※この作品はR-18です。

雷神のライバル枠の風神   作:ホンビノス貝

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私ですね才能ある子が自分から首輪にかかって飼われようとするのが好きなんですよねグヘヘ


18話目 黒江結衣の独白

side黒江

 

あたたかい

 

彼に拒絶された後、魂魄結晶(ソルデバイス)を失った私は殻に閉じこもっていました。

 

何もかもあきらめて、この世の中に絶望して、私が私でなくなることを恐れて。

 

幸い私のクラスはそういうことができました。

 

文官系レアクラスの配達員(ドリームデリバリー)。

 

その中のスキルの一つである感覚共有(アナタトワタシ)。

 

本来は誰かと誰かの感覚を共有させることで無理やり隙を作る、私が殴られてもカウンターで追い打ちを防ぐなどの使い方がある能力なのですが私はそれを何もない空間に向かって使いました。

 

今考えれば私らしくもない投げやりな考えでした。

 

彼でもない誰かに堕ちるという恥を晒すならば、心が壊れたままで静かに死んでいくほうがいいと。私の体なら無意識にでも堕とされないのようにすべてのリソースを使ってそれを防ぎ、私の意識が死ぬまで守ってくれると。

 

甘かったですね。

 

そこにあったのは別質の絶望たる虚空。何もなく、何も感じず、何も見えない。壊れた心をもう2度と戻らないように完璧にへし折りに行く出口がわからない極寒の地。

 

寒くて、寂しくて、怖くて。

 

次第に時間の概念すらも薄くなってきた頃。

 

私はふと昔のことを思い出していました。

 

初めて彼と会ったのは小学四年生の頃でしたでしょうか?

 

元々彼のお父様は何度か話したことがあるのですが、ちょうどいい年頃だからと進められて彼と会いました。

 

初対面の印象としてはそこまで濃いものではありませんでした。自分に確かな芯を持ち、親に愛されていて、聡明な子だなということだけでした。

 

何の意外性もなく純粋培養された子。いかに麒麟児といえど面白味のかけらもない子。

 

私は天才でした。一を知れば百まで導き出し、全くの他人とも何回か話せば大体どんな範疇の人間かわかってしまうほどには。

 

だから人に面白さを、意外性を、私の予測を容易く乗り越える人を探していました。

 

だってそうでしょう?誰よりも私が私のことを、限界をわかってしまっているから。

 

そんな人間にも間違いはあると、完璧な人間など私には程遠いのだと証明することを欲したから。

 

私はまだまだ成長できると知りたいから。

 

最初に会って一年歩過ぎたある日の、誰かの誕生日会。

 

あの日、彼は、屈強な大人を殴り飛ばしたのです。

 

酒の席で、彼の父親の上司が「君にあの子はもったいない」と発言してしまったのです。それに即座に反応してダンジョンによって強化された30代過ぎの大人を殴り飛ばしたのですよ。彼はそれだけ家族のことを愛していたのでしょうが理解できない話です。

 

まさしく人知を超えた力、空気でも格上だとわかるものへ即座に殴り飛ばしに行く精神の異常性。

 

それを理解しきれなかった私はそれ以降彼に付きまとうようになりました。

 

彼の精神的異常性の由来、どこからが彼の怒りの琴線に触れるのか、その他諸々を少しずつ整理していき、私は一つの仮説を立てました。

 

彼は事実を事実として受け入れる度胸も器量もあります。それはそれとして気にいらないと思ったら殴り飛ばしますし、徹底的にたたきます。ですが、ルールがありました。それは相手の得意に、相手の条件に従ってそのうえで殴り飛ばすと。

 

つまりは彼も飢えていたんです。

 

自分と張り合える。

 

まさしくライバルのような関係を持つ人を。

 

自分をわかってすべてを受け入れてくれる人を。

 

私と同じです。

 

自分はいていいのかと答えを求めてもがき続けているんです。

 

それを知ってから私は彼のことが大好きになりました。

 

彼の行き着く先は私と同じだと。

 

その仮説を立ててから数日後に彼のお父様は死んでしまいました。

 

それ以来彼の情報は闇に紛れてつかめていません。

 

嗚呼…この世は無常ですね。

 

私が求めたものはすぐになってしまいます。

 

私が本当に欲したものである自己でさえもなくなっていく。

 

この世は永遠に続く氷結地獄(コキュートス)。

 

そんなことを考えているとき、

 

突如あたたかさを感じました。

 

そのあたたかさはとても心地よく、そこにずっといたくなるほどに。

 

魂と肉体は相互関係にあり、私の肉体が堕ちてしまったのならその人のために魂を求めるはずです。堕ち切ってしまった肉体に影響されて私は魂でさえも連鎖的に堕とされ、家畜のようになるでしょう。

 

それを理解しながらもそのあたたかさのに引き込まれていきました。少しずつ、少しずつ。

 

次第にゆっくりと意識が浮上していき、目が覚めました。

 

最初に目に入ったのは空閑さんの後頭部とつながれている私の左手。

 

周りを見わたせば保健室で私はベッドに寝かされていて、彼は椅子に座ってベットに顔を埋めて、私の手を握っていてくれました。

 

…あなたが救ってくれたんですね。

 

あの真っ暗闇の底から。どうしようもない恐怖から。私を蝕む何もかもから。

 

ああどうしましょうか。

 

どうしようもなくあなたが愛しいです。今すぐ抱きしめて、感謝の言葉を伝えたのち愛の言葉を囁きたいです。

 

それと同時にあなたがいなくなってしまうのがとても恐ろしい。

 

もう一度あの地獄には死んでも戻りたくありません。

 

ですがあなたの庇護下でなければいとも簡単に戻ってしまいます。

 

なら…仕方ないですよね。

 

あなたのそばにいてもいいと、あなたのそばに私はいてもいいと証明しなくては。

 

私の有用さを見せて、他のパートナーにも何としてでも気に入られて、後数年の生涯を幸せに生きる。

 

出来るなら貴方との子を孕みたかったですが‥もう叶わぬ願いですね。

 

貴方の都合のいい女になり、貴方に全てを捧げて首輪を繋がれることこそが私の新たな目標です。

 

「おはようございます。風堂さん(ご主人様)」

 

どうか私に飽きないでくださいね。




風堂 自分と同等の力を持つ存在を欲していた。まあ家とかが没落して自分は麒麟児でも何でもないと思い知った後、自称相棒やら叶馬やら自分でも理解しきれない存在が現れて超絶いい空気を吸ってるんですけどね

結衣 天才故の苦しみに悩んでいたが同じ悩みを自分なりの方法で解決しようとする風堂を見て脳を焼かれてストーカーになってしまったやべーやつ。しれっと年単位でバレないようにストーカーするって頭がおかしいよこいつ。



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