※この作品はR-18です。

雷神のライバル枠の風神   作:ホンビノス貝

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正直沙姫ちゃんを神にするか人にするか悩んだ。まあ沙姫ちゃんは神と成っている人と関わるなら人としての強さを追い求めるでしょう。


28話目 堕天

日は暮れ、夕闇が辺りを覆い尽くしている。

 

天狗と思われる僧は沙姫への問いの後、出し物の用意をするかのようにそそくさと立ち去っていた。

 

老人はそのような時間になっても辛抱強く、目を塞いだまま座禅を組み待っていた。まだ日が出ている時はそこらを探索したり飯を食ったりnullモブを倒していたりもしたが特にこれといって物語が進む要素はなかった。

 

まあ時間経過で進むかという結論に落ち着き、夕食を食べ、正直暇を持て余していた。座禅を組み、未だ瞑想を続けている老人はその間も一心不乱に祈っていた。

 

突然、一声が頭上で響いた。

 

この世のものとは思えない素晴らしい声、泉のように深く澄んでいて鐘の響きのように力強い、肝心(かんじん)の法門を説き給う釈迦牟尼(しゃかむに)の御声であった。

 

辺りを見回すと燦々たる光が万物を照らしており、先ほどまで寄りかかっていた松の木は宝石の実がたわわに実り葉が豊かに茂っている七重宝珠(しちじゅうほうじゅ)となっていた。地面は天から降ってくる曼珠沙華(まんじゅしゃげ)の花や曼荼羅(まんだら)の花で覆われており、空は大音声(だいおんじょう)の妙音と光輝と芳香にみち、中空には月のように柔らかな笑みで、太陽のような存在感の世尊(せそん)釈迦如来が獅子の座に座している。向かって左は普賢菩薩(ふげんぼさつ)、右には文殊菩薩(もんじゅぼさつ)、その御三方、錚々たる面々の前には雲霞のごとく、綺羅星のごとく、菩薩聖衆(ぼさつしょうじゅ)が映されていた。

 

圧倒、まさしく圧倒だ。これ以上の景色なぞ生まれて初めて見るほどの圧倒だ。これを見てしまえば、かつて父親と見た富士の山も母親と見た夕焼けも、なんてことのない日常も、全て、全てが虫にも劣るような、この景色だけを見て死んでいきたいような、そんな想いを抱いてしまうような、そんな景色だ。

 

舎利弗(しゃりほつ)が見えた。迦葉(かしょう)阿難陀(あなんだ)などの釈迦の弟子である大比丘衆(たいびくしゅう)が見えた。十六人国の王も、四種天の王も火柱の如く立っている。迦楼羅(かるら)乾闥婆(けんだっぱ)も日光天もいれば月光天も風神も雷神もいる。

 

当然のように風神、雷神もいる。

 

当然の、当然の、ととととうううぜぜ‥とうぜんのように。

 

風神が、雷神が、そこにはいた。そんな知識がない赤ん坊でも「ああ、これは風神だな」そうわかるような存在感を放つ神がいた。おそらく俺や叶馬のようなクラスで至ったものではない正真正銘の本物の神だ。そうあれと願われて生み出された、正真正銘の神、おそらくシナツヒコだ。百人中一万人が俺よりもあっちの方が信仰対象として相応しいと選ぶだろう。

 

いや、それはいい。俺は信仰対象になろうなぞ一回も思ったことはないし今後思うこともない。だがおそらく神の世界の勝負とは信仰力の勝負。

 

ずきんと鈍痛が頭に走る。ダンジョンに初ダイブした時と同じような、身体の芯の何かが書き変わるような、魂を揺さぶる痛みだ。体が何かに変質しようとしている。なんだ?いやわかってる。自分の上位互換を見つけたんだ。俺のクラスは風神見習い(ボレアースサン)。ギリシャ神話と日本神話で系統が違っていても本質ははほぼほぼ同じ、体がそれに引っ張られているんだ。

 

おそらくこのままではアレに成る。

 

酸っぱいものが胃から込み上げ、食道を上り、口内に広がる。思わず四つん這いになり、吐く。吐く、吐く。魂の痛みを逃すように。胃が空っぽになるまで吐いた。喉が焼けるように痛い。目から涙が溢れ出る。はぁはぁと息を切らしながら、少しずつ気持ちも落ち着かせようとする。

 

俺も見習いとはいえ神だ。あそこは俺が至る道だ。遠い昔のおとぎ話の時代とかいうとうの昔に終わった存在に俺という存在を塗りつぶされて…たまるか。

 

そんなことを考え、いくらうずくまり、空っぽになった胃液を吐いても変わらない。頭痛は永久に鳴りやまない。

 

文字通り格が違う。

 

痛みが思考も、言語も、人格も、何もかもを塗りつぶしかけた時、

 

おい、おい!

