魔防隊七番組の寮。
そこは和式の建築構造をしている建物であった。
「魔防隊の施設って和式なんですね。」
「ああ。それにここは裏鬼門と言う醜鬼が良く出る場所でな。結界が張られているから安心だ。」
優希は結界の前の方にまで近づく。
「ここにあるんですね。」
「わかるのか?」
「感覚的に。けど・・・・・・・」
優希は後ろを振り返る。
「どうかしたか?」
「万が一の場合を想定してもう二枚は欲しいですね。そうじゃなかったらこの結界の弱点を狙われたら思って?」
「弱点?それも聞きたいがまずお前のことについて話を聞かせてもらう。」
「構いません。と言っても到底信じてもらえるとは思えない話ですが。」
「魔都に醜鬼、そして桃の能力がある。よほどでない限りは驚かん。付いて来い。」
京香の後ろを優希は付いて行く。
寧は七番組の寮で待機、朱々と日万凛は巡回に戻った。
七番組寮のリビングで京香は優希と対面していた。
「さて、君の名前を改めて聞かせてくれ。過去の失踪者と照らし合わせる。」
そう言うと京香はタブレットを手にする。
「和倉優希です。」
「わくらゆうき・・・・・・・・・・・あった。10年前に失踪して魔都災害と認定されているな。」
「ええ、まぁ。姉も同様に失踪しています。と言っても俺より前にですが。」
「確認した。確かに君の姉も魔都災害に認定されている。では先ほどの力だが、あれは『桃』を食べたことで発現したのか?」
「いえ、あれは島での経験と言うべきか・・・・・・・あちらの世界からの祝福ですね。」
「島?あちらの世界?祝福?」
優希の言葉に京香は頭が付いて行かなかった。
「今から話すのは紛れもない事実で、信じられませんでしょうが本当にあったことです。それを聞いたうえで判断してください。」
そこから優希は話した。
フェストゥムのこと、竜宮島のこと、ファフナーのこと、あちらの世界の歴史のこと、そして最後の戦いのことを。
「・・・・・・・・・・・・」
全てを聞き終えてからも京香は黙っていた。
「・・・・・・・・・信じてもらえないのはわかってます。実際話してて不安でしたし。」
「まぁな。だがお前の目には嘘を言っている感じはしなかった。その点でお前の言葉を信じよう。だが・・・・・・・・・」
「このまま家に帰すわけにはいかない、でしょ?」
「そうだ。」
京香の言いたいことは優希にもわかっていた。
異端すぎる力を今後使わないとは思えないし、何よりそれが露見した場合が問題である。
「私としては君を保護したいと思っている。」
「それは助かるのですが、大丈夫なんのですか?女尊男卑の風習は抜けないものと思うのですが・・・・・・」
「ああ。全くもってその通りだ。正直に言えば私もお前を見るまでは男は戦えないと思っていた。だがお前はそれを覆した。戦い以外に何ができる?」
「料理とか家事とか・・・・・・・・・後は機械修理とかですかね?竜宮島ではいろんな職業を経験しましたしそこそこまで来ますよ。」
「そうか。なら――――」
「っ!?」
優希が突如として立ち上がる。
「どうした?」
「こっちの方でさっきの二人が応戦してるけど・・・・・数が多い!」
「なに?」
その時、寧が息を荒くして来る。
「大変です!朱々さんと日万凛さんが醜鬼の群れと応戦してますが数が多すぎるとのことです。」
「寧ちゃん!」
「は、はい!」
「あの二人のいる場所の正確な距離は?」
「こ、ここから約15km離れてます。」
「その距離なら充分届く!」
優希が行動を起こす前に京香が彼の肩に手を置く。
「待て!私も連れていけ!部下の危機をみすみす動かないわけにはいかない!」
「わかりました。でも飛んでいくわけじゃないので。」
優希は少し離れるように言うと深呼吸をして、言った。
「俺は、ここにいるぞ。」
優希の身体を緑の結晶が覆い、Mk.XVIIへと姿を変える。姿が変わった途端、京香はMk.XVIIの腕を掴む。
「SDP選択、御門零央!」
Mk.XVII中心にワームを発生させる。
そしてワームが消えると共に二人は七番組の寮から姿を消した。
「ひまりん!大丈夫!」
「結構きついわ!でもこんなことで根を上げていられないわ!」
予想以上の醜鬼の数に苦戦する二人。
「ひまりん後ろ!」
「っ!?」
日万凛の後ろから醜鬼が拳を振りかぶっていた。
「間に合わない!」
その時であった。
醜鬼の肉体が真っ二つになる。
「よく耐えた、日万凛。」
「組長!」
