久川凪さん、妹を守る(?)ためPに色仕掛けしたらいっぱい絶頂させられてしまう 作:ふりーじ屋/家庭内禁書
原作:アイドルマスター
タグ:R-18 アイドルマスターシンデレラガールズ 久川凪 Pドル
凪、実はPラブ勢というお話です。
ご依頼は http://skeb.jp/@freege_affected か、 http://twpf.jp/freege_affected からどうぞ。
ご参考→https://skeb.jp/@freege_affected/works/38 ※転載 pixiv、ハーメルンとくるっぷに転載しています。
「あ、凪、待たせてすまな……えっ」
「Pちゃんこそ早いねっ、“はー”と少しでも長く過ごしたくって、待ってられなかったんでしょ~?」
「……おう、そういうことにしておいてくれ、颯」
待ち合わせ場所は都内某駅ビルの喫茶店だった。久川凪は約束より30分も早く前乗りして、彼女の好みより酸味強めのブレンドコーヒーをちびちびすすっていた。小柄な少女である凪の手にちょうどいいサイズのコーヒーカップ1杯で650円。
(フロアに対して席数が少ない、ゆったりさせた空間。客数も客層もしぼってくつろがせるぶん単価を上げているのでしょう。東京だとこんなチェーンが成り立つのか)
凪がアイドルになる前であれば、待ち合わせにもっとお手頃なカフェを使っていた。
「ケーキとかプリンとか頼んでおけばよかったのに、俺のおごりだし」
「喫茶店に行ってコーヒー1杯で粘る、ってのやってみたかったの、なんだかオトナって感じがするもん」
「お金のないオトナって感じがしちゃうなそりゃ」
凪は変装していた。
下ろせば腰まで伸びる長くゆるいウェーブヘアを、つむじに近い位置でポニーテールとしていた。小さく丸い顔立ちに黒縁ウェリントンのメガネが少し大人びていた。着衣は濃紺のアクセントが入った白いブラウス、膝上20センチはあろうかという大胆なミニのプリーツスカートは薄紫、と颯をまねたコーディネートだった。浅葱色のセーターを腰に巻いていたが、カフェでは横に畳んでいた。
カップをCからEまで上げて見せるためブラに入れたパッドの辺りが、プロデューサーの視線を浴びるとむずむずした。
「黒埼さんみたいにシーシャすぱすぱやるようになったらどうしよ」
「Pちゃんは、はーがそうしてたらイヤ?」
「そんな颯を見てたら、俺も吸いたくなって禁煙やぶっちゃいそう」
「Pちゃん吸ってたの?」
「水じゃなくて紙だけど」
「禁煙いままで何回やぶっちゃった?」
「まだ継続中だよ」
凪が“Pちゃん”と呼んだ壮年の男は――凪と、その双子の妹・颯を担当アイドルとするプロデューサーが――凪のブレンドより少し高いアイスコーヒーを頼んだ。
(こちらが不意にぶちかましたのに、ぽんと合わせて……凪がされたら、こうスムーズには行きませんのに)
凪はプロデューサーと待ち合わせするにあたって変装していた。カムフラージュを、颯が人目を避けるときの姿へ露骨に似せていた。立ち居振る舞いや話しぶりも、首筋や肩あたりがむずむずするのをこらえながら颯に寄せていた。
颯のマネをして、颯として扱えと言外に主張した。プロデューサーへすぐに通じてしまってかえって戸惑った。
(……そうです、いまの凪は、はーちゃんです……Pは、ただのごっこ遊びと思ってくれますか?)
冷めたおしぼりを手でもてあそんで、うっかり畳んでウサギを作ろうとして、思いとどまった――(はーちゃんは手持ち無沙汰でもおしぼりアートを作らないでしょう……)――颯だったらどうやり過ごすか考えたが、はかどらなかった。
「ここで話してもいいものかね、折り行った話って」
「Pちゃんのおうち、近いんでしょ」
「歩いてせいぜい10分」
「じゃあ行こっ」
「狭くて古くてむさ苦しいところなんだが」
「14平米ぐらい? もっと狭い?」
「……いい勝負かな」
「狭いのは、駅チカだからしょうがないとして……散らかってたらめっちゃからかってあげる、いつもの仕返しをされなさ~いっ」
「うわぁ」
先日に待ち合わせの約束をするとき、凪は「はーちゃんについて……折り行って話がしたく」という用件だけ告げて、日時と場所もほとんど勝手に決めてプロデューサーに飲ませた。
本当の用件は、プロデューサーが颯にかけるちょっかいにクギを刺すことだったが、あえて伏せた。
(由々しきことに、はーちゃんはPにからかわれたり、もてあそばれたりが……少なくとも現時点では、まんざらでもないようす。しかし……)
凪が“いつもの仕返し”と言ったように、プロデューサーは颯を常習的にからかっていた。その内容は男子中学生のような子供じみたものがほとんどだった。ただ彼と彼女らは担当プロデューサーとアイドル――共謀して愛嬌やセックスアピールを売りつける立場――であり、際どい場合もあった。颯のプロポーションは、からかいを冗談に感じさせない。年齢に対して早熟で、スリーサイズは82-56-82を掲げている。そのボリュームを、けさブラに入れるパッドを選んで凪はいやでも実感した。
「ねぇ、Pちゃんのおうちに行こっ」
「伝票よこしなさい、颯じゃ落ちないかも」
「落ちる? Pちゃんのおごりって聞いたんだけど~?」
「落ちなかったら俺の自腹ってことよ」
凪にとって穏やかならぬことに、颯は“Pちゃん”から“際どい”ちょっかいを出されると、迷惑そうな顔をしつつ隠れてうれしがっていた。もっとも身近に頼りにする異性から対等に扱われている気分になって、舞い上がってしまうらしかった。
