朱々は自分の部屋で一人ため息をついていた。
先ほどの敗北を引きずっていた。
そんな朱々の部屋の扉に優希はノックする。
「っ!?」
「朱々ちゃん、大丈夫?」
「うん・・・・・・・・ううん、大丈夫じゃない。」
「悔しい?」
「・・・・・・・・・・うん。」
「負けたことに?それとも、誰かのために勝てなかったことに?」
「・・・・・・・・・後の方。」
誰のためなのかを聞かないのは優希なりの優しさであるが、優希は七番隊のためだと勘違いしている。
「ねえユッキー、私ダサかったかな?」
「・・・・・・・・最初っから勝負を諦めてたら、かっこ悪かったよ。でも最後まで勝つ気だったよね?」
「・・・・・・・うん。」
「最後まで泥臭くてもあがく姿ってのは、結構かっこいい。かっこよく勝とうとか決めポーズするとか、そんなんじゃなくて。最後の最後まで足搔いて泥臭く戦う。ファフナー部隊でもそうだった。一人で勝てたときなんてなかったし、一人のために戦うんじゃないくて、誰かのために戦ってた。ここで心折れるなら、完全な負け。でもこの戦いを稼に頑張るなら、引き分けかな?」
優希なりに励ましていた。
優希は知ってた。
絶望が続く状況で大事な人を次々失っても、立ち上がった人物を。
「・・・・ホント?」
「うん。もし組手関係で指南できたらしようか?」
「うん・・・・・おねがい。ねぇ、ユッキー。少し目を瞑ってて。」
「うん?」
優希は朱々の言葉を疑問に思いつつも承諾する。
扉が開く音と共に口と胸元に笑かい感触がしたので目を開ける。
するとそこにはキスをする朱々の姿があった。
「しゅ、朱々ちゃん!」
「だから目を瞑ってって言ったのに。」
「なんでいきなりこんなことを?」
「それは・・・・」
朱々はそこから先の言葉を言わなかった。
いや、言えなかった。
今の自分ではまだ言えないから、もっと自分に必要なものがたくさんあるから。
「負けのショックをさらなるショックで吹き飛ばそうって!」
「豪快だね・・・・・・ま、早く着替えなよ。」
「うん!」
朱々は扉を閉めて着替えに手をかける。
(もっと自分の株を上げてから言わないと・・・・・!)
着替え終わろうかと言うとき、朱々の部屋の扉を優希が強くノックする。
「朱々ちゃん急いで!醜鬼が来たんだけど、数が多すぎる!」
「わ、わかった!」
少し時間は遡り、寧が探知した直後醜鬼たちが銀奈の結界に近づいて来ていた。
「醜鬼!」
「激安心してください!」
日万凛は醜鬼の襲来に警戒するが銀奈は自信があった。
事実、銀奈の結界に触れた醜鬼は次々に消滅していった。
「私の結界は完璧です!こー見えて身持ちは固いので!」
醜鬼たちの群れの後方から一人、明らかに違う覇気を纏った人型が近づいて来ていた。
「ふぅむぅ、これで結界のつもりとは。」
その人物の声に全員警戒する。
「ハハハハ!!」
笑いながら何度も頭突きをする人物は銀奈の結界にひびを入れる。
「滑稽すぎて!この雷煉、大爆笑!!」
結界の崩壊と共に雷煉を先頭に醜鬼たちが入って来る。
「廃れ者ども、貴様らそろそろ滅びの時だ!」
その言葉を皮切りに醜鬼たちが向かってくる。
ちょうどその時朱々と優希が戻ってきた。
「組長!」
「交流戦は中止だ!醜鬼を撃滅する!」
「了の解!!」
朱々は玉体革命で巨大化する。
「非戦闘員を寮に運ぶね。」
「寧からの索敵報告も聞いておけ!」
天花に京香は指示をする。
大量の醜鬼を朱々は一掃する。
「もうアタシは元気百倍!!」
余裕を持ってる朱々に一匹の醜鬼が襲い掛かってくるがサハラが蹴り飛ばす。
「えいやー!」
サハラはそのまま朱々の肩に着地する。
「どんどん大技出してね~。フォローする~。」
「うん!」
一方日万凛は一人片腕をガトリングに変えて醜鬼を一掃していた。
そんな日万凛に雷煉は一瞬だけ音を出して近づく。
「お前は標的ではないな。」
「っ!?」
「とりあえず、灰になってもらおうか!」
雷鳴が轟き、日万凛に雷が直撃するほんの一瞬で八千穂が助ける。
「ほう・・・・・」
「八千穂!」
「日万凛、あいつは骨が折れるぞ!」
八千穂は首を動かし、この場から離れるように促す。
日万凛はそれに気づき走り出した。
「落雷を予知して動いたな。」
雷煉は八千穂に感心する。
「よくも日万凛を!貴様ぁ、許さぬぞ!」
日万凛が死んでしまう時間軸を見た八千穂は雷煉へ怒りを露にする。
無窮の鎖形態の優希は京香を背に載せて戦闘をしていた。
そこへ日万凛が近づいてくる。
「組長!自分も優希に乗せてください!」
「よし日万凛、三人で行くぞ!」
「え!?」
優希は驚く。
しかし京香には確信があった。
無窮の鎖を持つ主が二人になれば、より強力な形態になる。
獅子の頭のような髪の毛を持ち、肩と腕に鎧を纏った姿。
無窮の鎖・戦雲
「どうだ優希、暴れてみろ!」
「そうします!」
優希はこれまでにないほど力が溢れていた。
(ここまでデカいと一気に大技を出した方がいい。烙印破の要領を応用してあの技を!)
