1
次の日、高校生活初めて(2周目)の授業が始まった。
基本的にどの授業もオリエンテーションから始まり大した授業は行われなかった。
比較的真面目に授業を受けている生徒が多いなか、須藤くんは初日から居眠りをしていた。
そして昼休みになり、多くの生徒は学校内の食堂へと消えていく。
俺はきちんと手を洗った後鞄からお弁当を取り出す。
今日のお昼は唐揚げである。昨日の夜は張り切って揚げ物を作ったので今日のお弁当にそれを詰めてきた。
初日だからって張り切りすぎたか?いや、やはりお弁当と言えば唐揚げに卵焼き。これは欠かせない。
「これ自分で作ったの?」
隣の席の松下さんが興味ありげに俺のお弁当箱を覗き込む。
「まあ、一応」
「へえ、自炊できるっていうのは本当だったんだ」
嘘だと思われてたのか?!
そんなに料理できなさそうに見える、俺?
「そういう松下さんはお昼どうするの?」
「それが、私お弁当箱買うの忘れちゃってて入れ物がなかったんだよね」
うっかりと松下さんは頭に手を添える。
なにそれかわいい
「だから今日は購買でなにか安いパンでも買ってこようかな」
松下さんは席を立ち上がり購買へ向かうため教室を去っていった。
そういえば綾小路くんはどうしてるかな?
綾小路くんの席がある後ろの方に視線を向けると、堀北さんに冷たい視線を向けられている綾小路くんを見つけた。
ちょっと話しかけに行こうかな。
「あ、綾小路くん!」
堀北さんに氷のような目を向けられている綾小路くんに勇気を出して話しかけてみた。
「上條、どうしたんだ?」
「あ、あの…もしよかったら一緒にお昼とかどうかなって?」
俺が綾小路くんに提案すると、綾小路くんの目が一瞬輝いたように見えた。多分。
「よかったわね、綾小路くん。自分からはなかなか誘えず困り果てていたものね」
「勝手に人の心の傷を掘り返すな」
なぜか隣から堀北さんに毒を吐かれているが、綾小路くんが嬉しそうでなによりだ。
綾小路くんはどうやらコンビニでパンを買うらしく、俺もそこに付き添うことにした。
コンビニに向かう途中、突然クラスメイトの櫛田さんに声をかけられた。
「綾小路くん…だよね?」
どうやら用があるのは綾小路くんのようだ。やっぱり綾小路くんって人気なのかな?
「実は…少し聞きたいことがあって」
櫛田さんはそう切り出して話を始めた。
櫛田さんは綾小路くんが堀北さんとどういう関係なのか気になっているらしい。
昨日の自己紹介ではクラスのみんなと仲良くしたいといったような目標を掲げていた。
そのため堀北さんとも仲良くしたいと考えているらしいが、連絡先を聞いたところ断られたそうだ。
そこで堀北さんと仲良さそうな綾小路くんに話がまわってきたということだ。
綾小路くんは特別堀北さんと仲がいいわけではないと櫛田さんに伝えた。
「てっきり同じ学校の出身か昔からのお友達だと思っちゃった。ごめんね、いきなり
変なことを聞いて」
櫛田さんは綾小路くんに謝り、そして横にいた俺にも頭を下げた。
「綾小路くん話してくれてありがとう。あと上條くんはごめんね、綾小路くんと一緒にいたのに」
俺は気にしてないと首を横に振った。
「じゃあ、改めてよろしくね!綾小路くん、上條くん!」
櫛田さんは俺たち2人に手を差し伸べた。
俺は櫛田さんの左手を握り、綾小路くんは右手を握った。
初めて女の子の手を握ったけどこんな感じなんだ。なんだかいい匂いがした。
櫛田さんと別れて、綾小路くんと俺はコンビニに向かいパンを買った。
教室に戻り綾小路くんの席に向かうと、堀北さんが静かに昼食をとっていた。
「あら、コンビニに行くにしては随分と遅かったわね。友達ができてはしゃいでいたのかしら」