「……さすがに短くないか、スカートが」
「セーター巻くからいいでしょう?」
「風が吹いてめくれちゃいそう」
「Pちゃんが守ってよ~」
喫茶店から駅前通りを外れ、プロデューサーの部屋へ向かう。道すがら、ふだんの颯なら照れくさがって想像するだけで赤くなるほど、凪は彼にべたべたくっついて歩く。いたずらな春風を除けるため、というふりでプロデューサーに腕を絡める。ブラウスごしにむにゅむにゅ押しつける。彼の腕のごつごつした感触を味わって、またほかの通行人から自分たちがどう見えているのか考えて、凪の意識がふつふつのぼせる。
(……業界だと、このぐらいの男性と少女の2人連れをけっこう見ますが、世間では)
2人の年格好の差は、兄妹というには過大、父娘というには過小だった。
「はーと歩いていて、Pちゃんが近所でウワサになっちゃったらどうしよー」
「なにを楽しそうに……言葉と声音がズレてるぞ」
「Pちゃんこそ、いつもはーのおっぱいとか脚とかいじるくせに」
「いやいやいや、ちょっと颯さん語弊が」
「ふーんっ」
凪は浮ついた態度を続けつつ警戒心を深める。
(まるではーちゃんが色ボケみたいな言い方しますが……端から見たらPが浮ついてて、えっちで、いじわるで、セクハラばかり……あ、された側が嫌がらなければハラスメントではないのでしたっけ……くっ)
凪の目論見は、こうしてプロデューサーを誘惑して油断させ、舞い上がっている颯の頭を冷やすような軽挙に誘い――(なんなら一線を……あくまではーちゃんのためですが、少しはPのためでもあります、コンプライアンス大切です、エスカレートする前に)――それを記録して彼にも自重させる、という予定だった。凪が颯のふりをしているのは、彼への揺さぶりのつもりだった。颯のふりをしていれば、凪が自身に似つかわしくないと思う誘惑でもどうにか演じられる、という意味もあった。
「建物はここだよ、部屋は……」
「なるほど、物件選びの優先順位がまず交通の便、次は家賃だったんだ」
「狭くて古いって言いたいなら言っていいぞ」
「はーたちがもっとガンガン稼いだら、Pちゃんも夜景のきれいな都心のタワーマンションとかにお引越しできる?」
「どうかな……ここ大学のとき上京してからずっと住んでて……引っ越しがめんどうでさ」
プロデューサーの“引っ越しがめんどうでさ”という言葉を、凪は部屋に入るまで信じていた――(凪やはーちゃんは女子寮だったから、めんどうもたかが知れていましたが、Pは……)――リビングに通されて、すぐに疑いはじめた。
「薄っ!? 生活臭めっちゃ薄っ!」
「どうやら、あまりからかわれず済みそうだな」
「……こんなのって……! そうだPちゃんったらはーが来るからって都合の悪いの急いで隠したんだ!」
「そりゃ、そうじぐらいしたが」
家具が冷暖房とパソコンとクローゼットなど最低限で、棚はアイドルだのマーケティングだの仕事がらみの資料ばかり。個人的な生活の気配があまりに薄い。凪はあまりの殺風景さを怪しみ家宅捜索しかける。
が、1機のデジタルフォトフレームに意識を吸われ止まる。
「あ……これっ、これっ」
「……飾っちゃいけなかったか?」
そこにはプロデューサーと颯が仕事のあいまに撮ったらしきツーショットが――(わざとか!? 凪は、「はーちゃんについて、折り行って」と約束しておいたはずだが?)――凪は顔が引きつるのをこらえながら、颯としてうれしがる。
「ま、まぁ、これはいいけど、うれしいけどっ……いやーしかしPちゃんの部屋あやしい! なにか隠してるっ」
「じゃあ俺が茶ぁ沸かすあいだ家探ししてていいよ」
「シンデレラの魔法が解けるまで粘るからねっ」
「寮の門限は守ろうな」
「……はーだって、Pちゃんとできるだけ長くいたいもん」
そう言われた凪だったが、プロデューサーの部屋をくるくる歩き回ったり、引き出しや物をじろじろ見たりするだけで触れなかった――(はーちゃんなら、家探しなんて無作法しないでしょう)――例のデジタルフォトフレームを見ると、颯の笑顔がまぶしすぎてなんだかやましくなって目をそらしてしまった。
(いつかのビデオレターを思い出します……いえーい! はーちゃんだよ☆ はーは目立つの大好き! かわいくてスタイルよくて性格いい……あのときほどではありませんが、しょうじきしんどい)
家探しの代わりに、ハンドバッグに仕込んだカメラとマイクを起動させた。あとは“軽挙”をさせて録音・録画できていれば計画通りである。
ほどなくして、甘ったるい焼き菓子の匂いが薄い生活臭に取って代わった。
『わ、わぁ、マフィン、手作りじゃんっ……はーの親愛度こんなに上げてどうするつもりっ!?』
『ええと……あの、俺お菓子好きで……あぁ、颯の手土産とかぶっちゃったか』
『じゃ、じゃあっ、はーがお茶淹れたげる、紅茶でしょ? 最近、淹れるの練習してるんだー、披露させて?』
マフィンは出かける前に焼いて、レンジで温めなおしたらしかった。ややしっとり感が強く、甘さのなかにほんのり塩味が――『無塩、切らしててさ』『ふふ、なーと似てるね』『そうなのか?』『かぼちゃ姫以来かな、凝り出しちゃってさー、かわいいんだよーっ』――凪は漏れかけた素を必死にかき消そうとして、味わうどころではなかった。
(Pはいつまで、凪のふりに付き合うのか……?)
