
ぽつりぽつりと試験の話を始める。
それに私は相槌を打つ。
でも、内容なんてどうでも良かった。
確認したいのは上條くんの心の揺れだけ。
食事を終えて、私と上條くんは並んで廊下を歩く。
「ねえ、上條くん」
声をかけると、彼は少し肩を揺らして振り返った。
「この後って、まだ時間あるかな?もう少しだけ……話、聞いてもらえないかな」
できるだけ儚げに、お願いする。
ここで断られたらどうしよう、なんて不安そうな表情を浮かべるのも忘れない。
「え……でも、もう遅いですし」
「ダメ……かな? すぐ終わるから。どうしても、今聞いてほしくて……」
私は上條くんの袖を、きゅっと指先で掴んだ。
今の上條くんは私に対して後ろめたさを抱いている。
だから、断れない。
案の定、上條くんはしばらく考えたあと、観念したように小さく頷いた。
「……わかりました。少しだけなら」
「本当!? よかった……ありがとう!」
私は満面の笑みを浮かべて、掴んでいた袖を、自然な流れで腕に絡める。
逃げ道を、ひとつずつ塞ぐ。
「じゃあ、どこで話そうか。あ、そうだ。地下のシアタールーム、どうかな? 個室だから、周りを気にせず話せるし」
ごく自然な提案。
ただの場所選びに感じるだろう。
表向きは。
地下であって人目が少ない。
そして音も漏れにくいシアタールーム。
ゆっくり、時間をかけて話ができる。
私は無邪気に笑った。
でも胸の奥では、別の鼓動が高鳴っている。
4
地下の娯楽フロアは、レストランの喧騒が嘘のように静まり返っていた。
受付で、私は予約名を告げる。
上條くんは、すでに部屋を押さえていたことに驚いたようだった。
でも、ここまで来たら、引き返せない。
「7番ルームになります。ごゆっくりどうぞ」
案内されたのは、フロアの奥まった場所にある重厚な扉の個室。
カードキーでロックを解除する。
扉を開け、私は上條くんを中へ促す。
彼がためらいながら一歩足を踏み入れる。
その背中を確認してから、私も入る。
カチャリ。
背後で扉が閉まり、オートロックの乾いた音が響いた。
外界が遮断される。
光も音も断たれ、世界は2人きりの密室になった。
「わあ、広いね。ここに座ろっか」
部屋の中央には、大きなL字型のソファが1つ。
そして、壁一面は巨大なスクリーン。
私は明るく振る舞いながら、自然に上條くんを奥側へ誘導する。
そして隣に腰を下ろす。
触れてはいないのに、彼の緊張が伝わってくる。
「えっと……何の話でしたっけ」
沈黙に耐えきれず、上條くんが口を開く。
まだ大事な話があると信じている上條くんは、滑稽で可愛らしいと思った。
「うん、その前に……何か観よっか。話だけだと気まずいもんね」
リモコンを操作する。
映画一覧から迷わず恋愛カテゴリを選択。
「上條くん、恋愛映画って苦手だったりする?」
「い、いえ……でも明日から試験なのにいいんですか?」
「少しだけだから、大丈夫」
私が選んだのは、最近話題の有名なラブストーリー。
もちろん、映画の内容なんてどうでもいい。
これは、ただのBGM。
照明がさらに落ちて、スクリーンの光だけが暗闇の中で揺れる。
これで準備は整った。
映画が始まって1分した頃。
私は背もたれに身体を預け、わざと小さくため息をついた。
「はぁ……」
「櫛田さん?」
「ううん、なんでもない。ただ……やっぱり、私、上條くんのこと、諦められないなって思って」
上條くんの顔は見ない。スクリーンに視線を向けたまま、ぽつりと呟く。
映画の台詞に溶け込ませるように。
現実とフィクションを織り交ぜる。
「松下さんと、付き合ってるんでしょ?」
確信を持って、問いかける。
すると上條くんの息を呑む音が、すぐ隣で聞こえた。
「……それは」
「見てればわかるよ。女の子だもん」
ゆっくりと顔を向ける。
薄暗い部屋。
スクリーンの光が、彼の動揺を映し出す。
上條くんに逃げ場はない。
「私じゃ、ダメかな?」
身体が熱くなってくる。
