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少しばかりあくびをしながら廊下を歩く。
『ここ最近警戒しすぎて疲れてきたな』
確かにそうだな…ここ最近は疲労が体に残っているのがよくわかる。なぜだ?いつもだったらどんなに疲れていてもご飯を食べて湯船にしっかり浸かってきちんと寝ていればすっきりした気持ちでかつ万全の状態で朝を迎えれたのに?
『若いって羨ましいなぁ!それはそれとして原因ははっきりわかってんじゃないっすかね』
え?マジ?
『きちんと寝てればってさぁ…ここ毎日飽きもせず猿みたいにセックスしてんのが原因だろ』
…お恥ずかしい。
思わず顔を手で覆ってしまう。
『かぁーーー!のろけかよ!クソが!こっちはもう人の恋愛見てるしかないのによ!鬱で死ぬわ!やってらんねぇーー!なんですか!今時はやりの鈍感系主人公ってやつですかー?!お酒を!濃い酒をよこしなさい!よっしゃはちくま飲んでやる!』
自称相棒はそう叫ぶなり意識の奥底に沈んだ。
おーい、おーいと呼びかけても特に反応がない。
ふて寝でもしてしまったのか?
何度呼び掛けても反応がないから仕方がなく脳内での会話をやめ、一人きりで廊下を歩く。
特に目的があって歩いているわけでもなく、沙姫は修行でどこかに行ってしまった。
暇だな…
目的もなく歩く。
ふと思いついたのだが黒江さんはいつ襲ってくるのだろうか。
俺は今のところ毎日奇襲を警戒しているのだが流石に疲れてしまう。
黒江さんのことだから警戒を解いたあたりに来るのではないだろうか。それともいたずらに警戒させて体力を消耗させるのが狙いなのではないだろうか
いや、それを考えている時点で彼女の術中だな。
俺が人読みできるほどに彼女を知っているのだから彼女も対俺の人読みができるはず。
襲ってくるパターンだけを考えるなら俺が疲れて警戒を解きそうな時期、すなわち今ではないだろうか。今ここで俺にバレないような位置で俺を観察している彼女の手先がいても不自然ではない。いや、むしろ自然だろう。
ならばこちらの取れる手は2つ。
釣り上げる、または怯えられることだ。
前者は黒江さんの手の物をそのままボコす、後者は手ごろな強者を釣って黒江さんの手の物から関わってはいけないと一人残さず思わせること。
ならばどうするか。
まず顔をうつむかせて目を合わせないようにし、若干猫背にしてあたかも疲れてますよー油断してますよーとアピールする。さらには両手をポケットの中に入れ、即時の対応ができないように演出。
ふっふっふ、完璧だな。まてよ…目も閉じてしまえば疲れすぎていて眠いということも演出できる!これこそ鉄壁…思わず笑いが口からこぼれてしまうほどに…黒江さんよ…いつでも来い!
いつ来てもいいように警戒しているのだが気配から周囲の人が離れていくのがわかる。
なぜだ!こんなにも完璧に弱者を演じているというのに!しかも今の俺パートナーバッジ付けてるのに!この学園の治安ならこーんなに弱そうなやつが歩いているとわかったとたんにわざとぶつかりに来て「おうにいちゃん、お前には不相応なバッジ付けてんなちょいと面貸せや」とばかりに校舎裏に連れられ、脅されてパートナーを差し出し、その代わりとばかりにおさがりであてがわれた経験豊富の娼婦にガチ恋し、その子が所属している弱小倶楽部に入団させられるのがテンプレだろ!なんだ?!沙姫には魅力がないといいたいのか!
…いやまあ沙姫の魅力は俺だけ分かればいいのか。
まぁ?沙姫はたまに俺と剣道の稽古をしたり?ダンジョン内でも冴えわたる剣技で?俺をサポートしてくれたり?いつも元気溌剌でいてくれて?心の清涼剤になってくれて?そんな沙姫の魅力がわからないとは…かわいそうに。
ん?周りの人の気配の質が変わってきてる。少しの緊張と恐れ…なんだ?正面に何人か来てるな?