「いつも一言余計だな」
俺は綾小路くんの席を少し借りて自分のお弁当箱を広げた。
「上條は自炊してるんだな」
自炊ってそんなに珍しいのだろうか。綾小路くんも珍しそうに俺のお弁当箱を覗く。
「なかなかバランスのとれたお弁当ね。綾小路くんも少しは見習ったらどうかしら」
堀北さんはいちいち綾小路くんに対して刺々しい態度をとっている。
なんだかんだ堀北さんも楽しそうだ。堀北さんは綾小路くんを友達と認めないのだろうけど、なかなか悪くない関係に思える。
そんなこんなで俺たちは昼食をとり終え、午後の授業を受けた。
やはり昼食を食べた後の授業は眠い。これは学生の運命である。
そんな睡魔に耐えしのぎ、午後の授業を終えるとスピーカーから音楽が流れてくる。
どうやらこの後体育館で部活動説明会が行われるらしい。
綾小路くんは行くのかな?ちらりと後ろに視線をやるとまた堀北さんとなにかを話している。
「部活以外は何が経験済みなんだ?やっぱりあんなことやこんなことか?」
どうやら綾小路くんが堀北さんにセクハラをしているようだ。
「……ねえ、何か意図して発言してる?私には悪意のある質問に感じたのだけれど」
「悪意?なんだ、オレが何を言いたかったのか教えてもらってもいいでしょうか」
綾小路くんが発言した途端、脇腹に堀北さんのチョップが炸裂した。痛そう。
「な、なにすんだよ!」
だんだんこの2人のやり取りに微笑ましいと感じるようになってきた。
綾小路くんはどうやら部活動説明会に行ってみたいらしく堀北さんを誘ったのだが、軽くあしらわれていた。
じゃあ、ここは俺が綾小路くんを誘ってあげよう!
そう思っていた矢先、堀北さんから意外な言葉が飛び出した。
「放課後少しだけで構わない?付き合うの」
あ、俺の入る隙がない。
少し離れたところで2人の会話を聞いていたため2人の間に入ることに失敗した。
体育館に向かう2人を追うように俺も後についていった。
「ねえ、あなたのストーカーがまた後をつけてるわよ」
堀北さんには当然バレているらしく、冷ややかな視線が向けられた。
実は堀北さん、綾小路くんのこと好きなのでは?もしかして俺はお邪魔ですか?
「上條、きてたのか。一緒にどうだ?」
綾小路くんは快く私を迎え入れてくれた。綾小路くん、好き。
体育館に着くと生徒会の書記の橘さんという方が説明会を仕切っていた。
舞台には各部活の代表が並んでいて、柔道部なんて屈強な体格の生徒でかなり迫力があった。
「心機一転を兼ねて運動部に入ってみたら?柔道なんて丁度いいんじゃない?優しそうな先輩だし、きっと励みになるわよ」
堀北さんがからかうように綾小路くんに提案する。
「どこが優しそうなんだよ。あのゴリラみたいな体格、間違いなく殺されるぞ」
「柔道なんて楽勝だ、と息巻いていたって後で伝えておくわね」
「絶対にやめてください!」
やっぱりこの2人の会話聞いてて心地いい。櫛田さんが昔馴染みなんじゃないかと勘違いするのも無理ないように感じる。
こうして途中までは穏やかに部活動説明会を眺めていたのだが、途中から一緒にきていた堀北さんの様子に異変が起きた。
「堀北。どうしたんだ?」
「堀北さん?」
俺たち2人が声をかけるも反応がない。
まるで舞台のどこかに魅入っているようだった。
堀北さんの視線の先を目で追うと、黒髪で細身の身体、メガネをかけたインテリ感ただよう男だった。
「もしかして一目惚れ…」
そんな俺のつぶやきにも堀北さんは反応しない。反応しないというよりも気づいていないといった方が正しい。
堀北さんの見つめる男は壇上に立ち、これから何かを発するといった様子だ。