レストランにいた時とは明らかに違う、内側から湧き上がるような熱。
私はこの感覚を知っている。
あの無人島の夜、私を支配した、抗えない衝動。
ダメ、冷静にならないと。計画が狂ってしまう。
でも、身体は言うことを聞かない。
私は無意識に上條くんの肩に頭を預けていた。
ぞくり、と背筋に悪寒が走る。
それは恐怖から来るものではなく、これから起こることへの期待に満ちた、甘い痺れだった。
「ねえ、上條くん」
気づけば、私は上條くんの顔を覗き込んでいた。
吐息がかかるほどの距離。
潤んだ瞳で、彼を誘う。
「1回だけでいいから……私を、松下さんの代わりにしてみてくれないかな」
違う。こんなことを言うつもりじゃなかった。
もっと計算高く、上條くんのことを煽って、精神的に追い詰めるはずだったのに。
まるで、ただの恋する乙女の告白みたいじゃない。
でも、もう止められない。
私の唇は、上條くんの返事を待たずに、その唇に吸い寄せられていた。
「ん……っ」
触れた瞬間、脳が蕩けるような感覚に襲われる。
最初は、これで満足するはずだった。
なのに、一度触れてしまったら、もう物足りない。
もっと。もっと深く。
「んむ……ちゅ……はぁ……」
理性が、快感の熱に侵されてスカートの中が、じっとりと熱を帯びていくのが分かる。
私は彼のブレザーを掴み、自分の方へ引き寄せた。
ソファの上で体勢が崩れ、気づけば上條くんに覆いかぶさるような形になっている。
「くし、ださ……んっ」
上條くんの声を塞ぐように、さらに深く舌を絡めた。
思考がまとまらない。
ただ、目の前の上條くんが欲しい。
この硬い身体を、私のものにしたい。
「はぁ……はぁっ……」
どちらからともなく唇が離れる。
糸を引く唾液が、スクリーンのかすかな光に照らされて、いやらしい。
見下ろした上條くんの顔は、驚きもあったが隠しきれない欲望に染まっていた。
その表情が、私の最後の理性の糸を、ぷつりと断ち切った。
「ねえ、上條くん……」
私は上條くんの上に跨ったまま、腰をゆっくりと、すり寄せるように揺する。
そして、スラックス越しに伝わる硬い感触に、ぞくぞくと快感が背筋を駆け上った。
「私……もう、我慢できないみたい」
それは、紛れもない本心。
もう演技じゃない。計画でもない。
ただ、この熱を、目の前の彼にぶつけられずにはいられなかった。
私は、震える手で自分のブラウスの第一ボタンに指をかけた。
「だから……あの夜みたいに、私をめちゃくちゃにして……?」
懇願するような声が、静かなシアタールームに、甘く溶けていく。
早く、この窮屈な服を脱ぎ捨てて、あなたの肌に触れたい。
その時だった。
「櫛田さん……!」
上條くんの手が、私の手を強く掴んだ。
その力強さに、私は一瞬、動きを止める。
「俺には……松下さんという彼女がいるんです。だから……っ」
上條くんは、苦しげに顔を歪めながら、必死に言葉を紡ぐ。
その瞳には、罪悪感と、そして私に対する明確な拒絶の色が浮かんでいた。
ああ、そうなんだ。
上條くんは、あの女を選ぶんだ。
私とあれだけのことをしておいて、まだ他の女の名前を出すんだ。
その瞬間、私の頭の中で何かがぷつりと切れた。
「……だから、何?」
私の口から、自分でも驚くほど冷たい声が漏れた。
さっきまでの甘い雰囲気は、もうどこにもない。
「松下さんがいるから、私はダメだって言うの?私の初めてを奪っておいて?」
「そ、それは……櫛田さんの様子が、おかしかったから……不可抗力で……」
「不可抗力?」
私は掴まれた手とは逆の手で、彼のネクタイを鷲掴みにして、顔をぐいと引き寄せた。
「じゃあ、これも不可抗力なのかな!」
私は彼の抵抗をものともせず、無理やりその唇に噛みつくようにキスをした。
さっきまでの甘いキスじゃない。彼の唇を蹂躙し、支配するような、荒々しいキス。
「んぐっ……! やめ……っ」
上條くんは身を捩って抵抗する。
でも、それが逆に私の興奮を煽った。
「うるさい!」
唇を離し、私は彼の胸を強く突き飛ばした。
