走る、襲う、殴る、潰す、気配を探す。
走る、襲う、殴る、潰す、気配を探す。
走る、襲う、殴る、潰す。
それをひたすらに繰り返す。敵を補足したら速攻で潰しに行き、我が物顔で通路を闊歩する。
まるでその階層の王のようにふるまっている。
通常ならそんな暴挙は許されない。許させるはずもない。勘違いしていったものは格下から袋叩きにあっていき、死んでいくのがオチだ。
だが今の彼は許されている。こんなことをしても生きている。
なぜか。
単純な
なん匹かのゴブリンで囲んでも一対一を何回かやられて一匹一匹一撃で処理されてしまう。地形をうまく使って奇襲しようにも一撃目以外が有効に働かない。
王のようにふるまっても裁ける存在がいなかった。
それはこの階層の
数手は打ちあえたがそれだけ。
単純で明確すぎる実力差でコボルトキングは殺された。
『うわまじ?今日のうちに壱層終わったらいい方だなーって思ってたんだけどね‥早くない?』
むしろそれは過大評価ではなかったのか?最後のやつ以外一撃だったぞ。
『いやまあ確かに壱層はレベルキャップが1でそこまで強くないけど。いやでもここまでとは思ってなかったわ。結局界門守護者もスキル使わずに倒しちゃうし』
まずかったのか?
『いやまあ別にいいんだけど今日のダイブの目的が自分のできることを知ることだからそれ使わないと今後どういうふうな戦術を立てるのかを考えるのが難しくなるんだよなー』
…すまない。そんなつもりはなくて初めて打ち合えたのにワクワクしていたんだ。実際はすぐ死んでしまったけど。
『まま、えやろ。早くできることとできないことは知りたいけど別に今必須ってわけじゃないし。第一まだ時間は宝箱やらモンスター部屋全スルーのおかげで2時間ほどある。弐層である程度試せるでしょ』
期待しよう。
そう思いながらすぐそばに見える階段に近づく。石で作られているようでちょっと古ぼけている以外違和感がない。いや、違和感がないことこそが異常なのだが。
『これが階層を移動することができる階段ね…異空間と異空間をつなげるやばいものなのにここまで普遍的に見えるとはほんとどうなってんの?その特異性があるからこそ逆に安全になって普遍的に見えるとか?わからーん』
階段を一個一個確実に、慎重に降りる。
下の階層に近づくとともに受けるプレッシャーが段違いに濃くなっていく。
『気をつけろよ。弐層はレベルキャップが10。壱層より段違いで強くなっている。ここは既知内領域だが端っこ。ほとんどの人はここではなくて中央よりにいる。つまりほとんど死んでなくてレベルキャップぎりぎりのやつが多いってことだ』
壱層では満足できていなかった体がうずく。早く俺を暴れさせろと言っている。
嗚呼…楽しみだ。
装備を改めて確認し、足に力を籠め、駆けだした。
目についたモノから壊していく。
ゴブリンがこちらに気づいたようだが仕方がない。隠密もせずに目についたモノから壊しているからそれの音でこちらに気づくのはむしろ計画通り。
向かってきたゴブリンを数発の打撃で壊す。
さっきの階層のやつらよりかは固くなっているがまだまだ柔らかい。
メイスを思いっきり振り抜いた。そこらに臓物が飛び散る。
「アハッ」
思わず笑ってしまう。
これだ。これこそが闘争だ。一撃で死んでしまうのはただのおもちゃだ。少しでもこちらに抗える可能性ができて初めて戦いと呼べるレベルになる。だがまだ戦闘と呼べるところでもない。
骸と成り果てたモノたちが残したものを拾い、次に進む。
次はどれだけ楽しい戦いが待つのか想像するだけで足取りは軽くなり次の場所へと向かった。
『で?この有様?』
断じて油断していたわけではない。相手が上手だった。
『いや完全に油断してたでしょ。目についたゴブリン追っていったら横の通路から奇襲されて殺されかけたよ?』
誠にごめんなさい。
前に誰かがいるわけではないのだが思わず正座して頭を下げてしまう。
『いやまあ結局は勝ったからいいんだけどさ‥今後は油断すんなよ?それはそれとして右手大丈夫?メイス握れる?』
正直言ってかなり厳しい。
ゴブリンによって強打された手のひらの調子を確かめる。
手を丸めて広げる動作を繰り返したらかなりの痛みを感じる。
かなりの勢いで振り下ろされ、それを受ける暇もなかった時は右手がほぼ死ぬかと思ったがなんか適切に治療したら治る範囲に収まって良かった。
『どうする?ここのボス部屋手前で粘る?後30分ぐらいで強制的にダンジョンから脱出させられるから天敵者の心配もないぜ』
いや、行こう。
『まじ?』
今ならつかめそうなんだ。自称相棒が言っていた俺の職業でできるとこが。
『ほう』
そして何より‥この部屋には気配から伝わるほどの強者がいる。俺が万全の状態なら多分勝てる程度だろう。今は五分五分くらいだが。
そんな状況こそ真の戦いと呼べるのではないか?
俺はそんなチャンスをみすみすと見逃し、安全に行こうとするほどできた人じゃない。
『‥』
それで俺が死んだとしても悔いはない。母上も許してくださるだろう。
『しゃーねぇお前がそう決めたならいいよ』
ありがとう。
『いいよ礼なんて。俺はもう一度
武器を構え、部屋に入る。
巨大な緑色の肉の塊。それがゆっくりと振り返ってこちらを見ている。
身長は3mほどでフィジカル面は彼方の方が断然有利。
『ゴブリンジェネラルか!』
武器、防具は特になし‥つまるところこれは
真正面からの殴り合い。
先手を取ったのはあちら。猛ダッシュしながらのタックル。
当然躱すが思ったより早い。壁に突っ込んでもすぐに立て直してぴんぴんしてる。
『動けるデブだな。お相撲さんみたいにその体のほとんどが筋肉で構成されてると見た』
もう一度突っ込んでくる。
「その動きは」
向かってくるゴブリンジェネラルの足にメイスをタイミングよくカウンターする。
「さっき見ッ?!」
振り切れない!
肉体硬度が先ほどのモノたちとは全然違う!
ダメージは与えられているだろうが体勢を崩せるほどではない。
目の前に大きな手が迫り、そのままの勢いで吹き飛ばされ、壁に打ち込まれる。
『おい、大丈夫か?!』
やばい、脳が揺れてる。肉体的なダメージは自分の想定していたよりないが当たり所が悪かったのか視界が揺れてる。
四つん這いになり、呼吸を整えようとすると追撃が来る。
案の定もう一度吹き飛ばされる。
だがさきほどと同じくダメージはあまりない。視界も定まり、呼吸も整った。
メイスを再度構える。焼き増しのようにゴブリンジェネラルがタックルをしようとダッシュする。
今ならできる。自称相棒が言っていた自分ができることのとっかかりをつかめる気がする。
精神の高揚によって引き出された根拠のない自信。
それこそが神のチカラを引き出す重要なキーである。
感覚のままに手のひらに風を集める。
圧縮圧縮圧縮圧縮。
それを向かってきた腹にぶち込む。
「
ぶつけると同時に開放することで圧縮した風は勢いと殺傷能力を得る。
腹は消し飛び、とんでもない勢いでゴブリンジェネラルは吹き飛び、そのまま絶命した。
主人公
ついにスキル取得。
原作で某傲慢さんが名前は付けないほうがいいとおっしゃっているのですがそんなものは知りません。
スキル名つけたほうがカッコいいやろがい!!!
自称相棒
つえーやべー殺意しかねえよこいつ
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