しかし壇上に立った男は口を開かない。会場にいる1年生は緊張して声が出ないのかとそういった声で飛び交った。
しかしそんな声もやがて静まり、静寂から30秒が経った頃ようやく男は口を開いた。
「私は、生徒会長を務めている、堀北学と言います」
壇上に立った男は堀北と名乗り話を続けた。
「堀北…」
俺は周りに聞こえないくらいの大きさで思わずつぶやいた。
堀北生徒会長の演説はまるでこの体育館を制圧しているようなものだった。
口調は優しかった、しかし場の空気を掌握したかのような一体感を瞬時に作り出した。
そんな生徒会の演説が終わり、各々部活動が申し込みを開始するなか堀北さんは一切その場から動かなかった。
「よう綾小路、それに上條。お前らも来てたんだな」
同じく部活動説明会に参加していたであろう須藤くんが俺たちに声をかけてきた。
そこには須藤くんだけでなく、同じクラスの池くん、山内くんもいた。
「それで、お前も部活入るのか?」
「いや、俺はただの見学。『も』ってことは須藤は部活するのか?」
「ああ。俺は小学生ン時からバスケ一筋だからな。ここでもバスケだ」
なるほど、須藤くんはバスケ部に入るのか。須藤くんは体型がしっかりさているし妙に納得させられた。
その後俺たち5人は連絡先をそれぞれ交換することになり、これで俺の連絡先に新たに3人が加わった。
まさか思わぬ収穫があるとは。堀北さんは気づけば人混みの中に消えていて、そんなこんなで部活動説明会は幕を閉じた。
2
入学してから1週間が経った頃。
いち男子としては見逃せないイベントがやってきた。
それはプールである。この学校は早い時期からプールの授業がありクラスの男子たちは朝からはしゃいでいた。
「おーい博士ー。ちょっと来てくれよー」
「フフッ、呼んだ?」
周りの男子たちから博士と呼ばれる外村くんが池くんに近寄る。
「博士、女子の水着ちゃんと記録してくれよ?」
「任せてくだされ」
おいおいなにをするつもりなんだ。ちょっと気になるけども。
「博士にクラスの女子のおっぱいランキングを作ってもらうんだよ。あわよくば携帯で画像撮影とかもなっ」
「……おいおい」
朝からとんでもない話をするな。これにはさすがの須藤くんもドン引きしている。
「ねえねえ上條くん、上條くんはあの男子たちとは違うよね?」
隣の席の松下さんが俺に耳打ちで聞いてきた。
「う、うん…」
さすがに女子の前でそんなことは言えない。まったく興味がないわけではないけどね。
べ、別に興味なんてないんだからね!
「おーい、綾小路」
突然池くんから綾小路くんの名前が飛び出す。
「な、なんだよ」
綾小路くんは口ごもりながらも立ち上がり、池くんに近づいていく。
「実は今俺たち、女子の胸の大きさで賭けようってことになってんだけどさ」
「オッズ表もあるやで」
「うわ、呆れた」
池くんと外村くんの言葉に松下さんはため息混じりにつぶやく。
「えーっと…じゃあ、参加しようかな」
「え、ええ?!」
俺は思わず綾小路くんの言葉に振り返る。
「お!上條もやるか?」
「え…」
振り返った俺を池くんが勧誘してくるが、横からの視線が痛すぎる。
「いや、その…」
「……」
隣から松下さんが俺に無言の圧力をかけてくる。
「見てくるだけ、ね?」
俺がゆっくりと席から立ち上がろうとすると松下さんは無言で俺の裾を掴んだ。
「え?」
「さっき自分は違うって言ってたよね?」
お、おお圧。圧がすごい。
「ご、ごめんやっぱりやめておくよ」
俺は池くんに断りを入れ席に座った。
「なんだよつまんねーの。それで今のところ一番の巨乳候補は長谷部…」
池くんは俺のことを置いて綾小路くんに説明を始めた。
そして昼休みが過ぎ、あっという間にプールの時間がやってきた。