「うっ……!」
「全部、上條くんが悪いくせに……!」
私は上條くんの上に跨ったまま、馬乗りになる。
両手で上條くんの手首を掴み、ソファに縫い付けた。
「私をこんな風にしたのは、上條くんだから!」
「櫛田さん、待って、落ち着いて……様子がおかしいよ!」
「落ち着いてるよ。私、今、すごく冷静」
目は笑っていない。
見下ろす彼の顔が、恐怖と混乱に染まっていくのが、たまらなく快感だった。
「松下さんのことなんて、忘れさせてあげる。私の身体で、全部上書きしてあげるから」
私は縫い付けていた彼の手を片手でまとめ、もう片方の自由になった手で、彼のスラックスのベルトに指をかけた。
金属のバックルが、カチャリ、と重い音を立てる。
「櫛田さん、やめて……もう戻れなくなる」
「やめない。絶対に、やめない」
私はベルトを引き抜き、ソファの脇へと放り投げた。
そして、ためらうことなくスラックスのジッパーに手をかける。
「ほら、見て。上條くんの身体も、正直だよ?」
スラックスの隙間から、すでに熱を帯びて硬くなっている彼のモノが、下着越しに押し付けられるように盛り上がっているのが分かった。
口では拒絶していても、身体は反応してしまっている。
その事実が、私に絶対的な優越感を与えた。
「ちがう、これは……!」
「違わないよ。上條くんも、本当は私としたいんでしょ?」
私は上條くんの耳元に顔を寄せ、吐息と共に囁きかける。
「大丈夫。松下さんには、絶対にバレないようにしてあげる。これは、私と上條くんだけの……秘密の遊びだよ?」
私は上條くんの両手を解放すると、今度は自分のブラウスのボタンに手をかけた。
1つ、また1つとボタンを外していく。
白いブラウスの隙間から、レースの施された黒いブラジャーと、その谷間が露わになっていく。
「どう……?私の身体、覚えてる?」
上條くんは、言葉もなく、ただ私の姿を呆然と見つめている。
その視線が、たまらなく気持ち良かった。
私はブラウスを完全にはだけさせ、彼の顔のすぐ近くに、自分の胸を寄せた。
「あの時みたいに……たくさん、触っていいよ」
上條くんの指先を取り、自分の胸の谷間へと導く。
びくり、と震える彼の指が、私の素肌に触れた。
「あっ……ん……」
熱い。
上條くんの指先から伝わる熱が、私の身体をさらに熱くさせる。
「もっと……強く……」
私は彼の手に自分の手を重ねて、胸を揉むように誘導する。
最初はぎこちなかった上條くんの手つきが、熱に浮かされたのか次第に大胆になっていく。
「そう……上手……はぁっ……んんっ……」
私たちは、ただ互いの熱を求め合うように、ソファの上で身体を重ねていた。
制服は乱れ、肌と肌が触れ合うたびに、背徳的な快感が脳を痺れさせる。
「上條、くん……もう、ダメ……」
私は上條くんの首に腕を回し、その唇を貪るように塞いだ。
もう、言葉はいらない。
ただ、この身体が求めるままに、1つになりたいと。
「はぁ……っ、はぁ……」
長いキスの後、どちらからともなく唇が離れる。
「櫛田さん……」
「……なに?」
私は吐息だけで答える。
そして次の瞬間、私たちの体勢は逆転していた。
今まで私に組み伏せられていた上條くんが、力強く私の肩を掴み、ソファの背もたれに押し付ける。
「っ……!」
突然のことに、驚いて目を見開く。
見下ろしてくる上條くんの瞳は、さっきまでの戸惑いが嘘のように、獰猛な光を宿していた。
「ごめんなさい……もう我慢できそうにありません」
そう告げると、上條くんは私のブラウスを乱暴に引き裂くように脱がせた。
「あ……っ」
乱暴な扱いに、恐怖よりも先に快感が走る。
もっと、めちゃくちゃにしてほしい。
上條くんは、黒いブラジャーの上から、私の胸を鷲掴みにするように揉みしだいた。
「んんっ……! あ、そこ……っ!」
的確に敏感な場所を刺激されて、思わず声が漏れる。的確に敏感な場所を刺激され、思わず声が漏れる。
クソっ、なんで、私の感じるところ、分かってんのよ……!
