ゾンビになるまでにヤりたい100(暫定)のヒロイン 作:ボルメテウスさん
「あれは」
そう、俺は目の前にいるサーヴァントを見つめ、思わず疑問に思う。
そこに立っているサーヴァントは、あまりにも他のサーヴァントと違い過ぎる。
一般的な人間と比べるべくもない巨体と岩のように黒い肌が目を引く偉丈夫。
髪は無造作に伸ばされており、服装も腕輪と足輪、金属板で補強された腰巻き
まさに野蛮人といった風体を持つ。
「あのサーヴァントは」
「ヘラクレスがなぜ」
その名を、既にイアソンは知っている様子。
しかも、その真名は、俺もまた知っている。
「ヘラクレスって、確か」
「えぇ、かなり有名な英雄よ、けどどういう事?」
「・・・ヘラクレスは、少し前の戦闘でいなくなった。本来だったら、あり得ないと思っていた。けど、なんで」
イアソンは困惑を隠せない様子だった。
だが、その答えはルーラーがすぐに答えた。
「ふむ、あれはヘラクレスではないね」
そう、ルーラーの一言に誰よりも反応したのはイアソンだった。
「馬鹿な!あれは間違いなくヘラクレスだ!あの姿もっ何よりもこの防衛網を突破出来るのは」
「あぁ確かにヘラクレスかもしれない。だけど、ヘラクレスではない」
「何を言っているんだ」
そう、ルーラーはそのまま言葉を紡ぐ。
「スワンプマン」
「スワンプマン?」
聞いた事のない単語に、俺は首を傾げる。
すると。
「哲学的ゾンビのあれね」
「知っているんですか?」
すると、三日月さんが頷く。
「1987年にアメリカの哲学者ドナルド・デイヴィッドソンが考案した思考実験。思考などの心の状態や発話の内容を主体がその時とっている内的な状態だけでなく、来歴にも依存するものとして捉える彼の理論への可能な反論として提唱された理論よ」
「それは」
そのまま、三日月さんは、そのまま言葉を紡ぐ。
「ある男がハイキングに出かける。道中、この男は不運にも沼のそばで、突然雷に打たれて死んでしまう。その時、もうひとつ別の雷が、すぐそばの沼へと落ちた。なんという偶然か、この落雷は沼の汚泥と化学反応を引き起こし、死んだ男と全く同一、同質形状の生成物を生み出してしまう。
この落雷によって生まれた新しい存在のことを、スワンプマンと言う。
スワンプマンは原子レベルで、死ぬ直前の男と全く同一の構造を呈しており、見かけも全く同一である。もちろん脳の状態も完全なるコピーであることから、記憶も知識も全く同一であるように見える。
沼を後にしたスワンプマンは、死ぬ直前の男の姿でスタスタと街に帰っていく。
そして死んだ男がかつて住んでいた部屋のドアを開け、死んだ男の家族に電話をし、死んだ男が読んでいた本の続きを読みふけりながら、眠りにつく。そして翌朝、死んだ男が通っていた職場へと出勤していく」
そう、三日月さんはゆっくりと、それを話した。
「まるで、私達、サーヴァントのようですね。私達もまた、英霊の座からコピーされた存在だから」
「だけど、それが一体」
「英霊が宝具が象徴だとすれば、あのヘラクレスもまたスワンプマンの宝具。つまり、死んでしまった宝具によって、再現されたヘラクレスという事になるわ」
「なんだとっ」
その言葉を聞いてしまう。
「・・・その、聞くけど、ヘラクレスに勝てる可能性は」
「無理に決まっているだろぅ!」
そう、イアソンの叫びが木霊した。
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