「あ、綾小路くん。一緒にいこ?」
俺は綾小路くんを誘って更衣室に向かい、男子たちは意気揚々と着替え始めた。
「すごいね、50mプールなんてなかなかないよ」
俺はプールを見るなり広さに感動した。こういうのって大抵25mだと思っていたし、まさかこんなに大きいとは。
「勃ったらどうしよう…」
そんな不安を池くんがつぶやく。たしかに俺も女子の水着姿を見ていけない想像をしてしまうかもしれない。そうなったら今後の学校生活が恐ろしいものになるに違いない。賢者になっておくべきだったかと後悔してももう遅い。
「長谷部がいない!ど、どういうことだ!?博士っ!」
池くんがプールサイドを見回しながら叫ぶ。
上を見上げると2階の見学グループに何人もの女子がいることがわかった。
残念だったね、男子たち。正直俺も少し喪失感がある。
でも、逆に考えるんだ。勃たなくてよかったって。
「何やってるの?楽しそうだねっ」
喪失感漂う男子たちの前に櫛田さんが現れる。
その豊満なボディに思わず俺のあれが膨らみそうになる。
お、抑えろ。抑えるんだ。こんなところで勃ったら高校生活終了だぞ。
俺は櫛田さんから視線を外し、綾小路くんと一緒に黄昏ることにした。
「何を黄昏ているの?」
堀北さんが怪訝な様子で俺と綾小路くんの顔を覗き込んだ。
これまた大きすぎず、とてもいいサイズのお胸を携えている。
これを見て顔色1つ変えない綾小路くんは猛者なのではないだろうか。
「綾小路くん、何か運動してた?」
俺が心なしか勃ちかけた下半身を鎮めていると堀北さんが綾小路くんの身体を見ながら尋ねた。
「自慢じゃないが中学は帰宅部だったぞ」
「それにしてはすごい筋肉だね」
思わず俺が間に入ってしまった。
「両親から恵まれたんだろうな」
「それにしてもすごいよ」
堀北さんは少し納得のいかなそうな表情をしている。
たしかに綾小路くんの筋肉は明らかになにか運動をしていたかのような筋肉をしている。
中学の時は家が学校から遠かったのだろうか?それだと背中の筋肉が発達している理由が…
綾小路くんの筋肉について考え出したらキリがないか。綾小路くんが自分から話さないのに無理に聞く必要もないか。
俺たちが女子のおっぱいやら男子の筋肉で盛り上がっていると、先生がやってきてプールの授業が始まった。
俺たちはこれから競泳をやらされるらしく、1位の生徒には5000ポイントが支給されるらしい。
「うおおおおお!」
男子たちはポイントか掛かっていると知り意気込んだ。
こうして男子の50m自由形が始まった。
結果は1位が高円寺くんの23秒22、2位が須藤くんの24秒59、3位が平田くんの26秒13、俺は4位の27秒08だった。
前世ではここまでの身体能力はなかった。おそらくスキルの『体力上昇』が作用しているのだろう。
こうしてプールの授業は高円寺くんの圧倒的なまでの速さで優勝を制したのだった。
3
プールの授業から数日経ったある日の放課後、綾小路くんが櫛田さんに頼みごとをされているのを見つけた。
なにやら堀北さんをカフェに呼び出そうという作戦を立てているようだ。
そんな作戦会議を俺がこっそりと覗いていると、俺の肩をとんとんと誰かが叩いた。
振り返るとそこには隣の席の松下さんが興味あり気に俺の顔を覗き込んだ。
「なにしてるの?」
「いや、なに…ちょっとした人間観察?」
「なにそれ」
松下さんはくすくすと笑いながら手招きして連いてくるようにと俺をどこかに案内した。
松下さんに連れられるまま俺はショッピングモールのカフェ『パレット』にやってきた。
え、これってもしかしてデートですか?『好感度上昇』はやっぱり効果あったんだ!