凪はプロデューサーの弱みを握ろうとしながら、彼へのきまり悪さで落ち着かなくてたまらなかった。プロデューサーと仕事上のパートナーの割には親しいが――(はーちゃんも、まだ、そのぐらいのはず……)――その仲に乗じて彼のプライベートな時間と空間に強引に占有している。公私混同のわがままを聞いてもらっている。その好意に甘えつつ、私室で隠し撮りをしている。本心を伏せて誘惑している。もし彼が凪に同じことをしたら凪は腹に据えかねるし、颯だって恋も冷める――(凪、もしかして方向性を間違えてます……?)――いまからでも謝って菓子折りを置いて帰るべきか迷う。
『はーとの思い出を飾ってくれるのはうれしいけど……Pちゃんって、部屋に小物とかあんまり置かないんだね』
『実はミニマリストでさ……って言ったら信じてくれるか?』
『さほどでも』
『くっ』
『はーは……なーほどじゃないけど……お出かけすると思い出に小物を買っちゃう。アイドルになってからお仕事で出かける場所が増えて、増えちゃって増えちゃって。でもPちゃんも出かけるでしょ?』
『俺が買うのはお菓子ばっかりだ、お菓子好きで……このマフィンもちょっと練習してるんだ』
『おいしいよ、Pちゃんの』
凪はマフィンカップを3つ空にしたあと、セーターをほどいたまま立ち上がった。スースーしてたまらないミニスカートで、太もものほとんどをプロデューサーから見えるように、かがんだり座ったりしながら行儀悪く部屋を物色しはじめた。
『こら、颯、見えちゃうぞ』
『Pちゃんのえっち~っ』
太ももよりもむしろ、ポニーテールでがら空きになったうなじにプロデューサーの視線を浴びて、背筋がくすぐったくなる。
『本当はドキドキするでしょう?』
少なくとも凪は“ドキドキ”していた――(あのマフィン、もしかしてなにか入ってたのかも……まんまと一服盛られて、凪は……)――このまま自分の体が熱くドロドロに溶けてしまいそうで、足の裏で床をぎゅっとつかむようにしてどうにか踏みとどまる。いっそここでスカートをぺろりとめくってもらえたら、雰囲気がぶち壊しになってどうにかならずに済む、と妄想する。
(そんな都合のいいこと、ないでしょう……Pは凪を怪しんでいるだけ、ただ凪の意図を探るために泳がせているだけ)
埒が明かないまま停滞する空気にじりじりと焦らされる――(別に……凪の……私のおふざけだと思われていても……Pが手を出してくれさえすれば……)――意を決してプロデューサーに近づく。
ざらりと粘膜をくすぐる体臭を感じ取る。
『だいたい、アイドルの衣装にもうちょっと際どいのあったよね?』
『いまは2人きりだから』
『ぁ……“私”ならっ……Pちゃんと2人きりのほうが、大胆になれちゃう』
仕事でもっとも近づいた距離よりもっと近く、どちらかが手を伸ばせば逃れ難く触れあうところまで近寄る。ウェリントンの伊達メガネの端がわずかに曇る。
『それとも、Pちゃんがさっきのマフィンに、なにか入れてくれてたせい?』
『ただのマフィンだって』
凪の言葉は詰問のような哀願だった。彼女自身がやましいことをしているのだから、プロデューサーもやましいことをしてくれていなければ耐えられなかった。
『だって、こんなに……っ……熱いんだもんっ』
『な……んっ、はや、てっ』
プロデューサーの手を取り、自分の胸を触らせかけ――(そっちはダメ……っ!)――すんでのところで止まって、代わりに自分の頬を触らせる。彼の手が、火照った凪の頬にもほんのり温かく感じる。
『こんなプライベートなところ、好きな人じゃなきゃ触らせないよ』
『俺相手でも、触らせていいわけじゃないが……』
『それは……こっちが、決めることだよっ』
颯のふりをしながら、プロデューサーへの好意をほのめかす。勝手に颯を代弁してしまっている気分になる。凪の心臓が“ドキドキ”しながら締めつけられるように苦しむ。頸動脈から“ドキドキ”が彼にも伝わっているだろう、と確信する。
『……2人きりだったら、いつもより際どいこと、したくなっちゃう?』
『あのなぁ、颯』
『お説教は、やめて』
『いつも……実は、したいと思ってるんだ……そう、オトコはケダモノなんだ』
『2人きりだと……他の人にバレなきゃいいや、みたいになっちゃう?』
プロデューサーの胸元、首元に顔を押しつける。彼の少し柔らかい襟付きシャツごしに匂いも体温も肉も骨も感じて脳裏がしゅわしゅわサイダーのように弾ける。なのに体はどろどろと熱くねっとりしてしまう。
もし颯とプロデューサーが、すでに2人きりで、凪の知らないところで、バレずに――(ダメ、それ以上、いけない)――凪のぐずつく理性が淫らな妄想でくすぶる。
『なっちゃうでしょ、Pちゃん』
『なっちゃうなぁ、うん』
『知ってたよ、Pちゃんのそういうとこ』
『……うわっ、恥ずかしくなってきた』
凪がますます焦れる――(早く、言い逃れできない証拠をください、さもないと……)――本当に、颯を守るためにプロデューサーを挑発しているのかどうか、彼女自身を疑ってしまう――(違う、ただ、はーちゃんがこれ以上近づくには、Pがケダモノすぎるって証明するだけ、なんです……)――息が苦しい。喉がかすかにひゅうひゅうと鳴っていて体力づくりのレッスンであればそろそろ終わってくれる頃合い。
『ダメなんだからねっ……ダメなんだからっ、Pちゃんはっ』
『お、おいっ、ちょっと』