 

脳内に響く声、魂から直接出る、風神()ではない何者かの声。

 

『おい、大丈夫か!気を!』

 

神でもなく、俺でもない、だが俺を構成する要素では外せないヤツ。

 

『気をしっかり持て!おい!』

 

自称相棒が、そこにはいた。

 

そう自覚したとたん頭痛は嘘みたいに引き、眩暈も収まり、台地が揺れる感覚もなくなった。

 

しっかりしっかり両の足で地を踏みしめ、前後を確認する。

 

結衣と沙姫はいない。老人も、天狗である僧侶も見えない。

 

『よかった、大丈夫なんだな』

 

ああ、と返事し背負ってある斧槍(ハルバード)を構える。おそらくこの空間‥神という神が空に浮かぶ流星のように数多いるこの空間は本物ではない。いやそもそも伝承(レジェンド)というのはレイドという空間が再現したもので本物ではないのだがそういう話ではない。

先ほどの天狗の言い方から考察するにこの空間は天狗が似せたもの。

耐えれば良い、これは台風やら地震とかの自然現象のようなもの。あの老人が望んだから出したもの。沙姫も、結衣も、老人もおそらく別のサーバー的な感じで一人でこの光景を見ている。

 

『俺は特に違和感がないしおそらくお前みたいな感じのダメージを負うのは神の資格を持つ者だけだ。俺は神と同レベルの出力はあるけど資格自体はないお前はその逆。それで俺になにもない以上沙姫ちゃんと結衣ちゃんはそこまで関係がない‥と考えても差し支えはない‥かな?』

 

ない。そもそも干渉できない以上考えるだけ無駄だ。今は最大出力の攻撃をいつでも放てるようにするだけで良い。

 

そう、心を決めた瞬間、響き渡る老人の声。

 

帰命頂礼(きみょうちょうれい)

 

ぞわ、と鳥肌が立つ。

 

大恩教主(たいおんきょうしゅ)

 

さっき天狗はなにか信心を起こしてはならないと言っていた。

 

釈迦如来(しゃかにょらい)

 

ならば、この後に続く言葉は‥

 

「あなかしこ」

 

地震のような振動が起こる。一場の光景はあっという間に消え去った。僧が山腹の草の上に一人跪いている。

よくよく見ると背には羽が一対、いや羽が一枚と焼けこげた羽のようなものが一つある。

あたりには全員おり、結衣はまだ混乱の最中、沙姫は水鏡のように落ち着いている。老人は‥なんとも形容し難い悲しみの表情というか、哀れな表情だ。

 

「結衣、阿吽を出し、老人を下がらせろ。サポートを頼む」

 

伏したまま、天狗が言う。

 

「あなた様が無分別にも信心をおこして、私に守るとおっしゃった約束をお破りになったものだから、教法の守護者の護法天童がいきなり天から舞い降りて、大いに怒って私どもを打擲なさりました」

 

「結衣、行くぞ」

 

「【汝らなにをもってかかかる有徳の仁を欺くや】という仰せでございます」

 

「滑れ」「貫け」

 

「すると私が雇い集めたよその法師共は、みな肝をつぶし恐れおののいて退いたしました。私は片羽をへし折られましたので、もはや飛行はかなわなくなりました」

 

天狗がむくり、と起き上がり背から団扇を出す。

 

「神通力を失ってしまったらそれはもう神の使いではない」

 

跳躍、此方をみる。そこには赤く、鼻が高いまさしく天狗の面。

 

「ならば、(あやかし)として、人と争うのもまた一興」

 

「妖怪退治といこうか」




ようやく始まったよマジで

高評価と感想をよろしくな!



‥ところでハイスクのスレの避難場所知ってる人いません?今までの場所落ちてるんですよね
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