どこまでも青く、澄み渡るような空。
眼下に広がるは紅葉広がる山。
中腹にはただ一つの家。
ここは天狗の山。どこからともなく天狗がやってきて支配したと伝承が残る山。
ただそれだけ、ただそれだけの伝承だけが残る山。
だが、その伝承は積もり積もって真実へと成る。
伝承が、恨みが、呪いが、憧れが、畏れが、天狗という概念に集い、形を成す。
果たして天狗が先なのか、伝承が先なのか、嘘が先か、真が先か、卵が先か、鶏が先か、はたまたただの団扇が先なのか。火がないところに煙は立たずというがそれすら煙に撒かれた嘘かもしれぬ。
それはまさしく神のみぞ知る。
否、神すら知らず。
「よっと」
スーパーヒーロー着地!
と言ってもジャンプしていないから3点着地のポーズだけだが。
ん?これ3点着地か?4点着地じゃないか?
まあ気にしないでいこう。
「旦那様!綺麗な紅葉ですよ!紅葉!」
ふむ可愛い。わんこかな?ぶんぶん振られる尻尾が見えてしまう。
「本当に綺麗‥まずは情報収集ですかね。日本‥だといいのですが」
確かに異様なまでに綺麗な紅葉だ。眼前に見えるそれなりに高い山が今回のレイドの舞台かな?
『ぽいねーここをキャンプ地とするかい?』
そうだな、とりあえずは人がいるタイプかどうかで判断しよう。
「ここを仮拠点として情報収集とするか、まずは‥どうするか?」
テキパキとバッグから必要そうなものを取り出し、綺麗な配置で並べていく結衣に聞く。
「キャンプ設営、並びにお昼ご飯を作りましょう。急いては事を仕損じると言います。私たちには十分な物資と時間的余裕がありますが経験がありません。慎重になって悪いことはありません。これらは私と沙姫さんでやるので空閑さんは山の探索をよろしくお願いします」
「わかった、帰るラインは?」
沙姫が整理した物資をどんどん組み立てていく。
…もしかして練習してた?
「そうですね‥人がいればその人と話し、どのようなタイプのレイドか分かったら。いない場合は食料が両手に余るほど、モンスターを数匹倒したらなどですかね。危険を感じた場合はすぐに逃げてください。ストップウォッチは‥」
「これですね!こちらが危険な場合は発煙等でお知らせするので!」
沙姫が実働件護衛、結衣が指示役件飯作り、俺が情報収集件食料調達という役割になった。まあレイド入る前にこういう役割と決めていたが。
…正直ここまでテキパキしてくれるとは思わなかった。提案したのは結衣だろう。パーティーに入れて本当に良かった。
「分かった、何もなかったら4時間で帰る。帰らなかったら捜索を頼んだ」
「お気をつけて」
さあ、楽しい楽しい遠足だ。
〜〜〜〜〜
『どう見る?これは』
山道を歩く、いやいやなんとも見事な紅葉、これがレイドであろうと紅葉狩りをしてしまいたいぐらいに綺麗だ。ちょうどおにぎり持ってるし食べよ。
美味しい。やはりカリカリ梅ではなくねっちょりしている昔ながらの梅は至高だな。ありがとう食堂のおばちゃん。
『いやそういうことじゃなくて』
ああ、分かってる。時代背景についてだろ?紅葉というものは日本独自のものではない。なんならヨーロッパ系だってありえる。だが反対に言えることがある。
自称相棒の声を聞きながらも探索はきっちりとする。頭と体を平行処理するのもだいぶ慣れてきたな。
お、キノコ発見。nullモブらしき奴もいるな。
『ああ、現実を舞台にした何かしらが主題臭いな。それでありえるレイドとすれば‥』
『まあそもそもこんだけ歩いてnullモブしか出ない時点で切っても良さげだ。
侵略はモンスターとは異なる別世界からの侵略だっけか?特殊だから見ればわかると暴龍鶏王のところの副部長は言っていたが…よくわからない。まあ特に特殊なレイドという気配は感じないから別にいいか。
ざく、ざく、ざく、歩く。
ざく、ざく、ざく、歩く。
ざく、ざく、ざく、歩く。
うーむ。うーーーーむ。
おかしい。
非常におかしい。
『なーんのモンスターもいない』
少し、本気出して探すか。
背負っていたものを外す。
ここに先輩からもらった
『ほんほん』
これは銘を「
今まで使っていた「
ふぅーと息を吐き、脱力しながら構える。
「無銘」とは違い、「銘器」ではこんなことができる。
起きろとばかりに魔力を注ぐ。
「
槍斧の刃が青く灯り、幻想的な雰囲気を醸し出す。だが俺は知っている。この青はそんな生優しいものではないと。
励起状態による活性化。ここまで、ここまでなら無銘でもいける。
この先は選ばれた武器にしか行かないが。
「貫け」
覚醒と呼ばれる現象。魔力またはオーラを通して武器を励起状態にし、その状態でトリガーワードを発する事でその武器の潜在能力の100%を引き出す技。この武器に刻まれた想い、それは何もかも貫き、打ち進む事。
斧頭の反対側の突起から勢いよく風が吹き荒れる。
暴龍鶏王の部長曰く「じゃじゃ馬すぎていらん」という話だったが俺からしてみれば少しヤンチャなだけだ。
轟、轟、と嵐のように吹き荒れる風をどうどうと宥める。
構えた状態から一歩踏み出し、円形に足を運ぶ。一周、二周、三周とハンマー投げの要領で勢いを逃し、読み切って、踏み込み、重力の楔すら無視し、ぶっ飛ぶ!
『いやっふぅー!文字通りの逆バンジーじゃー!さいっっっこーー!!』
この武器は単なる勢いを増加させるものだ。単純な効果ほど応用のしがいがある。
よし、このままの勢いで上空でたんさ…お、民家ある。
正面に行けるように暴風を調整、勢い良し、角度良し。
『突っ込めー!』
轟!と響き隕石と見間違えるような勢いで突っ込み…着弾としか言いようのない痕を残して着地。
『10点!10点!10点!』
ダンジョン内で一応の試験飛行はしたが不安だったので無事に終われて良かった本当。
…さーてと。
「だ、大丈夫ですか…?」
日本語、背が低め、服装はえらく古風でみずぼらしい。
なるほど、なるほどなるほど。
このレイド、おそらく伝承タイプだな。
久々に書くと超楽しいんだこれが
狂鬼嵐斧…銘器の一つ、ヴォルケ内ではピーキーすぎて使えんわアホバーカ誰だよこんな産廃持ってきたのとの評価だったが、かと言って売りに出して強い奴に与えると化けるスペックだなという感じだっため在庫的な扱いだった。運命を感じた風堂が引き取り、今に至る。なおこれと同等なほどピーキーな刀を沙姫は受け取っている。結衣?安定重視の面白みのないモンスターカードですねぇ!
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