優希の脳裏にあったのは人型醜鬼が使った技である。
優希は口に力を集め、それを方向のごとく一気に開放する。
咆哮撃!
放たれた方攻撃が醜鬼たちを一掃する。
「これが二人乗りの力!」
「よし!このまま大軍を掃討する!」
「でも八千穂が!」
日万凛は八千穂の方を心配する。
「敵将の方は六番組に任せる。天花がそう言った!交流戦の代わりに見せてやる!組長の戦いと言うものを!」
その頃七番隊の寮の中では天花によって安全を確保された銀奈が寧の側で嘆いていた。
「うううう、ショック!天サマと京サマが戦うのに待機なんて・・・・」
「寮の結界が一番頑丈ですから。」
集中する寧の側でうっとうしいほどに嘆く銀奈。そんな銀奈に寧が気を遣う。
「あの、今の寧に障れば視点が連動します。応援できますよ。」
「マジ!?流石大川村さん!!激ナイス!!!」
銀奈羽委に触れ、瞼を閉じる。
「本当だ!やったー!」
二人が見ている視点では優希の背中に京香と日万凛が乗っていた。
「左上!」
「私に任せろ!」
優希の言葉に京香が答え、襲ってくる醜鬼の腕を切り落とし顔を掴むと膝蹴りを入れる。
「屈服の時間だ!」
醜鬼の顔が砕かれる。
醜鬼には通常兵器が効かず、対抗するためには魔都の桃の能力や桃の恩章を施した力が有効である。
しかし、例外は存在する。
一つは優希の能力。
そしてもう一つは京香の戦闘スタイル。
桃の恩章関係なく醜鬼を倒しうる例外性。故に彼女は組長の地位に存在している。
「朱々、加勢に来たぞ!」
京香の言葉に朱々は振り向く。
「えええ、二人乗り!?」
二人乗りのことに驚く朱々。
「すごいパワーなの。」
単純に今の優希の形態に力に感心する日万凛。
しかし朱々は違った。。
(ということは・・・代償も二人!?そんな・・・・・)
動揺する朱々に醜鬼が襲い掛かって来る。
が、それは藪蛇であった。
「負けられるかぁっ!?!」
「お~、朱々ちゃんパワー増してるぅ。」
何も知らないサハラは単純に感心していた。
一方その頃八千穂は苦戦を強いられていた。
次々と鼻垂れる雷を紙一重でかわすのがやっとであった。
(こいつ、なんて威力じゃ!醜鬼は明らかにモノが違う!)
「そこだ!」
雷煉奥地から放たれた火球が八千穂の左腕を奪う。
「くっ!」
直撃した腕は肘から下を失った。
「あぐっ・・・・!」
「腕を奪った!怪しい動きをしているからな!」
「甘いわ!」
奪われた腕をかばいつつも八千穂は至高のポーズを脚で取る。
そして時間は5秒戻される。
今度は横に回避を取る。
「粘るな、廃れ者。」
八千穂を見下ろす雷煉からは覇気が溢れる。
「体も温まってきた。次で消し飛ばす!」
余裕のある雷煉に対して八千穂は満身創痍な状態。
そんな時であった。
「来い!」
八千穂が優希の手元にまで引き寄せられる。
「な、何を!」
「そんな状態じゃ死ぬだけですよ。日万凛、すまんが彼女守りながら戦ってくれ。」
「わ、わかったわ。」
「待て!あいつの相手はこの私様が!」
「選手交代ですよ。」
優希が見る先には天花の姿があった。
「ありがとう、奴隷クン。八千穂、休んでて。」
「(あの女・・・・・どこから出てきた?)休む?我の軍勢相手にそんな暇があるのか?」
「軍勢?」
天花は雷煉の言葉に内心笑ってしまう。
「戦いの邪魔になりそうなのは消しといたけど。」
「!?」
「報告じゃ大将格があと二体ほどいるようだけど、まずお前から片付けていこうか。」
「ふん、少しは楽しめそうだ、標的め!」