「ここ、ですか? それとも……こっちのほうが、好きですか?」
上條くんは私の反応を確かめるように、指先の力を加減しながら、囁きかける。
片手で胸を愛撫しながら、もう片方の手は私のスカートの中に、ゆっくりと侵入してきた。
制服のスカートがたくし上げられ、タイツ越しの柔らかな太ももを、彼の手が慈しむように撫で上げる。
「ひゃっ……! な、にすんのよ……っ」
思わず、裏の口調が出てしまう。
でも、声は快感に濡れて、少しも凄みなんてない。
太ももの内側を、指がなぞるたびに、腰が勝手に揺れてしまうのが悔しい。
「ダメじゃないですよね? ……ほら、こんなに熱くなってる」
彼の指は、タイツの上から、すでに湿り気を帯びた私の中心を、ぐりぐりと優しく押し付けた。
「あ……あぁっ! んぅっ……! や、やめ……なさいよ、この……っ!」
口では罵倒しているのに、身体は彼の刺激を、もっともっとと求めている。
もう、頭がぐちゃぐちゃになる。
プライドも、計算も、何もかもが、この快感の前では意味をなさない。
「タイツ、脱がしてもいいですか? もっと、櫛田さんのこと、感じたいから」
上條くんはそう囁くと、私の返事を待たずに、腰を持ち上げた。
タイツと下着が、一緒に、丁寧に引きずり下ろされる。
下半身が完全に無防備になり、羞恥と興奮で顔が熱くなる。
「……好きに、して」
私は、顔を背けながら、吐き捨てるように言った。
すると上條くんは、私の両足を開かせると、その間にゆっくりと腰を下ろす。
先端が、最も敏感な場所に、ゆっくりと擦り付けられた。
「あ……あぁっ……んんっ……! ばか、じらさないで……っ!」
それだけの行為で、私の身体は大きく弓なりになる。
もう、限界だった。
「上條、くん……お願い……だから、早く……」
懇願する私を見て、ゆっくりと、私の内側へと、その熱を沈めてきた。
「んあああぁぁぁぁっっ!」
引き裂かれるような痛みと、それを上回るほどの、満たされていく感覚。
「くしだ、さん……大丈夫、ですか……?」
上條くんが、私の内側で動きを止め、気遣うように囁く。
でも、その優しさが、今はもどかしい。
「……早く、動かして……っ」
私は上條くんの背中に腕を回し、爪を立てるように掻きむしった。
もっと、乱暴にしてほしい。優しさなんていらない。
すると上條くんはゆっくりと腰を動かし始めた。
「あっ……ん、ぅ……ふ、ぁ……」
最初は、ゆっくりと、確かめるように。
「すごい……櫛田さんの中、すごく熱くて……気持ちいいです」
「……もっと、強く……んっ!」
上條くんのモノが中で大きくなっていく感覚に、思考が麻痺していく。
「あ、あぁっ!そこ、だめ……っ!もっと、きて……!」
「はぁっ、はぁっ……櫛田さん、すごい……」
上條くんの腰の動きが激しくなるにつれて、私の快感はどんどん高まっていく。
視界が白く点滅し始め、身体の芯が、きゅうっと収縮していくのが分かった。
プライドが、必死に抵抗しようとする。
でも、身体は正直で、上條くんの突き上げに合わせて、腰が勝手に揺れてしまう。
「くしだ、さん……顔、見せてください……」
上條くんが、私の顎に手を添えて上を向かせる。
見つめ合った瞳には、互いの欲望がどろどろに溶け合って映っていた。
「いや……見ないで……こんなだらしない顔……」
「すごく、可愛いですよ」
その言葉に、心が、ぐらりと揺れる。
プライドも、計算も、何もかもがどうでもよくなってしまいそう。
ただ、この快感に、身も心も委ねてしまいたい。
「もっと……めちゃくちゃに、して……っ」
すると今までよりもずっと深く、激しい突き上げが、私の内側を何度も何度も貫いていく。
「あっ、あ、あ、あぁっ! んぐっ……! しぬ、死んじゃう……!」
快感の波が、次から次へと押し寄せてくる。