松下さんは俺がそんなことを考えている間に席を取ってくれた。
それにしても人がいっぱいだな。周りには女子のグループやカップルだらけだ。
「その松下さん…こんなカフェまできていったいどういう?」
俺がカフェに誘った目的を聞くと、松下さんは俺に質問をしてきた。
「上條くんはこの学校にきておかしいと思うことはない?」
「この学校にきておかしいと思うこと…」
俺はここにきてからのことを思い返していく。
初日の茶柱先生の説明。コンビニでの一件。
「たしかに、少し疑問に思うことはあるかも」
俺はコンビニに売られている無料と書かれた商品、Dクラスと言った途端に笑い出した上級生。他にも気になったことを松下さんに伝えた。
「やっぱり…」
「やっぱり?」
「実はこの前2年生が食堂である話をしているのを見かけたの」
「ある話?」
「Dクラスは不良品の集まりだって」
Dクラスが不良品の集まり?以前須藤くんの前に現れた上級生が不良品という言葉を使っていた。
Dクラスと聞いて笑い出した上級生。このクラス分けは適当に分けられたものではないというのか。
「この学校には俺たちが知らない秘密があるってこと?」
「どうやらそういうことみたい。上級生の話が本当なのかはわからないけど上條くんたちにも不良品っていう言葉を使ってることから、なにか学校側が私たちに隠していることがあるのは事実みたい」
「それじゃあいったいなんのために…」
学校側は俺たちをどうするつもりなんだ?不良品のDクラスというなら、俺たちに何を期待しているんだ?
「でも、もしDクラスが不良品というのなら私がこのクラスにいる理由がわからない」
その意見はもっともだ。クラスを不良品というのなら、それなりの理由があるはずだ。
俺が考え込んでいると、向こうの席から話し声が聞こえてきた。
「気に入らないわね、何がしたいの?」
堀北さんの声だ。
そういえば櫛田さんの作戦で堀北さんをここに呼び出すことになってたんだっけ。ということは…
周りには綾小路くんと櫛田さんがいた。どうやら櫛田さんの作戦通り堀北さんをカフェに連れてくることには成功したようだ。
しかし、作戦がバレて堀北さんを怒らせてしまったらしい。
「私、堀北さんとどうしても仲良くなりたいの」
櫛田さんが堀北さんに仲良くなろうと詰めよるが、堀北さんからは拒絶されるばかりで結局うまくはいかなかったようだ。
「堀北さんっていつも孤独って感じだよね」
松下さんがあの光景を見ながらつぶやく。
たしかに堀北さんは綾小路くんと一緒にいることが多いけれど、それも隣人だからというそれだけの理由。
きっと連絡先も交換していないだろうし、俺と松下さんのような関係に近い気がする。
「櫛田さんもすごく頑張ってるよね」
俺が櫛田さんについて言及すると、しばらく沈黙した後松下さんは言った。
「……そうだね、櫛田さんはみんなと仲良くなろうと頑張ってるよね」
そう話す松下さんの顔つきはなんともいえない表情をしていて感情がよくわからない。
「でもなんか優しすぎるっていうか、堀北さんみたいな周りと距離を置いてる子にも積極的だから。気苦労もあるだろうなって」
たしかに端から見た櫛田さんは常に周りに気を使って、誰かのために行動してみんなと仲良くなりたいというすごくいい子というイメージがある。
でもこれだけ周りに気を使っていたらものすごいストレスが溜まりそうだけど。
俺たちはその後もクラスについてちょっとした雑談をしてカフェを後にした。
「今日は誘ってくれてありがとう。でもどうして誘ってくれたの?」
「うーん、上條くんなら信頼できるかなって。一応、席も隣だしなんとなく人となりはわかってきたから」
信頼か、なんだか嬉しい言葉だな。女子からそんなこと言われたら舞い上がっちゃうよ。
「あ、そうだ。連絡先交換しない?なにかあった時連絡先知らないと不便だし」
「れ、連絡先?!」
まさかそんな提案があるとは考えもしなかった。
俺は慌ててポケットから学生証を取り出し連絡先を交換した。
「じゃあ、これからもよろしく上條くん」
「うん、よろしく」
カップルと見間違われる可能性があるため、寮につく前に別れそれぞれ帰路についた。
4
そして月末になり、授業内で小テストが行われた。
どうやら成績には反映されないテストらしい。俺たちが普段どのくらいしっかりと授業を受けていたのか見たいのだろうか?
