「・・・・・・・」
青羽は大まかではあるが内容を全て来た。
ココも波音も何も話さないまま黙っていた。
「優希、聞いてもいい?」
「なに?」
「その因子?の影響ってあの結晶だけ?」
「・・・・・・・・・」
優希は答えなかった。
「・・・・・・・優希、私は正直に言えば今すぐにでも戦いから身を退いてほしい。」
「わかってる。でも平穏や平和を望むならこれは避けられない。」
「・・・・・・・・・」
青羽は地面を殴る。
何度も、何度も殴る。
地面にはヒビが入り、青羽の手には土が付く。
「こんな力を持ってるのに、弟の力にもなれない!」
「姉ちゃん・・・・・・・・」
「向こうの島の人の気持ちがわかる気がする。私が守られるなんておかしいよ!」
青羽はただただ悔しかった。
今の自分たちは助けるどころの話ではない。
そもそも助けられる次元ではないのだ。
「でも戦うと決めたのは俺で、この祝福を受け入れてる。」
「何が祝福よ!これのどこが!何が祝福と言うの!力を使うたびに命を削ってまで戦うことが祝福なの!間違ってる!」
「幸せになることも祝福だけど、こうして生きていること、日々の何気ない日常が俺達には祝福なんだ。当たり前のように明日が来るんじゃなくて、今日があるから明日があると思えること。そして何より、自分が生きた証を実感できることが祝福なんだ。」
優希にとって当たり前に明日があるとは思っていない。
戦ったからこそ今日があって明日があって未来がある。
これを彼は祝福と思うのだ。
「だからって・・・・・・だからって!」
青羽は納得できなかった。
島の大人も彼女と同じ気持ちであった。
その時青羽の警戒範囲に魔防隊が来たことを察知する。
「・・・・・・・・こんな時に来るなんて。全員に伝えて。決めた通りに動けって。」
「っ!おう!」
青羽の指示にココは従う。
「前鞘線よ。」
そう言うと青羽は戦闘態勢に入った。
一方その頃京香たちは隠れ里のすぐそばにまで来ていた。
「随分と端まで来たね~。」
「ユッキーどこー!?」
優希のいるであろう場所のことに感想を述べるサハラに対して朱々は呼びかける。
「・・・・・・・どうやら。」
京香が指を指す方には岩しかなかった。
「私の足はあの岩に向かっている。」
「洞窟か。」
「入り口を岩で隠しているのね!」
八千穂と日万凛は青羽たちの偽装に気づく。
「助かったぞ天花。随分早く着いた。」
「今日初めて知ったんだ。恋人が浚われると、こんな気分になるんだなって。」
天花は顔に影を落としながら指を鳴らす。
天花の言葉に朱々は反応する。
「迎撃が来たぞ!」
京香の言葉と同時に地中から数体の醜鬼が姿を現す。
そして朱々とサハラを覗く全員が天花の肩に手を置く。
「決めた通り二人一組で動く。」
「OK。私たちは移動するよ。」
京香の作戦に一同従う。
そして四人は天花の天御鳥命で移動する。
「あたし!超・出・陣!」
カモフラージュの岩を壊しココが熊童子と共に朱々とサハラの前に現れる。
「獲物はお前らか!」
「派手にでやってね~。合わせるよ。」
「OK、サハラ!」
二人は腕をぶつけ合う。
一方その頃隠れ里の洞窟の内部を一同は走っていた。
「これが魔都の洞窟・・・・」
「出張組が潜っている中央の洞窟とは随分違うがな。」
「こっちは狭いし、桃がないのじゃ。」
日万凛が洞窟に驚く中、京香と日万凛は出張組と違うところを比べる。
「敵地だけど奥へ瞬間移動してみる?」
「待て、どこかに出るぞ。」
天花の提案に京香は待ったをかける。
洞窟を抜け広場にはステージ上に数体の醜鬼を引き連れたアクラの姿があった。
「あの武器を持つ醜鬼・・・・やるぞ。」
京香もアクラを警戒する。
「奴隷クンはもう少し先なんだね?」
「そのようだ。」
天花の京香の会話に日万凛と八千穂は顔を合わせると頷く。
「救出優先です!組長たちは先へ!」
日万凛の言葉を信じて二人はこの場を任せる。
「任せる。」
「やっちゃって。」
二人は先へ移動する。
「個々の敵は東で倒す。よいな、日万凛。」
「組長たちが挟撃されないようにきっちりとね!」