口ぶりとあべこべに、凪はプロデューサーの体に自分の身を寄せる。乱暴に、擦りこむように迫る。
『……興奮しちゃってるでしょ』
『こら、そこ……そこは、そのっ、触っちゃ……』
『しちゃってるでしょ』
『ああもうっ』
凪はプロデューサーから抱きしめ返される。自分より二周りほど体格の大きい彼の腕にそうされて、まったく逃げ場がないと実感できる。“ケダモノ”に食われる。
凪は観念していた――(これで、これで……まぁ、肉を切らせて骨を……そう、もうこちらの……)――はずだった。
『もう凪って呼んでいいか?』
『……Pちゃん?』
『凪って呼んでいいかね、いいだろ?』
『え、あの、P……いまさら? いまさらですか?』
『いまから凪を抱くつもりだ』
ささやかれ、ブラウスをはだけられ、ブラをパッドごとずらされ、凪はきょう初めてプロデューサーから視線と顔をそらした。
※
『は……ふはっ……んふふっ……ナマのドキドキ、伝わっちゃいますか』
『おお、いいね。こういうこと慣れてるみたいだ』
『ふふふ、邪推か』
『少なくとも、俺が凪の齢だったころよりは』
凪はプロデューサーの膝上に抱え上げられ、素肌の乳房を手で緩やかに愛撫されている。彼が両手を使えば凪のふくらみをすっぽり覆えてしまう。けさパッドを入れたときと同じぐらい――(もう少しおっきければ……なんて、こんなときまで)――切なくなる。
『んっ、うっ、あっ……そんなに、面白くないでしょう?』
『うれしいけれど』
『そうでしょうか……あ……ふぁ、あ、んんっ!?』
『あ……ちょっと、力んでしまったか、ごめんな』
凪がアイドルとして公式で掲げるスリーサイズは76-56-80で――(ふん、しょせん数字遊びよ……凪は、はーちゃんの……ちょっとだけ、触らせてもらったことも……)――ふつうなら、同年代では胸を張れる側のスタイルである。ただ双子の妹が久川颯で、しかも颯といっしょにアイドルになってしまって張りにくいだけである。
アイドルになったせいでこの男と出会って、ここまで肌を許してしまっている。
『敏感、ですから、その……』
『触るから……そうっと、ね』
『……凪の、話、聞いて……は……ふはっ……あ、んあっ……! 別に、はーちゃんみたいに、おっきく、は……んん、くっ……』
凪の肌は、当人が戸惑うほど敏感になっている。アイドルと学業で多忙なあいだをぬってケアしている賜物で、張りがあって皮膚が柔らかくみずみずしく、プロデューサーの指先を軽く跳ね返す。敏感なところを中心に、彼の手指によってつままれて、捻られ、こねられて、摩擦される。
『緊張してる?』
『凪が、緊張? まぁ、ライオンの檻ならぬオオカミの巣穴に入ってしまったようなもので』
『それは、それは、ねぇ』
『ぁふ……ま、まぁ、くすぐったい感じで、ほぐれてますよ』
胸だけでなく、首や鎖骨、ウエストもゆるゆるとくすぐられる。反撃のように、結ったままのポニーテールを彼の顔にくっつけてもしゃもしゃとこする。彼の吐息を髪と頭にもらってしまい、また脳裏がしゅわしゅわ疼く。
『いい匂いがする、凪が……』
『商品化して売ってみましょうか。部屋に爽やかなはーちゃんの残り香』
『いや凪だろ……どっちにしても、使ったら切なくなりそうだな』
『ちょっと名案と思ったでしょう……んきゅっ、ふ……!? う……しゃべってるときは、じっとしてて……』
そう言いつつ、プロデューサーが手を止めると黙ってしまう――(しまった、凪が黙ったら触っていいと言ったようなものでは)――彼の手がじっとしているのに、凪の肌の表も裏も奥も落ち着かなくてそわそわしてしまう。プロデューサーの神経で凪の肌も体温も匂いも噛み締められている気がする。
『ん……くぅ……ふ、ふ……すっかり脱がせてしまったらどうです……? むしろ脱がせて……これシワになったらイヤです……んっ……』
『そうだな……髪はともかく、服は脱いでくれたほうがもっと凪らしい』
『凪らしい、って、褒めてるつもりか……? ん、んっ……おっぱい、触るので、返事なんて……あ、く、んっ……』
凪の神経がますます高ぶって、プロデューサーの指関節がほんの数度でも曲がるだけで、のどが甘ったるい声を漏らしかける。けれどそうやって鼻息が荒くなって聞こえてしまうのも気になる。神経が通っていないはずの布目をそっと撫でられるだけでも、そのそばの肌が勝手にじんわり熱くなる。
『胸、だけ……脱がされて、いじられて……なんですか、楽しいのですか? 本当に?』
『凪を見てて、ここ最初に触りたいなぁと思っているんだよ』
『わかったふうな口を……く、ふぅ、ん……あ、ぁ……!』
うっすらふくれてきた乳輪をくるくるこすられて、凪のCカップがぷるぷる弾む。すらりと細い太ももがびくりとこわばる。短くしすぎたスカートがあおるように擦れて揺れる。
『あっ、ゃ、あ……ちくび、は……んんっ……ひぅ……!』
凪に与えられる愛撫は焦れったくて物足りなくて、快楽より焦燥と期待を大きくする。お尻で彼の股ぐらをぐりぐり押す。八つ当たりか抗議のつもりが、腰で不自然に固い出っぱりに押し返され――(興奮して……幼児性愛者か? って、凪も年ごろのスタイルではありますが)――腰砕けになりかかる。
『凪って、もしかして敏感なのかな』
『……はーちゃんのほうが敏感かも知れませんよ』
『いまは凪の話を、凪としているつもりなんだが』
『んく……! うは、ぁ、んっ……そ、それ、なら……』
『なら?』
『……奇特な人、ですね』