小テストは5教科でどれもかなり難易度が簡単だった。これならさすがに居眠りしている須藤くんでもある程度は点数が取れるのではないだろうか。
小テストが終わり昼休みに入る、ふと隣を見ると松下さんが俺に耳打ちをした。
「ねえ、このテストかなり簡単じゃなかった?入学試験の筆記試験よりも簡単だったし」
「うん、最後の方の問題はかなり難しかったけど最初の方はすごい簡単だったよね」
俺が解いたままの感想を述べると、松下さんが考える仕草をしながら言った。
「先生は成績には反映しないって言ってたけど、成績にはってどういうことだと思う?」
「成績には?たしかに普通は成績以外に小テストの結果は反映されない…」
これが単に伝え方が悪かっただけならいいが、この学校に関していえばなにかあるような気がする。
「ちょっと…」
俺が考え込んでいると松下さんが小声で囁いた。
「手が当たってるんだけど」
「え?」
考え事に夢中になってまったく気づいていなかったが、耳打ちをするくらい椅子を寄せていたため俺の手が松下さんの腕に思いきり当たっていた。
「ご、ごめん!」
俺は急いで椅子をよけた。
5
入学してからあっという間に時間が過ぎ、今月も残りわずかといった頃。
授業の休み時間に隣の席の松下さんに何の前触れもなく今日の予定を聞かれた。
「え、それって…」
もしかしてデートですか?俺にとうとう春がきたのか!
「今日櫛田さんに遊びに行かないか誘われてさ、なんか男子の池くん?とかと一緒らしいんだけど」
Dクラスの何人かで遊びに行くのか。いいな、羨ましい。
「なんか男子の方で連絡きてる?」
「え、いやきてないけど」
「そっか、もしかして上條くんハブられてるんじゃない?」
え、酷くない?いきなり辛辣なんだけど。
「もし連絡あったら教えて、ちょっとあの男子たち視線が…」
まあ言いたいことはわかる。
松下さんにそんなことを言われた後、授業中に池くんからメッセージが届いた。
さっき松下さんに言われたように放課後に櫛田さんと遊ばない?という旨のメッセージだった。
男子の参加者を聞いてから、とりあえず参加すると言っておいた。
松下さんからの話と少し食い違う点としては、池くんからは櫛田さんといつもの男子グループだけということだった。
男子の参加者を松下さんにこっそりと伝え、放課後櫛田さんたちのグループとショッピングモールで待ち合わせることにした。
「遅くなってごめんね。お待たせっ!」
櫛田さんが池くんたちの前に走ってくる。そこには松下さんに森さん、そして軽井沢さんと平田くんもきていた。
「おい、平田もいるのかよ」
池くんと山内くんがなにやら残念そうに話している。平田くんのようなイケメンは妬まれる対象となってしまうのか、かわいそうに。
そういえば平田くんといえば、最近軽井沢さんと付き合っているのではないかと噂されているらしい。(池くん情報)
俺は少しそこに興味はあるが、ひとまずは黙っておくことにしよう。
「ぶっちゃけ聞くけどさ、平田。お前、軽井沢と付き合ってんだよな?」
俺が疑問に思っていたことをなんの前触れもなく聞き出す池くん。
それには平田くんも思わず驚いた反応を見せたが、その直後に軽井沢さんが平田くんの腕をぎゅっと抱き寄せた。
「おおおっ」
思わず声が出てしまった。これがカップルというものか、青春ですね。やはりイケメンは偉大だなぁ。
お熱い2人を目に焼き付ける俺を松下さんが遠目からおかしそうに俺を見て笑っていた。
「櫛田ちゃんは、彼氏とかいんの?」
平田くんと軽井沢さんの流れで櫛田さんにも聞き出す池くん。
「私?私は残念ながらいないなぁ」
櫛田さんの言葉に少しいや、まあまあ露骨ににやける池くんと山内くん。
なにやらとても嬉しそうにしている。
それから俺たちはショッピングモールを目的なく歩き始める。
平田くんと軽井沢さんが2人並んで歩いていて、その後ろを歩く櫛田さんを挟むように池くんと山内くん。
そしてその更に後ろに綾小路くんと俺、松下さんと森さんが二列に並んで歩いている。
結局、綾小路くんと俺。松下さんと森さんといった風にいつもと変わらないペアで話をしながら歩いていく。
正直俺は綾小路くんと話せるだけで青春を感じられて楽しいからいいけど、これ完全にモブ扱いじゃん。
ただ池くんが櫛田さんと出かける口実に利用されただけ、別にいいんだけどね。でも、もうちょっと扱いよくしてくれてもよくない?ちょっと雑じゃない?
