「確かに八千穂の能力は厄介よ。でも時間は五秒。それに大技だから数回使っていればバテテくるのよ。そこに勝機はあるは。」
「雑な作戦だな。」
「じゃあ何かほかにあるの?」
「一個聞きたいんだが、その時間は戻すだけなのか?
「止めることも可能よ。」
その言葉を聞いて無窮の鎖状態の優希は顎に手を当て考える。
「運動エネルギーはどうなる?」
「運動エネルギー?知らない。」
その言葉に耐性を崩しそうになる優希。
「おいおい。あと五秒の時間の対象は自分かそれ以外かは?」
「自分だけじゃないの?」
その言葉を聞いてズッコケる優希。
「勝機が限定的で壊滅的条件だな、おい!」
「何よ!じゃあ他になにを考えるのよ!」
日万凛がくらいついてくる。
「考えられるパターンは全体か、自分か、自分以外の三パターン。
まず一個目は時間を戻すことに該当する。
二個目に関しては時間を置いて早く移動するとかで回避行動と言う点。
そんで最後に関して言えば自分以外の時間を全て止めることで無防備な状態になってること。
使える回数を仮に5回とする。
この場合何回目が重要だ?」
「五回目。」
「はい不正解!」
優希はダメ出しをする。
「なんでよ!普通に考えれば体力がない状態のほうが有利でしょ!」
「ちっがう!正解は一回目!相手にこちらの手の内の一部だけを見せ警戒させること。そして同時に相手に恐怖を与えること。」
「前者はわかるけど後者は?意味あるの?」
「ある。」
優希は断言する。
「恐怖と言う感情は人間が生きていくうえで最も重要な感情。恐怖心が生存本能をより強く発生させる。」
「そう言う者なの?」
「意外とこういうのは来るもんだぞ。」
優希は向こうの世界で死ぬかもしれない状況だからこそ、強くなれた人物を知っている。
今その人物は島での医者をしている。
「後能力を発動させるために謎のポーズを取るの。己を高めるために。」
「逆に言えばそこにデッカイ隙が生まれる可能性もあるのか。だが相手も状況に応じて適応しようとするかそれともプライドを通すかの二択。だが・・・・・・もし予想通りだとしたらそっちに勝機はある。作戦自体の立案は今のお前じゃ無理だろ。」
「なんですって!」
優希の言葉に日万凛は反応する。
「お前、相手の表面上の能力しか知らないからさっきの俺の指摘で穴突かれまくっただろ。」
「うっ・・・・・・」
「まぁそれを短期間じゃ無理だから今は放置だ。ないものがすぐ手に入るなら人間苦労はしない。こっちには武器が欠けてる。決定打にもなり自信にもなる必殺技がいる。」
「あんたはどう考えてるの?」
日万凛は優希の意見を聞く。
「速さは申し分ないが悪魔で直線での動きのみだ。この姿は本来縦横無尽に動けるはずだが今の俺は曲がることは反転の際に大きい隙が生まれる。それの習得にも時間がかかるからここはひとまず直線を活かした戦い、つまり正面からの一撃にした方がいいと考える。」
「そうね。」
優希の意見に賛同する日万凛。するとあることに優希は気づいた。
「今更だがこれ人間にはなったら死ぬんじゃないのか?」
「派遣されてくる審判の能力で交流戦のダメージはすぐに全快するわ。だから遠慮せず戦えるのよ。」
「なんともうらやましい能力。」
ケガをしない、何ともない状態になる能力と言うのは正直嬉しい能力である。
人材を育てる上でケガや故障は付いて来てしまい、最悪実戦に出る前に死ぬケースもある。
そう言った意味でその能力は重宝される。
「だとしたら安心できる。武器を活かした戦いとしては掌底がいいな。拳より当てる面積が大きいし、何より下手に手首を痛めることはない。一撃でも結構芯に響くから必ず一回は東の辰刻を使うとみていいな。」
優希は少し離れ意識を集中する。
(SDP同様にすればいい。能力を使うことで意識を集中させる。)
全身に巡る力を脚へと集中させる。
すると異常なまでに脚部の筋肉が膨れ上がる。
「アンバランスすぎるだろ。」
そう呟いていると二体の醜鬼が向かってくる。
「ちょうど練習台ABが来たわ。アレに必殺技を打ち込むのよ!」
「やってみる!」
急速に加速して一気に醜鬼に接近し掌底を叩きこむ。
(くそっ!浅すぎる!)
掌底を当てた醜鬼に対してその攻撃は確実に響いた。
しかし倒すまでには至らず、身もだえする程度である。
優希は後ろにジグザグに飛び距離を取る。
(足と腕の動きがズレ過ぎてる・・・・・ただ足を早く動かすだけなら駄目だ。足は細かく動かし、牽制と陽動を加えて!)
相手を惑わすように動き、そして一気に懐に飛び込み掌底を叩きこんだ。
今度は醜鬼の背骨が折れる音が響き、その醜鬼は倒れる。
そして先ほどの状態から回復した醜鬼が優希に襲い掛かってくる。
(単純な速さだけで戦うんじゃない。足に使ったあの力を蹴りに応用すれば!)