胸を愛撫されて――(感じてはいない、感じていないはずだ、いやちょっとは感じて……とにかくこれ以上は……)――プロデューサーの手を止められない。止めてほしくない。彼の欲望が凪の想定よりじっとり抑制されて現れている。きょうまで気づかなかっただけで、まさかきょうの件を約束したときからオンナとして狙われ求められていたのかも、と想像して――(もっと求めてほしい……?)――凪の首と肩が、いやいやと見せるように左右に動く。彼が手を止めると凪も止まってしまう。
『ふやぁあっ! ああぅ……ッ! あ、あっ……ん……!』
『ちょっと敏感なところ、しつこくいくよ』
『ぃあっ、んんっ……! んっ、うっ、あ、あっ……!』
プロデューサーの欲望が上げ潮になってか、凪が感じるところと加減を見抜いてか、愛撫のペースが上がる。胸に受けるだけで、凪は頭からお腹の底までじくじくと乱されてしまう。横に振ってつれなくしていた肩が浮き沈みするばかりになる。息がどうしようもなく弾む。声が跳ね上がる。肌に汗がにじむ。太もものあいだがほんのり湿り気を帯びる。
『もう少し優しいほうがいいかな』
『ぅ、う……そ、そんな……Pの、お気に召すままに……』
『……いきなり聞き分けが良すぎないか?』
『いや、って聞かせたらしつこくされてるので……あまのじゃくかな、と思って』
羞恥と性感に翻弄されながら、凪はプロデューサーの手つきや息遣いを、その向こうの内心をうかがう――(まさか、隠し撮りまで気づいて……?)――胸を愛撫されているあいだに、いまの2人の姿がちゃんとレンズに映っているかどうか気にする素振りを見せてしまったかも――(というか、これでは……凪が、まるで、まんざらでもないみたいで……!? これを、はーちゃんに見せることになったら……!)――また乳首をくすぐられる。
『ぁ、く……ふ、ぅあんっ、んふっ……い、いじわる、です、ぅ……っ!』
『凪ったら、ますますドキドキしてるし、温かいし、匂いも……』
『う、ぅううぅ、この……あ、ぅ……ぅぅ、ぁ、ぁああっ……!』
『本当に敏感だな、凪って』
『……繊細、と言ってください』
この瞬間を自分で録画・録音していると思い出して、血液が茹だっているように全身が火照っていく。ひりつく意識に背徳の塩を自分で塗ってしまったかも知れない。
『うっ、ぐ……ぅぅぅうっ……! や、ぁひぁっ!? もぅ、むね、ぇ……んうっ、ひうぅ……っ!』
ただプロデューサーに抱きしめられて胸に手を添えられているだけで、凪の全身は炎のように熱くゆらゆらしてしまう。彼の指をいままで考えられないほど読み取って、そこから内心まで――(まさか、本当に、凪ので……興奮、して)――まだ動かせるかかとをぱたぱた打ち鳴らす。
『P……その、お願いが、あります……』
『うん』
『む……胸、ばかり、いじらないでください……』
『……嫌だったかな』
『嫌じゃないんですけど……ですけど……なんだか……』
『なんだか?』
『……イヤミの、ようです……っはぅ!?』
いきなり胸に焼け付くような刺激を感じてのけぞらされる。しかし押さえつけられ、ちょっとジタバタしたぐらいでは逃れられない、と理解させられる。
『凪、キミはいまかなりやばいことを俺に言って聞かせた』
『……ふ、ふふっ、この状況で、やばい、ですって……?』
『ここで俺が止めたら、これまでイヤミで触ってた、って俺が認めてしまうようですね、凪さんや……できない相談だ』
『……うわっ、それは……え、イヤミじゃなかった……っ、あ、ぉぁっ、ちょ、ちょっと、ステイ、P、ステイっ……んんっうぅううっ……♥』
『あぁ、凪、見た目より余裕があったんだな……勘違いしちゃってた……もしかしてここまで退屈させちゃったか?』
凪は急激で、切なくて、甘ったるい疼きをこらえるのに必死で、感情も言葉も乱れてこぼれてしまう。
『ひあっ、い、や、あっ……♥ お、おっぱぃ、そ、そんなっ』
『さっき、どんな感じが良かったんだっけ……先っぽ、くるくるされるぐらいからやり直してみるか、一つずつ』
告げられるだけで、凪はさっきまでの胸愛撫一つひとつを思い出して、快感までぶり返させてしまう。いま触れられているプロデューサーの刺激と折り重なって、神経がもっともどかしく掻き乱される。彼の指と手のひらにたやすく転がされて、堪えきれなくなる瞬間ばかり考えてしまう。
『や、ぁ、っ……ちくび、ほんとに、だ、め……んぁぁ! あっ、やぁ、あっ……♥』
『凪はほかのところも敏感なのかな、見かけどおりか見かけによらないのか』
『し、知らないっ……気にしてるんですっ、これでも……あぅ、んんんんっ! んくっ、ひぅう……っ♥』
『じゃあ引き続きおっぱいから、ていねいにやらせてもらうよ』
『ていねいに、って……これ以上、は……』
『イヤミや伊達や酔狂で手を出せるオンナじゃないんだよ、お前は』
凪はプロデューサーにがっしり抱きしめられて、身じろぎも至近距離で胸を愛撫されつづける。不意に、凪は自分がプロデューサーにどのようにして乳首絶頂させられるかが思い浮かんでしまう――(ちょ、ちょっとくるくるって、されただけで……もう、いけない、何回もされたら……)――早く絶頂させて解放してくれ、と言わんばかりに体を預けてしまう。胸全体を覆われるだけで、きゅんと胸が切なくなる。乳首を指先でなぞられ、切なさがもっと育っていきそうになるところで止められる。
『凪はこうされるの、嫌だったかな』
