翌日、優希は京香と日万凛と共にジープで六番組に来ていた。
「いらっしゃい。ご足労かけるね。」
「たまにはこっちから出向くさ。」
天花の言葉に京香が答える。
しかし天花の視線は京香からすぐに優希へと向けられた。
「早かったね。移動中は何も起きなかった?」
「道すがら醜鬼を数匹倒した程度だ。拍子抜けのパトロールだな。組員に親交を深めてこい。私たちは会議だ。」
「他のメンツは寮にいるから自由に動いていいよ。」
日万凛と優希はそう言われ六番組寮内を散策する。
「そういやアンタ、あの時なに渡したのよ?」
「ああ、あれ?島での出来事とかだな。カノン先輩、ちょっと訳ありだから。」
「訳あり?」
日万凛は興味を持つ。
「あの人は俺と同じで島の人間じゃなかったか。人類軍・・・・・こっちで言う国連の人間だったんだ。」
「ええっ!?」
日万凛はその事実に驚く。
「日本に核を落とした組織にいたの!」
「ああ。と言ってもカノン先輩は小さいころにフェストゥムとの戦闘で故郷を失って、そのまま人類軍にって流れだけどな。カノン先輩は優秀なパイロットでメカニックなんだ。けど自分を持ってなかった。自分で考え、行動し、判断する。島に来るまではそれがなかったんだ。一騎先輩が変えたんだけどな。」
「じゃあその一騎って人とは・・・・・・・」
「・・・・・・・・思いを伝える前に消えちまったんだ。」
「あ・・・・・・・・」
そこで日万凛は気づいた。
島を守るために犠牲になった。
丁度その頃島の外にいる美和を守るために島にいなかったことを。
「俺が干将ことじゃないし、お前も口出すことじゃない。このこと、秘密にしてくれるか?」
「ええ、わかってるわよ。」
日万凛も理解してくれた。
「アタシは八千穂の方に行くけどあんたは?」
「一変通り見て管理人業務と思ったんだが、管理が行き届いてる。ちょっと目立つ所があるからそこら辺はする。後は野暮って奴だ。てことでこっからは別行動で。」
「ええ。」
優希と日万凛はそこで解散する。
それから優希は洗濯物や掃除を行った。
下着に関しては遠見の世話をやってきたこともあってか慣れてるので無関心である。
「後は日万凛のお姉さんの八千穂さんの服を渡すだけか。」
優希は服をもって部屋の前にまでくるとノックをするが返事は無い。
「留守か?失礼しまーす。」
服だけ置いてすぐに出ようとしたが開けた瞬間、思考が停止した。
部屋にある写真はどれも日万凛、日万凛、日万凛、日万凛と小さいころからおそらく最近に至るまでに日万凛んで埋め尽くされている。
「・・・・・・・・・」
仏のように悟った笑顔で服を置き、そっと部屋の扉を閉じた。
(言うまでもないがブラコンだったか・・・・・・・)
交流戦の時の態度から違和感があったが、納得できた。
感情表現がガチでド下手で、妹が好きすぎるのであった。
(そういやさっきの写真、昔は笑顔が多かったんだな。)
ふと写真を見てそんなことを思っているとロビーで下着姿で寝ているサハラの姿があった。
(この人寝ることが多いな・・・・・・・能力が原因か?)
怒れる羊の能力で体力を短時間で消耗する。
そして無意識でもそれが発動する。
身近に時間ほど強くなるがその反面体力を多く使うからなのかもしれないと優希は考える。
(とりあえずシーツかけとこ。)
優希はシーツをサハラにかけようとした途端、四肢でガッチリ固められ、胸に顔をうずめる形になった。
(アレと勘違いしてるのか!?)
近くに合った枕を抱きしめようとしていたのだと思った優希。何とか逃げようともがく。
しかし彼女は眠っていても体が覚えているプロレス技で足で顔をホールド、そのまま回りて抑え込む。
(これは絵面的にいろいろマズイ!)
股が顔に来ている構図は大きな勘違いを生みかねない状況であった。
「優希、助けがいるか?」
カノンの声が聞こえ優希はハンドサインでヘルプを要請する。
「待ってろ。」
カノンは口と鼻を抑え込み、サハラを起こす。
「っ~~~~~~~!ぶっはーーーーーーーーー!も~、カノ~ン、何するの~!」
「それを言う前に優希を開放してやれ。苦しんでるぞ。」
「え?あれ~?なんでこんなことになってるの~?」
「いいから早く解放しろ。」
「は~い。」
優希はようやく解放される。
「助かりました、カノン先輩。」
「いや、元はと言えばこいつの寝相が悪い。サハラ、寝るのはいいが服を着ろといつも言ってるだろ。」
カノンに注意されるサハラを見てふと優希は思った。
(もしもしなくてこの人いっつも下着姿で寝てるのか?いろいろ不安だな、おい!)
不意に美和がこんな風に成長行しないか心配になった。
三人はトレーニングルームに移動していた。
「や~、ごめんね~。こんなに早く来るなんて思ってなくて~。」
「その前にお前は寝過ぎなんだ。不健康になるぞ。」
謝罪するサハラに対してカノンは指摘をする。
「能力が原因ですかね?睡眠時間を正確に計測しないと能力の多様で体調不良になるかもしれないですし。」
「そうだな。そこも視野に入れておかなければ。」
そんな話を話しながら八千穂のいるトレーニングルームへと行くと、入り口で立っている日万凛の姿があった。
「入らないのか?」
「終わるまで声かけるの待ってるの。」
日万凛が見る先を優希が見るとそこには鍛えている八千穂の姿があった。
「八千穂は日ごろからああなの?」
「そうだな。交流戦前もあのように鍛錬をしてたぞ。」
日万凛の問いにカノンが答える。
「尊敬しているのか?」
「・・・・・・・性格はあれだけど、文武両道で結果を出し続けているからそこは見習わないととずっと思ってる。」
そんな答えを出す日万凛にカノンは言う。
「おそらく優希も思っていただろうが、桃の能力にはその人の本質や素養が関係している。彼女の場合時間だが、もしかすれば戻したい時間があるのかもしれないな。私にもわかる。私の場合、それに干渉し過ぎたのだがな。」
「・・・・・・・・」
カノンの犠牲の件は過去とは言えど許せれない優希であった。
おそらく島の誰もが納得出来はしない。
特に羽佐間先生は。
だが優希は口にしなかった。
島の未来のために犠牲になった彼女に対する侮辱でもある。
「日万凛、お前の家庭の事情も私は知らない。だが時間は限られてるから、少し歩み寄ってみてくれ。」
カノンはそう言うと日万凛にタオルを渡す。
日万凛はそれを受け取り八千穂に私が八千穂はぶっきらぼうに受け取る。
そんなことをするから少しばかり小言を言われるが八千穂にとってはそれは幸せな時間であった。
「やっちーと仲良くなれるんなら部屋見せた方が早いかもねー。」
「「それはやめとけ。」」
サハラの提案を二人は全力で止めた。
その頃京香と天花の会議は締めにかかっていた。
「じゃあ醜鬼の巣があった場所にはこの作戦で乗り込むと。」
「そうだな。人型に動きがなければこちらから出向く。課題としては以上か・・・・・他に何かあるか?」
「一つだけ、人事に関して。」
「なんだ?」
天花は足を組むとあることを提案する。
「奴隷クン、私に頂戴。」
「は?」
京香は間抜けな声を出してしまった。
抱く感情は日に日に増し
彼女の心をたきつけた。
君は知るだろう
恋する者の思いは想像以上に強いことを。
そして時にそれは、異常な力を発揮することに