長い間仲違いしていた姉妹の初めての共同作戦が始まる中、壁に潜んでいた波音は様子をうかがっていた。
一本角がいる場所に足音を立てながら京香が前に立つ。
「京香さん!」
優希が声を張り上げ前に出るが青羽は左手を優希の前に出し止める。
「もうここまで来るとはね。他の仲間は隠れて―――」
目の前の強化に注意が行っている青羽の隙を突いて天花が天御鳥命で優希の後ろから抱き着く。
その光景を見た青羽は青筋を立てる。
ゴッ
風切り音を立て右腕を振るうが天花の天御鳥命で既にそこにはおらず、京香の側にいた。
「瞬間移動!」
天花は手を振りその場から優希たちとともに姿を消した。
青羽は追いかけようと走るが追い付けず、土煙を立て急停止する。
「大体わかったわ、その能力。」
青羽には天花の能力の一部が理解できた。
複雑に柱が入り組んだ物陰に優希たちはいた。
「奴隷クン、首出して。」
天花はカノンから渡された拮抗薬を注射器にセットする。
「助かります。」
天花は銃口を優希の首の静脈に当て、トリガーを引く。
拮抗薬が優希へ流れていく。
「はい、おわり。大丈夫?何かされた?」
「大丈夫です。」
優希は両手を出して大丈夫なことを示そうとするが片方の手を強化が掴む。
「済ませないと動きが制限される。いくぞ。」
京香はそう言うと顔を赤らめながらも舌を出す。
「っ!?!?」
褒美のことをすっかり忘れていた優希は驚くが京香の無窮の鎖の代償はそれにお構いなく発動する。
京香は優希の人差し指を咥えると赤ん坊のように吸うい、舐める。
(能力の代償で位置が・・・・・・・)
優希は目の前のことを別のことを考えることで平静を保とうとする。
そんな光景を見ていた天花は据わった目で見ていたのだが、優希のもう片方の手の方に回ると無窮の鎖関係なしに舐め始める。
「はいっ!?!?!?!?!?」
流石の優希もこれには驚きを隠せなかった。
「なんでお前まで・・・・」
「私からのは一人で頑張ったご褒美。」
「まったく・・・・・」
京香は呆れながらも代償を支払い、天花は自分の意志で優希の指を舐める。
互いに違う舌遣いを指を介して伝わってくる。
京香の舌遣いは不器用ながらも手探りのように。
天花の舌遣いは入念に優希の手を調べつくす様に。
流石の優希ですらも理性が限界である。
その時一本角と共に優希の元へ青羽が駆け付ける。
「見つけた!」
京香も褒美を終え天花も臨戦態勢に入る。
「待って!」
優希は間に割って入る。
「SDP選択、マリス・エクセルシア。」
その瞬間、双方に力が無力化される。
「優希、これって・・・・・」
「ごめん。でもこうでもしないと、戦うしかないみたいだったから。」
優希の目は少し悲しそうな眼をしていた。
「・・・・・・・・全く、そんな目をされたら聞かないわけにはいかないじゃない。」
青羽は優しい笑みを浮かべる。
「殺気を収めた?」
「姉・・・・・本当にそうなのか?」
そこからは青羽を交えて説明した。
魔都の桃を食ったことによる突然変異の人型醜鬼化、そして陰陽道の実態。
優希の待遇に関して青羽は納得はしてなかったが理解を示した。
「陰陽道・・・・周期の研究までは知っていたが。話が自自湯なら陰陽道は潰してやるぞ。信じろ。」
京香は青羽に停戦を提案するが青羽はそれを拒む。
「私達は好きに動く。邪魔する奴は倒してね。」
「醜鬼を使って暴動を起こす気は変わらないと?」
天花の問いに対して青羽は答える。
「組織の歯車二つ、信じても意味がないわ。」
天花は諦めて首を振る。
「ならば腕づくでお前たちを止める。」
「魔防隊なら全員そうするよ。」
「京香さん!」
実力行使な態度に優希は口を出すが互いに九九耳を持たない。
「今日で決着だ、一本角!」
「さーやろっか。七番組の組長と―――」
ふとそこで青羽は天花のことに気づく。
「えーっと、あんたは何番組だっけ?」
そんな叔母に対して天花はとんでもない発言をする。
「お義姉さん。私は優希君とお付き合いをする六番組組長の出雲天花です。」
その瞬間青羽の中で何かが切れた。
そして青筋を浮かべ言い放つ。
「ぶっ潰す!」