別室で八千穂は天花の側で着替えていた。
「八千穂、第一試合の総括を言うね。戦闘で分かっていると思うけどあの奴隷クン、相当な手練れだよ。対人戦闘も慣れてた。けどあの行動には私も肝を冷やしたよ。」
「・・・・・」
二人の脳裏には自らの片腕を切り落として投げつける優希の姿があった。
「それに彼、八千穂の弱点をいくつか見抜いてた。多分この交流戦が終わったら結構指摘されるだろうけどそこは聞くこと。いいね?」
「わかったのじゃ・・・・・」
「それにしても、何で彼女の名前を彼が・・・・・・」
「そうじゃの・・・・・そう言えばあの時、武器を出すときも緑の結晶を出しておったな。あれは一体・・・・・・・・」
先日六番組の内部であった会話の中にあったワードがいくつも引っかかっていたが、結局今は考えるのではなく交流戦に集中することに決まった。
互いの選手が戻り銀奈が進行をする。
「それでは第二試合行きましょーーーー!」
「サハラ。」
「眠いけどいってきま~~~~す。」
「あたしも勝ってこよ!」
「ファイトです!」
あくびをしながらも前に出るサハラ、意気揚々と前に出る朱々とそれを応援する寧。
そんな時朱々は優希の方を振り向く。
「大活躍するから、見ててよ。」
「おう。」
優希がそう答えると近づいて小声で話す。
「活躍に応じて、ねぎらってもらうからね。」
朱々はそう言い親指を立てるとサハラの方へ再び足を進める。
「???」
優希は何のことかわからず間抜けな顔をする。
一方日万凛の方をずっと見ていた八千穂だが、天花によって引き戻される。
「八千穂。」
「っ!?」
首をひねらる八千穂に天花はボンボンを渡す。
「負けたんだから力を入れて応援。」
「ぬっ・・・・」
言い返したいが事実なのでしたがうしかない八千穂であった。
二人は対面する。
「そっちも肉男系なんでしょ?まず能力無しで腕比べしない?」
「いいよ~。」
サハラはマイペースな口調で朱々の提案を承諾する。
「では、盛り上げるべく実況させていただきます!はじめーっ!」
「よーーーっし!」
開始の途端、目の色が変わり朱々にけりを繰り出すサハラ。
「サハラ選手、するどい蹴り!」
朱々は体を横の逸らすと足を掴む。
「朱々選手!その足を掴んでーーーー」
「うわ~~~っ!」
「投げた―――っ!」
サハラが朱々の投げ技で地面に倒される。
そこにすかさずエルボを叩きこもうとする。
「エルボドロップで追撃!」
しかしサハラは転がって回避する。
「いだっ!」
ここで彼女は失敗した。
エルボでの一撃は確かに効くだろ。
だがしかし、脚から手を放してしまえば自由になるため、逃げられてしまう。
打撃戦に持ち込むのではなく関節技をすれば早く決着がついた。そうでなくても今後の戦闘に支障を与えることができた。
そしてサハラは朱々後ろを取りそのまま胴体を抱きしめる。
「バックから掴み、ジャーマンスープレックス決まったーっ!」
朱々の方へダメージが大きく入る。
「まだまだ!」
朱々は諦めていなかった。
が
「あぁ~疲れた~。もう、能力いくよー!」
「早っ!」
「せっかくノッて来たのに!」
流石に銀奈も驚く。
(あの子、どちらかと言うと短期決戦タイプか。朱々ちゃんと違うとするとどんな能力が・・・・・・)
「じゃ、こっちも!」
朱々は本領発揮と言わんばかりの顔で挑む。
「サハラはいくつにするか。“1”かの?」
「“3”あたりじゃない?」
律儀に応援する辺り根はいい八千穂と共に数字を出して予想する天花。
「玉体革命!」
「怒れる羊!3!」
朱々は体を大きくさせてサハラの前に立つ。
「おぉ~、かっこい!」
サハラその姿に感心する。
「はいド――――ン!!」
朱々は右の拳を振り下ろす。
しかしサハラはその攻撃を横に跳んで回避、そのまま朱々の顔の辺りにまで跳躍する。
「グーに対してパー!」
サハラの張り手が朱々の右頬に炸裂する。
(身体強化系の能力・・・・・・単純に時間制限がある・・・・・・・・・時間制限?そういやさっき3って言ってたな。最大はどのくらいだ?もし強化できる度合いと時間操作が可能なら法則でもあるのか?)