軸足を深く踏み込み、そしてもう片方の足で地面を一気に蹴り上げる。
蹴り上げた脚は弧を描きながら醜鬼を切り裂く。
「すごい!」
日万凛は優希の技に感心する。
優希の無窮の鎖が解除され、元の姿へと戻る。
「極端に足が強い分、肉体への負荷は足が大きいな。」
優希は地面に座り込み、足を延ばす。
日万凛はそんな優希に近づきマッサージを始める。
「今のはよくやったわ。試行錯誤をして武器を増やしていきましょう。」
「今回はこれが褒美か。安心するよ。」
「私だって毎回あんなのは嫌よ!」
しばらくして再び優希は無窮の鎖形態になる。
いろいろと体を動かし始める優希。
日万凛はその光景をただ見ていた。
そんなところへ京香が来た。
「やってるな、日万凛。」
「組長!」
「私の能力はしっかり使えているようだな。」
「はい!おかげさまで今は必殺技の開発中です。」
京香は優希の訓練状況を見て分析する。
「ふむ、一点に力を集中させ高い効果を生み出す。私も一本角や人型との戦いに備えて訓練しようと思っていた。先んじて試しているとは素質があるな。」
「ありがとうございます!」
京香は日万凛を褒める。
それと同時に指摘もする。
「だがなぜおまえ自身は後ろから見ているだけなんだ?」
「それは・・・・何か気づいた点があれば指摘しやすいようにと。」
「優希はお前の教え子じゃないだろ。能力を使うときはその本質を理解しろ。」
「本質・・・・・?」
京香の言葉に理解が追い付かない日万凛。
過去の京香の無窮の鎖を使った戦いではいつも京香は優希の鎖持ち、戦場を駆けていた。
「っ!?」
気づいた日万凛に京香は微笑む。
「励めよ。私は仕事を片付ける。」
「ありがとうございます!」
一方優希は考えていた。
(どうも調子が悪い。と言うよりもいつもより力が入りづらい・・・・・・・・・・なんでだ?)
自身の動きの違和感を覚えていた。
そんなとき突然日万凛が背中に乗る。
「あれ?見ているんじゃなかったのか?」
「本番では騎乗するでしょ。実戦さながらに行くわよ。」
「っ!ああ。」
日万凛が気付いたように優希も気づいた。
(この能力は奴隷の使役。ただ指示すればいいんじゃない。)
(俺の上に乗り、鎖を握って!)
(主として命令を出す!)
「脚に力を集中させて!」
その瞬間、これまでにないほど全身に力が流れる。
(ファフナーと同じで、搭乗者がいなければ本領を発揮できないのと同じか。)
勇気もそれを体で認識する。
その時都合よく目の前に醜鬼が現れる。
「アイツをやりなさい!」
すぅ・・・・・・
命を奪う呼吸をして一気に加速し、掌底を叩きこんだ。
叩き込んだ衝撃は強烈な浸透水圧を発生させ打撃と衝撃の二段攻撃で醜鬼に風穴を開ける。
(まさに・・・・・・必殺技だわ!)
日万凛の心の中で確信に変わるものがあった。
(これだと少し決定打にかけるな。少し試したいが・・・・・・・・どの能力がいいか検討しておかないとな。)
一方の優希は不安材料があるため保険を考案していた。
「感覚を忘れないうちに染み込ませたいな。」
「安心しなさい。」
日万凛がそう言った途端、次々と醜鬼たちが姿を現す。
「魔都は練習台に事欠かないわ。」
それから次々と必殺技の練習として醜鬼を倒していった。
肉体を酷使する必殺技の代償は本人への肉体的消耗があった。
「何度も使う技じゃないのが必殺技だな。途中から気づいてたが段々精度が落ちてた。」
「訓練して安定させれば問題ないわね。」
「いやそこじゃないだろ。」
優希の着眼点は違っていた。
単調な技なのに異常に疲れる。
これはすなわち無駄が多すぎる。
余計な力が入りすぎている。
技に対して肉体が弱い。
技の反動を受け止め切れていない。
などと言った考察が考えられる。
技を放つ瞬間に手だけで行けば当然手首に負担がかかる。
さらに足の踏ん張りの際にどうしても支えの足への負担が大きい。
実質、腕と足にだけ異常に負荷がかかっている。
そんなことを一人考えている中、日万凛の身体は勝手に動く。
突如として上着を脱ぎ始め、ブラを外し胸を寄せあげる。
「能力の代償よ。まったく、いやらしい・・・・」
「/////」
優希はその王系に顔を真っ赤にする。
「あ、ああ・・・・・・まぁ、その・・・・・・・・・・管理人としての仕事終わったら訓練再開しよう・・・・・・」
珍しく動揺している姿を見て不意にほほ笑んでしまう優希。
そんな優希には聞こえない声で日万凛は言った。
「・・・・その意気よ。」
そして時は流れ数日後
魔都交流戦当日となった
この日が、全ての運命を変えた
君は知るだろう
犠牲をする運命がこの日であったことを
そしてこの時、歯車に巻き込まれたことを