無事俺と沙姫はパートナーになれた。
と言ってもパートナーになるには学校に書類を提出するだけでなれるのだがそれでもパートナーというのは制度としてとても強力な意味を持つ。
一番のメリットとして挙げられることはパートナーになっている女の子にはほかの男が手を出したら何か罰的なものを受けるってことだろう。ほかにもいろいろメリットはあるらしいがまあとりあえずバッジをつけている女の子は誰かの所有物であることを一目でわかるシステムだ。
『所有物ってところがミソだよな。男のほうは他の女とセックスしてもいいけど女のほうは他の男とセックスしちゃだめって感じだし。まあ系統として男のほうが優秀な戦士になることが多いからそっち優勢な決まりになるのは仕方ない気はするけど』
そっかあ。
「旦那様!旦那様!この刀がいいです!」
「80万銭か…いいぞ」
「ありがとうございます!」
わーいという声ともに沙姫が刀を持ってはしゃぎまわる。かわいい。
『やめてくれ…購買のおばちゃんがめちゃくちゃ生暖かい目でこっちをみてくるから…マジで恥ずかしいから』
羞恥心などごみ箱にでも捨ててこのかわいさをありのままに受け取れ。あ、すごい目をキラキラさせながら素振りしてる。すごくかわいい。
『俺の扱いひどくない?』
自称相棒の抗議を無視し、銭を払う。80万銭と払えないような高額商品に見えるが稼ぎ方を覚えた俺にはギリギリ払い切れる額でしかない。いや本当に高いな‥頑張って学内掲示板から素材回収クエストをできるだけ引き受けて稼いだ金が全部吹き飛んであと5万銭ぐらいしかないぞ。
『沙姫ちゃんのためだ。しょうがない。沙姫ちゃんの新装備を買うためにわざわざ購買きたんだろ?なら胸張っとけ』
‥そうだな。
「沙姫、落ち着け。行くぞ」
「はい!」
刀を大事に持ちながらとてとてと駆け寄ってくる。
「これで今日のダンジョンは役に立てそうです」
「前回のことは仕方がない。気にせず励め」
『前回のダンジョン探索酷かったもんなー流石にレベル一に三層目行かせたら役立たずになるのはわかっていたけど思っていたより着いてこれたもんだから俺らも勘違いしちゃって結構しんどかった』
何を隠そう沙姫さんは実家で剣術を習っていたようで、実家で一時期剣道を習っていた俺より断然上手だ。その自信もあったのだろう、沙姫さんの実力を見るために前回ダンジョンに潜ったのだが一体は全然戦えたので2体、三体と任せていくうちに沙姫さんがキャパオーバーしてしまって少しピンチになってしまったのだ。反省してる。
取り留めないことを沙姫さんと話しているうちに食堂に着いた。
どんな時でも腹ごしらえはしなければならない。たとえ半日しか授業がない土曜日でもそれはおなじ。ご飯は日々の活力である。
本日のメニューを確認するとカツ丼や海鮮かた焼きソバなどの魅力的な名前が見える。だが今の俺はそれらを食べる気分では無い。今の俺の気分は親子丼だ。
親子丼のいいところだが第一に挙げられるのはまず卵と肉のハーモニーが素晴らしいことだろう。フワッフワの半熟卵と柔らかい鶏肉、そこに
加えられるねぎも良いアクセントとなり、触感で楽しませてくれる。そこにだし汁を絡ませた時の美味しさと言ったらもうたまらないだろう。想像するだけで口に唾液が溜まってしまう。
「沙姫、俺は親子丼を食べるがどうする?」
「私は焼きそば食べたいです」
「そうか、こちらの方が並んでいる人が少ない。先に席を取っておく」
「ありがとうございます!」
そう言うなり沙姫は小走りで行ってしまった。
『おうおう明るくていいことで、んじゃ俺らも行くぞ』
気持ち早めに歩きながら和食のフードラウンジへと向かう。
列に少しの間だけ並べばあっという間に提供された。何という速さ。うちにいた料理人たちに勝るとも劣らない連携プレー。さすがだ。
『俺でなきゃ見逃してたね』
だがどこ座ろうか…割と結構埋まっていて探しにくい。
とりあえず目の前にいるダブルカツ丼膳を持っている人についてくか。
『え?あ、ちょま』
なんかこの人についていけば面白いことがあるって俺の神見習いとしての勘がそう言ってる。
『え?なんで?あ!今日のメニュー!』
彼が座った席の隣に座ると彼の仲間たちも続々と集まってくる。そのうちの一人から探るような目線を感じるが無視しよう。
『マジかマジかマジか!なんでお前いるんだよ!ここで会う予定じゃなかったのに!』
自称相棒の寝言は無視して目の前の丼に集中する。蓋を開けた時に昇る蒸気のにおいだけで白米いけるな。いただきますと言い、手を合わせた後に鶏肉を食らう。
嗚呼…最高だ。
鶏肉のしっとり柔らかい触感、嚙めば広がる御出汁と肉のうまみ。コクとうまみが効いた奥深い逸品だ。