もう、息の仕方も分からない。
「かみ、じょ……くんっ……! あ、あぁっ!」
上條くんの動きが、さらに一段階、速くなる。
もう限界が近いことを、お互いに理解していた。
「ま、まって……!もう、でる……!イクっ……!」
「俺も……もう、我慢できない……!」
上條くんが、私の腰を強く掴み、最後の追い込みをかけるように、最も深い場所を激しく、連続で突き上げた。
「んあああぁぁぁぁぁぁっっっ!」
脳が真っ白に染まり、身体が痙攣するように、何度も何度も収縮を繰り返す。
それと同時に、熱い精液が、私の奥深くに、灼けつくように注ぎ込まれるのを感じた。
「はぁっ……はぁっ……あ……うぅ……」
快感の嵐が過ぎ去った後、私はぐったりとソファに身体を沈めた。
繋がったままの上條くんの身体が、まだ中で小さく脈打っている。
気持ちよかった。
最悪なくらい、イかされた。
身体は満足しているはずなのに、心の奥で、まだ何かが燻っていた。
さっきまでの情景が、脳裏に蘇る。
上條くんの好きにさせられて、めちゃくちゃにされて、快感に喘いで。
なんで私が、あんな……屈辱的なこと。
私は、余韻に浸って少しだけ気の緩んでいる上條くんを無理やり押し倒す。
「うわっ!?」
不意を突かれた上條くんは、なすすべなくソファに仰向けになり、私はその上に、素早く覆いかぶさった。
「……まだ、終わってないでしょ?」
見下ろした上條くんは驚いている様子で、その無防備な顔を見て、勝ち気な笑みが浮かんだ。
「さっきは、上條くんの好きにさせたあげたんだから……今度は、私の番だよ」
びくり、と上條くんの身体が跳ねる。
その反応に、私の身体も熱くなる。
しっかりしろと自分に言い聞かせながら、私は上條くんのそれを、再び自分の腟内へと導いた。
ゆっくりと腰を下ろし、上條くんのを迎え入れる。
「んっ……はぁ……っ」
さっきよりもスムーズに入ってくる感覚に、思わず甘い声が漏れそうになる。
ダメ。今度は私がリードするんだから。
「上條くんっ……きもちいい?」
「き、きもち、いっ……?」
「聞こえ、な……んっ!」
上條くんの耳元で囁こうとした瞬間、上條くんのモノが中で少しだけ身じろぎした。
それだけで、私の背筋に、ぞくっと甘い痺れが走る。
「ひっ……! い、ま、動くな……ばか……っ」
必死で平静を装うが、身体は正直だ。
彼のものを締め付けるように、腰がきゅっと収縮してしまう。
「……櫛田さん、気持ちいいですっ……」
自分が誘導したのにも関わらず、その言葉に、なぜか顔が熱くなる。
「……っ、あぁっっ!」
羞恥を誤魔化すように、私は自分のペースで、ぎこちなく腰を動かし始めた。
浅く、じらすように。
上條くんのいちばん気持ちいい場所を、わざと避けるように。
主導権は、私にあるんだと、自分に言い聞かせるように。
「あ……っ、くしだ、さ……もっと、ふかく……」
「や、やだ……これは、私の……んっ……ための、だから……っ」
上條くんの懇願を、途切れ途切れに突き放す。
でも、上條くんをじらしているつもりが、自分自身の身体も焦らされていることに気づく。
そして上條くんのものが、中でさらに硬く、熱くなっていくのが分かる。
「どう……? 私が、上の方が……んんっ……もっと、気持ち、いいでしょ……?」
強がって言ってみるものの、腰の動きはどんどん乱れていく。
もう、自分が上條くんをコントロールしているのか、上條くんにコントロールされているのか、分からなくなってきた。
「はぁっ……あっ……だめ、もう……」
プライドと快感の狭間で、思考がぐちゃぐちゃになる。
悔しい。悔しいのに、身体はもっと彼を求めてしまう。
じらされるのに耐えきれなくなったのは、上條くんではなく、私のほうだった。
ああ、もう、知らない……!