『……凪が、素直に答えるとでも?』
『聞かないではいられなくて』
『堪え性がないと、苦労しますよ……く、ふっ……!! ハッ、はァッ……っ……』
プロデューサーの愛撫が強引になるほど、凪は自身の胸――(下手したら、体、ぜんぶが……)――が火照って媚びてすでに彼を受け入れてしまっている感覚に陥る。まだ触れられていない太もものあいだが内側からちくちくとむずかる。自覚して、もっと息が荒くなってしまう。
『あ、ダメ、もう……そう、なって、しまう、から……は、ぉ、ァ、あ……ッ♥』
『焦らすつもりはないんだが、初めてだとね』
『なにが、初めてですか……こんな、手慣れた……』
『初めてだろ、凪とは……まさか、俺、なにか忘れてるか?』
『ひゅっ、ひゅぅんっ♥ く……こうやって、ほかのオンナも、手で転がして……ふぅんっ♥ そ、そこダメダメ……ぅっ……♥』
プロデューサーに意地を張って、絶頂間際で嬌声を押し殺す。頭がくらくらして、体のあちこちがぞくぞくして、それも押し殺そうとしてかえって抑えきれないと思い知らされる。自分の体が彼の思い通りになっている。
『っ……っっうぅー……ぅ……!』
どれくらいの時間か凪自身はあいまいだったが、意識が飛んでいた。嬌声を殺したぶんだけ、痙攣や愛液がひどくなってしまったようで、下着が濡れて秘所に張りついてしまって気分が悪かった。
半ば破れかぶれで、まだ凪を抱いているプロデューサーを抱きしめ返す。
『……悪いオトコだな、凪はおかげさまでメチャクチャです』
『俺と凪がこうしているところを撮って、颯に送って、『こいつは悪いオトコです』……って証明してやるのが、凪の思惑だったわけか』
『……うわ』
『うわ、じゃないよ……俺が撮ってやろうか』
自分の隠しカメラとプロデューサーのスマートフォンで撮られながら、凪は颯を装っていた着衣を1枚ずつ自分で脱がされた。脱がされながら、彼を“悪いオトコ”と貶めて聞かせてやると妙に胸が高鳴って――(もうダメかも知れません、ね……)――凪は自分の浮つき具合を自覚した。
『あ゙っ♥ つ、つよっ……うっ♥ うう……♥』
『あっ……イッちゃったか』
『……なんですか……いけないんですか、そんな、手が滑ったみたいに……』
『あんまりイカセすぎると、きついでしょう』
『ふふ……そんな忖度してもらうの、初めてですよ……っ……っっうぅー……ぅ……!』
凪は全裸になってからも愛撫と絶頂を重ねられて、額や胸にいくつも玉の汗を浮かせていた。頬や首筋など皮膚の薄いところがリンゴのように真っ赤になっていて、それを彼のスマートフォンのミラー機能で見せつけられた。胸や腹や秘所が快感で乱れてぜぇぜぇと落ち着かないままだった。それをこらえようと足をバタバタさせすぎて『下の人に迷惑だから』とベッドに抱え上げられた。
『いいんですか……いまの、凪、ベッドに上げてしまって』
『ああ、映らなくなっちゃうか……撮ってもらいたかったのか?』
『いや、まぁ、それより……』
『それより?』
『……粗相、してしまうかも』
『すればいいじゃないか』
『は? あの、ちょっと、Pっ、ねぇ……あ……あ、あっ、あ、だ、めぇっ♥』
ベッドから下りられないほど抱きしめられながら、凪は乳首とクリトリスへ愛撫を重ねられる。
『こ、こらっ、人が親切で言ってあげたのにぃっ♥ あ、ひゃっ、ぃっ、い、いいですから、やめてっ』
『すればいいじゃないか』
プロデューサーから逃れられない程度の抵抗しかできず、凪はどんどん追い詰められる。肉体と精神が引きずり回され、隙間からぷしっとまたなにか漏れてしまう感覚もしてしまう。
『う、わぁ……あぁぁぁぁっ! あうっ、あぁ……!』
『こんなの他の人には見せられないな……』
『……ふ、ふふっ……久川凪・特別限定版です……うれしいでしょう?』
『ちょっと、なんだか……お金で買えるみたいに聞こえるから、その言い方は』
『凪をそうしたのはあなたで……ぅあぁーっ!? きゃっ、ひぅ、う……♥』
プロデューサーの顔が見えなくなったと気づいた瞬間、乳首にいままで未経験なほどべったりする快感が弾ける。ちゅうちゅうと乳首を吸われている、と理解が追いつく。また新しい快感で意識がかすむほど熱くなる。
『こ、こんな、ぁ……ひっ、い……ふぁっ……ちくび、吸う、なんて、ぇ……♥』
プロデューサーの口吻が言葉を返してくれず乳首愛撫に専念すると、凪は自分の嬌声と興奮が2倍にも2乗にもなってふくれあがる妄想に襲われる。胸がもう自分のものではないようにも思えるほど感じるのに、まさにその快感から、自分の意識と分かちがたい肉体なのだと詰め伏せられる。乳首に集中されてクリトリスや膣内がかえって彼を強く恋しがる。
『ぜぇっは、ひ、はっ……や、やめて、こんなの、覚え、ちゃったら……あっ、あっ、はひっ、はっ……♥』
『……覚えちゃったら?』
凪はもどかしげに太ももを擦り合わせてから、汗でじっとりした髪を横に振る。
『……あなたの、顔も、手も』
『うん』
『見られなく、なります……困ります、よ』
『どうして?』
『朴念仁のふりするんじゃありません』
『凪が颯のふりをしてなければ、もう少し素直に聞けた忠告だった』
プロデューサーは凪の顔をじっとりと見つめながら、指でますます執拗な愛撫を重ねる。あまりの快楽に、凪が思わず手足をばたつかせても、太ももを閉じても、力強い手と快楽でこじ開けられる。