そしてご飯と一緒に食べると…
「
なんだこれすべてのうまみがきちんとまとまっていてすごく優しくも奥深い味わいになっている。ねぎの苦みもいいな。和食の最高峰だよ本当に。
ふと前を見ると沙姫もおいしそうにかた焼きそばを食べている。
やはり食。食はすべてを幸せにしてくれる。
「そうは思わないか?」
お隣の人に聞く。
「同意する」
即座のレスポンス。やはりいい。
「叶馬さん?」「旦那様?」『おい何してるお前?』
おそらくこいつは同類だ。勘だがな。
体を見てもそれはわかる。ただ肥大化させているだけではなく、実用的であり、見せる用途でもあるような理想的筋肉。おそらくだが完成度的にも俺よりも単純な力は大きいだろう。そして全身から立ち昇るオーラ。そして極め付けはこの目だ。同じ地平にいるようで何もかもを無意識に見下し、何も視界に入れていない目。昔の俺と同じ目だ。
そう観察していると何を勘違いしたのかカツ丼を少しくれた。なんだこの容器?食堂にこんなものあったか?まあいいか。
こちらも少しばかりお返しとしての親子丼をあげる。
ふむ、こちらもなかなか上手い。
「いいセンスだ」
そう言い残し、ご馳走様とこの場を後にしようとする。
沙姫も慌てて食べ進めているが気にしなくていい。むしろきっちり味わって食べなければ作ってくれたおばちゃんたちに対する侮辱となる。
さっさと容器を棚に戻し、食堂の外の廊下へと出て沙姫を待つ。
‥暇だな。
ちょうどいいところでさっきのお隣さんが通り過ぎようとする。
仕掛けるか。
徐に前に立ち、両者の中央に当たる位置に進み四股を踏む。 その後腰をかがめて両手を地面におろす。 相手も即座に分かったのか同じく構えてくれる。とても嬉しい。お互いの呼吸を合わせる動作‥つまりは仕切を初手でやってくれたのは彼が初めてだ。
少しばかり静寂の時間が流れる。
その均衡を打ち破ったのはどこからともなく響く鐘の音色だった。
同時に動き、ベルトをまわしの様につかみ取ろうとするが当然よけられる。
張り手のようなものが見えたため避けられるように視線と体重をずらす。
相手が仕掛けてくるということは隙ができるということ。幸い武術経験はなさそうなのでフェイントでもない。いける。
そう確信したときだった。
手のひらが目の前に迫り、もろに食らった。
なんだ?なんだ?タイミングをずらされたことはわかる。
どうして?いや今考えるべきはそこじゃない。ベルトを持たれていることこそが問題!
やばい投げられる!
「まだだ!」
片足で無理やりバランスを直してこちらも負けじとベルトをむんずとつかむ。
足りない力は体重移動の技術で埋める。
一瞬の拮抗。
勝負を決めるには十分すぎる時間。
大外刈りを仕掛けようとする。
その時だった。
「はーい無許可の決闘はやめましょうねー」
白い布型の頭巾をかぶっている奴が横から話しかけてきた。
…誰だこいつ?強いことはわかるが。
『決闘委員会だ!よっしゃあ!』
だから誰?
「最近はなかったので暇だったんですがせめて許可を取ってから
同類君に目線で知ってる?と聞くと知らないと答えてきた。
仕方ないので
へえ、
決闘においては如何なる身分や立場もこれに影響されることはない。
決闘権は在学生全てが等しく有した権利であり、同時に決闘を拒否する権利も有している。
決闘のルールは、挑戦を受けた側が決定し、挑戦者はルールに異議を挟むことは出来ず、またルールにより決闘を拒否すれば敗北となる。
なるほどなるほど…少なくとも違うな。
「すまない。私たちは
「あ?そうなの?ならいいけど。君もそうなの?」
同類君も肯定するようにこくこくとうなずいてくれる。
「あっそう。次からは気を付けるようにね」
「お騒がせして申し訳ない」
決闘委員会の人たちに謝るといいよ~と、気の抜けた返事をしながら去っていった。
少し乱れた服装をチェックし、帰ろうとする同類君に声をかける。
「俺の名は風堂だ。君は?」
「…叶馬だ」
「そうか。ではまた」
颯爽と手を振り人ごみの中に紛れる。
嗚呼…楽しかった。
『やばいどうしよう…』
「旦那様!待たせて申し訳ありません!」
一分ほど待つと沙姫が食堂から出てきた。
「いやそれほど待ってない。楽しいこともあったからな」
「なんですか?」
首をコテンとかしげて聞いてくる。かわいい。
「いやなに、
風堂 一緒に飯食った人に相撲ふっかけた人。頭がおかしい
叶馬 相撲ふっかけられた原作主人公。頭がおかしい
決闘委員会の人たち 何この子達血の気ありすぎ こわあ
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