私は、上條くんの肩を強く掴んで、今までとは比べ物にならない速さで、自ら腰を激しく揺さぶり始めた。
「んっ、あっ、あ、あぁっ! ふ、ぅっ……!」
主導権なんて、どうでもいい。
ただ、早く、この身体の奥で渦巻く熱を解放したい。
その一心で、私は無我夢中で腰を振り続けた。
「くしだ、さん……! はや、い……っ!」
下から聞こえ上條くんの声が、さらに私を煽る。
「あ、あ、あ、あぁっ! もっと、もっとぉっ……!」
もう、自分がどんな顔をしているかなんて分からない。
ただ、快感の波が、次から次へと押し寄せてくる。
「だめ、もう、イくっ……! 私だけで、イっちゃう……!」
上條くんの絶頂を待たずして、自分の身体が勝手にクライマックスへと突き進んでいく。
「んあああぁぁぁぁぁぁっっっ!」
甲高い絶叫と共に、私の身体が大きく、何度も痙攣する。
脳が真っ白に染まり、思考が完全に停止する。
ビクン、ビクンと収縮を繰り返す私の腟内。
それに誘発されたのか、上條くんもまた、私のナカに精液を迸らせた。
「はぁっ……はぁっ……はぁ……っ」
主導権を握ろうとしたのに、結局は快感に負けてしまった。
でも、不思議と悔しさはなかった。
むしろ、自分のすべてを曝け出して、充足感が胸に広がっていた。
私は、らしくない感傷に浸っている自分に戸惑う。
こんな感情、知らない。
しばらくして、上條くんがベッドの上で穏やかな寝息を立て始めたのに気づく。
その無防備な寝顔は、普段の上條くんよりも数段、幼く見えた。
私は、ゆっくりとベッドから身体をずらし、乱れた制服を整える。
ソファの脇に落ちていた上條くんのシャツを拾い上げ、そっとその身体にかけてあげた。
スクリーンは暗転していて、部屋には完全な静寂が戻っている。
まるで、さっきまでのことが、夢だったかのように。
私は、眠っている上條くんを起こさないように、そっと唇を寄せた。
触れるだけの、優しいキス。
「……ばか」
静寂の中、私はただ、上條くんの寝顔を、飽きることなく見つめていた。
この秘密の時間が、永遠に続けばいいのに、と。
柄にもなく、そんなことを願ってしまった。
今回は櫛田がメインの回になりました。
前回の前書きで新しい人間関係についても触れていきたいと書いていましたが、櫛田とのシーンで思いのほか高ぶってしまって、今回はそこまで描けませんでした。
次回はそのあたりも広げていけたらと思っています。
これからもよろしくお願いします。
あと、アニメよう実のPVになんと石倉賀代子がいたんです!
感激して思わず失禁してしまいました。
4月1日の90分放送が今から楽しみですね!!!!
今後行為シーンが欲しいキャラクター候補(すぐには反映できない可能性高いです)
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松下千秋
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佐倉愛里
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櫛田桔梗
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堀北鈴音
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長谷部波瑠加
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佐藤麻耶
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篠原さつき
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園田千代
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一之瀬帆波
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小橋夢
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白波千尋
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姫野ユキ
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星之宮知恵
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西野武子
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伊吹澪
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椎名ひより
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神室真澄
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山村美紀
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白石飛鳥
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坂柳有栖