心の中で愚痴を漏らしていると、前を歩く櫛田さんが松下さんたちに話を振った。
「二人はどこか見に行ったりした?」
「え?あ、えーっと、どうかな。映画館には一回行ったかな。ね?」
「うん。学校が終わってから二人で」
学校帰りに映画館?!俺が映画という言葉に目を輝かせていると櫛田さんが俺に提案をした。
「上條くんも今度映画館見に行ってみたら?最近上映した映画面白いらしいよ」
「そ、そうなんだ。でもやっぱり一人で見に行くのってハードル高いよね」
「それなら私と一緒に行く?私もその映画ちょっと気になってるんだよね」
突然櫛田さんから思わぬ誘いがやってくる。だがそれにすかさず池くんと山内くんが反応する。
「お、おい上條!抜け駆けすんなよ。桔梗ちゃん、俺とその映画見に行かない?」
池くんが話に割って入ってきて櫛田さんを口説くように聞く。
「あ、あはは」
なんかひかれてない?櫛田さんは池くんの言葉に苦笑いしつつ話をうまく変えた。
その後はショッピングモールの中のカフェに向かい、平田くんたちと近況について語ったり学校での話に華を咲かせた。
櫛田さんたちとはショッピングモールで解散し、帰りは綾小路くんと二人並んで寮へ
と向かった。
なんだか今日は高校生をまじまじと実感した1日だった。
前世ではあんまり友達も多くなかったから休日で出掛けるという考えがよぎりもしなかったが、実際友達と遊ぶというのは楽しいものだと感じることができた。
6
とうとう4月が終わり、5月最初の学校開始のチャイムが鳴り響く。
「これより朝のホームルームを始める。が、その前に何か質問はあるか?」
担任の茶柱先生が教室に入るなり険しい顔で問う。
「あの、今朝確認したらポイントが振り込まれていないんですけど…」
ある生徒が疑問を口にする。たしかに毎月1日にポイントが振り込まれると言っていたが、俺も今月ポイントが振り込まれたことは確認できなかった。
「お前らは本当に愚かな生徒たちだな」
周りの生徒は不思議そうに顔を傾げた。
「ポイントは振り込まれた。これは間違いない」
周りはなんで?でも…といった声で溢れている。だが、隣の松下さんはあることに気がついた様子だった。
「簡単なことさ、私たちDクラスには1ポイントも支給されなかった、ということだよ」
足を机に乗せ、声高らかに笑いながら高円寺くんは言った。
「遅刻欠席、合わせて98回。授業中の私語や携帯を触った回数391回。ひと月で随分とやらかしたもんだ。この学校では、クラスの成績がポイントに反映される。その結果お前たちは振り込まれるはずだった10万ポイント全てを吐き出した。それだ
けのことだ。入学式の日に直接説明したはずだ。この学校は実力で生徒を測ると」
冷たく感情のないように茶柱先生は淡々と説明をした。
そして白い厚手の紙を取り出し黒板に広げる。
そこにはAクラスからDクラスの成績と思われる数値が記載されていた。
Aクラス940。Bクラス650。Cクラス490。Dクラス0。
見事にAからDで数字が下がっている。
「この学校では、優秀な生徒たちの順にクラス分けされるようになっている。最も優秀な生徒はAクラスへ。ダメな生徒はDクラスへ」
なんとなく松下さんとの会話からも予想はしていたが、やはりそうか。
「つまりお前たちは、最悪の不良品ということだ。実に不良品らしい結果だな」
最悪の不良品。俺たちは不良品のDクラスに配属されたということだ。
補足
松下千秋
好感度 25→50
評価 好感度がかなり上がったことで定期的にあなたのことを気にかけています。かなり良好な関係を築けています。なにか進展を期待してもいいかもしれません。
