「すいません、突然あんなことをして。」
優希はカノンに頭を下げていた。
「いや、気にすることはない。だが頭突きとは驚いたな。」
カノンは食らったおでこをさする。
「咲良先生からのお願いもありましたし。あ、これ渡しますね。」
そう言うと優希はスティック状の機械を渡す。
「懐かしいな。これには何が?」
「皆からのメッセージとカノン先輩が来る前といなくなってからの出来事、あとは写真ですね。」
「そうか。戻ったらじっくり見させてもらおう。」
カノンは端末を受け取る。
「終わったか?」
「すいません。時間を取らせました。」
京香に優希は頭を下げる。
「大活躍だったね、奴隷クン。」
「いえ、むしろ出雲組長の方が活躍してましたよ。」
「そんなことないよ。あの大きい雷煉って奴に立ち向かってたじゃない。」
「一輝先輩ほどうまく扱えてなかったんですけどね。」
「一輝?」
「出雲組長、それについては後程説明する。」
そんな半紙をしていると銀奈が声をかけてくる。
「優希さん、よろしければサインをいいですか?」
「俺の!?」
流石の銀奈の行動に優希も驚く。
「早速ファンが着いたな。」
「よかったじゃない。」
京香と日万凛が褒める中、日万凛は八千穂に目が行く。
「あの・・・・」
「フン、なんじゃ?」
八千穂はぶっきらぼうな反応をする。
「さっきはありがとう。」
その言葉に八千穂は内心嬉しかった。しかし悲しいかな彼女は感情表現が極端なまでに下手であった。
「お前だって東なのじゃからな。敵に撃たれたなどまず魔の名誉に泥を塗る。だから助けた。それだけのことじゃ。まぁお前が力不足を痛感したというなら私様が鍛え直してやる。東に帰って来てはどうじゃ?」
「自分は七番隊にいるから。」
その瞬間、彼女は石になった。
「交流会は中止だね。後日こっちで報告書を一緒に作ろう。」
「そうだな。だが今回のことで互いにいい経験になった。」
「うん。それじゃあ今日は帰るよ。」
「じゃぁね~。」
八千穂を抱えたサハラと共に六番組と銀奈は天御鳥命で七番組の寮を後にした。
「ふー、こういう時は風呂に入ってさっぱりしたいですね。」
優希はふとそんなことを口にした。
「え?なんで?」
優希が更衣室で服を脱いでいると京香と日万凛が入ってきて服を脱ぎ始めていた。
「アンタが望んでいたことでしょ!いやらしい・・・・毎回毎回・・・・・・」
「今回は結構な敵を倒したからな。」
二人は恥ずかしがりながらも脱ぐ。
(そう言えば二人乗りだったから褒美も二人同時ってことか!)
優希は先ほどまでのことをすっかり忘れていた。
そして優希は二人に体を洗ってもらっていた。
「タオル巻けたから何が褒美かと思えば・・・・・」
「体を洗って欲しかったのか?」
「風呂に入って疲れ取りたいとかは思ってましたけど・・・・・・・」
優希が望んだことが褒美となるとは言われている。
しかし優希はふと疑問に思うことがあった。
なぜ貢献度や敵によりその褒美が違うのか。
それも人間であれば、だ。
確かに人間特殊な性癖はあるのだが毎回趣旨が違いすぎるのが謎なのである。
「まぁ、これは頑張った犬に洗ってあげるノリだから!別にそんなに恥ずかしくないッ!」
「すまん。早口すぎてよく聞き取れない。」
早口でそう言う日万凛の言葉に優希がそう答えると京香は後ろから胸を押し付ける。
「っ!?」
「優希、お前・・・・・いつもより疲労しているんだろ?」
「はい・・・・・二人乗りは反動が大きいです。力に比例してもあるかもしれないのですが。後はやっぱりザインですね。」
「ザルヴァートルモデルだったな。あれほど強大な力を持つ機体が向こうにはあるのか。だがあれは反動が大きすぎる。今後無暗に使うな。」
「賛成ね。同化現象って言うの?あれ見たときは本当に心臓に悪かったんだから。」
二人に心配される優希。
「そうしたいのは山々なんですが、ザインを使ったことでもう一方が共鳴してしまったのでどこかで使わないといけません。」
「もう一方?まだあるのか?」
「ええ。集団戦よりも個人戦向きで、広範囲の敵を殲滅するのに最も適している機体です。でも島を滅ぼしかけた機体です。名前はニヒト、虚無の申し子と言われてます。」
「すごい名前ね。まぁその話はまた今度にしましょう。」
「そうだな。今は休め。」
「寮の温泉は疲労に効くわよ。」
二人は優希の手を掴み、風呂へ促す。
流石の優希もこれには慣れなかった。
翌日、寧は日万凛と勇気が見守る中でGペンを使って似顔絵を描いていた。
「寧が見た敵はこんな感じです。」
少女漫画風のイラストで敵の脅威は全く感じられなかった。
「寧ちゃん絵が上手だね。」
そんな感想を口にする優希に日万凛は耳打ちする。
「正式似顔絵は本部で作るから。」
優希はその似顔絵を見ながら思った。
(この敵は姉ちゃんじゃなかったけど、襲撃してきた理由はなんだ?それにみたところ性別以外全く違う気がする。だとしたら、何が目的なんだ?雷煉は俺たちを廃れ者と言った。だがなんでそう言う必要があった?差別と言うよりも線引きをしていると言った方がいいのか?何を基準に?)
考えれば考えるほどに謎が出てくる。
その日の夜、優希が寝ている部屋に天花が脳力を使い寝顔を眺めていた。
魔都のどこかで彼女は優希のいる魔防隊七番組の寮を見ていた。
「・・・・・・・・」
長い黒髪を風になびかせる彼女は寧と同じ年齢のように見えるが、生まれて一年も経たないのである。
「なーんで会いに行かないの?」
彼女の後ろから一人の青年が話しかける。
「今はまだその時じゃないわ。近い未来、私たちは彼に接触する。でも今出会ったらだめ。彼らが生き残れる未来を残さなきゃ。」
「それはわかるんだけどさー、別の僕が会ってた彼って存在に会いたいんだもん。」
「ダメの遭者はダメよ。さ、戻るわよ。」
「はーい。」
思えばこの時気づくべきだった
君は知るだろう
可能性を残すためには苦渋の決断が必要と言うことを。