その醜鬼を倒したのは京香である。
「ここまでどうやって?」
「あの男の力を借りた。」
「アイツの!」
日万凛はXVIIの方を見る。
「どうやって来たの!」
朱々は驚く。
XVIIは両手にレヴィンソードを展開し醜鬼に向かい走り出す。
正面の一体を切り倒すと転移し別の醜鬼の後ろに現れ首を切り落とす。
その瞬間を狙ったかのように動きだす醜鬼。
XVIIは左手の武装をルガーランスに変更すると槍先を醜鬼に向ける。
固定ロックが解除され刀身が二つに割れると内部の動力が動き出力が上昇し、エネルギーを蓄積していく。
そしてトリガーを絞ると同時に蓄積されたエネルギーが放たれ醜鬼を一掃する。
「なかなかやるな。こちらも負けられん!」
「はい、組長!」
「よーし!やってやるぞー!」
数十分もして醜鬼は一掃された。
「二人とも、怪我はないか?」
「あたしは大丈夫です。でもひまりんが・・・・・」
「すみません。少し負傷しました。」
日万凛の右腕からは少しばかり血が出ていた。
「でも任務に支障はきたしません!」
「そういうわけにもいかん。些細なことが任務に支障をきたす場合もある。六番組に連絡して治療をーーーー」
「あの、ちょっといいですか?」
人間お姿に戻った優希が話しかける。
「もしかしたら治せるかもしれません。」
「あんた、嘘言ってんじゃないでしょうね?」
「こんな状況で嘘は言わないよ。見たところ結構深いし、利き手を痛めた状態じゃ何かと不便だろ?」
「頼んでもいいか?」
「ええ。」
京香の許可ももらい優希は日万凛の右腕に触れる。
「失礼しまーす。」
「変なことしたら殺すから。」
「・・・・・・・・・・・・・簡単に言うなよ。人を殺すときって気分悪いし。」
『っ!?』
経験のある言葉が三人に衝撃を与える。
「SDP選択、近藤健司。」
剣司のSDPを発動させ日万凛の傷口が結晶化する。
そして結晶はすぐに霧散し、傷を治した。
「本当に治った。あんたのそれ何なの?」
「SDP。最も俺のは模倣だけどちゃんと使い方を理解してないと失敗するから。」
その言葉に日万凛は少しばかり眉を動かす。
「それってどういう・・・・・・」
「それより組長、彼どうするんですか?」
朱々が日万凛の言葉を遮り尋ねる。
「それについてだが面識がある我々が彼を監視下に置くことを提案する。幸いにも寮には管理人がいない。」
「なるほど!」
朱々は納得する。
「ですがもしこいつがなんかしたら!」
「その時は私が責任も持って首を切る。」
本人がいる前で何とも恐ろしい内容を話す二人に優希は呆れる。
「ある意味強いわ、これ・・・・・・・・ところで聞いても?」
「ない?」
日万凛はぶっきらぼうに答える。
「あの残骸は?」
『え?』
日万凛と朱々が見る先にはスクラップになったジープがあった。
「あー!戦闘の時に踏んづけちゃった!」
「どうするのよ!ここから寮まで結構離れてるのよ!」
焦る二人に呆れる優希。
「優希、すまないがあれは直せるか?」
「さすがに無理です。素直に申請しましょう。使えそうなパーツは良くてナットくらいですかね?」
「そうか・・・・・・・・・すまないがあれと一緒に私たちを寮にまで送ってもらえないか?」
「わかりました。」
優希はスクラップになったジープの下まで歩き始め、京香がその後に続く。
「もしかしてその状態のを直す力あるの!」
「いやそっちは無い。流石にこの状態は無理。でも移動だったらできるからこっち来てくれ。広い範囲は流石に疲れるんだ。」
「おっけー!ひまりんも早く!」
「・・・・・・わかったわ。」
優希の周りに一同集まる。
「じゃ・・・・・・・・・・飛びます!」
ワームホールが形成され、七番組の寮の前に一瞬で移動した。
「本当に移動した・・・・・」
「すっごーい!まるで出雲組長みたい!」
「え?似た能力持ってるの!」
「出雲組長の方が強いわよ。アンタの能力コピーなんでしょ?」
「まぁそうだな。能力を一番理解できてる人間とじゃ付け焼刃じゃすぐに結果出るしな。」
優希は日万凛の皮肉も微塵も痛くなかった。
「朱々、すまないがこれを格納庫のほうまで運んでくれ。」
「了解です!」
朱々はびしっと敬礼する。
「優希、改めて頼むぞ。そしてよく来た、七番組へ。」
「はい。」
こうして優希は再びたたかいにみを投じることとなった。
君は知るだろう。
平和な時代を過ごすためには誰かがその手を血に染まなければならぬということを。