発情条件進捗
条件1 達成
条件2 触れられた回数2回、触れた回数1回 合計3回
条件3 達成
条件4 未達成
条件5 未達成
綾小路清隆
好感度 15→35
評価 綾小路くんからは友達としてかなり信用されています。松下さんについで好感度が高いです。
発情条件進捗
条件1 達成
条件2 触れられた回数0回、触れた回数0回 合計0回
条件3 未達成
条件4 未達成
条件5 未達成
堀北鈴音
好感度 1→5
評価 少し興味を持ってくれたようです。よかったですね。しかし綾小路くんと比べればまだまだです。
発情条件進捗
条件1 未達成
条件2 触れられた回数0回、触れた回数0回 合計0回
条件3 未達成
条件4 未達成
条件5 未達成
櫛田桔梗(NEW)
好感度 0→25
評価 今のところかなり信用はされています。少なくともマイナスなイメージは持たれていません。
発情条件進捗
条件1 達成(実は交換している)
条件2 触れられた回数1回、触れた回数1回 合計2回
条件3 未達成
条件4 未達成
条件5 未達成(手を握ったが、条件を満たしていないため未達成。代わりに触れられた回数、触れた回数にそれぞれ1加算)
須藤健
好感度 5→25
評価 よき友達として扱われています。須藤くん攻略を目指してみるのもありかもしれません。
発情条件進捗
条件1 達成
条件2 触れられた回数0回、触れた回数0回 合計0回
条件3 未達成
条件4 未達成
条件5 未達成
平田洋介
好感度 10→25
評価 わずかな会話でも好感度が上昇しています。平田くんは優しいですね。
発情条件進捗
条件1 未達成
条件2 触れられた回数0回、触れた回数0回 合計0回
条件3 未達成
条件4 未達成
条件5 未達成
軽井沢恵(NEW)
好感度 0→0
評価 そもそも存在に気づかれていません。どんまい。
発情条件進捗
条件1 未達成
条件2 触れられた回数0回、触れた回数0回 合計0回
条件3 未達成
条件4 未達成
条件5 未達成
森寧々(NEW)
好感度 0→5
評価 池くんよりは好感度が高いです。しかしこれといっていいイメージも持たれていません。
発情条件進捗
条件1 未達成
条件2 触れられた回数0回、触れた回数0回 合計0回
条件3 未達成
条件4 未達成
条件5 未達成
茶柱佐枝
好感度 0→5
評価 そもそも接触がほぼ皆無です。ですが小テストではかなり好成績を残したので目には止まっています。
発情条件進捗
条件1 未達成(現状攻略不可能)
条件2 触れられた回数0回、触れた回数0回 合計0回
条件3 未達成
条件4 未達成
条件5 未達成
一之瀬帆波
好感度 10→10
評価 今回は関わりがありませんでした。もっと積極的に関わりにいきましょう。
発情条件進捗
条件1 未達成
条件2 触れられた回数0回、触れた回数0回 合計0回
条件3 未達成
条件4 未達成
条件5 未達成
スキル『発情』発動条件
条件1 対象と連絡先を交換している
条件2 対象に触れられた回数と触れた回数の合計が5回以上
条件3 対象の好感度が50を超えている
条件4 対象と室内で2人きりになる
条件5 対象の手を握る
条件1から条件4を満たしたうえで条件5を行うことでスキル『発情』が発動する
スキル『発情』で発情した相手は30分間の間発情し続ける。
綾小路くんに惚れちゃいそう
ですが、綾小路くんとなにかが起こるみたいなことはないです
綾小路くんが喘いでいる姿が想像できない(軽井沢さんとどんなことしてるんだ)