特に気にせずそのまま歩く。
歩く。
歩く。
肩が触れる。
「んだよてめぇ」
キタ。
そう確信し目を開ける。
普通科の制服、ネクタイの色から判断するに二年。三人。よって黒江さんの刺客の可能性は低い。
…後者のルートで行こうか。
「んだよその目は。俺たちがなんだかッ」
まずは一人目の男の油断しきっている顎にアッパー、すかさず空いているボディにワンツー。よし、いいとこ入った。
「オ゛ッ!」
白目をむいてるし気絶しているだろう。
さて、
二人目。
「てめ、」
「が、学生け」
おっとそいつらは呼ばれたらまずい。
明らかに肉体派で喧嘩慣れしてそうな二人目をスルー。
俺は周囲のやつらに敬遠されるような人間だと印象付けなくてはいけない。
細身の三人目の顔面に蹴りを飛ばす。
だからまあ学生決闘委員会はだめだ。そうしたら正式な決闘になってしまう。俺は彼らには用はないんだ。黒江さんの刺客に心を折らせることが目的なのだから。
「うぎゃ」
土踏まずを相手の顔面に当てるイメージで放つとこのように相手の顔面が勢いよく地面に突き刺さる。いわゆる半月蹴りという奴だ。テコンドーは義務教育。
三人目はどこに
「ぶっ殺す」
視界がゆがむ。
腹が痛い。
蹴られたな。
痛みの割にそこまでダメージはないな。ここでも
「おら立てよ。伊達や酔狂で挑むほどよわかねえだろお前」
突然俺に襲われても即座に反撃できる反射神経。ダンジョン外でも俺に痛みを残せるほどの技術。
まれにみる強者。おそらく二年の中でもトップクラス。
「俺より茶野…言ってもわかんねぇか…あいつを優先したのはなんでだ?」
本来ならキチンとした場でしのぎを削りたかった。
が、今はダメだ。
無言で三戦立ちを構える。
「答えねえか。ま、大方売込みってやつだろ。強い奴を最後に残すとか戦闘狂か?倶楽部が強くなりすぎるとめんどくせえんだよな」
相手も構えをとる。見たことのない構え。おそらく自己流。
ガードを上げつつ足を引いている。おそらく蹴り主体。
「
そう言い終わるや否や殺気が来る。
右足がさっきより引かれている。
上段の蹴り!
そう判断してスウェーでよける。
目の前を鋭い軌道で足が通る。
コンビネーションで左足での再度の蹴り。
甘い。
向かってくる左足に手を伸ばす。
「おま!」
掴んで相手のバランスを崩す。
そのまま力任せに
思いっきり振り上げて
落とす!
「ギュゲ!」
意識は‥ないか。
周りにいた奴らは逃げていった。軽く辺を見回しても人一人いない。
これで取り敢えずは大丈夫だろう。
大きく伸びをする。
黒江さんからの刺客がいたら心を折れたであろう可能性が高いしいなかったとしても噂話としては広がるはず。少なくとも関わろうとする気は失せるはずだ。
ん?まてよ?
さっきこの人
あれ?
確かAランククラブだったよな?
あれ?
これの弱み叩かれるんじゃね?
黒江さんが
顔から血が引けるのが感じられる。
俺は強い。おそらくだがこの学園の中でも上位の強さだろう。だがさすがに複数人で来るのなら話は別だ。黒江さんはリンチなど好まないが多数の人がかかわってくると彼女でも制御しきれない。
いや、それはどうでもいい。重要なのは俺は彼女との決着をそんな形で望むのか?
否、断じて否だ。
仕方ない。
あれをするか。
三人を背中にしょい、せめてもの抵抗の証拠隠滅を図ってそこを離れた。
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数時間後、俺は菓子折りを持ち、まだ意識を失っている先ほどの三人を安静して地面に置きながら部室の前で立っていた。
人が来たのであれをする。
膝を地面にこすりつけ、左手、右手と地面に置いていく。
そして頭を下げ、こう言う。
「そちらの倶楽部の先輩方にご迷惑をおかけしてしまい大変、大変申し訳ありませんでした」
俺ができること、それは
誠心誠意の謝罪のみである。
更新遅れてしまい、大変申し訳ございません。次回も伸びます。
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