『あ゙ぉ゙っ……♥ っっ、あ゙ひゅっ、ふぎゅっ……く、くっ、み、見ない、で……っ』
『なにを?』
『……ちょっと、見せられる、顔、じゃ……お゙おおっ!? ち、ちがっ……なんで見るんですかっ』
『かわいすぎること言って煽るから……』
『こうなったら……百年の恋も冷める変顔を披露して……んっ、んぶっ! んむゔっ、ゔっ……っ!』
愛撫されながらキスで封じられる。破裂しそうなほどの絶頂感で、凪はプロデューサーの口のなかによだれと嬌声をあふれさせてしまう。
『ぴちゃ、れぢゅ、れぢゅ……ん、ぉ、もう、もうむぃ、むり……あっ、あっ、はひっ、はっ……!』
『目はともかく、舌は止めなさい。噛んでしまったら痛いよ』
『凪を……私を、心配しているふうに、言うんじゃ……♥ お゙っほぉ、ぉ……はうぅ、んぷっ、ぢゅう……♥』
凪ができる反撃は、プロデューサーのくちびるや舌に噛みつくぐらいだった。それも勢い余って歯を立てて生臭い味を感じてしまうと、彼女自身で中止してしまう。
『ご、ごめんなさい、P、その……血、が……』
『謝るんなら変顔を戻そうか』
『いや、これは、ただ……あ……あ、あっ、あ、だ、めぇっ、来るっ、もう……うっ、あお゙……ぉお゙ッ、い、いっ……っ……♥』
『もう歯を食いしばってもいいよ』
ぐしゅぐしゅと水音が飛び散る。凪の視界が、意識が、真っ白に塗り潰される。凪は自分がどんな顔をしているのか、プロデューサーにどう見られているかなど意識する余裕もなく、ただただ快楽と背徳感に振りまわされる。感じたらダメかもと思うほど、とらわれっぱなしになる。
『あ、あぐっ、う、あう、だ、ダメ……く、ぅ……ぅあぁあああっ……♥』
先に限界を振り切れたのは凪の尿意だった。下腹部だけでなくウエストや内ももまでしゃくりあげて、プロデューサーの体のどこかに水流をぶつけながらベッド上にシミを広げた。
『……ごめんなさい』
『え、凪……なにが?』
『言ったけど、本気でそうするつもりでは……一人暮らしのベッドを汚すのはマジギレ案件、です、よね』
凪が我に返ったあと、すぐプロデューサーに向かって土下座していた。額や鼻先に感じる自分の尿の水気や匂いが、凪の意識をアクメと同じぐらい真っ平らにしていた。
『それは謝らなくていいよ。隠し撮りはどうかと思うが』
『それは……非常手段で……ごめんなさい』
『いいよ、許す』
凪は、許してもらえると信じ切っているときの罪悪感がひどく甘いと気づく――(『人間失格』か?)――ツンとキツいはずのアンモニア臭が、それに混じっている気がするプロデューサーの寝汗の残り香が凪に染み入って涙を催す。
『それに、凪のおしっこ味わってみたかったし』
『は?』
『凪って俺と初めて会ったときトイレ探してたよな』
『一時間前にそれ聞かされてたら、凪、マジギレしてましたよ』
『CM中がトイレタイムとか匂わせるなよ、昔それやってスポンサーさんマジギレさせた人がいる』
『凪、まだアイドルやるんですか……やれるんですか?』
『さぁ』
『さぁ、って』
『めでたく俺も凪に弱みを握られたわけだ、事務所もご家族もマジギレ案件だ』
凪はプロデューサーの声音と表情が気になって、ついに顔を上げる。
『こんなこと、凪だけにするって約束してください、それなら』
『そうなったとしても、俺はプロデューサーをクビにされるかもな』
『えっ』
『言ったでしょうが、イヤミや伊達や酔狂で手を出せるオンナじゃないんだよ、お前は……って』
プロデューサーの姿が奇妙に見える。肌が赤らんだり男性器が先走りでてらてら濡れていたり、これからセックスしようというようす。なのに顔つきだけ事後のようにメランコリックである。
『やめなさい、やめろっ、このしんみりした雰囲気っ』
『凪?』
『このままサヨナラって流れを感じる!』
『ぎゃっ!? こら、勝手にいじるな……そうなると、確かに俺は困るが』
凪がプロデューサーのペニスを指で無理やりぎゅうぎゅうと刺激すると、くにくにされるがままだった竿に芯が戻ってくる。萎えかけを強引に復活させる。
『凪だって……私だって、困る、困るんですから』
『俺の弱みが目当てじゃなかったのか?』
『それだけで、オトコの部屋に一人でノコノコ上がりこむわけないでしょう』
『まったくその通りだ、俺の察しが悪かった』
プロデューサーが凪の頭を撫でかけると、凪は首をぶんぶん振って抗議する――『いまの凪みたいな悪い子、褒めるんじゃありません』『これが特別限定版・わるなぎスタイル……あううっ! ごめんって、軽口がすぎた』――彼の手があさってに向かったかと思うと、ベッドサイドの小物入れからゴムを1封つまみ出していた――『この部屋の生活臭が薄いなんて、凪の思い違いでしたね』『生活必需品だしな』――ゴムを装着してピンクがかったペニスのシルエットが、かわいこぶっているようで笑えてしまった。
『担当アイドルをもてあそんでとろとろの骨抜きにして、抵抗も拒絶もできなくさせて、避妊もしっかりして、心置きなく気持ちよくなろうって寸法ですね、わかります』
『凪に触らせてもらってたときにはもう俺もドキドキしてたよ、危ない橋を渡っているし、あと変顔とかおもらしとかも見られたし』
『ドキドキの解釈に、あなたと私のあいだで食い違いがありませんか?』
『入れていいか?』
『く、問答無用か、話せばわかるなんてウソ……もう、焦らさないでくださいね……んっ、んっうぁ……はぅ、んぅっ……♥』