優希はわずかな情報からサハラの能力を予想する。
サハラの能力、怒れる羊はあらかじめ設定した時間を分単位の時間だけ身体能力を強化できる。
最大は1、最少は60。
この情報から強化する時間と強化される割合は反比例すると考えたらいいだろう。
「私の勝ち~。」
「後出しじゃんよ!」
肉弾戦でなくじゃんけんでのやり取りをする二人。
「よーし!その調子じゃ、サハラ!!」
「1分設定は強いけど相手に何か手があって粘られたら危険だしね。」
サハラが優勢なのを喜ぶ八千穂に対して天花はサハラの選択を褒める。
(やっぱり出ちゃってるか、朱々ちゃんの弱点。)
優希も流石に予想していた。
朱々の能力、玉体革命には二つ大きな弱点があることに。
「にゃろ!」
朱々は右足の蹴りで飛ばそうとするがサハラはそれを回避する。
サハラは一気に近づき左の脛を思いっきり殴る。
「えぐいーーーーーーーー!!」
「やっぱ狙うよね。」
「どうことですか、優希さん?」
優希の言葉が気になり声をかける寧。
「朱々ちゃんの肉体の巨大化には大きな弱点があるんだ。二つ。
一つ目は巨大化の持続時間。どうしても時間が制限されるからこればかりは地道にやってもらうしかない。」
「二つ目はなんなんですか?」
「それは大きくなることに頼りすぎてる点。大きくなればなるほどにパワーこそ上がる。けど言い換えれば力任せな分、結構荒い。大きすぎる攻撃はさっきみたいに明らかな弱点を攻撃される。人間の構造上弱点は結構多いけど、運動機能における重要な痛覚は必要だから神経とか狙われたら痛い。」
優希の指摘は痛いところを突いていた。
サハラもそれがわかっていて、岩を手に持ち投げる。
「その大きさ圧巻だけど攻撃避けやすいよ!もうちょい小ぶりの方が動きやすいんじゃないかな~。」
戦いの中でも朱々に指摘するサハラ。
サハラの投げたい我が朱々に直撃する。
「状況によって能力の出力を見極めるの大事~。」
朱々もその指摘には言い返せない面もあった。
だが彼女が見る先には優希の姿があり、彼女は決して今の自分を曲げない。
「小ぶりのほうがいい?そんな抑制はつまんないよ!」
朱々は大きく跳躍する。
「あたしは何事も楽しく派手にバーンっていくんだい!」
玉体革命を最大限にまで発揮する。
「はいバーーーーーン!!」
全力全快のボディプレスがサハラを襲う。
衝撃で突風が発生し、土煙が舞うがそれでもサハラはその攻撃を受け止めていた・
「くっ・・・・くぅう・・・・・・!」
そんなサハラを朱々は捕まえる。
「わぁっ!」
「大きすぎて避けられなかったでしょ!」
朱々はサハラを掴んだまま大きく振りかぶり、地面へと投げつける。
「そぉい!!」
その衝撃でサハラは気を失う。
その瞬間、七番組の誰もが勝利を確信した。
(よしこれで・・・・・・・・待て。能力の発動時間は3,仮に3分として、時間経過は2分と数十秒・・・・・・・・残りの時間、気を失ったらどうなるんだ!)
優希がそんなことを考えている中、朱々は体の大きさを維持できず若干小さくなる。
「ふーっ、審判。戦闘不能を確認して。」
「は、はい!」
銀奈が確認しようとした途端、ぬおりょくを再度発動しているサハラの姿があったが、彼女の目は閉じたままであった。
サハラは朱々へ急接近する。
(マズっ・・・・力使いすぎて体が動かない・・・・!)
動けない朱々の胸ぐらをつかむとサハラはそのまま朱々を地面へと投げつける。
大きな衝撃と共に突風が起きる。
銀奈は驚く中、気を失っている朱々と目と閉じつつも立っているサハラを見て判決を下す。
「そこまでぇええええ!勝者、若狭サハラ!!」
交流戦第二試合の結果は六番組の勝利に終わった。
銀奈の宣告と共にサハラは後ろ向きに倒れそうになるがそれを八千穂が受け止める。
「かっかっか!私様が応援したおかげじゃあ!」
「ちょうど三分で倒したしね。」
サハラの勝利に喜ぶ六番組。
一方優希と寧は朱々を心配していた。
「朱々ちゃん!」
「大丈夫ですか!」
「安心してください。決着したのですぐに治りますよ。」
銀奈の能力で傷もなくなり回復する朱々。
しかし治るのはケガだけで吹くまでは無理であった。
サハラに投げられた際に胸が丸出しになってしまった。
「うーん・・・」
「「!!」」
優希はすぐに上着を脱いで前を隠す。
「ゴメン!これ今覆っておいて!」
頭が若干ぼやけている朱々は状況を理解する。
(・・・・そうか、アタシ・・・・・)
朱々は立ち上がり京香の前へと行く。
「すいません、組長。負けちゃいました。」
「惜しかったな。後で反省点を教えてやる。」
謝る朱々に労いの言葉をかける京香。そんな朱々に日万凛は声をかける。
「着替えた方がいいわよ。」
「うん・・・・・」
創意と朱々は一人トボトボと寮へ向かい歩き始める。
(カッコ悪い・・・・所、ユッキーに見せちゃったよう・・・・)
一人朱々は泣きながら歩いていた。
「・・・・・・・・・」
優希は静かに動き始める。
「ちょっとお手洗い行ってくる。」
「一人にさせてあげなさいよ。」
「いや、こういう時誰かが側にいてやるべきなんだよ。特に悔しいときは、な。」
「・・・・・・・」
優希は経験上、慣れてるのからいうがそれでも日万凛はどこか、嫉妬してしまう。
寧は京香からの指示で周囲の警戒を行っていた。
「魔都に異常はないか、寧?」
「はい、異常----」
寧が索敵をしていると二人の人影がこちらを見下ろす姿が見えた。
「――――え?」
先ほどまでいなかった二人に間抜けな声を出す寧。
そんな寧の視線に気づき、黒髪の女性が目を向ける。
その瞬間、寧は恐怖を感じた。
醜鬼とは比べ物にならないほどの恐怖を、直感的に感じ取った。
〔見られてる?暗幕とった途端に。やるねぇ。皆によろしく伝えて。戦闘開始だって。〕
それが戦いの狼煙であった
君は知るだろう
この魔都には、強大な力持つ存在がいることに
そしてその存在は決して相容れず、戦うこととなることを