凪が寝かされて、プロデューサーのペニスで膣口をこすられ、開かれ、挿入されて、膣襞をこすられる。
『あっ……はぁっ……ふぇ、へへ……凪、ダメです、これ、ダメになるの、です……♥』
『く……凪、すご、く……あ、ぅ……』
自分の奥から快感があふれて、溺れてしまう。溺れきる前からわかってしまう。
『凪……俺、動くとすぐ終わっちゃいそうだ……』
『では、いましばらくおしゃべりにお付き合いを……はぅ、ほぁっ、はぁっ!?』
『あ、つい……まだぴんぴんに勃起してたから』
正常位で貫かれながら、手で乳首をくにくにと刺激される――(そんな、ひどい……♥ 苦しい、きゅーってして、止まらない……♥)――挑発するように、両腋を開いて胸をそらす。
『んぐうっ、あお゙……ぉお゙イく……ぅ……♥』
ペニスを膣内で締めつけ、両腋を開いたままのけぞって絶頂する。ままならない目でプロデューサーを見つめ返す。彼の顔がまぶしくて、息遣いがやけに近く感じられる。
『う、うう、凪……っ……締めつけ、きつ……』
『自業、自得っ……だろうが……っ♥』
凪の膣が、子宮口が、ペニスの先端をむにゅむにゅと愛撫して精子をねだる――(そんなわけ、ないっ……♥ ゴム、着けてるし……た、ただ、むずむず、シて……♥)――あまのじゃくのプロデューサーが、ペニスをどっしり構えたまま乳首を執拗に責める。
『あ、あんあ、あァ……むね、また、ぁ……あッ、あああ゙あオッ……♥』
絶頂しろ、と命じられたように、当然のように達してしまう。凪の膣壁が、子宮口がペニスを刺激する。彼の反応といったら竿がぴくりと動いたりプロデューサーが汗を垂らしながら息を吐いたりするぐらいにとどまる。八つ当たりのようにもどかしい。
『はうぅお……♥ ほぉ……ふぅっ、ふっ……♥ ま、また、その……ごめん、なさ、ぃ……ま、また、もう』
『脱水になったりしないかな』
『……コーヒーも紅茶も飲んでますから……そうだ、これはカフェインの利尿作用のせい……んっひぃ♥ お、おく……むねも、どうじ、ぁ……ッ……♥』
嬌声も出せないほど強い絶頂感の中で、声に代わって主張するように、凪の細い腰が大きく反ってはドスンとベッドを叩く。涙をこぼし、体を波打たせる。やがて腰がわなわなと細かく痙攣するばかりになり、不意にさらさらした水しぶきが凪の秘所から噴出して、プロデューサーの腰で弾けて垂れ落ちる。
『ぅ……くう、うう、うゔぅっ……!』
『……休むか? 紅茶でも一服して……』
『返してください……凪の……ええと』
『凪の?』
『尊厳、のようなものを』
『それは凪の手で、俺から奪い返すしかない』
『どうしろと?』
『俺をメロメロの骨抜きにするとか』
『……なるほど』
凪が痙攣のおさまり切っていない下半身に鞭打って、かかとでプロデューサーの腰をごつごつ叩く。いよいよペニスが突き入れられると、声を抑えながらも、膣内で強く締めつけ、悦びを雄弁に語る。
『ふッ……く、く……舌、噛んじゃうかも、知れないので……あまり、言いません、が……』
『うん』
『好き、です、P、が……もっと凪を見て、見てっ』
『かわいいぞ、凪』
『ほめるんじゃありませんっ、いまはなにか違う……』
『……そう言われても、かわいいぞ、凪』
『こ、この……ぁ、ああっ、う、く、ぐぐ、ふぅううっ……♥』
膣内の締めつけが強く細かくなる。逃すまいとするように、プロデューサーが凪を抱えなおす。汗ばんだ肌同士が吸いついてべちゃべちゃ鳴る。
『もう出てしまいそうだ』
『……こんなの、勝てません……でも、まぁ、いいんです、好きな人、ですもの』
『俺と凪がやってるのは、勝負じゃないよ』
『拾ってくれるんなら、そちらではなく』
『“好き”はシラフのときに聞きたい』
『……キザだな』
凪はプロデューサーの首の後ろに手を回しながら、両脚も彼の腰に絡めて抱きつく。膣の肉襞がペニスに絡みついて、精液をねだりつづける。プロデューサーが射精感に堪えながら、凪のくちびるを奪う。
『ねぇ、まだ、もっと……キス、しながら……あっ、ふ……ん、んっ……♥』
会話が高性能マイクでも拾いきれないほど小さく、秘めやかに沈んでいく。あるいはぐちゅぐちゅ、ぬちゅぬちゅ、ずりずりといった物音にまぎれていく。
『Pの……あそこの、おく……ふかいところ、じん、って……こんなの、おぼぇ……ちが……かわいく、ありま……ん、っ……ふぇぷっ、ふぁ、あ、んぷっ……まだ、きす、もっと……っ……』
ゴムごしの射精や絶頂失禁をもう何度か繰り返して、そのたびに凪はプロデューサーから『かわいい』と聞かされ、またそのたびにキスしすぎて腫れぼったいくちびるをとがらせた。
『私が……凪が来たときだけでいいです、この部屋に、凪の写真、飾ってください』
『また来るつもりか』
『ふふふ』
凪はシャワーからあがって、腰まですらりと下ろした銀髪を乾かしていた。変装していた姿よりも、いつもの凪よりも、プロデューサーの目に艶っぽく見えた。
『いま、飾る写真を撮ってもいいか』
『……いいですよ、ほしいでしょう、凪の弱み』
『かわいい弱みだなぁ』
『……ふふふ』
かわいい、と聞かされても、凪はもう抗議しなかった。
※
「なーってさ……意外とちょろかったんだね」
「言って気が済むならいくらでも言いなさい。凪はメロメロのメロなので気にしません」
「ねえPちゃん、はーはここまでちょろくなかったよね?」
「勝負じゃない、って颯にも言わなきゃならないかぁ」
(おしまい)